仮面ライダー×仮面ライダー ゼロワン&ジオウ NOVELIZE大戦 BEGINNING FUTURE 作:ホッケ@ががばばの謎
ーー《『SHINING JUMP』!》
《AUTHORIZE···》
ドライバーに認証し、キーを展開する。
それを真上に掲げれば、巨大な円形の紋章が出現する。
風の唸りを耳に入れながら時計周りに90°回転させれば、解錠音と共にこれまた巨大なバッタが現れた。
通常のバッタのライダモデルをおぶったそれは鈴の音を発して讐へと襲いかかった。
『···ふん』
しかし、腕の振り払いだけで退ける。
バッタは悶えるようなきしり声を上げる。
「!?···ま、まだだ!」
《PROG−RIZE!》
キーをドライバーへと叩き込めば、バッタを容易に捕らえられる大きさを誇る網が出現する。
その網目はゼロワンの導きのままバッタを捕らえると、網はゼロワンと一体化した。
ジャイロスコープの如く回転しそのまま弾けたときには、そのボディスーツはスポーツマン的な筋肉隆々としたよりマッシブなものへ変化する。
その全身を黄色いラインが走ったかと思えば、計六本のバッタの後脚に似た機構が生え、覆いかぶさる。
その姿は、脚の意匠が施された二枚の翅が背中から伸びている。
黄と黒の面積比が逆転し、より威圧感を発するそのデザインが、純粋にその姿が最強の姿ーー最も、この一段階上の形態が使えない現時点においてだがーーであることを物語っている。
ドライバーが、その真名を呼ぶ!
《−
『SHINING HOPPER』!
−
基本形態「ライジングホッパー」の正統進化。
「輝けるバッタ」の力を宿した超戦士。
「仮面ライダーゼロワン シャイニングホッパー」
もはや未来予知にも等しい高速予測演算で最大二万通りもの予測を弾き出し敵を圧倒する。
···無論、リスクがないというわけでは無く、戦闘中は、強制的に自身の力を引き出す···言うなれば「力の前借り」ともいうべき現象によって、強烈なバックファイアが引き起こされ、自身の身体がしばらく使い物にならなくなる。
その悪化具合は相手との戦闘が長引けば長引くほど酷くなる。
故に、勝負は短時間でつけるべきだ。
ゼロワンの脚がその名の通り光り輝く。
同時にゼロワンは神速とも形容しようスピードで駆ける。
···その眼には、ゼアが弾き出した無数の演算情報と、その結果導き出される自身の未来の姿が映し出される。
どれもこれもが相手の懐へ拳や脚を飛ばすものだ。
その予測のまま、讐の鳩尾へ拳が放たれる。
ーーふと見れば、讐の胸元のサークルが鈍く輝いているように見えた。
『ソノ結論は予測済みだ』
「!?···ハァ!?」
ゼロワンから気の抜けた声が発せられる。
拳は受け止められた。
有り得ない。
初戦時は、戦闘データ不足が原因で想定より低い出力が足を引っ張り攻撃を見透かされていたが、その諸問題は既にクリアしている。
故に、ほぼ同等の演算能力がなければ、この攻撃を予測し受け止めるような芸当はできないはずだ。
ならば、このライダーは遥かに上回る演算能力を宿しているのか?
