異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第百十一話 世界の反応 壱

 

 

 

『第三文明圏の列強国、文明圏外の国に敗れる!?』

 

 

 

 パーパルディア皇国がロデニウス連邦共和国を筆頭にした連合軍に降伏した事実は、世界に大きな衝撃を齎した。

 

 

 世界のランク的には一番下の第三文明圏とはいえど、列強国が格下の文明圏外の国に敗北を喫した。この世界の常識からすればあり得ない事態に世界に齎した衝撃は大きく、そして多くの国が警戒した。

 

 

 なにせ以前にもグラ・バルカス帝国が第二文明圏の列強国のレイフォルを滅ぼしたという例が起きたばかりであり、ムーやロデニウス連邦共和国と国交を結んでいる国、文明圏外国以外の国が警戒するのは当然であった。

 

 

 だが、パカンダ王国、レイフォルを滅ぼしたグラ・バルカス帝国と違って、パーパルディア皇国を解体こそしたが滅ぼすまでは行っていないロデニウス連邦共和国への反応は大きく違っており、何より多くの目撃者がいたというのが一番大きいだろう。

 

 

 それ故に、ロデニウス連邦共和国を警戒しているが、同時に彼の国に期待感も多少なりとあるというのが多くの国々の反応であるという。

 

 

 だからこそ、一部の国々は彼の国との接触を図るか悩んでいるという。

 

 

 


 

 

 

 第二文明圏 ムー

 

 

 

「結果は分かっていたが、ロデニウス連邦共和国が圧勝に終わったか」

「しかしこれほどとはな……」

「本当に対応を誤っていたら、ロデニウスは第二のグラ・バルカス帝国になっていかもしれんな」

 

 ムーにおける首相官邸にて、今回の戦争についての話し合いが行われていた。

 

 先の戦争に参戦こそしていなかったが、多くの観戦武官を送っていたので、その甲斐あってロデニウスの戦闘風景や戦術、武器兵器の運用等、様々な情報が集まった。

 それらの情報は、ムーに有益なものばかりである。

 

「しかし、あのパーパルディア皇国が解体され、新たな国家が近日樹立予定か」

「これほどまでやられたのだ。もうあの国が覇権国家へ舵を切ることも無いだろう」

「それ以前にそれだけの力もないだろう。むしろ他国からの侵略に日々怯えなければならない状況だ」

「だからこそのあの計画なのだろうな」

 

 閣僚が各々の意見を口にしており、今後の皇国について話をしている。

 

 ちなみに閣僚の一人が口にした計画と言うのが、以前講和会議でも触れられた計画の事である。計画自体はロデニウス連邦共和国とアルタラス王国、フェン王国、73ヵ国以外には、ムーのみがその内容を聞かされている。

 

 この計画もまた、この世界に大きな衝撃を齎すのに違いない。

 

「しかし、新国家への支援を我が国に一枚噛ませてくれたのはありがたいな」

「我が国の事情を鑑みたロデニウス側の配慮だろう。まぁお陰でこちらとしては助かるものだが」

「これで我が国の財政状況に大きな変化があるといいのだが」

 

 と、閣僚達が口にしているは、新国家樹立に際して、ロデニウス連邦共和国は旧皇国時代の戦災被害の復興支援を行うのだが、その支援にムーが大きく関わることになった。

 

 これはロデニウスから多くの技術や品々を輸入して貿易が赤字になってしまったムーへの措置であり、新国家への貿易はムーが主に行うことになっている。そしてこれを機にムーは第三文明圏への貿易拡大を狙っている。

 

 そしてこれはロデニウス側の要望であるが、軍事面でも新国家への支援をムーが行うことになった。

 

 今やムーの軍事事情はロデニウスから多くの武器兵器と関連技術の輸入を行っていることで、ほぼロデニウス一色になりつつある。そうなれば国内の軍需産業が悲鳴を上げるのは当然と言える。

 

