宴も終わり、夜が明けると広間には炎のゴブレットが置かれました。出場を希望する生徒はあそこに自分の名前を書いた羊皮紙を入れるわけです。
今回は17歳以下の生徒がうっかり名前を放り込まないようにダンブルドアによって年齢線が引かれています。
ゴブレットの周りには常に生徒が何人かいて、誰が名前を入れに来るか見物しているようでした。コリンは校内新聞に載せるようなのかわかりませんけど、カメラを構えていっつも待っています。
ボーバトンやダームストラングの生徒は参加する気まんまんできているので堂々と名前を入れに来ます。ホグワーツの生徒はせめてコリンの目は逃れようと、彼のいない時間に来ているようです。
とはいえセドリック・ディゴリーのような人気者は周りの目なんか気にせず、仲間たちに讃えられながら名前を入れています。
「あーあ。なんとかしてあの年齢線を突破できないもんかなあ?ねえ、ソフィアちゃーーん」
「うるさいですね……」
ぼんやりとゴブレットの炎を眺めていたら、シャイマが猫のように寄ってきました。うざいです。
年齢線を越えようとする生徒はたくさんいました。我らがフレッド、ジョージも老け薬で突破を試みましたが、全員失敗。医務室送りです。
私なら多分名前をいれられるんじゃあないでしょうか?なんせ文字通りの人でなしですからね(そろそろくどいでしょうか)まあやりませんけどね。
「あたしめっちゃ自信あるなぁ。ハーマイオニーが歴代の試練を教えてくれたんだけど、どれもこれもエキサイティングだよ。ねえソフィアちゃんも出たくないの?」
「だから出ませんってば!」
「ソフィアちゃんだって自信はあるでしょ?」
「私はお金も名誉も興味ありませんから」
「ワクワクしたくないの?」
「ワクワクはしたいですけど」
シャイマは「ほら〜〜」と言ってますますだる絡みしてきます。すべての生徒に言えますが、昨日からずっとお祭り気分でみんな浮足立ってます。全くもう。
「ちょっと、邪魔ですわ!」
私を抱きしめようとするシャイマと格闘していると急にえらく高圧的な態度で怒鳴られました。声の主に視線を向けると、ボーバトンの生徒でした。
品のある顔立ちはツンケンしていてトゲがありますが、金髪縦ロールと相まってフランス人形のように可愛らしく思えます。
「全く、伝統あるホグワーツの生徒がどんなものかと思ったらこれとはね。失望しましたわ」
「なにをーッ。あたしはワガドゥーの留学生でもあるんだけど?!……そういえばなんでワガドゥーは参加してないの?」
「シャイマ、ほっときましょ」
「ちょっと、そこの小さいの。あなたマルフォイの家の子でしょ?」
私はちょっとだけびっくりしました。国内の純血一家ならだいたい顔見知りだし何人か海外にも知り合いはいます。けれども彼女は全く見覚えがありませんでした。
「ええそうですけど…」
「やはりね!ヴォルなんとか卿の関係者は、わたくし必ずチェックしていましたの。ちょうどいいですわ。私はセリルダ・グリンデルバルド…。あなたみたいな小悪党の家系が一番嫌いですの!!」
「はあ?」
私は思わずぽかんと口を開けてしまいます。うちが小悪党の家系であるかは賛否両論あるところですが、問題はそこじゃありません。いきなりどうしたんですか、この人は。
「闇の魔法使いカッコ笑いに組する魔法族の恥さらし…わたくしはそういう奴らを駆逐するためにここに来たんですのよ!」
「ちょっと待ってよ、あんた三大魔法学校対抗時合に参加するために来たんでしょーが!」
シャイマがすかさずツッコみます。しかしセリルダは全く怯みません。
「それはわたくしの大いなる野望の通過点に過ぎませんの」
私も思わず呆れてツッコませていただきます。
「はあ………。っていうかあなた、グリンデルバルドさんでしたっけ。ひょっとして親戚に
「そう!わたくしの家名は汚されているんですの。その世紀の大悪党にね。わたくしはその汚名を払拭すべく、かならずこの大会で…勝つんですのッ!!」
