兄さえいればいい   作:ようぐそうとほうとふ

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08.第二の課題

 

 ハリー・ポッター、禁断の恋?気になるダンスのお相手はソフィア・マルフォイ

 ハリー・ポッター(14)はクリスマスダンスパーティーで同校代表選手のソフィア・マルフォイ(13)を相手に選んだ。

「本当にびっくりしました。まさかマルフォイ家の令嬢をダンスの相手に選ぶとは。きっとポッターは相手が年下なのをいい事に、なにか汚い手を使ったのではないでしょうか?」そう語るのはポッターをよく知る男子生徒、Dさん。まさかハリー・ポッターはハーマイオニー・グレンジャーの失恋のショックでおかしくなってしまったのだろうか?…ハーマイオニー・グレンジャーとクラムの記事へ続く…

 

 

 

 おやまあ。私とハリーの記事はたったこれだけ。ハーマイオニーとクラムの熱愛報道の十分の一くらいしか書かれてないじゃありませんか。

 日刊予言者新聞は…というか記者のリータ・スキータはハーマイオニーに夢中で、ハリーや私や他の参加者なんて今は眼中にないみたいですね。

 

「ソフィア、ご機嫌みたいだけどどうしたの?不気味よ」

「んふ…いえ、このDさんって人はきっと兄さんなんじゃないかって思って」

「え?……ほんとだ。それっぽい」

 ジニーは記事を読んで少し首を傾げます。

「でも記者ってダンスパーティーとかには呼ばれてないよね?なんでこんなにすぐかけたんだろう」

「兄さんがショックのあまりタレコミのフクロウでも送ったんじゃないでしょうか?おーっほっほっほ」

「うわ、マルフォイっぽい」

 

 私はあのダンスパーティーでドラコを叩きのめした気になっていました。だって兄さんったらあのあとどこかもやっとした顔で踊っていましたもん。

 

「リータ・スキーターって記者は最悪よ、ソフィア。気をつけてね」

 マリアが寝ぼけ眼で言います。マリアはシェーンに頼み込んでパーティーに出席していました。

「ええ、大丈夫ですよ。私には記事になるほど面白い要素なんてないんですから」

「そうじゃなくて、あることないこと書くんだよ?ほらみて…」

 マリアは第一の課題が終わったあとの特集記事をスクラップ帳から取り出しました。クラム、ドミニク、ハリー、燃えてる私の写真がでかでかと載っています。(そ、そんな…なんで日刊予言者新聞までこんな無様な私を…?)

「ハリーについてはハーマイオニーが好きとか書いてるし、クラムについてはほら…ドーピング疑惑とか言うし。ドミニク様の家族のこととかもでたらめだし、ソフィアについてもほら!親のコネで情報をもらってたとかズルしたとか!」

「いや、それは事実ですが…」

「え?!う、うー!まあソレはおいといて…とにかくひどいでしょ?憶測でいろんなこと書いてさあ」

「マリア…ドミニク・ブラッドレイのファンになっちゃったの?」

「え……うん。かっこよくない?」

「面食いですね」

「うるさいなあ!」

「ま…ハリーがハーマイオニーを好きって書いてる時点でもう全部デタラメよね。なんでみんなこんな新聞買うのかしら」

「娯楽がないんですよ」

 

 

 たしかに、リータ・スキーターはデタラメしか書いてないように思えます。ダンスパーティーについてはドラコが情報提供者で間違いありません。ハリーやハーマイオニーについては読者が好む刺激的な内容を嘘たっぷり、その上過激にしてお送りしてるみたいです。

 ですがこの私とローランサン・ザバツキの関係は外部の記者が簡単に手に入れられる情報とは思えません。

 マルフォイ家とマルフォイ農園の主が繋がっており、さらに彼がホグワーツに来ているなんてそう簡単に調べがつくはずがありません。そもそもマルフォイ農園自体が表に姿を現してないのですから。マルフォイ家は功績以外は秘密主義です。

 つまりリータはちゃんと私の周辺取材をしているということになりますが、周りを嗅ぎ回る記者を父上が快く思うはずもありません。

 残る可能性は私とザバツキが密談しているのをみた…とかでしょうか?一体どうやって?それもまた誰かのタレコミでしょうか。

 

