異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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新章突入


第六章 パーパルディア皇国編 終 列強国の終焉
第百六話 講和会議


 

 

 

 

 中央歴1640年 4月4日 パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 

 

 ロデニウス連邦共和国とパーパルディア皇国との戦闘が一先ず終わりを告げてから、二週間近くが経過した。

 

 

 エストシラントは先の戦闘による爪痕が激しく刻まれていたが、少しずつ復興への道を進んでいた。

 

 というのも、現在港を中心に市街地各所にて、ロデニウス連邦共和国陸軍工兵隊による復興作業が行われている。これはエストシラントの市民に対する感情変化を促す一環で、復興の他に炊き出しや治療を無償で行っている。上陸部隊の大半は、工兵部隊と使用する土木機材、その他諸々で、それ以外は護衛する兵士や兵器である。

 

 最初は上陸して復興作業を行っている工兵隊に警戒心を出していた市民たちであったが、一人、また一人と、ロデニウスの優しさに触れて彼らの慈悲を受け入れていった。もちろん一概に彼らを受け入れている者たちばかりではなく、一部は拒否的行動を取る者、抵抗する者もいた。その内行き過ぎた者は連邦共和国軍兵士に対処されている。中には市民たちから顰蹙を買う者もいた。

 

 ともあれ、エストシラントは少しずつ復興に向かっている。

 

 


 

 

 場所は変わり、戦闘の爪痕が多く残るパラディス城の大行政会議室。

 

 

『……』

『……』

 

 これまで皇国の行政や属領、文明圏外国への対応などを話し合っていた場所は、これまでとは異なる形の会場と化している。

 

 会場には、クーデターで臨時の国家元首としての座に就き、パーパルディア皇国の代表となったカイオスに、第1外務局局長のエルト、第2外務局局長リウス、軍司令のアルデが長いテーブルに着いており、その後ろには発言権を封じて傍観者として参加している元皇帝のルディアスの姿がある。

 

 彼らの向かい側には、カナタより全権を帯びてロデニウス連邦共和国代表として出席している『大和』と外務省の職員達の姿がある。他にはアルタラス王国より体調不良により出席できなくなったターラ14世に代わり、全権を帯びて代表として出席しているルミエス王女、フェン王国よりモトム、73ヵ国連合より代表として選ばれたミーゴとスカー、ハキとイキアが出席している。

 

 これから行われるのは、戦争終結に向けた講和会議である。この会議は今回の戦争に正式(・・)に宣戦布告を行った、もしくは受けた国々が参加している。

 

 しかし参加している面々の中には、リーム王国の姿が無い。理由は単純に『彼らが戦争に参加したとみなされていない』からである。パーパルディア皇国に宣戦布告せず、さりげなく73ヵ国連合に混じって参戦していた彼らに、この講和会議に参加する資格はないのは当然である。

 

 当然リーム王国は講和会議に参加できない事に抗議し、パーパルディア皇国に宣戦布告を行ったと証拠を見せつけたが、明らかに後出しした証拠なのは明白であり、何よりパーパルディア皇国が宣戦布告を受けた国々から細かく記録を残していたことが幸いし、リーム王国の出した証拠が偽物であると証明された。

 

 リーム王国はあれやこれと言い訳をして抗議するが、口を開けば開く度に自分達の信用がどんどん落ちるだけであり、結局彼らは居心地に悪さに加え惨めな気持ちに押し付けられたことで、最終的に捨て台詞を吐いて会場を後にした。

 

 


 

 

「それでは、講和会議を開始します」

 

 リーム王国の抗議で予定より時間が遅れたものの、講和会議は開始された。

 

「まず初めに、我がロデニウス連邦共和国は、パーパルディア皇国に対して賠償金の請求を行わない事を言っておきます」

 

 『大和』の言葉に、カイオスを除いたパーパルディア皇国の関係者と、連合軍側の人間が驚きの表情を浮かべる。

 

「我々は金が欲しくて戦争をしていたわけではありません。あくまでも自らに降りかかる火の粉を払っただけですので」

 

 ロデニウスの寛大な判断に、皇国関係者は少しだけ安堵の表情を浮かべる。もしかしたら彼らの中で一番優しい条件に―――

 

「ですが、あくまでも賠償金の請求を行わないだけであって、我が国独自の要求をしないわけではありませんので、勘違いしないようにお願いします」

 

 ―――なるはずもなく、カイオスを除いた関係者は冷や汗を掻く。ちなみにカイオスはロデニウス側が提示する要求を事前に聞いているので、慌てる様子を見せなかった。

 だから逆に言えば、カイオスはYESマン状態で要求を呑むつもりでいるのだ。

 