セリルダはそういうとツカツカとゴブレットまで歩いていき、無駄にターンして名前を投げ入れました。周りにいた生徒たちはやたらと声量のでかい彼女の口上のおかげでこちらに釘付けです。やめてほしい。
「そもそも選ばれなきゃ意味ないでしょ……」
「笑止ですわ。このボーバトンにおいて、わたくし以上に代表にふさわしい人間などおりません」
「へえ?あたしはフラー・デラクールが本命って聞いたけど…」
「ふん。あんな花を摘みに来たと勘違いしてる女、わたくしの敵ではございませんわ」
セリルダとシャイマが向き合います。なんだかボーバトンの生徒も何事かと足を止めてみているようです。セリルダが母校でも終始この調子だとしたらホグワーツの名物生徒シャイマと比肩するほど有名人に違いありません。
耐え難い羞恥心。そばに立ってるだけで仲間と思われそうです。私はそっとその場を逃げようと背中を向けました。
「いい事、マルフォイの小童!わたくしはヴォなんとかモート卿を排出して恥じ入りもしないこの学校も、未だに馬鹿げたマークを残してるダームストラングもすべてぶっ壊したいほどに闇の魔法使いたちが嫌いでしてよ!断言しますわ。この大会で必ず啓蒙の足りない愚かな皆さんを蹴散らしてご覧に入れますわ!」
「あ…そ、そうですか…」
「では、ごきげんよう」
嵐のような女でした。シャイマですらやや飲まれ気味です。
「おもしろかったね」
遠巻きに眺めていたルーナがのほほんと言うのが聞こえました。
そのことをドラコに話すと、ドン引きしてました。ちょっとレアな表情です。
「ふざけた女だな」
「あまりの勢いに何も言えませんでした…」
「まあでもそんな変なやつがゴブレットに選ばれるはずがないさ」
「ふ…気をつけたほうがいいですよ。廊下でエンカウントした瞬間喧嘩をふっかけられるかもしれませんから…」
私はもう彼女に会わないよう、水色の制服を見たらさっと隠れるほかありません。戦略的撤退です。
「ホグワーツからは誰が選ばれるんでしょうね」
「さあね。スリザリンから出たら手放しで応援できるんだけど」
「ダームストラングならクラムは確定ですよね」
「そりゃそうだろう!そうだ、今度彼らとちょっとしたお茶会があるんだ。ソフィアもおいで、ためになるよ」
「まあ嬉しい」
嘘です。兄以外に興味がないので。
「じゃあ日取りが決まったら連絡を入れるよ」
そう言って私と兄は別れます。はあ。ほんとにスリザリンにしておけばよかった…。
グリフィンドールに帰るとネビルが困った顔してバッジを眺め、私が急に視界に入ったせいでそれを取り落としていました。さっと拾ってネビルに返してあげます。
「どうぞ」
「あ、ありがとう…」
「なんですか?これ」
「ハーマイオニーがなんかへんな活動を始めてて、無理やり会員にされちゃったんだ」
「は…?へんな活動?」
「しもべ妖精の権利を守る…とからしいけど」
「わあ、へんな活動ですね」
「とにかくソフィアも気をつけて…」
私はネビルにお礼を言ってハーマイオニーを避けるようにすみのテーブルに腰掛けました。
しもべ妖精の権利…これはマネ妖怪の家庭について考えるようなものです。つまりは“ない”。いや、ないというのはまた違いますか。彼らにとっての権利とはしもべをやる事なのですから。
ハーマイオニーの言っていることが殴る蹴る呪文をかけるタバコの火を押し付けるなどでしたら、まあ言ってることもわからなくないのです。でも…彼女の意見はあんまり聞きたくありませんね。長くなりそうですから。
数日後、ダームストラングの船にお呼ばれしたのは、ドラコとノット、そしてスリザリンの上級生二人と女子が何人か、そして私だけでした。多分あんまり大勢入れないんでしょう。
案内役の生徒はルイス・モンタギューと名乗りました。彼女は流暢な英語で挨拶しました。
「親愛なるスリザリンの生徒諸君。私はルイス・モンタギュー。僭越ながら皆さんの案内役を任されました。どうぞよろしく」
どうやら今回参加しているスリザリンの六年生、グラハム・モンタギューの親戚のようですが、彼とは似ても似つかない痩身です。ブラウンの髪をひっつめていて、なんだか怖い雰囲気です。