 さて、ドラコはというと「兄妹で踊るのは」といった手前私がハリーと踊った件に関していきなり怒ったりなんかはできないようでしたが、苦虫を絶賛噛み潰し中ですという顔をしていす。

「どうでした?パーティー、楽しかったですか?」

「ああ。……ソフィアは?」

「超楽しかったですよ」

「………ソフィア、なんで…ポッターなんかと?」

「ハリーは同じ寮の頼れる先輩ですから、踊るなら彼とと思っただけですよ」

 嘘だ。とドラコの表情が言ってます。私があてつけでハリーを誘ったなんてこときっとドラコだってわかってます。

「…ああ、そう。楽しかった、そりゃいい!…でも……」

「でも?」

「ポッターだけはやっぱりだめだ!」

「あら、だって兄さんと踊れないんですもの。しかたなくないですか?」

「それは……ッ、そうだが!でもソフィア、君は別にポッターと踊りたいから踊ったんじゃないだろ」

「あら、兄さん。そんなふうに私の気持ちを勝手に決めるなんて不躾じゃありませんか?たしかに兄さんと踊れてたら誰かを選ばなくっちゃってなりませんでしたけど」

 ドラコは何かを反論しようとしますが、結局それを飲み込みます。

「その言い方は意地悪だ、ソフィア」

「意地悪したくもなります!」

「……はあ……いつからこんな妹になっちゃったんだ?グリフィンドールに入ったせいか?」

「さあ。どうでしょう。もとからこうなのかも」

「あ…たしかにそれはありそうだ」

「は?!に、兄さん私をそういうふうに見てたんですか?!」

「いやだってソフィアはめちゃくちゃ計算高いし…」

「ショックです…!!」

 

 とにかく、ハリーと踊ってみたのは結果的には良かったというわけです。ドラコの何かを言いたいけど言えないあの顔は得も言われぬ優越感がありました。

 

 

 一方で私とハリーが付き合っていると邪推する愚かな生徒もおり、そんな人たちの冷ややかな視線とからかいはほんの少しだけ不快ではありました。

 しかしそれもクリスマス休暇が明ける頃にはリータ・スキーターのハーマイオニーの記事でだいぶ風化されてしまいました。更に学期が始まるやいなやハグリッドの中傷記事も出され、リータの興味はどうやらホグワーツスキャンダルにシフトしていったみたいです。やれやれ。

 そのせいかハグリッドは体調を崩し、魔法生物飼育学の講師はまたもザバツキが入ることになったようです。

 

 ザバツキは新学期初の授業で私のドラゴン戦略がいかに正しかったか一時間も語り尽し、私は這いずり回っただけなのに称賛されました。本当にやめてほしかったです。

 魔法生物飼育学の授業が終わったあとはみんなすぐにお風呂に入ってからご飯に行きます。堆肥臭いですからね。

 私はザバツキに絡まれたあと一人遅れて校舎に戻りました。第二の課題についてはザバツキは何も知らないそうで、ホグワーツ内に存在する魔法の罠かダンジョンを利用するのでは…と熱く語っていました。水中人だと教えた途端お節介が止まらなさそうなので受け流すことしかできません。

 

 

 夕日は沈みかけていて、城は巨大な影のようになってます。ハグリッドの小屋から坂道を登ると岩のモニュメントがあります。そこにライラックのローブを着た見慣れぬ人物が座っていました。

 

「おや。おやおや、これはこれは」

 

 その人物は私を見ると顔を歪ませそう言います。その気取った声でやっと誰だかわかりました。乱れたブロンドの髪と眼帯をつけているせいで以前のイメージとずいぶん違いますが、ギルデロイ・ロックハートです。

 

「ソフィア・マルフォイ」

「ロックハート先生、お久しぶりです」

 ロックハートはしばらく合わないうちにずいぶんと悪賢そうな顔をするようになりました。チャーミングの押し売りだった頃と比べると苦労したんでしょうか?商売道具の顔に傷がついたせい?

