月の幻術使いと禁忌教典   作:レイラレイラ

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戦闘中やその前後に限り三人称になります。


仄かに見える月は襲撃を告げる

 エシュア君を教室に送り出した後、私は遠見の魔術でグレン先輩を監視…………もとい、見守っていたところ何事も問題なく授業を終えていた。

 

 黒魔【ショック・ボルト】を題材にした授業。

 

 即興改変という本来は高等技術も私にとっては最早当たり前の技術ではありますが、生徒たちにとっては寝耳に水だったようで何かと一部文句を垂れている者を覗いて全員が聞き入っていた。

 

 何らかの形での失敗、ランダムの結果。

 

 確かにそう思うのも無理はありません。私も魔術を本格的に学びはじめた当初はそう思っていましたから。

 

 グレン先輩のムカつく態度にヘイトが溜まっている時に頃合いと思ったのでしょうか、本来《雷精よ・紫電の衝撃以て・打ち倒せ》の三節で放つ呪文を《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》の四節にして行使された魔術は壁に着弾、する直前に右に曲がった。

 

 はたまた《雷・精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》と五節にして放ちました。

 

 放たれた紫電はほとんど進むことなく、本来の【ショック・ボルト】の三分の一程度で消滅。

 

《雷精よ・紫電の  以て・打ち倒せ》と一部を消しただけで発動された魔術は生徒のうちの一人に当たりますが、痺れどころか何事もなかったことに驚いているらしい。

 

「でも、それだけで驚かれては面白くないんですよね…………」

 

 これからすることで生徒たちのリアクションがどうなるか、想像するだけで顔がにやけてしまうのが分かる。

 

 アルベルトさんがやっていた鏡を利用した反則的な狙撃、あれを再現してあげましょう。

 

 食堂の窓側に向かい、【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】で木に寄りかからせるように鏡を設置。

 

「《グレン・先輩の・マヌケ》」

 

 窓の隙間をぎりぎり潜り抜け、【ショック・ボルト】は見事にグレン先輩に命中。

 

『ぎゃあああああああああああああああああッ!!』

 

「あっはははは!! 『ぎゃあああああああああああああああああッ!!』ですって!! グレン先輩漫画みたいな反応、最高すぎでしょ!!」

 

「イ~リ~アちゃーん?」

 

「はっ!!」

 

 魔術の制御とグレン先輩のリアクションの面白さに接近を許してしまったらしく、セラさんが私の肩に手を置いてしっかりと掴まれている。

 

 どうやらエシュア君だけが教室に戻ってきたのを心配して来てくれたようで、罪悪感に苛まれた。

 

 グレン先輩の方は反省していませんが。

 

 しかし、私をなめてもらっては困ります。

 

 セラさんが掴んでいた『私』の身体は消え、手は何もない空間を空しく掴もうとするのみ。

 

 では、私が何処にいるのかというと

 

「イリア君? 突然戻ってきて、君は何をしているのかね?」

 

「気にするな学院長、兄妹の戯れだ」

 

 リック学院長とセリカさんのいる学院長室にて、私はいつもの悪戯を敢行していた。

 

 尚、グレン先輩は更衣室が昔と入れ替わっていることに気づかず女子生徒たちにぼこぼこにされていました。

 

 当然私は知っていましたし、何故それを教えなかったのかと問われれば答えは一つ。

 

『面白い』からです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間ぐらいたった日の授業を観察していると、普段よりもかなり人数が増えていることがわかった。

 

 まあ、グレン先輩の授業を聞いていればそれは当然の結果でしょうね。

 

 もちろん私も授業をやっていますよ? 

 

 精神系とか治癒系や幻術、攻性呪文(アサルト・スペル)の類いは炎系を除いたものはですけど。

 

 その日の授業も終わり、真っ赤な夕陽が射している屋上にグレン先輩と私は二人でいた。

 

「おーおー、夕日に夕陽に向かって黄昏ちゃってまぁ、青春しているね」

 

「セリカさん」

 

「なんの用だよ?」

 

「いやな。気づいてないかもしれんが、前は一ヶ月経った魚のような目をしていたが…………」

 

「『今は死んで一日経った魚のような目をしている』と」

 

「心を読むな、心を。…………そういや、明日から私とセラは魔術学会だが、お前らのクラスは授業遅れてるから補習だったな。学院の関係者がいないからって女子生徒にちょっかい出すなよ? あ、お前後輩エンド狙い?」

 

「ねえな」

 

「ふん!」

 

「ぎゃーっ!! 足を踏むな、足を!!」

 

 仮にも女の子に対して、その発言は失礼ですので一撃いれさせてもらいました。

 

 グレン先輩を兄としては慕っていますが、それ以上でも以下でもないのでご安心を。

 

「やっぱりここにいた! 先生!」

 

「お前ら、帰ったんじゃねぇの?」

 

「私達、図書館の方で復習してたんですけど、システィが先生に聞きたいことがあるって…………」

 

「ちょっと、ルミア!? それは言わない約束でしょ!?」

 

「でしたら、私が答えますよ」

 

「…………!!」

 

 グレン先輩が苛つくことを言うのは目に見えているので、先に口を聞けなくしておきました。

 

 ちゃんと戻しますよ? 

 

 …………いい子にしていれば、ですけどね? 