「それでは、各国の代表より貴国に対する要求の発表を行います」

 

 『大和』が司会を行い、各国がパーパルディア皇国に対して要求する内容が発表される。尤も、要求内容は基本各国同じであり、若干の差異がある程度である。

 

 各国の共通する要求内容は以下の通り―――

 

 

・パーパルディア皇国は各属領の独立を認める。

・賠償金の請求

・犯罪者の身柄引き渡し

・犯罪者の裁判権の譲渡

 

 

 属領の独立は彼らにとって悲願ともいえる。この要求は当然である。皇国側は苦虫を噛んだような表情を浮かべていたが、各属領の独立を認めた。

 

 賠償金に関しては各国の国力に合わせて金額が設定され、返済期限は設けないことにした。これは現在のパーパルディア皇国の財政状況ではすぐに返済出来ないので、それに配慮しての返済期限無しである。

 ただし国によってはすぐに賠償金の金が必要になってくる所があるので、その場合はロデニウス連邦共和国が肩代わりすることになる。しかしあくまでも肩代わりであり、その分を免除されるわけではないので、皇国が賠償金を支払う事に変わりはない。しかも支払う優先度は73ヵ国なので、肩代わりしたロデニウスへの支払いは後回しになる。

 つまりパーパルディア皇国が今後賠償金の支払いを拒否しないように、ロデニウスが肩代わりした賠償金の支払いを後回しにして皇国を監視する意味合いもあるのだ。

 

 要は何十年何百年も掛かっても賠償金を全額支払え、と言うことである。

 

 ちなみに73ヵ国で賠償金が国力に合わせて設定されているのは、国内事情が大きく関わっている。というのも、パーパルディア皇国によって長い間暴力によって支配され、富を搾取されてきたので、国内状況は疲弊してかなりボロボロだ。勢いよく独立を宣言したが、国によっては支援が無いと国として成り立っていけない所が多い。

 なので、国によっては賠償金より人材や資材の方が欲しかったりする。

 

 その点を考慮し、ロデニウス側はある計画を73ヵ国に持ち掛けて話し合いをしたのだ。わざわざ国力に合わせて賠償金の金額を設定したというのも、その計画が関わっている。

 

 この計画は独立を果たした73ヵ国の国々には快く思わない内容であったが、意外にも全ての国々がその計画を承諾したのだ。それだけ国内状況が深刻であり、その計画自体彼らからすればある意味願ったり叶ったりなのである。それに、あくまでも一時的な処置であるというのも計画を受け入れた要因の一つだろう。

 

 どういう計画になるかは、後々明らかになる。

 

 パーパルディア皇国側は賠償金の合計金額に驚いてとても支払えないとカイオス以外は抗議の声を上げるが、返済期間は無期限だと伝えられると、すぐに返済しなくて済むと一安心する。そして最終的に賠償金の支払いに同意した。

 

 

 次に犯罪者の身柄引き渡し。言わずもがな73ヵ国連合は属領を統治していた臣民統治機構の職員と一部兵士。アルタラス王国ならカストを筆頭にしたアルタラス出張所の面々である。ロデニウスは既にシオス王国で起きた虐殺事件の被疑者たちを裏で全員確保したので、名乗り上げなかった。

 臣民統治機構は一部の国を除いて現地の人間がルミエス王女の演説を聞き入れたおかげで、怪我人こそいるが全員が捕らえられているので、身柄引き渡しは書類の上で行うものである。

 

 臣民統治機構の兵士が一部なのは、その殆どが属領から撤収してエストシラント防衛基地に突き刺さった不発弾の処理に失敗し、文字通り粉々になったので、対象になっているのは警備の為に属領に残り、反乱の時に奇跡的に生き残っている兵士のみで、それ以外は反乱時に死亡している。

 

 アルタラス出張所の面々はこちらも奇跡的に全員残っていたので、現在彼らは身柄は拘束され、全員アルタラス王国に罪人として身柄が引き渡される。王族を侮辱し、王女を性奴隷として引き渡しを要求したカストは極刑が確定しているが、それ以外はさすがに釈明の余地はあると思われる。が、カストを止めなかった事実があるので、彼らは連帯責任で裁かれることになる。さすがにカストより刑は比較的に軽くなると思われる。

 

 パーパルディア皇国側は特に抗議の声も無く、罪人の身柄引き渡しも同意した。まぁ言ってしまえばその連中のせいで属領が全て解放されてしまったのだから、彼らに同情の念が沸かないのは当然である。

 

 