 ロデニウス製の武器兵器のライセンス生産や武器兵器国内生産を行う拠点として受け入れたメーカーは良いが、それが出来なかったメーカーは大きな損失を生み出している。このままでは多くのメーカーが倒産するという。

 

 何より武器兵器が一新されている以上、これまで使ってきた国産の武器兵器の在庫が大量に発生しており、これをどうするかで悩んでいた。捨てるにはもったいないし、処分しようにもそれだけでも金が掛かる。懐事情が厳しいムーはなるべく金を掛けない方法を模索していた。

 以前は余剰となっていた歩兵砲を73ヵ国連合の支援にロデニウス連邦共和国が密かに購入していたが、それはあくまでも一部分でしかなく、国内には未だに多くの在庫を抱えている。

 

 そこで白羽の矢が立ったのが、今回の新国家樹立に際する軍事支援である。要は整備した中古品を格安で新国家に売却するのである。武器兵器の売却と同時に、その武器兵器を扱う為の教導もムーが併せて行うという。

 これにより、ムーは金を手に入れて、武器兵器の在庫を一掃できるわけである。

 

 しかしそれでは皇国の時よりも武器兵器の技術力が上がってしまい、むしろ危険性が上がるのでは? と思われるが、その辺もムーとロデニウスは抜かりなく、対策を講じている。

 

 現時点でムーが新国家へ売却するのは小銃、機関銃、歩兵砲、後は装甲車ぐらいで、国の防衛を行う程度の戦力しかない。しかし周辺国の技術力と比べれば、それだけでも十分な戦力になる。

 そして武器兵器の流出を防ぐ為に、弾薬共々管理はムーやロデニウスより派遣された軍人が厳しく行うようにしている。

 

 海からの攻撃を受けたらどうするかと言うと、そこはロデニウスより造船業の救済措置として発注されて建造され、海上警備隊で運用されている『第50号仮装帆船』が有償供与されることになっている。もちろん一部設計を変更した上での供与である。

 最終的にはこの仮装帆船のライセンス生産を許可して新国家でも建造出来るようにする予定である。これも新国家の造船業への救済措置になる。

 

 今後新国家がロデニウスを中心に周辺国より認められていけば、ムーは航空機の売却や船舶の建造受注を行う予定である。

 

 ともあれ、ムーとしては新国家は今後新たな貿易拡大のきっかけになるとして、大いに期待されているのだ。

 

「ところで、軍備計画の方はどうなっている?」

「主力戦車として採用を予定している戦車の選定は終わり、現在は最初の配備分の戦車がロデニウスより運ばれています。近日中には到着予定です」

「航空機も採用予定の機体が同じくロデニウスより運ばれている最中かと」

「武器兵器の生産拠点の建造と、ライセンス生産を行う拠点の工場の改装も進んでいます」

「そうか」

 

 

 その後ムー政府はロデニウスとの貿易や武器兵器についての話し合いへと移り、今後の国防に関する会議が行われるのだった。

 

 

 


 

 

 

 所変わり、第一文明圏 神聖ミリシアル帝国

 

 

 ロデニウス連邦共和国が第三文明圏の列強国パーパルディア皇国に勝利したという報はもちろん、第一文明圏の列強国であり、世界最強の国家としてと謳われる神聖ミリシアル帝国の耳にも届いている。

 

 

「第三文明圏で唯一とはいえ、列強国のパーパルディア皇国が文明圏外の国に敗れるとは……いまだに信じられないな」

「ですが、紛れもない事実です」

 

 ミリシアルの外務省で、二人の職員が話している。片方は外務省統括官の『リアージュ』で、もう片方は情報局長の『アルネウス』である。

 

 リアージュはアルネウスが持ってきた情報に、信じ難いといった様子を見せている。

 

 彼らの常識で考えれば、格下の国による格上の国のジャイアントキリングなど考えられないのだ。

 

