第一の課題 選手2名がドラゴンから卵を奪い合うゲーム。勝者にのみ第二の課題のヒントが与えられる。凶暴なドラゴンの攻撃をかわしながら相手より先に卵を盗み出さなくてはいけない。選手同士の魔法の打ち合いも想定されるが、ほとんどの対戦で選手はドラゴンに手一杯で選手同士の争いはなかった。
ハリー・ポッターの箒呼び寄せ戦術はハグリッドによる課題のリークから紆余曲折を経て考え出したものらしい。クラウチの介在はなし。
第二の課題 選手それぞれが水中人のテリトリーに囚われた人質を救出するゲーム。卵のヒントについてはほとんど意味がなく、全員が前日までには課題の舞台を知っていた模様。水中人とダンブルドア間で取り決めがあったのか、彼らの妨害は大してなかった。しかし、ビクトール・クラムが脱落。そしてソフィア・マルフォイも人質は救出したものの自身は溺れ、救助される。
ハリー・ポッターは卵を開けるヒントをパーシー・ウィーズリーからもらい、エラ昆布はクラウチからもらったという。パーシーはクラウチの息がかかってる。
第一の課題と比べると、第二の課題は求められる魔法の技量が高い。故にクラウチが噛まざるを得なかったのだろうか?ハリー・ポッターを勝たせる意味。いや、死なせないという意志?
僕のことメモ帳扱いしないでくれないかな
手元に残したくないメモをするのに最適なんですよ。消えちゃうから
たっく…それ僕はその気になれば全部掘り起こせるんだからな。で、なにかわかったのかい?
いいえ、なーんにも。ただハリーに関してではないのですが、一つ面白いことを言われましたよ。
へえ、だれにどんなこと言われたの?
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それは第二の課題も終わり、雪を見かけなくなった頃。私は相変わらずマッドアイの闇の魔術に関する防衛術の授業で彼の茶目っ気をくすぐらないよう小さくなっていました。序盤の猛攻から考えると穏やかな日々です。
授業中、隣でコリンが“迅速に対処が必要な爆発する毒物の瓶”を…なぜマッドアイはこんなものを授業に?…ぶちまけてしまい、教室中がしっちゃかめっちゃかになってしまいました。
その後片付けと毒に当てられた生徒の搬送を手伝い終えて、マッドアイが私にお茶を出しました。
「ありがとうございます」
教室には私とマッドアイしかいませんでしたが、最近はほとんど普通だったのとさっきの大騒動が一段落ついたので油断していたんでしょうね。相手がマッドアイなのに、私はその紅茶を飲んでホッと一息つきました。
「一度死んだにしては元気にやっとるじゃないか」
「はい。………ん?はい」
一度死んだ?
「死んでましたか?」
「ああ、儂にはそのように見えたが」
「まあ…水を吐き出しても息をしてなければそう見えますよね」
「グリンデルバルドの小娘の…マグル式蘇生術。フン。それで見事蘇生した訳か。マグルの技と侮れんな」
「は…はは……」
「マルフォイ、お前は筋がいい。だがムラっ気がありすぎる。はじめから勝つつもりでやれば勝ててるはずだ。セドリックだろうがグリンデルバルドだろうがな」
「いや〜…流石に生き残るのに精一杯ですよ」
「そういう胡散臭いところがわしの目にひっかかるんだ。……左腕を見せてみろ」
「いやいやいや…あるわけないじゃないですか。や、や!やめて!」
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つまり、私は厳密には《不死》ではない。じつは私は死んですぐ蘇っているだけなんじゃないかと疑問が湧いてきたわけです。
なるほど。だが秘密の部屋で戦ったときの君には心臓や呼吸が止まっている時間はなかった。
ええ。ですがそれは単に治癒が追いついていただけなのではないか、とおもったんですよね。今回は溺死…傷を塞いだり毒を消したりとかではないです。
まだ検証が必要だな。ちょっと死んでみたらどうだ?
そう遠からず試す機会はありますよ。第三の課題で私を殺したい誰かがなりふり構わず襲ってくるでしょうしね
犯人の目星はついているのか?
ええ、まあだいたいは。ばっちりですよ。全部お見通しだ!
なるほどね…
まるっとさくっとお見通し。ええ、そういう事にしておいてもらっていいですか?