 

 

「先生はよしてくれよ。わたしはもう教師でもなければ文筆家でもないのだからね」

「あら、冒険はやめてしまったんですか?残念ですね」

「残念かい」

 

 もちろんそんなこと思ってません。元からないものに想いの馳せようはありません。しかし先生でもなんでもないならばなおさらなぜこんなところにいるのでしょう。

 

「思えば君ははじめからわたしの嘘を見抜いていたね」

「なんのことでしょう」

「いやはや、やはり末恐ろしい」

「それよりもロックハートさんはなぜこんなところに?今はそう簡単に部外者が入れないはずですが…」

「部外者とは失礼だね!ダンブルドアに呼ばれてたのさ。それで懐かしきホグワーツを眺め、感傷に浸ってたというわけ」

「あなたが、ダンブルドアに…?」

「ああそうだとも。なに、たしかにダンブルドアにも手助けが必要な時というのはあるようだ」

「一体何の手助けに?」

「君に教えるわけには行かないな」

 

 ダンブルドアのお使いでもしてるのでしょうか。どちらにせよ、怪しいことこの上ないですね。ロックハートに手助けを頼むなんて、どう考えても正気の沙汰ではないと思いますが。

 

「…まあ、お元気そうで何よりです。それでは」

「三大魔法学校試合、頑張って」

 

 

 …なんて、思ってもないのによく言えたものです。まあこれはブーメランなのですけどね。

 

 

 さて、私は図書館でトム・リドルの日記とだべるのが習慣になりつつあります。私はもうブリジット・キンブリーを求めてページをめくることを諦めています。

 人に見られると不味いので、必然人のいない棚…例えばマグル関連書籍のコーナーに陣取ることになります。

 そこだったらおもむろに昨日出会った奇妙な来訪者たるロックハートのことだって秘密の日記に相談できます。

 

 

ダンブルドアのつかい…ね

 

いかにも嘘っぽいですよねえ。でもそうでもなければ校内に彼がいるはずもないです

 

迂闊に人には頼めない事を頼んでるんだろうが…自分に関することではないだろうね。彼は秘密主義だから。かと言ってハリー・ポッターに関することとも考えにくい…ならば僕に関することかな

 

それこそ自分でやるんじゃないですか?……それにロックハートがあそこにいた理由もよくわかりません。城を見て感傷に浸る…とか言ってましたけどあそこ眺めよくないですし

 

君を待っていたとか?

 

なんで私を。それになんか私と会って驚いてましたよ?

 

ふうん。じゃあ言ってることは全部本当で、すべてを言ってないだけなんじゃないか?

 

あなたと話しててもなにか進展したようで結局何も進展してないですね

 

仕方ないだろう。僕は君がここに書いたことしかわからないんだから。伝え方が悪いんじゃないか

 

あなたがほんとにここにいてくれたら引っ叩いてあげるのに

 

おあいにくさま

 

 

 ロックハートはあそこで何をしていたのか、彼が調べていることは何なのか。ゴブレットに呪文をかけた人物についてですらわからないことまみれなのに、またも新たな謎がわきます。

 私はこう見えて面倒くさがりなのですよ。すべての真相に勘付きながら、にやにやと後ろでほくそ笑むキャラじゃないですか。そろそろ謎解きなんてほっておいて………あ、そうでした。代表選手だから結局戦わなきゃいけないのでした。

 

 

 なんてことをしているうちに、もう第二の課題の日が迫っていました。ドラコは私の身の安全を気遣いつつ、やはり勝利を期待しています。けれども私は望まぬ名声にはうんざりなのです。

 他の参加者はおそらく(卵を得られなかった方々もなぜか)次の課題に向けての準備を進めているようです。寒中水泳にやる気満々とは勇ましいことで。

 

 ベッドから起きてぼうっとします。いつもの夢。あの河原の夢。私にとって何を意味するのか、言葉にはできないけれど漠然と心で理解してきたような、やっぱり大まかな形しかわからないような。そんな気がします。

 

「ソフィア」

「はい?」

 

 ジニーが後ろからぎゅっと私を抱きしめます。

「大丈夫?」

 

 大丈夫?初めてそう聞かれました。寝起きの私ってそんなに不機嫌ですか?…まあ不機嫌と言えなくはないですね。

「今日は第二の課題本番ですしね。緊張します」

「嘘でしょ」

「はい」

 ジニーはもっと深いところについて聞いてるんですよね。わかってます。ええ、私はありとあらゆるところで敏感になったり、鈍感になったりしているのです。

 

