異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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本作を投稿して三周年を迎えました。ここまで来られたのも皆様の応援のおかげです。

感想や評価、毎回誤字報告をしてくださる方々には、本当に感謝しています。今後原作を含め、色々とどうなるか分かりませんが、これからも本作をよろしくお願いします!

三周年を記念して、一週間連続投稿を行います。

これからも本作品をよろしくお願いします。


第百八話 戦争が終わり……

 

 

 

 降伏調印式が終わり、パーパルディア皇国との戦争が終結したことは、すぐさまロデニウス本国の大統領府へと伝えられた。

 

 

 カナタを始め、閣僚達はあの列強国パーパルディア皇国に戦争に勝ったという事実に喜びつつ、複雑な思いを抱いていた。

 

 

 戦争には勝ったが、彼らからすれば避けようとすれば、戦争を避けられたかもしれなかったという事実があった。なのに、戦争へと発展させてしまったという負い目があった。

 それと共に、多くの犠牲者を出してしまったのも、彼らに大きな影を差すことになった。

 

 

 最終的にシオス王国で起きた虐殺事件の犠牲者は、35名となっている。救助された32名であったが、その後シオス王国駐屯軍の兵士による拷問の後遺症が原因で容体が急変して亡くなった方や、慰み者にされた女性の中にトラウマのフラッシュバックによる大きなストレスが原因で心不全を発症して、亡くなってしまって方がいたという。

 

 

 

 今回の一件は外交的問題点が多く浮上し、彼らの認識を改めることになった。

 

 

 

 その後政府はすぐに戦争が終わったことを速報にて各地へと伝えて、改めて戦争が終わったという事実を国民全員が噛み締めたのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 中央歴1640年 4月6日 ロデニウス連邦共和国

 

 

 

 戦争が終わり、各地で戦勝ムードが漂っている中、ただ一か所だけお通夜ともいえるどんよりとした雰囲気の場所があった。

 

 

 場所はクワ・トイネ州にある、捕虜収容所。

 

 

 

 そこでは、祖国が敗北したという事実に涙を流す捕虜たちの姿が数多く見受けられた。彼らのほとんどは皇国が敗北するという未来を受け入れていたが、それでも実際に敗北したという事実を突きつけられると、その衝撃は大きいようだ。

 中には捕虜になって浅い者がいて、その者は最後まで皇国の勝利を信じていたそうな。

 

 

「祖国の敗北したというのに、あまり実感は湧かないものだな」

 

 元監査軍東洋艦隊提督ポクトアールは、周囲を見つつ小さく呟く。

 

「我々は長くロデニウスの内で生活していたからでしょう。泣いている者達は最近入って来た皇軍の捕虜たちでしょうね」

「あぁ、なるほどな。捕虜としての生活が長かった分、皇国が負けるという現実を知らない内に受け止めていたんだな」

 

 元艦長の言葉に、ポクトアールは納得する。

 

 涙を流して居る者達は、最近この収容所へと移送された皇国軍の捕虜であり、彼らはロデニウス連邦共和国の国力を目の当たりにしながらも、必ず皇国が勝利すると信じていた。それ故に、彼らのショックは大きかったのだ。

 

 しかし第一次フェン沖海戦から今日に至るまで長く収容所にてロデニウスの国力を目の当たりにしていた彼らは、ロデニウスの力を深く理解し、このままいけば皇国が負けるという事実を彼らは自然と受け入れていた。

 だからこそ、彼らの中に祖国が敗北したことによる悲しみの感情は湧かなかった。

 

 

「ポクトアール殿」

 

 と、声を掛けられて彼が声がした方を見ると、そこには左腕に装着した杖を使いながら歩く元竜騎士のレクマイアの姿があった。

 

「これはレクマイア殿。最近は歩き方が安定するようになりましたな」

「えぇ。何とかここまで歩けるようになりました」

 

 レクマイアはそういうと、自身の脚を見る。

 

 相棒のワイバーンロード諸共海へ墜落し、その際に両脚を複雑に骨折して収容所にて車椅子生活をしていた彼だったが、その後リハビリを経て杖アリなら歩行が可能となった。しかし予想よりも脚の損傷が大きく、彼の両脚には後遺症が残ったことで、力が出しづらくなってしまっている。もう彼はワイバーンに跨って飛ぶことは出来なくなっているのだ。

 

「ところで、話は聞きましたかな」

「えぇ。聞きました。やはり我々も罪を償わなければならないようですね」

「そうですな」

 

 二人は気を落とした様子を見せて、表情に影が差す。

 

 先日、彼らの身柄はロデニウス連邦共和国からフェン王国へと移送されることが決定したのだ。

 

 これは第一フェン沖海戦にて、ポクトアール率いる東洋艦隊はフェン王国の水軍を全滅させ、レクマイアは都のアマノキを襲撃し、市民の虐殺を行った罪に問われているのだ。

 その為、フェン王国はロデニウス連邦共和国に彼らの身柄引き渡しを要請したのだ。

 

