幻想郷とて日常はある   作:わしはトマトが嫌いじゃ

28 / 28
 思えばこういうのって戦闘描写ってるのかな? 知らんけど。


第二十八話 妖怪妖精大雪合戦、その参

 僕らが陣地作成にいそしんでいる合間にも人が集まってきたようで、現在は多くの見物客が周囲にたむろしていた。

 僕らのチームの作戦はこうだ。幽香と僕が前に出て、残りはひたすら防衛。いたってシンプルだ。

 

「あはははは! 意外と楽しいわねこれ!」

 

「幽香が暴走してる!」

 

 見かける人に手当たり次第に雪玉を投げていく幽香。その威力は大口径の銃弾のごとし。雪玉を防塁の中ほどまでめり込ませるとかどんな投げ方しているんだろう。

 

「人が当たっても死なないよね!?」

 

「大丈夫よ、あなた以外は皆妖怪か妖精だから」

 

「流れ弾には気を付けろってことだね!」

 

「随分とはしゃいでいらっしゃるわね。風見幽香」

 

「!」

 

サッと幽香はジャンプして、僕は防塁の陰に隠れて雪玉の雨をかいくぐる。

 

「幽々子じゃない。紫がいなくて気分が落ち込んでいると思っていたけど」

 

 着地しながら幽香が挑発する。

 

「いなくなる悲しみは、私より紫のほうがよっぽど知っているわよ? 雪が解ければまた起きてくるのだし、何も思うところはないわね」

 

「あなた一人じゃ役不足よ。もう一人連れてきなさい」

 

「いうに及ばず、すでに参戦している」

 

 と、今度は別方向から雪玉の豪速球が一つ投げられる。幽香はそれをひらりと躱すが、雪玉はいつの間にか構築されていた観客席に突き刺さって雪煙をまき散らした。キャーキャー悲鳴上げてるけど、みんな大丈夫かなぁ。

 

「そうね、やっぱりあなたたち二人でないと張り合いがないわ」

 

「お前は幽々子様の手を煩わせるまでもない。私が仕留める!」

 

「藍~? これはただのお遊びで、私だって参加したいのよ~?」

 

「……はっ、そういえばそうでしたね! というわけでやはり二人掛かりで攻めさせていただくぞ!」

 

 幽々子は霊力で雪玉を打ち出し、藍はどこかで見たような投球フォームで投げる。幽香はそれを躱すか、持ってきた傘で撃ち返す。ちなみに、傘などの武器は相手に当てたりしないのならよしという事になった。

 

「僕は完全に蚊帳の外だ……あれ?」

 

 ふと横を見てみると、きれいにドーム型の雪の城からこちらの陣地の門まで伸びる足跡が。それも三人分。僕がそっちのほうに注目すると、足跡の動きがぴたりと止まった。

 

「……」

 

 ぽいっとその足跡の上あたりに向けて投げる。

 

「ぷぺぇっ!」

 

 空中で雪玉が砕け、透明の幕がはがれるかのように無くなって、いつもの三人が姿を現した。

 

「サニー、残念だけどアウトね」

 

「うう……ばれないと思ったのに」

 

「ばっちり足跡が残ってたけど……」

 

「「嘘っ!?」」

 

「知ってたわ」

 

 完璧な作戦だと思い込んでいた二人と、対照的にすまし顔のルナチャ。足跡のことぐらい考えてほしい。というかルナチャ、ちゃんと伝えればよかったのに。

 

「サニー、あなたの仇はここで取るわ!」

 

「私は死んでないわよ!」

 

「ここで引いたら三妖精の名が廃るっていうもの。お兄さん、いくわよ」

 

 残りの二人が雪玉をもって構える。二対一とはいえ相手は妖精。日ごろ鍛えてあるこの体力なら負ける気がしない。

 

「くらえ―――あひゅん!?」

 

「えっ? むぶっ!?」

 

 と、思わぬ角度から飛来してきた大量の雪玉の一つがスターの頬に直撃。飛んできた方向を見ようとしたルナチャの顔面に雪玉がクリーンヒットし、二人そろって倒れる。僕が追加の雪玉を投げる前に三人は全滅となった。

