異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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今年最後の投稿になります。
来年も本作をよろしくお願いします


第百十五話 蓄えられる力

 

 

 

 

 中央歴1640年 5月12日 トラック泊地

 

 

 

 

『間もなく、トラック諸島上空に到着します』

 

 輸送機型の連山改の機内にて、目的地付近に到着したアナウンスが流れる。

 

「ようやく着いたかぁ……」

「あぁ。長かった……」

「まぁ、あんまり言うべきじゃないんだけど、ラ・カオスと比べれば乗り心地は良い方よ」

 

 座席に座るマイラスとラッサンは、両腕を上げて身体を伸ばし、固まった身体を解して、アイリスはモノクルを取って目頭を押さえてコリを解す。

 

「にしても、トラック泊地で行われるパーティーに、俺達が招待されるとはな」

「まぁ、彼らがムーの人間で知っているの、私達くらいよね」

 

 ラッサンが意外そうにそう言うと、アイリスは肩を竦める。

 

「それに、二人はどうやらKAN-SENと仲がよろしいみたいだし。それもあるんじゃないの」

 

 と、アイリスはマイラスとラッサンの二人をジトーとした目で見る。

 

「そ、それは……さすがに違うんじゃないか?」

「どうかしら」

 

 マイラスは少し戸惑った様子でそう答えるが、アイリスは鼻を鳴らす。

 

「まぁ、俺達がトラック泊地に向かうのは、工場の見学が目的で、パーティーの参加はついでなんだけどな」

「確か本国の統合軍で採用された戦車の生産工場だったな」

 

 マイラスがそう言うと、ラッサンが今日の予定を思い出す。

 

 今回彼らがトラック泊地へと赴いたのは、近日行われる宴会に参加するのもあるが、それはあくまでもついでで、本来の目的はトラック泊地にある工場の見学である。

 その工場では、ムーに輸出している物を含めた、数種類の戦車が作られている。

 

 

 ―――!!

 

 

 すると大きな音が機内に響き渡って、三人は驚いて身体を震わせる。

 

「今の音は!」

 

 三人はとっさに窓から外を見ると、連山改の両側を並走するように航空機が姿を現す。

 

「やっぱり、ジェット機か!」

 

 その航空機がジェット機であったので、マイラスは喜びを表す。

 

「っ! 待てよ……」

 

 と、マイラスはジェット機を見て、すぐにあることに気付く。

 

「よく見たら、見たことが無い機体だ! 新型機か!」

 

 彼が思わず叫ぶと、ラッサンのアイリスもすぐさまジェット機を見る。

 

 連山改の両脇を固めるジェット機は、洋上迷彩が施されているが、これまでの景雲シリーズとは異なるジェット機であり、丸みを帯びたラインを持つ機体形状をしている景雲シリーズと異なり、そのジェット機は直線的なラインを多用している。

 ジェットエンジンはこれまでの景雲シリーズ同様双発だが、明らかに景雲シリーズとは大きく進化しているのが見て取れる。

 

 そのジェット機こと『F4 ファントムⅡ』 妖精達が景雲シリーズでジェット機の開発を進めている中で、『ゲイザー』より齎されたデータを加えたことで完成させたジェット機である。

 

 機体そのものは完成しているが、武装面はまだ未完成な部分があるそうで、現段階では武装は従来の戦闘機に近い構成となっている。

 

「もう新型機が作られているんだな」

「こんなにも開発スパンが早いと、祖国がロデニウスに追いつくのは無理じゃないかしら」

 

 F4 ファントムⅡを見てラッサンとアイリスの二人は諦め気味に呟くのだった。ただでさえ航空機一機を開発するのに、どれだけの時間と金、労力を投じなければならないのか。

 

(凄いな。以前よりも更に進化している。ジェット機は果てが見えないな)

 

 一方マイラスの方は、まだ見えぬジェット機の進化に期待を膨らませる。

 

 

 


 

 

 

 連山改はトラック諸島春島にある飛行場へと着陸し、駐機場へと移動して停められる。

 