 ロデニウスはポクトアール達の身柄引き渡しに反対する理由が無かったので、要請に応じてポクトアール達の身柄の移送準備を始めた。

 

 他の捕虜たち……主にデュロ防衛基地所属の捕虜たちは時期を見計らって皇国へ身柄返還を行う予定になっている。

 

「まぁ、あれだけのことをやったのですから、相応の覚悟をしなければなりませんな」

「えぇ。最後は皇国の軍人らしく、胸を張って挑みましょう」

 

 ポクトアールとレクマイアは自分達が犯した罪を受け入れ、今後ある裁判に皇国の軍人らしく、正々堂々挑むつもりで、覚悟を決める。

 

 

 しかし、そんな彼らの覚悟は、意外な形で裏切られることになろうとは、この時の彼らに知る由も無かった。

 

 

 


 

 

 

 所変わり、クワ・トイネ州の首都マイハーク

 

 

 パーパルディア皇国に勝利した事実は、国民に大きな驚きと喜びを与えた。あの第三文明圏の列強国、パーパルディア皇国に勝利した。これまでの彼らの常識では考えられない快挙であり、その喜びに満ちていた。

 

 

 マイハークでは戦勝ムードが漂い、連日戦勝関係の特番が流れており、様々な店は戦勝祝いの特売をしているなど、お祭り騒ぎである。

 

 

 そして近日中には軍による戦勝パレードが行われる予定である。

 

 

 

「結局ロデニウスが勝利したか。まぁ当然の結果か」

 

 家のリビングにてテレビに映っている番組を見ながら、男性はあっけからん様子で呟く。

 

 男性こと、元パーパルディア皇国 国家戦略局の職員であったヴァルハル。かつての祖国が敗北しても、彼の中には悲しみや悔しさも無ければ、怒りも無かった。ただただ呆れた感情のみであった。

 まぁ祖国ではぞんざいな扱いをされていたので、こんな感情しか湧かないのは致し方ない。

 

 そして最初から勝負は見えていたのに、それでもロデニウスに戦争を、それも殲滅戦を仕掛けたかつての祖国の愚かさに、呆れるしかない。

 

(まぁ、皇国の性格を考えれば結局戦争は起きていただろうが、どこかでロデニウスのことを知れたはずなのに……余計なプライドは持つもんじゃないな)

 

 番組を見ながらヴァルハルは内心呟き、ある意味良い教訓だと思ってため息を付き、カップの取っ手を持って中に入っているコーヒーを飲む。

 

(皇国はどうなるか。まぁロデニウスもあの国をこのままにしておくわけ無いよな。この国は優しそうで、容赦ないからな)

 

 かつての祖国が今後どうなるか考えたものの、彼はすぐに考えるのをやめてテレビの横に設置している台の上にある、写真立てを見る。

 

 

 国家戦略局の証拠隠滅と口封じを恐れてロデニウスに亡命した彼は、新しい身分を得て第二の人生を送る事となった。

 

 以前とは比べ物にならない快適な生活環境と職場環境に、彼は順風満帆な日々を送っていた。

 

 そんな日々を送る中で、彼は職場の同僚の女性と仲良くなり、その仲は時間が経つにつれて深いものとなり、今では同棲して結婚を前提にした付き合いをしている。

 

 

 写真立てには、先日出かけたテーマパークで撮った写真が入れられており、笑顔な二人の表情と一緒にポーズを取っているその姿から、彼らの仲は大分進んでいるようだ。

 

「昔じゃ、考えられなかったな……」

 

 写真を見ていたヴァルハルは、嬉しそうに小さく呟くと、玄関の方から扉が開く音がする。

 

「帰って来たか」

 

 彼は玄関の方を一瞥すると、椅子から立ち上がって帰ってきた彼女の元へと向かう。

 

 

 


 

 

 

 所変わって、北ロウリア州と南ロウリア州の境目に当たる場所。

 

 

 

「そうか。パーパルディア皇国が負けたか」

 

 屋敷の私室にて、一人の男性がロッキングチェアで揺れながら執事の男性からパーパルディア皇国の敗北の報を聞き、小さく呟く。

 

 男性こと、旧ロウリア王国 元国王、ハーク・ロウリア34世。ロウリア戦争にて身柄を拘束され、一時軟禁となっていたが、その後監視付きで解放された。

 

 しかし彼は全ての責任を負い、国王の座を辞し、旧ロウリア王国が南北に分かれた州になった際に、彼は表舞台から姿を消し、現在は北ロウリア州と南ロウリア州の境目にある屋敷にて、隠居生活を送っている。

 

「しかし、あのパーパルディア皇国さえも敗北したとは。本当にこの国は恐ろしいものよ」

「そうですね」

「……もはや、この第三文明圏でこの国を止められる国は存在しないな」

「恐らく第二文明圏、下手をすれば第一文明圏にも存在しないかと」

「……そうだな。あの神聖ミリシアル帝国でも、この国に勝てるかどうか怪しいものだ」

 

 ロウリア34世はため息の様に深くゆっくりと息を吐き、窓から外の景色を眺める。

 