船に上がると、見かけより全然広かったです。ただし人がギュウギュウに詰まっているせいか、どことなく臭いような気もしました。寒いところの船だからか、気密性が高いのでしょう。彼らの制服もなんだかモコモコしてますしね。イギリスも10月末は結構寒いです。私もあの制服ほしいな。
ひとしきり案内が終わるとちょっと広めの部屋に私達を通してくれます。そこにはゆったりとしたソファーが用意されていて、お茶の用意がされていました。
「どうぞくつろいでください。私は他のものを呼んできますので」
ルイスはそう言うと私達を残して行ってしまいました。私は一息ついてドラコの隣に座ります。
「なんだ、えらく無愛想なやつだったな」
「緊張してたんじゃないですか?」
彼女、親戚のはずのグラハム・モンタギューと会釈一つも交わさずに淡々と場所の説明をするだけでした。本当に淡々と。寒い国の人は表情に乏しいという偏見を強固にしそうなほどです。
ソファに腰掛けたドラコはなんだか異常にそわそわしていました。
「どうだろう、彼は来るかな…」
「ん?知り合いでも?」
「そうじゃなくて…」
ドラコがなにか言おうとしたときドアがあき、ルイスを先頭に何人かダームストラングの生徒が入ってきました。するとドラコが目を輝かせて立ち上がります。
一番後ろに見た顔がいますね。そう、ビクトール・クラムでした。
「えー、みなさん…ヨウコソ」
クラムはたどたどしくそう言うと、一人がけのソファーに腰掛けました。
「通訳は私とドミニクがするので気軽に話してください」
ルイスは素っ気なく言うとモンタギューのそばに座りました。私の隣にはもう一人、ダームストラングの男子生徒が腰掛けました。
「私がドミニクです。ドミニク・ブラッドレイ」
「ああ、はじめまして。僕はドラコ・マルフォイ」
兄はすぐに握手してご挨拶。えらーい。私はドミニクと挨拶しようとして少し躊躇ってしまいます。なんだか目があったとき妙な違和感がありました。明確に言葉にはできないような違和感が。
「こちらは妹のソフィアです。どうぞよろしく」
すかさずドラコが助太刀です。ありがとう。妹と聞いたドミニクは細い眉をすこしくいっと上げました。
「妹か、昔は私も兄弟が欲しかった」
「はあ…」
なんだか妙に嘘っぽいです。高い鼻梁に細い目。狐を連想させるような顔つきのせいでしょうか?
「ミスター・ブラッドレイもゴブレットに名前を?」
「ええ。ダームストラングの生徒は全員入れる決まりでね。もっとも…みな本命はクラムだと」
「ああやっぱり、そうですよね」
ドラコはチラチラとクラムを見つめながらキラキラした目をしています。
「彼は最高のクィディッチプレイヤーだ。彼が出場するのをみんな期待している」
「そんなことない」
急に会話に横槍が入りました。
「少なくとも私は、ビクトールが出場したらガッカリに思うわ。ゴブレットが真に素質のある生徒を見抜けなかったということだから」
スリザリン生も英語かわからないはずのダームストラング生もその声の主を見つめました。ルイス・モンタギュー。こっちの会話を通訳しながら盗み聞きしていたとは、器用ですね。
「そうかな。クラムはすごいじゃないか。みんな認めてる」
「いいえ。私はあなたこそ代表にふさわしいと思ってる」
「まいったね…」
ドミニクはちらっとクラムの方を見ました。クラムは状況をなんとなくわかっているようで、ちょっと肩をすくめました。もしかしたらルイスのこういう言動はいつもの事なのかもしれません。
「私でいいなら、ルイス。君だっていいと思うが」
「もちろん。選ばれる自信があってこの船に乗ってるんだから。ドミニク、観光客向けにトークなんてあなたらしくないわ」
「わかった、わかったよ。ルイス、お客さんがいるのにピリピリしないでくれ」
ドミニクがそう言うとルイスも鉾を引っ込め、自分の担当の会話に戻りました。よく何事もなかったかのように戻れるな!と私はびっくりしました。
ドミニクはクラムになにか声をかけました。何語?
