幻想郷とて日常はある   作:わしはトマトが嫌いじゃ

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 なかなか筆が乗らない。どういう展開にしようか迷っちゃうのん。


第二十七話 妖怪妖精大雪合戦、その弐

 こうして、雪合戦が始まったわけだけれど、まず最初にルール説明の内容通りに、一時間かけて陣地構築をやることになった。

 

「これぐらい積めばいいわよね」

 

「はい、あとは細かく仕上げておきます」

 

 幽香が大まかな高台や壁、防塁作りを担当し、細かい部分は鈴仙が作っていく。こういう地道で泥臭い作業幽香は嫌うと思っていたのだが、思いのほか積極的である。そういえば冬以外では自分の庭で野菜とか作っていたし、意外とこういう作業は慣れているのかもしれない。

 

「雪の中に罠を仕込むのは楽しいねぇ」

 

「致死性の罠は倫理的にNGだから駄目だよ?」

 

「分かってるってば」

 

 そして出来上がってきた建築物にトラップを仕込むのはてゐ。階段を登ろうとしたら急に滑り台になる。アーチをくぐろうとしたら崩れて雪崩を起こすなど朝飯前。どうやってかは知らないけど、特定の場所の地面を踏んだら雪玉が発射されるというトラップも構築していた。間違えて踏まないようにしないと。

 そして僕は雑用兼メンバーの総監督である。元より僕以外は人外の集まりなので、僕抜きで作業してもものすごい勢いで築城されていく。

 今築城といったけど、今作っているのはまさしくお城なのだ。みんながイメージするような日本の城。堀は作れないけど城壁や天守閣などきっちり再現される。一時間で出来るのかと最初思ったけど、スケールは小さいし、何よりみんなのモチベーションが高いのですでに完成間近だ。

 

「いい見栄えじゃない。よきかなよきかな」

 

「輝夜は……中で何しているの?」

 

「雪玉を作っているのよ。動かなくて済むし、楽だし」

 

「……まあちゃんと働いている分マシかな」

 

 開始直後は特に何もせず、みんなの進捗を見て微笑んでいた輝夜。でも幽香から「働かずもの食うべからずっていうわよね?」と妙にいい笑顔で言われてからは彼女なりによく動くようになった。蓬莱人をも動かす幽香。恐ろしい。

 

「あなた、時計持っていたわよね。あと何分?」

 

「十五分ぐらいかな」

 

「意外とあるわね……そうだ、あなた偵察してきなさい。あなたなら警戒されずに見に行けるでしょう?」

 

「ええー……」

 

 このまま僕無しで進めても構わないものかとも思ったが、幽香には口答えできないだろうが鈴仙がいるので、ここは彼女に頑張ってもらうことにする。

 

「雪玉、ちゃんと作っておいてよ」

 

「任せなさい。蓬莱の玉の枝のような美しい雪玉を作り上げて見せるわ」

 

「でもそれ最後には投げつけるんだよね?」

 

「砂絵って知ってる?」

 

 どうやら理解しているようだった。そんなこんなで僕は、一度鈴仙にそういう用向きを伝えることになった。

 

「ということなんだけど、ちょっとの間任せていいかな」

 

「大丈夫ですよ。幽香さんが何か言いだしても止められませんけど」

 

「今更もろもろの変更を言い出すことはさすがに幽香でもないと思うから、基本イエスで済ませていいと思うよ」

 

「分かりました。……そうだ、この勝負に勝ったら、あれしてくれませんか?」

 

 あれ、とはいったい? と僕が首をかしげていると鈴仙は口元にふと差し指をあてて。

 

「……頑張ったねのキス。今、魔理沙とキスの回数を競っている所なんですよ?」

 

「……分かったよ。ご褒美に、ね」

 

 このやり取りはこの場にいる人物に気づかれてはいけない。魔理沙以外にも恋仲となっている人がいることなど知られたら、たちまち大騒ぎになってしまうだろうから。

 

(“ただの人間がハーレムを!?”とかシャレにならないからね)

 

 さて、そろそろ僕は他チームの偵察に行くとしよう。なるべく接触は最小限に。のぞき見をするぐらいで済ませよう。

 

 

 

「器用に作りますね、あなたの人形」

 

「物量でもお手の物よ」

 

 幽々子率いる亡霊チーム。ここではどんな陣地にしようかと相談したところ、妖夢が普段動き回っている場所のほうがやりやすいという事で白玉楼を再現することになった。当然スケールはだいぶ小さめになるが。

 

「お屋敷の中にフラッグがあるというのは……かなり違和感がありますね」

 

 お遊びなのでいつもの刀は置いて、どこからか拾ってきた似たような長さの木の枝を振るう妖夢。

 

「どちらかというと雪原にお屋敷があるほうが不自然だと思うわよ?」

 