さて、私が死にかけた(死んだ?)ことで大慌てなのはうちの両親でした。去年一昨年から続くダンブルドアおろしの動きがまた見られそうです。
とはいえ、この一大イベント中にダンブルドアを法廷に呼び出そうなんて不可能に等しいので皺寄せはイベント責任者、つまりはルード・バグマンと警備責任者、ドローレス・アンブリッジにいっています。
特にアンブリッジはマルフォイ家と魔法省との間で板挟みになりすり潰されそうになってます。
第三の課題のためか構内に出入りする外部の人間を三十分は拘束し、調べて尋問しています。もうほとんど病気です。
うちの強い要請があってか闇祓いもたくさん来ているのですが、たまにトンクスがいやそうにやって来ては私とハリーに激励を飛ばしてくれます。
他の選手の様子は…様々です。セリルダに至ってはもう優勝したつもりでいますし、一方で第二の課題で失格になったクラムは世界の終わりのような顔です。……いや、実際にはただでさえ無表情なのであんまりかわらないのですが、すくなくとも日刊予言者新聞にはそう書いてありますよ。
優勝候補といえる上位四名、セリルダ、ハリー、ドミニク、セドリックはそれぞれロングインタビューが載ってました。羨ましい〜(棒読みです)
ただ記者はリータ・スキーターなので、事実が書いてあるかは知りません。
さて。イースターが終わり、ハグリッドが復職しました。巷ではハーマイオニーの恋愛ゴシップなんかよりも次の課題についての推察が盛んになり、選手たちはピリピリし始めました。私はというと、前回溺れたのもあって周りは過度に心配してくれています。
私はいつもどおり、土日の午後ドラコとお茶をします。私にはドラコの心配だけで十分です。
「兄さん、今日はなんだかそわそわしていますね」
「いや。変なものを見てさ」
「変…?」
「ああ、ロックハートがいたんだよ」
「おや。私も以前見かけましたよ。ダンブルドアに用があったみたいですけど」
「ダンブルドア?妙だな。じゃあなんで湖の辺りにいたんだろう」
「お散歩ですかね」
「そうなのかな…」
なんだか変ですね。たかがロックハート一人見てここまで引っかかるものでしょうか。
「……何か話しました?」
「いや。本当に見かけただけ」
「隠し事してるでしょ」
「いや……」
これはなにか私に言いにくいことを隠していますね。なんでしょう、ドラコが隠しておきたいことなんて百個は浮かんできます。知りすぎてるから逆に全くわからないとはなんとも馬鹿げてますね。
でもこの様子だと大事じゃなさそうです。ドラコはかなりわかりやすいですから、危険なことならすぐ真っ青な顔をして口をつぐんでいるでしょう。
「じゃあもう深くは聞きません。……あーあ、私って兄さんに信用されてないんだ…」
「そういうわけじゃないんだ、ソフィア。あーもう!ほら、この前買ってきたペロペロ酸飴をやる!」
「むう。今回だけ特別ですよ」
あーん。と開けた口にドラコは飴玉を押し込みます。たまんねぇ〜ですね。そうそう。このジャンクな味がたまらないのです。
「次のホグズミードは私と行ってくださいね」
「ああ、絶対約束だ」
そこで遠くから悲鳴のような声が聞こえました。そして次第に生徒たちのざわめきがハグリッドの小屋へ続く道から広がり、レイブンクローの女子生徒が顔を真っ青にして職員室への通路をかけていきました。
「たいへんだ!!」
ハッフルパフの生徒…確かクィディッチ選手チェイサーだったかな…が大声で触れ回ります。
「禁じられた森で死体が見つかったぞ!!」
それを聞いて寮へ逃げようとする生徒とハグリッドの小屋に行こうとする生徒で大混乱が起きました。ドラコは私の手を握りハグリッドの小屋のほうへ行こうとしましたが私は止めます。
「どうせ死体なんて見えやしませんって」
「あ、ああ…」
そうこうしているとスネイプがやってきて騒動を収束していきます。生徒たちは全員自分の寮へ戻るように言われ、私はドラコと別れます。
グリフィンドール寮ではみんながひそひそと興奮気味に喋ってます。
「あ、ソフィア」
隅の方のソファーでジニーがこっちこっちと手招きしていました。三年生がなんとなく固まっているところに私も腰を下ろします。
「死体って本当なのかしら」
「じゃなきゃ寮に戻れなんて言わないさ」
「問題は誰の死体かですね」
「あの…さっき僕聞いちゃった」
コリンが真っ青な顔でささやきます。
「死んでたのはリータ・スキーターだって」
翌日、朝食の前に校長から見つかった死体はリータ・スキーターだと発表されました。禁じられた森の深くだったそうで、死因は不明。日刊予言者新聞には魔法生物に襲われたと書いてありました。
「ゴシップでも探しに来てたのかな?」
「そんなもののために死ぬなんて馬鹿だ」
ハリーとハーマイオニーは一安心でしょうね。あ、死んだのにこんなこと言っちゃ悪いかな。
朝食を食べ終わり大広間から出ようとするとドラコがシャイマと人気のないところに消えてくのが見えました。な、なぜ!当然追います。
マートルのトイレがある廊下までいくと、ドラコがこそこそと話し始めました。流石に全然聞こえません。私は必死に耳を澄ませます。
「……わかったわかった。で、リータが約束に来なかったのは何日前なのさ」
「3日前だ」
「じゃあそのときには死んでたんだね」
「リータが森で死体で発見されるなんてありえないんだよ」
シャイマの冷たい返しにドラコがやや大きな声で反論しました。
「なんでさ?」
シャイマはやや苛立った声です。ドラコは一瞬ためらってから言います。
「彼女は動物もどきだったんだ!コガネムシに変身できたんだよ」
あらま。ショーゲキ〜。ですよね?まあでもやたらとホグワーツ内での出来事に詳しい理由がわかりました。意外と抜け穴が多いですよね、ここの警備は。私も脱法動物もどきになろうかな?