 

 その後、私はグレン先輩にエシュア君を預けて帰路についた。

 

「…………なんだか、嫌な予感がします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段の騒がしさを微塵も感じさせず、閑散としている校内は言うなれば嵐の前の静けさというやつでしょうか。

 

 死者を出さないためにも、警備員は事前に退避させている。

 

 普通に言っても聞きそうにないので、幻術で操って宿直室に閉じ込めるという荒療治にはなりましたがこれで警備員が死ぬことはないでしょう。

 

 遠見の魔術で校門を見張っていると、チンピラ風の男とダークコートの男が入ってくるのが見えた。

 

 チンピラ風の男は第一団(ポータルス・)(オーダー)》のジン=ガニス。

 

『疾風脚』による高速移動と【ライトニング・ピアス】の連射がメインの魔術師。

 

 ダークコートの男は第二団(アデプタス・)(オーダー)》のレイク=フォーエンハイム。

 

《竜帝》という異名を持つ実力者。

 

 要注意人物はこっちだろう。最も、天の智慧研究会という時点で要注意人物というレッテルは変わらないのですが。

 

 チンピラが符のようなものを取り出し、ルーン語の呪文を唱えているのを口の動きで理解する。

 

 硝子が砕けたような音がするとともに、二人の男が悠々と学院の敷地内に侵入を開始。

 

 二人が入ったところで、また結界が構築されるのを感じる。

 

「…………なるほど。そういうことですか」

 

 何故いとも簡単に学院に侵入できたのか、学院の情報統制はしっかりしているので裏切り者がいることは容易に想像できる。

 

 では、その裏切り者とは誰か。

 

 協力するだけなら魔導セキュリティの術式を横流しという方法で事足りる。

 

 しかし、結界まで破壊ないしは修復されているあたり空間系魔術に関しては天才であることがわかる。

 

 最も怪しい人物。

 

 実績こそないものの、学院のことに明るくなおかつ行方の知れぬ誰か。

 

「…………ヒューイ=ルイセン」

 

 取り敢えず、裏切り者のことは後回しにしましょう。

 

 私が今すべきことはテロリストの処理、ひいては捕縛なのだから。

 

 

 

 

 イリアはスイッチをセリカが言うところのマジモードに切り替え、戦闘の準備を整える。

 

 学院内の通路を歩く二人の前に、イリアは堂々と姿を晒す。

 

 不意打ちも出来たはずが、目の前に現れたイリアに驚いた様子を見せたレイク。

 

 それでも、戦闘経験豊富故か即座にしかめっ面に戻るあたりさすがといったところか。

 

「貴様、何者だ」

 

 レイクが底冷えのする声音で問うが、イリアは全く臆すことなく言い放った。

 

「お前らごときに語る名などない、と言いたいところだが特別に答えてやろう」

 

 イリアは胸ポケットから一枚のカードを取り出すと、レイクにその絵柄を見せつけた。

 

 総数二十二枚からなる大アルカナのナンバー18、月のカードだった。

 

「帝国宮廷魔導士団特務分室 執行官ナンバー18《月》のイリア=イルージュだ。せいぜい覚えておくことだな」

 

「…………そうか。《吠えよ炎獅子》」

 

「!!」

 

(くそ! 見破られていたのか!)

 

 イリアは事前に仕込みをしていた。

 

 侵入した瞬間にジンを心理掌握(メンタルアウト)によって操り、不意をつこうとしたのだが看破された。

 

【ブレイズ・バースト】をまともに受けたジンは炎に包まれ、丸焦げになっている。

 

 イリアは唐突に悪寒を覚えた。

 

「くっ!」

 

 背後から刺すような何かを感じ、真横に跳躍。

 

 イリアの立っていた場所に二本の剣が深々と突き刺さっており、咄嗟に回避行動をとっていなければ串刺しにされていただろう。

 

「やはりな。こうして姿を晒してまで隙を作ろうとするあたり、貴様は魔術の撃ち合いは得意ではないのだろう? 幻術で意識を奪うか、仲間に殺させる。これが貴様の戦い方なのだろう?」

 

「…………」

 

 イリアはただ黙り込んだ。

 

 それはあっさりと自分のスタイルが看破されたからなのか、あるいは別の理由か。

 

「終わりだな《月》よ」

 

「…………ガハッ!!」

 

 三本の剣が心臓と肺を刺し苦悶の声をあげるイリア。

 

 即死だろうが、レイクはそれでも油断はしない。

 

【ブレイズ・バースト】をイリアへと放ち、燃やし尽くす。

 

「…………他愛ない」

 

 完全にイリアが死亡したことを確認したレイクはその場を立ち去り数分後、ふと違和感を覚える。

 

 歩いてある程度経っている筈なのに、景色の変化が一切ない。

 

 恐る恐る振り返ると、驚愕に目を見開いた。イリアの焼死体がそのまま残っていたからだ。

 

(どういうことだ!? 私は確実にあの魔導士を殺した筈!! まさか、これも奴の術中の内だというのか!?)

 

『その通りだ、レイク=フォーエンハイム。思ったよりは早かったな。もっとも、私と邂逅した時点でお前は詰んでいたわけだが』

 

「…………幻術か」

 

『ご名答と誉めておこうか。だがこれは普通の幻術とはワケが違う。お前たちの正体が判明した時点でこの状況に至るまでの算段は立てていた。正面からの魔術戦が不利であるのなら、一方的に封殺、無力化したうえで捕縛してしまえばいいのだからな』

 

 イリアは【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】以外にもうひとつの固有魔術(オリジナル)を持っている。

 

 事前情報があれば回避は可能だろうが、初見であれば看破は限りなく不可能な協力無比な固有魔術…………

 

無限ノ悪夢(インフィニティ・ナイトメア)。それがお前の人生最後に食らう魔術だ。…………眠っていろ、永遠に』

 

 ここではない何処かで、自分の胸に短剣を刺されたという自覚を覚えると同時に、レイクの意識は無限の廊下とともに深き闇へと落ちていくのであった。

 

 




【無限ノ悪夢(インフィニティ・ナイトメア)】の説明は次話になります。

イリアちゃんカッコよく書けたでしょうか?

もしそうなら嬉しいです!
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