 そして最後の裁判権の譲渡。これは先程の罪人の裁判権を全て被害国に譲渡し、パーパルディア皇国は裁判に関わる事が一切出来ないものだ。言ってしまえば、身柄を引き渡された罪人たちの運命は半ば決まったようなものである。

 

 こちらもパーパルディア皇国側は抗議の声は無く、難なく同意した。

 

 

 傍聴人として参加しているルディアスは、終始何も言わず、静かに講和会議を聞いていたという。

 

 

 


 

 

 

「では、我がロデニウス連邦共和国の要求を発表します」

 

 途中小休止を挟んで、講和会議はいよいよロデニウス連邦共和国が独自の要求を発表する時が来る。パーパルディア皇国側はカイオスを除いて息を呑む。

 

(ロデニウス……一体どんな要求をしてくるんだ)

(あれだけの力を持っていながら、わざわざこの場で要求する意図が読めない)

(ロデニウスも何だかんだ言って、やはり金を要求する気か)

「……」

 

 カイオス以外の面々は内心ロデニウスがどんな要求を出してくるか不安を抱き、緊張の面持ちをしている。

 

「我が国の要求は口頭での説明と共に、今から配る書類に書いてある通りです」

 

 と、『大和』は後ろに控えている外務省の職員達に目配りして、パーパルディア皇国側の人間に大陸共通言語で表記された書類を配る。

 

 そして書類に書いてある要求と、『大和』が口頭で説明した内容に、カイオスを除いたパーパルディア皇国側の人間が驚愕に染まる。

 

 

 要求はいくつもあったが、皇国関係者を驚愕させたのは、以下の物である。

 

・パーパルディア皇国はパールネウスを含む領土をロデニウス連邦共和国に譲渡する

・パーパルディア皇国は軍の大幅な縮小に応じる

・皇国は全体的な技術を開示し、新規技術の開発は各国の許可を得る必要がある。そしてその技術もすべて開示すること

・皇族及び皇族の血縁にある貴族の断絶(・・)を行う為、全員の身柄引き渡しに応じる

・パーパルディア皇国に関する歴史資料を全て破棄。今後皇国復興を促す教育を一切禁ずる

・皇国は国の名前を一新し、今後一切パーパルディア皇国、パールネウス共和国と名乗ってはならない

 更に両者を彷彿させる名前も名乗ってはいけない

 

 

 パールネウスを含む領土の譲渡。これによりパーパルディア皇国は内地の領土を失うことになり、皇国はエストシラントからデュロまでの領土しか残らなくなる。

 同時にそれは、パーパルディア皇国の歴史が奪われることになるのだ。

 

 

 軍の大幅な縮小とあるが……現時点の皇国軍の惨状を見れば実行に移す必要が無いのであまり気にする必要は無いが、上限が設けられたので今後軍備の配備を行うのに制限が掛かる。

 

 しかしこの軍縮に関しては、実はロデニウスがムーとある取引をして今後の皇国の軍備に関わっているが、それは後々判明する。

 

 

 技術の全体的開示。これまで技術の一部を秘匿して優位を保って来た皇国だったが、それが無くなれば他国へ技術が浸透して、技術的優位性が失われてしまう。

 

 新たな技術の開発を行うには、ロデニウスはもちろん各国から開発許可を得なければならない上に、技術は必ず公開しなければならない。これにより新規技術であっても技術的優位を保つことが難しいようになっている。

 

 

 そして皇国関係者を一番驚愕させたのは、皇族と血縁関係者の断絶。歴史資料の破棄、国名を名乗るのを禁止するというものである。

 

 これは完全にこれまで積み上げてきた歴史を全て捨てろと言っているものである。

 

 

 

「ま、待ってくれ!!」

 

 故に、抗議の声が上がるのは当然と言えた。あまりにも理不尽な要求にエルトが声を上げた。

 

「国名を捨て、歴史を捨て、皇族の断絶だと!? そんなこと、受け入れられるはずがない!!」

「そうだ!! あまりにも理不尽だ!」

「これまで積み上げていた歴史を捨てろというのか!!」

「……」

 

 エルトが抗議の声を上げると、リウスとアルデも続いて抗議の声を上げるが、カイオスは事前に聞いて承諾しているので、何も言わなかった。

 

「ですが、あなた方は今まで同じことを属領だった国々にやって来たのでしょう。それでいて自分達の番になると嫌です? そんな都合の良い話があるわけないだろう」

「くっ……」

「……」

 

 『大和』は冷めた視線で冷徹な声にてそう告げると、エルト達は言葉を詰まらせる。

 