するとクラムが側によってきて、ドラコは飛び上がりそうになっていました。
「はじめ、まして。ビクトールです。ビクトール・クラム」
「ぼ、ぼくはドラコです!マルフォイの」
「よろしくおねがいします」
クラムは拙い英語でドラコと握手しました。私もついでに握手です。大きな手で、箒ダコがてきてます。ドミニクはクラムの言葉を翻訳してくれました。
「ルイスのことはすみません。彼女はいつもああで。……えー、僕が代表になるとみんな言いますが、ダームストラングには素質のある生徒がたくさんいますから、少し気まずいです…」
「スター選手にもそういうのあるんですね」
「…稀に。いや。よくあります……ドミニクや仲間しか知りませんが、僕は意外と気が小さいんですよ」
クラムは微笑んでいました。そんなトークをしながら大舞台に立ってるのは気が小さいとは言わないと思うのですが、そのスター仕草にドラコはメロメロです。(おもしろくないです)
「ワールドカップでの活躍、本当に素晴らしかった…!僕は絶対にクラムが優勝するって思っています。いや、賭けてもいい」
「ありがとう」
お礼だけクラムがちゃんというものだから、余計ドラコは嬉しそうです。
「お二人は仲がいいんですね」
「ええ。クラムとはすっとベッドが隣で」
「私にもそういう友達がいます」
「それじゃあ大事にしたほうがいい」
つつがなく茶飲み話に花が咲きました。クラムは寡黙なのかと思っていましたが、ドミニクと話しているときは普通の男の子のような笑顔を見せたりしてました。友達の前ではクィディッチのスーパースターではないんですね。
もうそろそろ夕食の時間というところで私達は退散し、それぞれの寮に戻りました。
私は談話室に帰った途端根掘り葉掘りダームストラングの様子を聞かれて疲れちゃいました。
一段落ついて、私は図書館から借りてきた神秘部に関する資料を広げました。うっすい冊子…もはや“枚”です。
神秘部への入省を考えている学生向けのパンフレットで、とても有益とは言い難い情報しかありません。
パンフレットにはサウル・クローカーの写真が載っていました。逆転時計を作り出した天才…彼もステュクス・ダイブ1942の写真にいました。ひょっとしたらステュクス・ダイブとは逆転時計に関する実験の一環だったのでしょうか?
しかしステュクスというのはギリシャ神話に出てくる冥府を流れる河なのです。
ステュクス・ダイブを文字通り受け取ると、冥府へ潜ること…つまりは死ぬことなはずなのです。
死。ああ、私には縁遠い言葉。
ステュクスの水は、神をも殺す猛毒と呼ばれる一方、不死をもたらす神水ともいい伝えられています。ひょっとしたら私はそこで産湯につかったのかもしれません。きっとそうに違いありませんね!!
問題はそんなもの存在しないという点ですが。
さて、神秘部には“死”を研究する部署があるそうです。
これまで出てきた要素から総合して考えると、私は神秘部の研究成果なのかもしれません。
ただこの説でもやっぱりおかしな点があります。
ではなぜ私はソフィア・マルフォイなのか?ということです。
神秘部とマルフォイ家には現在、全くなにも関係がありません。もし私が研究成果なのだとしたら、マルフォイ家に今預けられる理由なんてないはずです。
アブラクサス、やっぱりあなたがすべての秘密を握って死んでしまったのですか?
「おや、神秘部なんかやめとけやめとけ」
「魔法省に入るの自体やめたほうがいいぜ。うちのパーシーお兄様みたいになっちまうから」
突然後ろから双子に話しかけられ、うっかり椅子から転げ落ちそうになりました。危ない危ない、威厳が…。
「ちゃんと元通りになったんですね」
「実のところ、ちゃんと元通りかどうか俺達にはわからないんだけど…まあマダム・ポンフリーがいうならそうなんだろう」
「まあでも一つ学んだな。俺たち老けたらああなっちまうのかってね」
「パーシー・ウィーズリー。たしかこの前もクラウチさんの後ろに立ってましたね」
「ああ、カバン持ちのくせに偉そうにな」
ウィーズリー家の兄弟関係はどうやら深刻な亀裂が走っているようですね。クラウチ、失脚したとはいえ今年の国際魔法協力部は大変忙しく、脚光を浴びたことでしょう。パーシーがイキる姿を想像するのは容易いですね。
「ご安心を。神秘部になんかいきません。単に好奇心ですよ」
「そうか。そりゃよかった」
そう言って双子はジョーダンたちの方へ帰っていきました。私は神秘部の資料を閉じ、傍らにおいてた日記を撫でました。
分霊箱もまた、死を退けるための手段の一つです。私という存在は人よりはこちらよりなのでしょう。しかし一体どうして?どうやって?