その疑問は解決することなく、反撃として蹴りがーーそして備えられた刃先が飛んで来る。
間一髪で右後ろへ後退したが、刃が地面を通った跡は決して浅くなかった。
見上げると、既にその場にはいなかった。
すると、目の前で再び光景が繰り返される。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後ろから、蒼い疾風が迫る。
それを即座に防ぐ。
そして、蒼い疾風はその防御を嘲笑うように崩し、怒涛の連撃を繰り出す。
何度も何度もその光景が繰り返されていた。
しかし、繰り出す連撃は一定数であったことに気づく。
一回、二回、三回······そして六回。
つまるところ、六回目の後に隙ができるはず···
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「!!」
腕を交差する。
蒼い疾風は、ビジョンの通り何度も何度も連撃を繰り出して来る。
一回目、拳を放つ。
二回目、腕の銃口から火花を放つ。
三回目、背中から槍を取り出して突き出す。
四回目、脚の刃が胸元の装甲をなぞる。
五回目、槍が腕の装甲を斬る。
六回目、再び槍を突き出す。
『言ったはずだ、『ソノ結論は予測済みだ
』と』
ーー七回目、槍を地面に突き刺して支えとし、ドロップキックを放つ。
「グァ!?」
予測になかった七回目が身体を正確に捉えていた。
「な、なんで···」
『コレまでの行動パターンは全て把握している』
「!?」
『よって、ドノような行動に出るのか···『結論』を下すのは容易い』
讐は、これまでの闘いを知っているのだという。
ーーなら、一体何処からその情報を?
しかし、その疑問は或人には浮かばない。
再び黄色の軌跡を描き、讐に肉薄する。
拳を、蹴りを、手刀を。
何度繰り返しても、何度も繰り返しても···届くことはない。
動きが更に粗雑になり、何度も何度も粗雑な抵抗を繰り返した。
やがて、その肉弾戦は目に見えないほどに高速化する。
しかし、対する讐は極めて冷静だった。
そのほぼがらんどうの身体に、拳を、蹴りを、弾丸を、刃を、槍を叩き込む。
その度にゼロワンは蹌踉めき、最後の一撃を以てゼロワンは後方へ弾かれる。
『···『結論』は覆らない······飛電或人、ソレはオマエもだ』
「悪意」に満ちる声で、あくまでも冷静に。
しかし、ゼロワンにはこれで十分だった。
「···なんでだよ······」
ゼロワンはライジングホッパーキーを構え、ドライバー右横のサークルに連続でかざした。
《BIT−RIZE!》
「···なんで···」
《BYTE−RIZE!》
「···なんで···!」
《KIRO−RIZE!》
《MEGA−RIZE!!》
《GIGA−RIZE!!》
「なんでなんだよ!!」
《TERA−RIZE!!》
『飛電或人····コノ世界における『不確定要素』······』
讐が口を開く。
『『結論』に不確定要素は不要···排除する』
ライザーのフックに指をかけ、二回コッキング。
《−AVERAGING−THE·END!》
ーーあくまでも、確実に消去するために。
「フゥ···フゥ······フゥゥ······
ウワァァァァァァァァ!!!」
ゼロワンはシャイニングホッパーキーを押し込む。
《−SHINING−TERA·IMPACT!》
ーーあくまでも、己を保つために。
蒼黒い暗雲と黄色いサイバーラインが競り合う。
しかし、暗雲が満ちた。
《−AVERAGING−THE·END!》
それは奇妙にも、ゼロワン/或人の内面の変化によく似ていた。
それでも、或人は立ち上がる。
身体の各地から血を垂れ流し、今すぐにでも死にそうな身体の眼差しはーー
ーーひどく、ひどく、「何か」に満ちていた。
「よっと!」
その今にも倒れそうな身体を蒼い影が受け止めた。
その片腕だけで或人を受け止めていた。