 

 さて、朝起きて広間で寮生からたっぷり激励をもらった後、例のコートを羽織って外に出ました。生徒たちはみんな湖に誘導されて小舟に乗ります。

 そういえば朝食の席でドラコを見かけませんでした。これから棄権するとはいえ、ドラコからの声援次第では頑張ろうかなって気にちょっとはなったかもしれないのに。まあそれでもやっぱり水の中に潜るなんてゴメンです。

 

 湖の中心に建てられた櫓へ行くと代表選手たちは私以外全員スタンバイしてました。みんな水着を着てますね。卵を手に入れられなかった面々も準備万端じゃないですか。不正があったに違いないですね。

「おはよう、ソフィア。……普段着?水着は?」

 ハリーが寒そうにして挨拶してくれました。ハリーも無事卵の謎を解いたんですね。あぶくだま呪文でも習得したんでしょうか。頑張り屋さんです。

 

「私がこんなクソ寒い中、水に入ると思います?」

「えっ…」

 ハリーは面食らいます。参加する気がハナからないというのは流石に予想外だったみたいですね。

「でも…それは……えっと…ソフィア、落ち着いて聞いてほしいんだけど」

 

 

「ごきげんよう、諸君!」

 

 そこでダンブルドアがマイクに向かって朗らかに挨拶しました。ハリーも私もそちらに向きます。

 

「諸君らは昨晩のうちに最も大切なものを奪われた。第二の課題ではそれらを取り戻さなけれらならない…」

 

 大切なもの?ないですねそんなもの。

 貴重品なんて替えが効きますし、もしあの日記が盗られてたとしても沈んだままのほうがみんなのためです。

 ダンブルドアがまだ話しているのにもかかわらず、ハリーがヒソヒソ話しかけてきます。

「ソフィア、マルフォイに会った?」

「へ?いえ…姿が見えませんが…お腹でも壊してるんでしょう。私を激励しに来ないなんてありえませんから…いや……まさかこの前の喧嘩で私を見放して…?そんな。まさか」

「そうじゃなくて、ソフィア!僕も今朝わかったんだけど……」

 

「では、選手たちは一時間のうちに奪われたものを取り返すことでしょう。では3つ数えます……いーち、にー、さん!」

 

 大砲が鳴り、選手たちは次々湖に飛び降りました。

 

「盗られたのは大切な人なんだよ!僕はロンを奪われた…!」

 

「は?」

 

 私は思わずダンブルドアの方を向きました。いつまで経っても湖に入らない私達にブーイングが吹きすさぶ中、ダンブルドアのきらきらとしたブルーの瞳が静かに私を見据えていました。

 そういえばはじめてこの老人とまともに見つめ合った気がします。ってそうじゃなくて。

 なんちゅーことをしてくれてるねん、と。

 

 ダンブルドアの監督のもと、死人が出るようなことはまずないはず。けれどもドラコをこんな冷たい水の底に拉致したということが許せません。

 たとえ、たとえドラコが無事でもそんなの助けに行かざるを得ないじゃないですか!

 

「なるほどわかりました…」

「だ、大丈夫?準備はできてるの…?」

 ハリーはオロオロしています。私は額に当てた手をどけて周囲を見回しました。まあなんとかなりそうです。

「なくとも問題ありません。私はボートに乗っていくので」

「え…」

「ハリーはお先にどうぞ」

 ハリーは戸惑い気味でした。しかし結局何かを口に含みながら水に飛び込みました。

 

 私はボートを1艘持ってきて湖の真ん中に向かって漕ぎ出しました。観客は私の行動にブーイング、というよりは戸惑いの声を上げています。私はボートを漕いで漕いで、雑音の聞こえない所で止めました。

 

 水中人の住処がどこにあるかなんてわかりませんが、代表選手たちがどこにいるかくらいならわかります。杖を水面に差して静かに待ちましょう。あら、なんで私こんなことができるんででしょうかね?

 さて、生き物が密集している場所はだいたいわかりました。

 あとはそのまま湖にダイブです。やむなく。本当にいやいやで。

 

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