 

「そ、そんな二人とも……ぶぱぱぱぱっ!!?」

 

 先に脱落していたサニーが立ち上がって二人をおこそうとしたら、まだまだ飛んでくる雪玉の餌食になって一瞬でサニー型の雪だるまに変身した。

 

「こっちに飛んでこなくてよかった……」

 

 雪で作った防塁の陰で三人の惨状を目の当たりにしながら、もう一度あの三人の戦いを見やった。

 

「やっぱり、これぐらい手ごたえがないとね!」

 

「ふんっ、ふんっ! くっ、あの傘、どんな耐久度だ!?」

 

「武器破壊を狙っているのなら、期待しないほうが良いわよ藍~?。さあ、今度は変化球、避けられるかしら?」

 

「あはははは、何ならあなたの額に打ち返してもいいのよ?」

 

 凄いことになってる。なんというか次元が違うんだけど。流れ弾から身を守るために、観客席側は各々が防御用の陣を築いているし。これ雪合戦だよね?

 

「ちょっと、いいですか?」

 

「あれ、鈴仙? なんでここに?」

 

 ディフェンスに回っていた鈴仙がなぜか壁の中から出て来ていた。

 

「姫様が『膠着状態になって彼が手持ち無沙汰になっているだろうから助力してあげなさい』……と」

 

「察しが良いね輝夜って」

 

 あの雪弾幕の中、他の陣地に一人で挑むのは何とも無謀というか。

 

「……妖精チームはあと二人っていうことですね」

 

「うん、攻めるなら今の内だと思う」

 

「では、私が能力で見えなくしますので……離れないようについてきてくださいね?」

 

 そう言って鈴仙が僕の手を掴み、瞳を赤く光らせた。

 

「だ、大丈夫かな。さっきあの子たちがおんなじ作戦でやってきて僕でも見破ったんだけど」

 

「行くのはあのドームですし、入り口までなら大丈夫ですよ」

 

 むしろ危険なのは流れ弾ですよと鈴仙は優しく言って、コッソリ不可視化作戦が発動されたのであった。

 

 

 

「なーんか変、なのよねぇ」

 

 気を利かせたつもりで鈴仙を行かせた輝夜は、雪の城の中でフラッグの前でのんびりお茶をすすっていた。例のごとくどこから持ってきたのかは謎である。

 

「んーそれってどういう意味なのかな?」

 

 こっちもこっちで焼いた餅を食べているてゐ。いつの間にか七輪を用意してその場で焼いて、醤油と海苔も用意して磯部餅を量産していた。もちろん輝夜も食べている。

 

「彼って、魔理沙とイチャイチャしているじゃない。なのにうちのウドンゲとも仲がいいのよねー」

 

「それが姫様のお望みだったんじゃなかったっけ?」

 

「そうなんだけどねー……なんだか、対等に扱っている感じがしているっていうか……ぶっちゃけ恋人と同然の付き合い方をしているっていうか……」

 

「それってつまるところ浮気?」

 

「彼ってそういうことする?」

 

 数秒間だけ、お互いに沈黙した。

 

「……しないね」

 

「……するわけないか」

 

 結論づけて、ずずーっとお茶を飲む輝夜。外の少年は人当たりが良く、人も良く、ノリも良い。妖怪だからと恐れず、差別もせず、対等な友人として接する。彼に好意を抱く人物は多く、魔理沙が彼と恋仲になった後は、むしろその座を奪わんと各々が行動をおこし始めている勢力が生まれたぐらいなのだ。

 つまり、外の少年をめぐる戦争、『異変』が現在進行形で行われているといっても過言ではない。もちろん当事者たちはそんなことは望んでないので、鈴仙の件――恋人第二号という超法的解決策が行われたわけなのだが……当然そんなことはほかの人物たちは知る由もない。波乱は水面下で起こりつつあるのだ。

 

「……戻ってきたら問い詰めようかしら」

 

「私も手伝うよ」

 

「お願いね」

 

 少女たち(幻想郷随一の長寿)は共謀する。一人は飼い兎の恋の行く末を見守るため、もうひとりは好奇心といつもの悪戯心を満たすために。

 