「歴史が……世界が、変わろうとしているのかもしれんな」

「……」

「全く。彼らが現われた時から、変化の絶えないことだ」

「そうですね」

「これなら、生きていく楽しみには困らないな」

 

 彼はそう言うと、口角を上げてこれからの世界の変化を世間の裏から楽しみにするのだった。

 

 

 


 

 

 

 所変わり、トラック諸島

 

 

 

「まぁ、なるようにしてなったわけだな」

「そうね」

 

 トラック諸島の春島。そこにある司令部の一室にて、『紀伊』と『ビスマルク』が話していた。

 

「それにしても、あなた達は随分大胆な事を考えたのね」

「あぁ。パーパルディア皇国が無くなれば、フィルアデス大陸の情勢が大きく傾くのは目に見えている。少なくとも皇国亡き後にフィルアデス大陸の筆頭に立とうとする輩が現われそうだからな」

 

 と、『紀伊』はどこぞの国の事を頭に浮かべながらそう口にする。

 

 フィルアデス大陸を牛耳っていたパーパルディア皇国が滅んだとなれば、当然大陸の情勢は大きく変化する。それによる混乱が生じ、その混乱に乗じて大陸の支配を目論む輩が現われる可能性が高い。

 

「それを防ぐ為でもあり、情勢悪化を防ぐ為でもある、ってところかしら」

「あぁ。だからこそパールネウス周辺の領土を貰い受けたんだ。まぁあの辺り一帯の領土を欲したのは他にも理由はあるがな」

「理由?」

 

 気がかりな事を口にする『紀伊』に、『ビスマルク』が怪訝な表情を浮かべる。

 

「調査によれば、どうやらパールネウスの地下に皇国でも一番に機密にしている研究施設があるそうだ」

「地下に研究施設。まだそんなものがあったのね」

「あぁ。地上にあったのはあくまでも既存の技術に関連するものだったらしい。本命は地下の研究施設だそうだ」

「どんなものだったの?」

「それなんだが、どうやら遺伝子関連の研究施設だそうだ」

「遺伝子関連? あの国の技術レベルからは想像できないわね」

 

 『紀伊』より地下研究所の内容に、『ビスマルク』は疑問を浮かべる。

 

 パーパルディア皇国の技術レベルは第三文明圏では高いが、この世界の基準でいうと低い方だ。そんな国にとても生物学に長けているとは思えない。

 

「だが、逆を言えばそれで納得がいく。他国ですらワイバーンの品種改良は難しいと言われているのに、なぜ皇国は品種改良を容易に行えたか」

「……」

「恐らく研究施設は自前のものじゃない。独力だけでそれだけの技術を確立させるのは難しいし、何より地下にそれだけの施設を作るのは、いくら皇国とて不可能だ」

 

 『紀伊』の説明に、『ビスマルク』は納得しつつ、報告にあった新種のワイバーンロード(ワイバーンオーバーロード)を思い出す。

 

 品種改良が難しいワイバーン。それも上位種のワイバーンロードとなれば更にその難しさに拍車がかかる。第二文明圏にもワイバーンロードを持つ国は存在するが、それらの国がワイバーンロードの品種改良を積極的に行っていないのを見れば、その難しさが分かるだろう。

 それなのに、第二文明圏より技術が劣っている第三文明圏のパーパルディア皇国が品種改良に成功し、ワイバーンオーバーロードという新種のワイバーン種を生み出した。

 

 少なくとも独力ではほぼ不可能に近いが、それが皇国の物ではない、別の技術であれば話は変わって来る。

 

「……地下の施設は、噂に聞く例の魔帝に関りがあるのかしら?」

「かもしれんな。今後そのあたりの調査を行う予定だが、あまり期待は出来ないだろうな。もしその研究施設が例の魔帝の物で、魔帝の技術がふんだんに使われているのなら、皇国は第三文明圏のみならず、文字通り世界を支配出来ていただろうしな」

「確かに。第三文明圏どまりであるのを思えば、そこまで目立つ技術は無さそうね」

「まぁ遺伝子関連なら収穫はありそうだがな」

 

 パーパルディア皇国に対してロデニウス連邦共和国が得られるものは決して多くないが、少なくとも得られるものに価値はあると思われる。

 

 『紀伊』としては、その辺りを期待している。

 

「さてと、これから忙しくなりそうだ」

「そうね。以前のロウリア王国の時と比べると、戦後処理は多そうね」

「あぁ。それと、無理はするなよ」

「分かっているわ」

 

 二人はそう言葉を交わすと、仕事に取り掛かる。

 

 

 

(しかし……)

 

 書類の整理作業を行いながら、『紀伊』はふと思う。

 

(あいつ……どうするつもりなんだろうな)

 

 と、彼は戦友(大和)のことを思い出し、一抹の不安を覚える。

 

 彼が秘めている怒りは、決して許すことは無いのは確かだ。それがどうなるか……予想がつかない。

 

 以前にも似たような事(・・・・・・)があっただけに、不安が大きいのだ。

 

「……」

 

 戦友の事を考えながら、『紀伊』は作業を続ける。

 

 




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