 機体の扉が開けられてマイラス達が降りてくると、『大和』と『エンタープライズ』が出迎えに来ていた。

 

「お久しぶりです、マイラス殿」

「お久しぶりです、『大和』殿」

 

 マイラスが代表してあいさつし、彼らはそれぞれ『大和』と握手を交わす。

 

 その直後に、F4 ファントムⅡが上空を飛行して飛行場へ下りる為に旋回する。

 

「それにしても、もう新型のジェット機が出来たんですね」

「えぇ。うちの技術陣は寝る間も惜しんで研究開発を行う連中ですから、武器兵器の開発期間が短いんですよ」

「それ大丈夫なんですか?」

「大抵開発が終われば何人か病院送りになっています」

「そ、そうなんですか」

 

 ため息を付く『大和』の姿から、マイラスはその苦労を察して苦笑いを浮かべる。

 

「それでは、工場へ案内します」

 

 『大和』は気持ちを切り替え、三人を連れて駐機場の隣にある格納庫へ向かう。

 

「工場は隣の島にありますので、こちらに乗って移動します」

 

 と、『大和』が妖精達に声を掛けて格納庫の扉を開けさせ、中からとある機体を引っ張り出す。

 

「これは……」

 

 マイラスは驚きと共に、喜色ある表情を浮かべてその機体を見つめる。

 

 

 OD色に塗られたそれは、機体上部に大きなプロペラを持ち、機体後部に小さなプロペラが付いた構造をした航空機で、機体の両側には様々な装備を搭載できるラックが備えられている。

 

 機体の名は『UH-60 ブラックホーク』 ヘリコプターと呼ばれる回転翼機である。

 

 この機体はリーンノウの森に残されていた太陽神の使いが使っていた品物の一つであり、妖精達が徹底的に調査して構造を把握し、コピー製造した機体を元に試験と改良を重ね、完成した機体である。

 

 垂直離陸にその場に留まれる飛行性能に加え、攻撃に人員輸送、救援活動に使える多用途が行えるヘリコプターの利便性から、連邦共和国の陸海空の軍それぞれで採用された。

 

 ちなみにヘリコプターはこのUH-60 ブラックホーク以外にも別種のヘリコプターが二種類あり、そちらも妖精達によって製造されており、そちらも軍に採用されている。

 

 

「これは回転翼機と呼ばれるヘリコプターです。名称はUH-60 ブラックホーク」

「ヘリコプター、ですか。構造はオートジャイロに似ていますね」

「えぇ。このヘリコプターはオートジャイロから技術的進化していますので、似ているのは当然です」

「なるほど」

 

 『大和』より説明を受けて、マイラスはUH-60 ブラックホークを見る。

 

「それでは、行きましょう」

 

 『大和』と『エンタープライズ』はマイラス達を用意したヘリコプターに案内し、準備を終えたヘリはゆっくりと飛び上がって隣の島に向かって飛ぶ。

 

 


 

 

 所変わって、トラック諸島冬島にある研究所

 

 

「それにしても、あいつら随分作ったな」

「えぇ。妖精の皆様の技術には驚かされてばかりです」

 

 目の前にある光景に、『紀伊』と『ヴェスタル』が半ば呆れた様子で呟く。

 

 彼らの目の前には、仄かに金色に光り輝く四方体こと、疑似メンタルキューブが積み上げられている。

 

 最初の建造試験以来、妖精達は疑似メンタルキューブの量産を行っており、最初の試験以降二、三回ほどしか建造を行っていなかったので、これだけ溜まったようである。

 

「まぁ、これからの事を考えると、むしろこれだけ量産してくれたのはありがたいな」

「そうですね。艦艇の量産もそうですが、KAN-SENの増員も行う予定でしたし」

 

 疑似メンタルキューブの山を見ながら、二人は会話を交わす。

 

 『大和』と『紀伊』はパーパルディア皇国との戦争を経て、今後に備えてカナタ大統領と話し合いの末に、軍拡を行うことになった。それは共和国陸海空軍の戦力もそうだが、トラック泊地の戦力増強が一番大きい。