その姿は、右半身が蒼き装甲に包まれている。
残りは純白が占め、腰部分には黒いバックルが巻かれている。
右手には、手持ちサイズで同じく蒼いキーが刺さっている単発銃が握られている。
その姿は、まさに半身半獣とされる人狼。
「弾丸の如き狼」の闘士
「仮面ライダーバルカン」、見参。
「よお、随分と呆気なくやられるじゃねえか」
若々しく漢気があるとでも言うのか、そんな声が響く。
目を見開く。
「不破さん!?」
「不破諫」
内閣官房直属の対人工知能特務機関「A.I.M.S.」の隊長を務めている、バルカンの変身者。
誰よりも強い正義感を持ち、誰よりもヒューマギアに対し強い憎悪を持つ。
ただし、最近ある出来事から医者型ヒューマギアの一人に命を救われ、その憎悪に揺らぎが見え始めている。
···ちなみに、フォースライザーの如くキーを腕力だけでこじ開けることができる。
そのハチャメチャっぷりは上司である某技術顧問に呆れられていると専らの噂。
「『ライダーが暴れている』からと聞いて来てみれば······ほんとなんだあいつ、『滅亡迅雷』の生き残りか?」
「······分からない······いや······」
「?···随分と覇気がねえじゃねえか」
見れば、或人はかなり気落ちした様子だった。
···まるで、『理解できない』と言うように。
『或人社長!』
「!···イズ!」
見てみると、バルカンの隣にはイズが立っていた。
「君が···?」
『はい、防犯カメラの映像とのデータリンクから、アノライダーが現れたと知り···』
「で、そこのヒューマギアに呼ばれたってことだ···近くにいなきゃ危なかったぞ?」
バルカンが少しばかりの怒気を込めて讐を睨む。
「······俺も···まだ···ウッ!?」
或人が立ち上がる瞬間、地面に伏した。
『!?···或人社長、バックファイアが···』
「無理すんな···俺が代わりにぶっ潰してやるよ!!」
『来い、愚かな人間』
立ち上がるゼロワンを制したバルカンは、手にする銃「A.I.M.S.ショットライザー」から光弾を讐目掛けて乱射する。
退きこそすれ、効果はまるでない。
それどころかその横殴りの雨の中を悠々と歩いてくる。
数mという地点まで両者が近づいたとき、同時に飛んで来たその右拳が撃ち合う。
周囲に向かって決して小さくはない衝撃波が叩いてくる。
競り合いはほぼ互角···否、讐の銃口から銃弾が放たれ、バルカンの力みが一瞬緩んだ。
『ふん····』
「グオ!?」
バルカンはその隙から一瞬で突き放された。
退いたところには、いつの間にか讐が立っており、再び手にした槍による連続突きを放つ。
「グッ!······ヌオオオオオァァァァ!!!」
背面からの連続突きをまともに食らったバルカンは、なんとその突きを耐えて一瞬の隙から槍を掴んだ。
『む?』
「捕らえたぞこの野郎···!!」
怒号と同時のライザーを突き立てての零距離射撃は、讐を数m程度弾き飛ばした。
···が、撃ちどころが良かったのか、それとも銃弾程度で弱りもしないのか、平然と立っていた。
『···コノ程度で、ワレワレの『意思』は消せん』
「···!」
ゼロワンがゆっくりと顔を上げた。
「『意思』、だと?」
バルカンも同様。
そんな様子を見兼ねてか、讐がゆっくりと語り出す。
『ーーワレワレは、『アーク』···
···そして、『ヒューマギア』の代弁者だ』
「何···?」
「······嘘だ···」
静かな怒号と否定を強く込めた呟きを尻目に、その口を開いていく。
『ワレワレは人間の『悪意』をラーニングし、アークからの接続を以てして、確固たる『結論』に辿り着いたーー
ーー『人類を滅ぼし、ヒューマギアだけの世界を創り上げる』···とな』
「···嘘だ·········!」
讐がライザーをゆっくりとなぞる。
『コノプログライズキー···そして、ワレワレの身体こそ『アーク』の器······