「え?…もしかして未登録?」
「そうだ」
「そっか、人間の姿で見つかるのがおかしい、ってことね?」
「ああ。ここへの出入りは変身してきてるはずだろ?仮に森の奥でコガネムシのまま踏み潰されたとして、死体は人間には戻らない…」
「かりに人間の姿に戻ってても危ないことがあれば変身して逃げるもんね?」
「ああ」
「じゃあなに?リータは人間の姿のときに殺されてあそこに遺棄されたって?」
「それか、あそこで人と会う予定があってその人物に殺された…」
「もしかしてその会う予定の人物ってドラコ?」
「違う!僕が接触するときはかならず奴はコガネムシの姿で、一方的にやってくるあいつに僕がしゃべるだけだった」
「他に知ってるのは?」
「わからない。生徒では僕だけ…だとは思う…」
一瞬ドラコが黙ります。
「僕、これを誰かに報告するべきだろうか?」
「はぁ?そんなのアタシに聞かないでよォ!」
「人一人死んでるのに…」
シャイマは呆れ気味に返します。
「んん…ソフィアちゃんなら“別にほっとけばいいじゃないですか”って言うだろうね」
「ああ。でもソフィアはまあああいう性格だし…」
「あたしなら普通に言うかな?犯人突き止めたいしね。……でも、ドラコのことは知らないよ。自分で決めなよっ!」
シャイマはそこで面倒になったのかドラコから距離をとってこっちへ歩き出しました。私は隠れる場所を探して廊下をあわてて後退します。
「シャイマ!このことは…」
「わーかってるって。誰にも言わなーい」
シャイマは大広間に続く階段を降りていきました。一人残ったドラコも少ししてから同じように降りていきました。
私はすぐ降りるのもなんだかな、と思いせっかくなのでマートルのトイレにお邪魔することにします。トム・リドル縁の地。
「うわ」
と、マートル。
「なんです?」
「何の用よ…」
「ここ、トイレですよ?」
そんなこともわからない?とにらみつけるとマートルはわっと泣き出してしまいます。そして自分のトイレの中に閉じこもってごぼごぼと水を溢れさせ始めました。秘密の部屋事件以降かなり嫌われてるようですね。どうでもいいですけど。
「リータ・スキーターが殺された、か」
問題はハリーを勝たせたいやつか私を殺したいやつかどちらに殺されたのか。
全く関係ないやつに殺されたというのも捨てきれませんが、だったらわざわざダンブルドアのお膝元では殺さないでしょう。
彼女は動物もどきだった。それでいろんな記事がかけていた。となると聞いてはいけないものでも聞いたのでしょうね。
もし、ここにヴォルデモート卿が噛んでいたりしたら…?私はカバンの中の日記のことを思い出します。そしてすぐにその考えを打ち消しました。それこそ私なんかグチグチ考えても無駄です。ダンブルドアがなんとかするでしょう。
ドラコがあの事実を話したところで、事件が解決するとは思えませんしね。
「…全部第三の課題で決着がつくんでしょうね」
第三の課題の朝。ルーナの手が私の髪を漉いて、まとめて、束ねていきます。多分三つ編み……なんだと思うんですが…ん?今全部ほどいた気がします。
「ソフィアの髪の毛はサラサラだね。まとめにくいや。だからはい、ヘアピン」
鏡を見ると横髪のところにドリームキャッチャーみたいなのがついたピンが刺さっていました。そしてニコニコと微笑むルーナもお揃いのものをつけています。
「おそろい〜」
「そうだよ。なにかあっても片方のもとに戻ってこれるように」
「やだもうこの子ったら」
「前回は心配で死ぬかと思ったもン」
ルーナは私をぎゅっと抱きしめます。そういえば第二の課題ではジニーが私を抱きしめてくれました。あっ…私兄さんに抱きしめられてない!