 

 疑似メンタルキューブで軍艦を建造出来るのは確認済みであるので、今後ムー向けの軍艦の建造を疑似メンタルキューブで行う予定であるが、あくまでもメインはKAN-SENの建造である。

 

 以前よりトラック泊地で問題になっている駆逐艦と巡洋艦のKAN-SENの不足を、今回の建造である程度解決させておくのが、今回の建造での目的である。

 

 しかし疑似メンタルキューブでの建造は、『涼月』や『ニュージャージー』といった『カンレキ』が異なるKAN-SENの場合や、『伊507』という未知のKAN-SENの場合もあるので、何が起こるか分からないのが不安要素であるが、オリジナルのメンタルキューブが少ない以上、疑似メンタルキューブで建造を行わなければならない。

 

(正直不安だが、今後の事を考えれば、戦力の増強は不可欠だ。背に腹は代えられない)

 

 彼は内心呟き、疑似メンタルキューブの一つを手にする。

 

「『ヴェスタル』。頼む」

「はい」

 

 『紀伊』より疑似メンタルキューブを受け取った『ヴェスタル』は、建造を行う機械にキューブを設置して、建造作業に入る。

 

「ところで、『ビスマルク』と『榛名』の二人だが」

「はい。そろそろ予定日ですからね。準備は整っています」

「そうか」

 

 『ヴェスタル』の返事を聞き、『紀伊』は二人のことを思い出す。

 

 体内でキューブの生成が順調に進んでいる『ビスマルク』と『榛名』の二人だが、そろそろ予定日を迎えることになる。

 

(『扶桑』の事もあるから、どんな子が生まれてくるか分からないな)

 

 家族が増えるという楽しみであると同時に、不安もあった。

 

 件数が少ないがゆえに、未だに多くの謎を抱える第二世代のKAN-SEN。どんなKAN-SENが生まれるのかは全く想像が付かない。

 

 『紀伊』と『扶桑』の間に生まれた『まほろば』が戦艦で、『武蔵』と『翔鶴』、『瑞鶴』の間に生まれた『蒼鶴』、『飛鶴』が空母という例もあるが、『大和』と『天城』の間に生まれた『筑後』が双胴航空戦艦というケースもある。

 戦艦と戦艦だからといって戦艦の子が生まれて来る保障は無い。何なら『榛名』は巡洋戦艦だが、防空戦艦として改装されているので、その辺が子供に何かしらの変化を与える可能性もある。

 

 もしかしたら、想像もつかないKAN-SENが誕生する可能性もあるのだ。

 

(いや、今は考えないでおこう。考えたって、何かが変わるわけじゃないしな)

 

 色々と不安はあるものの、『紀伊』は気持ちを切り替え、KAN-SENの建造の様子を見守る。

 

 

 


 

 

 

 所変わり、春島の隣にある人工島

 

 

 妖精達はトラック諸島の拡張を日々行っており、島の拡張は海を埋め立てたり、海上油田のような設備のように海に足場を建築したりと、様々な方法でトラック諸島の規模は大きくなりつつある。

 

 その工場は新たに作った人工島に作った新工場であり、先の戦争の最中に完成して稼働し始めたばかりである。

 

 

 UH-60 ブラックホークで移動した『大和』達は、妖精達によって作られた人工島へ到着し、そこに建てられた工場に向かっていた。

 

 

 

「これは凄いな」

 

 視界いっぱいに広がる光景に、マイラスは思わず声を漏らす。

 

 工場内では、建物内いっぱいに戦車が妖精達の手で造られている。これらの戦車は殆どがムーへ輸出する戦車である。

 

「ロデニウス本土ならまだしも、諸島の一つの工場だけでこれだけの生産量を誇るなんて……ホント規格外だわ」

 

 アイリスは驚きを隠せず、息を呑む。

 

 この工場で製造されているのは、ムー統合陸軍が採用した戦車……『センチュリオン巡航戦車』である。

 