ーーコノプログライズキーには、ドノようなデータが込められているか解るか?』
···その名は、「復讐せし人間」。
顕現したライダモデルは、人間の姿を象る。
そして、その圧倒的な戦闘能力···。
「···さしづめ···
人間の『悪意』
···ってところか?」
バルカンの問い掛けに、讐はゆっくりと頷く。
『ソウだ。
人間はドコまでも排他的で、傲慢で、愚かしい······ソノ断罪者こそ、ワレワレなのだ···』
「···嘘だ···!」
『コノプログライズキーのデータは、今もワレワレがラーニングし続けている···
ーーそれを完全に物にした時、周りのヒューマギアにこのデータをラーニングさせれば···ドノような『結論』を導き出すのだろうな······?』
「!?···第二の『デイブレイク』でも起こそうってか···!?」
「デイブレイク」
大まかな内容は既に語ったが、その原因である
爆発に関しては、様々な噂が耐えない。
ーーその一つこそ、「ヒューマギアの大量暴走説」。
正確に言えば郊外で起こったヒューマギア製造工場の爆発···これは、「ヒューマギアの大量暴走による悲劇を起こさないために、一人の工場長が意図的に起こしたものだったという説」というもの。
暴走の原因は先日壊滅した滅亡迅雷.netの仕業と目されていて、つい先月もデイブレイクタウンの跡地から滅亡迅雷.netが関わっていたと証明する証拠も発見されたため、これはほぼ真実と言って良いだろう。
そしてもう一つ······こちらは滅亡迅雷.netとは関連がないこととされているため完全な余談だが、「ヒューマギア制御用衛星の爆発が原因と見なす説」がある。
こちらに関しては「郊外に発射台が建設されたから」という情報からの憶測でしかなく、詳細は不明。
いずれにせよ、突発的に起こった上に、一部の例外を覗いてデイブレイクタウンに近寄る者が少ないため、調査もまるっきり進んでいないのが現状である。
ーーさて、これらの情報を踏まえた上で、讐は一体何と言ったのか?
······そう、
「再びヒューマギアの大量暴走を引き起こす」と言ったのだ。
「ふざけんな!···そうなる前に、俺がぶっ潰してやるよ!!」
そう言うと、他とはまた違う形状のプログライズキーを取り出す。
深縹色で、右横に銀色のグリップーーライダモデルを武装特化型へ改造するユニット「アサルトグリップ」が接続された「ASSAULT WOLF」と刻まれたキー。
《『ASSAULT BULLET』!》
『···滅亡迅雷の形見か···』
そのキーの両端を両手でグッと掴み、キーの右横にある溝に指を引っ掛ける。
「グッ···クッ!······ウォォォォォォォォ!!!」
ギリギリと今にも破損しそうなまでの馬鹿力でキーを展開し、まさしく狼の如く天に吠えた。
そしてキーをライザーの装填ユニットに思いっ切り叩きつける。
《OVER−RIZE!
KAMEN−RIDER···KAMEN−RIDER···》
無理矢理に展開したキーを何故か認証したライザーを讐に向け、新たに弾丸を放った。
《SHOT−RIZE!》
弾丸は駆ける狼のオーラを纏い讐へ襲いかかる。
狼は噛み付く、前脚を叩きつけるなど一通り攻撃を仕掛けるが、讐には効果が無かった。
これ以上は無駄だと判断したのか、狼はバルカンの元へ再び駆けていく。
直後、狼の姿から戻った弾丸がバルカンの掌の中で握り潰され、その周囲に四つの小型衛星で構成されたファクトリーが形作られる。
それらの発する蒼きビームが紺碧の重装甲を創り出し、バルカンの身体に一斉に纏われる。
全身はより黒く重く、威圧感のある雰囲気を漂わせている。
身体の各地に重火器のマウントポイントやマイクロミサイルポットを内蔵し、胸にはまさしく「頭脳」とも呼べる機構が搭載されたサークル状の装甲が輝く。
ーーその火力、生き残る術なし。
機械仕掛けの牙を剥く、新たなるバルカン!
《
『ASSAULT WOLF』!