サウル・クローカーに会わなければなりません。なぜならあの写真に写っている人間は、彼以外全員死んでいるのですから。
さて、ゴブレットが参加者を選ぶのはいよいよ明日の晩餐です。ハロウィン。なにか起きずにいられない日です。
生徒たちは今か今かと煌々と燃え盛るゴブレッドを見つめています。フレッドジョージの賭けではたしかホグワーツ代表はセドリックが一番人気。アンジェリーナが二番でしたか。ボーバトンはフラーよりセリルダ ・グリンデルバルドが人気です。インパクトがありましたからね。ダームストラングはクラム一強ですので特に言うことはないです。
ダームストラング、ボーバトンの生徒たちも興奮気味にそれぞれの言葉で話してるので広間は賑やかです。
それに、魔法省から来たお役人方も楽しげに歓談していました。廊下の方にはしょんぼりとした顔でアンブリッチが立っています。たしかこの期間中、彼女はホグワーツに釘付けで警備を担当するとか、開会宣言で触れられていたような気がします。出世には遠回りですね。
「いよいよだね!」
クィディッチチームの上級生メンバーはハカのような掛け声でアンジェリーナを鼓舞しています。ロンはワックワクです。
「そうですかぁ。やっと始まりって感じですが」
「たっく!冷めるようなこと言わないでくれよ!」
じゃあ私に話しかけないでくださいよ!と思いましたが、今ハーマイオニーは変な活動にのめり込んでるせいでうっかり話し掛けづらくなってます。それで話しかけてくれるようになったということは、三年目にしてようやくロンにグリフィンドール生として迎えられたということでしょうか。
「さて…ゴブレットも頃合いのようじゃの」
ダンブルドアがそう言うと、広間の灯りがくり抜きかぼちゃを残し全て消えました。
生徒たちの興奮は緊張へと変わり、ゴブレットの炎がちらちら揺れるさまを固唾を飲んで見守ります。
ぼわ、と音がして青白い炎が赤く染まりました。そして空を舐めるように大きくなり、炎の舌先から焦げた羊皮紙がひらりと一枚おりてきました。
「ダームストラングの代表は…ビクトール・クラム!」
広間中から歓声があがりました。みんなクラムが好きですねえ。
歓声が落ち着いてきた頃、再びゴブレットから炎が上がり、二枚目の羊皮紙が吐き出されます。
「ボーバトンの代表は……フラー・デラクール!」
なぜですのー!と言う叫び声が歓声にまじって聞こえました。やはり前評判通りフラーが選ばれましたか。初めてみたけどかなりの美人です。そばを通ったレイブンクローとハッフルパフの男子生徒がとろんとした目をしています。
そうしていると、再びゴブレットの炎が揺らめきました。
「ホグワーツの代表は……セドリック・ディゴリー!」
各寮のテーブルから落胆の声が上がると同時に、それをかき消すくらいの歓声がハッフルパフから上がりました。ディゴリーは前々から生徒人気も教師人気も高い生徒でしたし納得です。
これで三人代表が出揃ったわけです。彼らは皆大広間の隣の部屋へ行ってしまいました。そこで試合についていろいろ説明を受けてるんでしょう。
「さて!これで代表選手が決まったわけじゃが……」
ダンブルドアが話を始めようとしたとき、ゴブレットが再び赤く燃え始め、炎が煌々と、天井まで届くほど燃え上がりました。
そして突然、その炎の舌先から羊皮紙を五枚も吐き出したのです。
ダンブルドアが杖をふっと振るい、羊皮紙を回収しました。
そして一瞬の間をおいて、名前を読み上げました。
「ルイス・モンタギュー、ドミニク・ブラッドレイ、セリルダ・グリンデルバルド…ハリー・ポッター…ソフィア・マルフォイ……」
大広間が混乱に飲まれ、静寂に包まれました。
ハリーが「は?」という顔をして、私を見つめてきます。私も「え?」という顔をしてハリーを見つめました。
「名前を呼ばれたもの、前へ」
「…………へ?なに…?なんて?」
私の珍しく間の抜けた声に、ジニーがちょっと吹き出しました。