 いくら軍縮して領土を奪っても、歴史と皇族が存続し続ける限りパーパルディア皇国は、いつかまた皇族による主権国家になりかねない。

 それを防ぐ為に、歴史と言う名の癌を排除するのだ。そして皇国は終わりを告げ、新たな歴史の始まりを告げるのだ。

 

 当然最初の内は批判が多く、皇国至高主義の輩が出てくるだろう。それによる内戦も起こる可能性は無いとは言えない。

 

 言うなれば、これは皇国に与えた試練だ。本当に国を変えられるか。それが出来れば本当の意味で国は生まれ変わる。それが出来なければそこまでである。

 

「……皇族と血縁の貴族の断絶は、受け入れられない。皇族なくして、皇国は栄えなくなる」

「だから? それに国の繁栄は皇族や王族などの一部の者達ではない。国民だ。国民なくして国の繁栄は無い。たかが一つの血筋が消えるだけで、国には何の痛手にはならない」

「……」

 

 歯に衣を着せない物言いにリウスは顔を赤くして、俯いて両手を握り締める。エルトとアルデも屈辱に耐えている様子である。

 

「……皇族の中には、まだ幼子だっているんだ」

「ふーん、で?」

「っ! これから生まれる命だっているんだ!! それでも処すというのか!!」

当然だ

「っ…‥」

 

 情に訴えるようにアルデは抗議するも一蹴され、エルトは感情的に声を荒げるが、『大和』は無慈悲にも切り捨てる。あまりにも躊躇ない返答に、エルト達は唖然とする。

 

「皇族の血が流れている以上、幼子だろうが赤子だろうが、断絶対象だ」

「……」

「どうしても嫌だというのなら、この状況を覆して見せろ。我々に勝って見せろ。そうすれば全ては無かったことになる。お前達が守ろうとしている皇族も無事でいられる」

『……っ!』

 

 『大和』の容赦ない言葉に、エルト達は何も言い返すことが出来ず、両手を握り締めるしかなかった。

 

 ロデニウスの容赦ない要求と姿勢に、他の国の代表者たちは息を呑むしかなかった。

 

「歴史もそうだ。もはや貴様たちに必要の無いものだ。強いて必要ある歴史があるのなら、皇国が愚かな領土拡張に走り、結果敵を作り過ぎて敗北し、滅びを迎えた、という歴史だろう。良い教訓になる歴史だからな」

「……」

 

 エルトは血が滲まんばかりに握り締め、顔を上げる。

 

「だが、それでも―――」

 

 

 

「もうよい、エルトよ」

 

 と、抗議を続けようとするエルトに、今まで沈黙を保っていたルディアスが口を開く。

 

「へ、陛下?」

「あなたの発言は許可されていません。勝手な発言は行わないでいただきたい」

 

 戸惑うエルトを他所に、発言許可を下ろしていないルディアスの発言にロデニウスの外務省職員が警告する。

 

「構わない。発言を許可します」

 

 と、『大和』は職員を制止してルディアスの発言を許可する。

 

 ルディアスは頷くと、『大和』を見る。

 

「……余と皇族、血縁にある貴族。その犠牲で皇国の民には手を出さぬのだな?」

「えぇ。国民の安全は保障します。我が国と大統領、私の名に賭けて」

「……そうか」

 

 確認したい事を確認出来てか、ルディアスは目を瞑って小さく頷く。

 

「それともう一つ……皇族の一人、レミールについてだ」

「……」

「レミールは……どうなる?」

 

 それはルディアスの、最も個人的な質問だろう。

 

「……あの女性は我が国にとって忌むべき存在と言えます。あなた方とは別件で処刑されることになるでしょう。まぁこちらも行方を追っているのですが、どういうわけか行方が掴めていないので、これから苦労することになりますが」

「……」

「ただ、どの道皇族である以上、運命は変わりません」

「……そうか」

 

 『大和』の意味ありげな喋り方に一瞬怒りを露にするルディアスだったが、すぐに怒りを収めて観念したように俯く。

 

「発言は以上ですか?」

「……あぁ。もう話すことは無い」

「そうですか」

 

 ルディアスは再び口を閉ざし、講和会議は再開する。

 

 

 その後はルディアスが要求を受け入れた姿勢を見せたことで、エルト達は悲しむ様子を見せつつロデニウス側の要求を受け入れ、カイオスも事務的な様子でロデニウス連邦共和国の要求を受け入れる。

 

 

 カイオスが各国の要求を受け入れ、必ず全て履行するという誓約書にサインして、講和会議は終わりを告げる。

 

 

 そして彼らは戦争を完全に終わらせるために、降伏調印式に挑む為に会場を移動する。

 

 

 




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