「いってらっしゃい」
第三の課題は三校の生徒全員が大広間に全員集められました。代表選手八名は普段教職員席になっている壇上で次の課題は一体何なのかをそわそわしながら待っています。全員内容を知らないんでしょうか。
みなさん前の凍えそうな水泳着ではなくそれぞれの校章の入ったユニホームを着ています。私にもグリフィンドールカラーのユニホームが手渡されましたがやんわり断りいつものコートです。だって私背が低いからか、似合ってないんですもの…。
今回は代表選手の家族が来ているので大広間はいつも以上の人口密度です。もちろん家の親も来ていますよ。来ていないのは鬼籍に入ったハリーの両親と、多分ドミニクの両親でしょうか。
「緊張する、よね」
横のハリーがつぶやきます。
「別に、どう頑張っても優勝は遠そうですしね」
「ええ、まさかまたノープランだったりしないよね?」
「ええまあ。そっちは?準備万端できたんでしょう?」
「ハーマイオニーとロンとでいろいろやったよ。でもいくら準備しても不安だ」
「ま、あなたは優勝圏内ですしね」
そこでダンブルドアが壇上にあがりました。大広間はしんと静まり返り、全員が固唾を飲んでダンブルドアが喋りだすのを待ちます。
「ついに、最後の課題となった。さて、今宵は代表選手諸君を地下迷宮へご招待しよう。我々老魔法使いが…おっと失礼…工夫をこらした迷路となっている。選手らはこの罠と魔法に満ちた迷宮を抜け、優勝杯であるゴブレットのもとへ辿り着けば最高の栄誉が与えられるじゃろう」
「わお……」
フレッドか、はたまたジョージの歓声が聞こえました。
地下迷宮。その言葉は非常に心踊りません。だってこのホグワーツの地下といえば無尽蔵に張り巡らされたパイプと、あの忌まわしい怪物の眠っていた秘密の部屋なのですから。
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鬱蒼と茂った緑は、かつては美しい庭園だったことをすっかり忘れて好き放題伸びて秩序を失っていた。その森のような場所の奥に、同じようにかつての姿を忘れた屋敷があった。
屋敷の中もまた荒れ果てており、日の光のはいる余地もなく、薄闇に満ちている。日が暮れれば月光程度では決して照らせない闇。その中心に一人の男が蹲ってしくしくと泣いている。
「ああ……恐ろしい…」
男の身なりはみすぼらしく小太りだが決して豊かという印象を与えない。しかも服だけでなく髪からつま先までくすんでいた。目から流れる涙が顔に積もった垢を流し灰色の雫となって床に落ちる。
「恐ろしい……恐ろしい……こんな魔法……」
そんな男を遠巻きに眺める者がいた。顔は骸骨のように落ち窪んでいるが、目はギラギラと輝いており精気に満ちている。軽蔑、嘲り、そしてわずかな安堵。
啜り泣く男と自分、どちらがマシか。
痩せた男は囚人だった。アズカバンという牢獄と家族という監獄に閉じ込められ長い間正気を失っていた。そして啜り泣く男は逃亡者だった。重い罪から逃げるために自らを死者とし、動物に身をやつしてそれでもなお正気でいた男。
「ワームテール、何故泣く?」
暗がりから声がした。嗄れた、今にも消えそうな儚い声。この弱々しくも残酷で、ワームテールを狂わせている者こそ二人の男の主人だ。
「いえただ……私は………名誉なことだと理解しています……。理解しておりますが、怖いのです」
「ワームテール、お前は意気地のないことを言うが、俺様はお前ほど冷酷な男をほかに知らない。お前ならば必ず乗り越えられる……バーティ」
「はい、我が君」
「全て終わったな?」
「はい。全て抜かりありません」
「抜かりない、ではホグワーツで死者が出たというのは俺様の聞き間違いか?」
「あれは我々とは別でございます。例の…」
「あのマルフォイの娘、か」
「ええ。彼女を狙うものによる犯行ではないかと」
「ならよい、狙いはあくまでハリー・ポッターだ」
主人は咳き込み、痩せた男は介抱のために駆け寄った。ワームテールは二人のいる闇の方をじっと見つめた。
そして誰にも聞こえない声で呟いた。
自分は、なりきれない。怪物に……。
と。