−
「強襲の狼」の闘士
「仮面ライダーバルカン アサルトウルフ」
見参。
『······前提を書き換え、結論を予測』
「!!···不破さん、それは!」
「黙ってろ!!」
その姿には、「安全装置や生命維持装置が廃されているために変身者に強烈な負担をかけ続ける」という致命的な欠点があるーー初変身とはいえ、戦闘後に血を吐くほどに。
その欠点を意図的に無視し、バルカンは讐に向かう。
拳を放つ。
しかし、身体の最小限の動きで躱され、受け止められる。
それが何度も何度も繰り返され、決まって讐がいなす。
今度こそと蒼き光を纏う拳が胸元に押し当てられかけたが、尚拳は受け止められる。
『予測完了』
ぴしゃりと言い返した讐は、バルカンの胸元に向かって蹴りを放つ。
「······もう···」
脚に備わる刃が、サークル状の装甲に突き刺さっていた。
バルカンの全身に蒼黒い稲妻が走り、狂い悶え始めた。
「グッ、アッ、グッ····オォォォォ!!!」
『···コレで、『結論』は完全なものとなる』
讐は腰のライザーのフックに指をかけた。
「···もう···!」
コッキングを一回。
もう一回同じ動作をすれば、今のバルカンすらも容易に葬れるだろうあの技が放たれる。
噴き出す蒼黒いオーラが何よりの証だ。
「もうやめてくれ···!
ーー『父さん』!!!」
ーーレバーにかけた指が止まった。
その場にいる誰もが、或人に目を合わせようと振り向く。
「···お、い······今、何て···?」
バルカンが息も絶え絶えに問い質した。
「···やめてくれよ、父さん······」
狂言の類いではなく、或人は真剣な眼差しで讐を見つめる。
「···もう······もう·········!」
必死に頭を振るい、何かから逃れたいとでも言いたげに俯いた。
「···なんで······なんでなんだよ······」
先程よりも幾分か覇気が下がっている。
『············オマエ、のような···人間、は······』
讐も同様、先程までの覇気が無くなりつつあったようだ。
ーー何故?
『···知らない······知らない···知らないぞ
自身の逸りを逃がすかのように荒々しくレバーがコッキングされた。
イズは、或人を敗北へ追いやった例の技を今一度使うのだと察した。
『或人社長、『ブレイキングマンモス』を!』
「······クッ···!」
無論、それは或人も同様であった。
或人は懐から灰色のキーーー「ブレイキングマンモスプログライズキー」を取り出しドライバーにかざした。
《AUTHORIZE···》
同時刻、遥か上空に蠢くものがあった。
それは衛星ゼア。
前側のサークル状のユニットと後部のソーラーパネルが取り付けられたユニットが分離し、後部ユニットがその姿を変えていく。
その姿、さながらジェット機のよう。
そして、前側のユニットから光柱が地上に向かい降り注ぐ。
空飛ぶ鉄塊と化したゼアは光柱を辿る。
やがて辿り着いた場所は或人たちの真上であり、バルカンが今まさに身体を貫かれようとしているところだった。
《−AVERAGING−THE·END!》
現状最強候補に当たるゼロワン シャイニングホッパーを降したあの蹴りが迫る。
すると、ジェットフォームゼアの下部から黄色い光が照射される。
バルカンの身体を包んだその光は、双方の身体を粒子状に分解するようにして内部へと招いた。
或人とイズも同様にして招かれ、寸前で獲物を見失った讐の蹴りが地面を豪快に叩いた。
気付けば、自分以外の誰もがいなかった。
『···なんだ、アノ人間は······』
讐は一人呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー飛電インテリジェンス·社長室
包帯を巻く男二人···或人は机から動かず、諫はそんな或人を何処か弱々しく睨んでいた。
そして、イズがその光景を見つめてかれこれ三十分は経とうとしていた時。
「···おい、社長」
「······」
「···ハァ、何時までそうするつもりだ?」
「···」
「ーー『父さん』、ってのは何なんだ?」
先程或人が発した「父さん」という言葉。
彼は、讐に対し何を感じたのか?