 グラ・バルカス帝国に大きな脅威を感じているムーは、ロデニウス連邦共和国より齎された情報を下に調査を行い、グラ・バルカス帝国の技術力を推測した。

 

 その結果、グラ・バルカス帝国の技術力はムーを大きく上回ることが判明し、当然帝国にも戦車があるという結果となった。少なくともムーにあるラ・グラントを上回る性能を持つ戦車である可能性が高いとのことだ。

 

 ムーはラ・グラントの後継となる戦車の開発を行おうとしたが、独力では開発が困難を極めるのが判明し、日々帝国の脅威が増している中で悠長な事は出来ないと上層部は判断し、ロデニウス連邦共和国に戦車の輸入を行いたいと打診した。

 

 ロデニウスはムーの事情を鑑みて、戦車の輸出を認め、先日ムーで統合陸軍で主力戦車として採用するコンペが行われた。

 

 このコンペに出されたのは、ユニオン製の『M46 パットン』、ロイヤル製の『センチュリオン巡航戦車』、鉄血製の『ティーガーⅠ』と『パンターG型』、北連製の『T-44』と『IS-3』、重桜製の『61式戦車』が候補に挙がった。

 

 いくつもの試験の結果、M46 パットンとセンチュリオンが最後まで残り、結果ムーが採用したのはセンチュリオンであった。

 

 一応各国製の戦車は試験で優秀な結果を残したが、鉄血製の戦車は構造が複雑で整備性に難ありとされ、北連製の戦車は居住性の悪さが目立ち、重桜製の61式戦車は性能不足が指摘された。

 しかしこれらは今後の国産戦車の研究開発に役立てるために、少数が輸入されることになっている。

 

 ムーはセンチュリオンMK.5を採用し、既に初期生産された戦車がムー本土に運ばれ、訓練を開始したという。最初は輸入に頼る事になるが、将来は国内で生産出来るようにするという。

 

 ちなみにこのセンチュリオンだが、オリジナルと異なって一部設計に変更を加えたロデニウス独自の派生型で、エンジンは交換が容易に出来るようにパワーユニット化して整備性を向上させている。

 

「この生産能力、祖国でも出来ればいいんだがな」

 

 ラッサンは羨ましそうにそう呟くも、祖国がある程度工作機械を多く導入しているとは言えど、それでも職人の技術が中心という規格性に欠けた工業である。

 

「ん? あれは……」

 

 と、マイラスは製造ラインを見回していると、あることに気付く。そこにはセンチュリオンに混じって、別の戦車が製造されている。

 

「あそこでは、別の戦車を作っているんですね」

「えぇ。あそこの戦車はトーパ王国向けに製造しています」

「トーパ王国にですか?」

 

 意外な国の名前に、ラッサンは驚いた様子で問い掛ける。

 

 

 ロデニウス連邦共和国と国交を結んだトーパ王国は、ロデニウスに武器兵器の輸出が出来ないか交渉をしていた。というのも、トーパ王国は魔物が大半を占めている『グラメウス大陸』より魔物の襲撃を日々受けていた。

 トーパ王国の深刻な実情を受けて、ロデニウスは特別にトーパ王国に武器兵器の輸出を認めた。

 

 トーパ王国は寒冷地に近いので、寒さに強い北連製の武器兵器が選ばれ、武器兵器と共に教導を行う部隊を王国に送っている。

 

 この工場ではトーパ王国向けに『T-34-85』と『IS-2』が製造されて、トーパ王国へ輸出されている。

 

 

「トーパ王国では魔物の襲撃が多いので、国家の防衛のためにと特別に武器兵器の輸出を認めているんです。まだ他の国では準備に手間取って輸出出来ない状況でして」

「そうなのですか」

 

 マイラスは頷いてT-34-85とIS-2を見る。

 

「では、次の工場の案内をします」

 

 少しして『大和』達は次の工場へ向かう為に戦車の工場を後にする。

 

 

 

 




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