「レイフォルを滅ぼしたグラ・バルカス帝国に続いて、パーパルディア皇国までもが文明圏外の国に敗れる……」

「しかし、この世界で一体何が起きているのでしょうか?」

「分からん。だが、我々が想像できない何かが起ころうとしているのは確かだろう」

 

 リアージュはテーブルに広げているロデニウスに関する書類を見る。以前皇国にあるミリシリアル大使館から送られた各々の情報である。

 

「しかし、ロデニウス連邦共和国か。以前君から聞かされた時はとても信じられなかったが……この結果を見ては信じる他ないな」

「だから言ったはずですよ。ロデニウスはパーパルディアに圧勝できると」

「だがな。ムーの航空機に酷似した航空機が目撃された、これはまだ理解できる。しかし、だ。我が国の天の浮舟に酷似た航空機が目撃されたと言って信じられるはずも無いだろうが」

 

 アルネウスの言葉に呆れた様子でリアージュはテーブルにある魔写の一枚を手にする。魔写には最初のエストシラント空襲時にミリシアル大使館の職員が撮影した景雲四型改が写っている。

 

 明らかに神聖ミリシアル帝国の天の浮舟と呼ばれる航空機に構造が酷似しているのだ。自分達の国以外で、それも文明圏外の国が持っているとは考えられないのだ。

 

「ですが、今回の一件でロデニウスの力が証明されたわけです。ですので、彼らを確かめるためにもぜひ早期に使節団の派遣を……」

 

 と、アルネウスはロデニウス連邦共和国への使節団派遣の検討をリアージュ申し出る。

 

 彼は以前よりロデニウスに対して興味津々であり、天の浮舟に酷似した航空機が目撃されてからもそうだが、今回の一件で益々気持ちが強くなったので、早くロデニウスを確かめたくて今回リアージュに使節団の派遣を提案しに来た。彼は文明圏外国家に対して偏見のある人物であるが、幸い穏健派の方なので、今回の使節団派遣の提案を行うにあたり、ここから牙城を崩すべきだと判断した。

 

 とは言えど、そう簡単に使節団派遣の判断が下せる案件では無いのは違いない。

 

「アルネウス君。情報局長である君がロデニウス連邦共和国の情報を集めたいのは分かるが、我が国は世界最強の国だよ? ただ単に国交締結を目的として我が国から打診し、使節団を派遣するなど……しかも、列強国ですらない、文明圏外国に」

 

 リアージュはアルネウスの仕事に対する情熱に感心するが、この国の者らしからぬ腰の軽さに呆れた様子を見せている。

 

 世界最強と謳われているミリシアルが、文明圏外の国と簡単に国交を結びに行くというのは、彼らからすると品格を疑われるようだ。例え結果を示しても、そう簡単に認められるわけでは無いのだ。

 

 パーパルディア皇国ほどでは無いにしても、彼らも格下の他国を見下している傾向にあるのだ。

 

「リアージュ様。ロデニウス連邦共和国は今後、皇国に代わる第三文明圏の……いや、東方大陸国家群の代表的な存在になると思われます。それだけの存在となれば、我が国から打診を行うのはおかしな話ではないかと」

「しかしだねぇ……」

 

 彼の一理ある説明に理解はしているが、やはりこの世界における常識が納得を妨げているようである。

 

「でしたら、ロデニウス連邦共和国を我が国が主催する先進11ヵ国会議に、皇国の代わりに呼ぶこととし、その準備すべき事柄を指導するという形で……国交締結の準備を含め、使節団を派遣するというのはどうですか?」

「うーん……それなら議員の方も納得するかもしれないか」

 

 リアージュは顎に手を当てて悩むも、今後の事を考えたことで、ようやく彼から折れることになる。

 

「分かった。検討と根回しをしておこう」

「ありがとうございます」

 

 アルネウスはリアージュに深々と頭を下げて感謝の意を示した。

 

 

 そして後日、神聖ミリシアル帝国は、ロデニウス連邦共和国に使節団の派遣を決定した。

 

 

 

 




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