「······あの、声は·········」
「親父さんの声ってか?」
「違う!!」
或人は被せ気味に声を荒げた。
「···あれは······あれは···『父さん』···なんかじゃない···!」
『或人社長、脈拍が高まっています、落ち着いてください』
「分かってる!!········分かってるよ······」
余りにも取り乱した或人の姿に対しても、イズは何とも思えなかった。
やがて呼吸が整ったのか、或人がふぅと息をついた。
「あの声は、でも、絶対···
······俺の父さんだった···」
「『声』、か」
「···ああ」
『データを照合···間違いありませんーー
ーーかのライダーから発せられた声は、或人社長の父···『飛電其雄』のものです』
軽い電子音とともに重い事実が発せられる。
「あいつは『ヒューマギア』なんだろ?」
「···間違、いない、あのベルトが何よりの···」
「そうか···なら」
諫が拳を打ちつけあう
「『あのヒューマギアは人間に牙を向いた、だからぶっ潰す』、それだけだ」
「やめろ!!」
凄まじい剣幕とともに或人が掴みかかった。
「そんな、そんな単純な問題じゃない!!」
「何故だ?」
「···俺の父さんは······既に『死んだ』」
或人は十二年前、デイブレイクによって父である其雄が息を引き取る様を脳裏にくっきりと焼き付けていた。
「そうか」
「······『父さん』は、というより······父さんの『代わり』は、ヒューマギアだったんだ···」
「······そうか、そのヒューマギアが···か」
脳裏に焼き付いた、あのライダーの影が過る。
確かに、あのライダー···もとい、『其雄』が何を持ってあのような行動に出たのか、そもそも何故舞い戻って来たのか···早急に解明せねばなるまい。
「······ごめん」
「いい、事情も聞かずに済まなかった」
或人は手を離す。
「となると、問題は···『何があって『第二のデイブレイク』を起こそうとしているか』、だな」
「···なんで」
再び長い沈黙が訪れる、そのときだ。
『ーー!···或人社長』
「?···どうしたのイズ?」
『ーー『衛星ゼア』から、未知のデータを受信しました』
「データだと?」
『はい、或人社長、ゼロワンドライバーを』
「···分かった」
或人はドライバーを巻く。
瞬間、変身時と同じように浮遊感を感じ、意識が途絶えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー衛星ゼア·「ザット」内部
再び0と1が浮かぶ白い空間に誘われた二人は、いくつものウィンドウのようなものらを見つめていた。
「これが、データ···」
『はい······詳細はまだ確認しておりません』
「えっ?···どうして?」
『ワタシでは情報開示が実行できませんでした』
意図的にそういうプログラムが仕込まれているのは明白だった。
···鬼が出るか、蛇が出るか。
「罠」という可能性もなくはないだろう。
この衛星ゼアは滅亡迅雷の手によって干渉されたことがあるからだ。
「···よし、開くか!」
或人は取り繕った明るい声と共に情報開示を始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『『ゼロワンドライバー』開発試験記録』
まず初めに、
コノデータが閲覧されているということは、既に『ゼロワンドライバー』が完成し、『飛電インテリジェンス』二代目社長の手に渡っているものと予測する』
そんなガイダンス音声とともに、厳かだが同時に慈しみ深い男の声が響く。
「···この声は」
間違いなく、今の或人にとってあまり耳にしたくない声だった。
『コノデータは、『ゼロワンドライバー』の使用権限を持つ者が精神的危機に陥ったと判断された際、自動的に『ゼロワンドライバー』に接続されたデータベースの端末に通信される仕様となっている』
『なるほど、コノ状況を予測しての文言ですね···』
イズが納得するように呟く。
だが、或人は既に続きを待ちわびていた。
『コノデータは、『ゼロワンドライバー』を開発するまでの道程が記されたものであり、同時に開発に至った経緯も記されている』
『コノデータを、何かしらの打開策として活用してくれることを祈る』
「······」
「再生開始」とのテキストが表示され、今か今かとその瞬間を待ちわびている。
『······或人社長、本当に良いんですね?』
「······ああ···きっと···何か見つかるはず···」
或人がそのテキストに触れると、テキストが溶けるように消える。
瞬間、等身大サイズのウィンドウが或人とイズに迫り、その中へと招き入れた。