「趣きがあっていいじゃないですか。真っ白で綺麗ですし」

 

「他の陣営も結構本格的なものを建てているし。雪像祭りか、これは?」

 

 藍も臨時に召喚した式神を利用して、着々と防壁部分を作り上げていく。さて、幽々子と橙はというと。

 

「ごろごろ……」

 

「ごろごろ~」

 

 ほぼ出来上がっている屋敷の縁側で、橙に膝枕をしてくつろいでいた。マフラーに手袋、毛編みのセーターまで着た橙であるが、それでも雪を触る作業はかなり苦手な様子。ほとんど藍とアリスで作業は出来てしまっているので、同じくのんびりしていた幽々子に撫でられているというわけだ。

 

「幽々子様、橙の相手をしていただきありがとうございます」

 

「こうやって充電させているから、この子にはしっかりと働いてもらうわよー?」

 

「頑張りますっ……ごろごろ」

 

 

 

「自然にこの子たちの保護者役に回ってしまったけれど……」

 

 さて、こちらはレティの妖精チーム。今回の参加者の中で最もはまり役と言ってもいい人物。何せ現在彼女がいる雪で出来た幻想的な城も、すべて彼女の能力で作り上げたものだからだ。その規模や精巧さも他チームの追従を許さない。『寒気を操る程度の能力』のたまものだ。

 

「すごい長い滑り台よーっ!」

 

「途中で一回転するなんてどうなってるの!?」

 

「二人とも待つのだーっ!」

 

 サニーとスター、ルーミアはドーム型のお城の中に作られた滑り台で遊んでいた。

 

「一応試合中だという事を忘れているのかしら」

 

「あなたのところの妖精って大変ね」

 

 一方ルナチャとレティは、そんな三人が遊んでいる滑り台スペースの中央に佇んでいた。

 

「外の障害物は作ってあるし、雪玉も私がいくらでも生み出せるから構わないのだけれど……」

 

「遊びすぎよね」

 

 本来の定義に当てはめれば、雪合戦も遊びに入るのだが。

 この陣地を作るにあたって、ほぼすべてレティの能力によって構築されている。他の四人がおーと言っている間に全部作られたのだ。つまり一時間ほぼお遊びタイム。妖精や無邪気な妖怪がこれを見逃すはずもない。

 

「作戦は考えているの?」

 

「いつも通り私たちは三人で行動するわ。ルーミアは……」

 

「……そもそも勝負という事も理解できていないかもしれないわね」

 

「どうしたの? 私を呼んだー?」

 

 ほっとけば雪玉を食べそうでもあるルーミア。誰かがついていないと気が気でない。

 

「……あの子は私がついていくわ」

 

「お願いするわ」

 

「よーろーしーくーなーのーだー!」

 

 ちょうどループゾーンに入ったルーミアが、加速で声が間延びになりつつも返事をした。

 

 

 

「というわけで」

 

「完成したわ」

 

 戻ってみると立派な天守閣付き和製のお城が経っていた。一時間で作った物とは思えない。幽香と鈴仙の頑張りのおかげだ。

 

「あっ、そこ踏んじゃだめだよ。四方八方から雪玉が飛んでくるから」

 

「競技的に即死トラップ!?」

 

 門から中に入ろうとするとてゐの忠告が飛んだ。どうやら一か所大股で歩かなければならないらしい。

 

「塀の内側には防塁を築いて、ひたすら攻め込みづらいようにしました」

 

「なかなか実用的だね」

 

「そしていざとなったら防塁を崩して雪崩が出来るようにもしたよ」

 

「とことんこだわってるね」

 

 門に向かって坂にもなっているので、自然と侵入者に襲い掛かる仕組みだ。えげつない。

 

「あと一分だね」

 

「輝夜様、雪玉の用意はよろしいでしょうか?」

 

「ふっふっふっ、ぬかりなしよ」

 

 輝夜の背後には山盛りになった雪玉の数々が。どうやってそんなにこしらえたのかは不思議だが深く考えないようにしよう。

 

「開始の合図って鈴仙がやってくれるんだよね?」

 

「ええそうです。バーンと派手なのをやっちゃいますよ!」

 

「今日は観客もいるからねー。しょぼいのだったらだめだよー」

 

「私のチームの一員だもの。それに見合うのを打ち上げてくれるんでしょう?」

 

「……が、頑張ります!」

 

 ただのスタート要員なのにプレッシャーがかかる鈴仙。幽香からの圧がとくにすごい。本人は意識していないんだろうけど。

 

「時間だね」

 

「じゃあ、行きますよーっ!」

 

 鈴仙が指先に弾丸型の弾幕を作り出すそして手で銃の形を模して天に突き出し、打ち上げた。冬空の中で、キラキラとした弾幕の花火が咲いた。




 バトルっぽい展開になりそうだけどたぶんない……と思う。
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