 

 

 私が彼の恋人として受け入れられる前と後とで、変わったことはそれほど多くはない。けれど、確かに変わっていっていると感じている事も確かに存在する。

 魔理沙とは最初はギスギスすると思っていたけれど、出てくるのはあの人の話題ばかり。お互いに彼のどこが好きなのか言ったり、今まで見せていなかった一面を報告し合ったりと、関係は良好だ。むしろ今までより良くなっていってる気がする。

 

(本当、すごい人ですよね)

 

 曲者ぞろいの幻想郷であるけれど、本人は意図していないと思うけど、そのあたりの関係性を構築していっている節がある。周りにも多少の変化を与える気質、ある意味では大妖怪ですらもなしえないことをやってのけているのだ。

 

「――鈴仙? おーい」

 

「はっ、な、なんでしょうか?」

 

「もう着いたんだけど……」

 

 そんな思案にふけっていると、いつの間にか相手陣地に到着していた。そんなに距離があるわけでもないので当たり前ではあるが。

 

「ごめんなさい。それじゃあ能力を解除して……」

 

 波長を操って不可視化を解除。狭いドーム内では弾幕を張られたら意味がないし、お互いに見えていない状態では同士討ちをしてしまう可能性もあるからだ。

 

「私が攻撃を担当します。雪玉の補充は任せますね」

 

「うん、妥当な役割分担だね」

 

 失礼であるけど、妖怪と人間とでは身体能力に差がありすぎる。それぞれの役割に集中したほうが効率いい。

 

「ふっふっふっ……のこのことやって来たわね、美味しそうな人類さん」

 

「僕は食べてもおいしくないよ!」

 

 ドーム内に響いたわざとらしい笑い声と決まり文句に、律儀に返す彼。

 

「飛んで火に入る夏の虫……って、私が夏のことを口にするものじゃないわね」

 

 ドームの奥から堂々とレティが現れた。異変では霊夢たちにボコボコにされたらしいけれど、すごい強キャラ感を出している。

 

「残念だけれど、妖精たちはみんなやられちゃったよ」

 

「ええ知ってるわ。屋上で見ていたもの」

 

「私たちはそう簡単にはやられないよ!」

 

 余裕綽々のレティと、自信満々なルーミア。

 

「あの子たちは私の配下の中では最弱……」

 

「配下認定されてる……知ってるのかな、あの子たち」

 

「配下って、あとはルーミアしかいないじゃない」

 

 五人チームであるから四天王と魔王という立ち位置は構築しやすいけれど、その場合三人の誰が最弱なのだろうか。

 

「まあ、結局ここで私たちがあなたを倒すから、関係はないのだけれどね」

 

「倒す? ふふふ……ここに入ってきた時点で、あなたたちはすでに敗北は決定しているの」

 

「うわぁ悪役……っていうより黒幕っぽい顔してる」

 

「黒幕ー」

 

 彼の発言にノリよくレティがそういうと、いきなり背後の入り口が、せりあがった雪によって閉じられた。

 

「閉じ込めただけで、私たちに勝った気になってるの?」

 

「ええそう、ここは私の籠。すべてがあなた達に牙をむくから……ね」

 

 目配せをしたレティに呼応するように、周囲の壁が震えて、いきなり雪玉が数発発射された。

 

「わっと!」

 

「っ!」

 

 持ち込んだ雪玉を妖力で指先に浮かび上げさせてその玉を撃ち、雪玉同士に衝突させて軌道を変えた。

 

「……なかなか面白いことするわね」

 

「周りすべて雪なのだから、全部が素材となるじゃない?」

 

「どうだ! すごいでしょ!」

 

 自分ごとのように胸を張って誇るルーミア。

 

「うーん……かなりピンチ」

 

「でも、ひくわけにはいきません。雪玉の補充、お願いします」

 

 かくして、雪のドーム内の戦いが幕を開けるのであった。




 何気に動かしにくいキャラクターがルーミア。口調とか性格とか、つかみどころがない感じ。レティはお姉さん系って決まってるんだけどね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。