異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第百十七話 正しい判断とは

 

 

 

「賑やかだねぇ」

「そうだね」

「そうですわね」

 

 会場の雰囲気を感じながら、『武蔵』、『翔鶴』、『瑞鶴』が呟く。

 

 時間が経つにつれて、会場の賑やかさが増してきており、所々でわいわいと騒いでいる。

 

「こうして宴会が開かれるのも、ホント久しぶりだよね」

「うん。少なくともこっちじゃ初めてだし、旧世界でも、宴会をしたのはだいぶ前の話だし」

「その時は、私達が身籠っていた頃でしたからね」

 

 三人は今日に至るまでのことを思い出して、感慨深く呟く。

 

「それが、今じゃ立派に育ったね」

 

 『瑞鶴』は料理が置いているテーブルでいっぱい食べている『蒼鶴』と『飛鶴』の姿を見て、微笑みを浮かべる。

 

 

「やぁ、『武蔵』、『翔鶴』、『瑞鶴』」

 

 と、声を掛けられて三人が声がした方を見ると、『尾張』と『ティルピッツ』がやってくる。

 

「『尾張』さん。『ティルピッツ』さん」

「三人とも、楽しんでいるか?」

「えぇ」

「はい」

「うん」

 

 『尾張』が問い掛けると、『武蔵』『翔鶴』『瑞鶴』はそれぞれ頷く。

 

「そういう『尾張』はどうなの?」

「もちろん楽しんでいるよ」

 

 と、『瑞鶴』に問われて『尾張』は手にしている酒が注がれたグラスを見せる。

 

「あっ、そうだ」

 

 と、『武蔵』は何かを思い出す。

 

「『ティルピッツ』さん。ご懐妊おめでとうございます」

「そうでしたわ。ご懐妊おめでとうございます」

「おめでとうございます!」

「えぇ、ありがとう」

 

 三人がお祝いの言葉を送ると、『ティルピッツ』は頬を赤くしてお腹に手を添え、小さく頷く。

 

 この度、『尾張』と『ティルピッツ』の間に、新しい命が芽吹いたのである。二人は状況が状況だったので、中々タイミングが来なかったものの、戦争が終わり、互いにタイミングが良かったとあって、新世代の建造に挑んだのである。

 

「それにしても、意外と長かったですね。指揮艦はわりと早かったのに」

「まぁ、兄さんの時は事情もあったし……。俺の時は中々機会がなかったし」

 

 『瑞鶴』の言葉に『尾張』は苦笑いを浮かべる。

 

「そうですよね。そういえば―――」

 

 と、『翔鶴』が意味ありげな表情を浮かべて『尾張』を見る。

 

「『尾張』さん。ロシアさんと『ワシントン』さんとの間でも出来たみたいですね」

「……」

「ついでにいうと、指揮艦も『ノースカロライナ』さんとの間に出来たみたいですし」

「……」

「血は争えないですね」

 

 と、ジト―とした目で『尾張』を見ながら「私たちの旦那様を見習ってほしいですね」という『翔鶴』に、彼は苦笑いを浮かべるしかなかった。その横で『ティルピッツ』が複雑そうな表情を浮かべる。

 

 実を言うと、『尾張』は『ティルピッツ』の他に、『ソビエツカヤ・ロシア』と『ワシントン』との間でも建造を行っている。前者は良い雰囲気での出来事だったのだが、後者二人に関しては『ティルピッツ』に出遅れたという焦りからか、『尾張』を押し倒してなし崩し的に建造を行ったとかなんとか。まぁこれでも一応お互いの同意を得ての建造であったわけだが。

 

 一応この兄弟の名誉の為に言っておくが、決して安易な気持ちがあって嫁が増えているわけでは無い。ちゃんとお互いの気持ちの確認をとって、然るべき形でケッコンしているし、無暗に増やそうとは思っていない。

 

「ま、まぁ『翔鶴』姉。家族が増えるんだから、イジらないイジらない」

 

 そこへ『瑞鶴』が助け舟を出して『翔鶴』を宥める。妹に宥められて『翔鶴』は顔を背ける。

 

(遠回しに兄様がディスられた気がする)

 

 『翔鶴』の言い回しに自分の兄が何気にディスられているような気がする『武蔵』だった。

 

 


 

 

「『蒼龍』様」

 

 と、会場の一角で、ルミエス王女が『蒼龍』に声を掛ける。

 

「ルミエス様。この度はご招待に応じて貰い、ありがとうございます」

「こちらこそ、宴にご招待していただき、ありがとうございます」

 

 二人はお互いにお礼を言って、乾杯する。

 

「最近は陛下のご容体はどうですか?」

「はい。少し前までお父様の容体はあまりよくありませんでしたが、ここ最近の体調は安定しています。ロデニウスから輸入しているお薬や医療技術のお陰です」

「そうですか。それは何よりですね」

 

 ルミエスよりターラ14世の容体について聞き、『蒼龍』は安堵した様子を見せる。しかし一瞬だけどこか複雑そうな表情を浮かべたが、彼女はそれに気づかなかった。

 

「『蒼龍』様」

「何でしょうか?」

「まだ分からないんですが、今後長い間お時間を頂けるでしょうか?」

「どうしてです?」

 

 『蒼龍』はルミエスの問いに首を傾げる。

 

「以前よりお父様が私と『蒼龍』様を交えて話がしたいと言っておりました」

「はぁ、陛下がお話、ですか」

「えぇ。とても大事な話だそうで」

「そうですか」

 

 ルミエスより話を聞き、『蒼龍』は首を傾げて一考する。

 

 一国の国王が娘を交えて話がしたい、という状況に彼は戸惑いを隠せなかった。色々と考えが過るが、『蒼龍』は頭を切り替える。

 

「今は何とも言えませんね。そちらの予定を聞いてからじゃないと、こちらも予定が建てられないので」

「そう、ですよね」

「とはいえど、その話の内容次第ですね。どういった話なのか聞いていますか?」

「は、はい。一部の内容は直接会った時に話すと言っていまして、それ以外ですと、アルタラス王国が抱える問題に関する話とお聞きしています」

「王国が抱える問題、ですか?」

 

 ルミエスが話した内容に、『蒼龍』は怪訝な表情を浮かべて首を傾げる。

 

「アルタラス王国が魔石の採掘国であるのはご存知ですね」

「えぇ。第一、第二文明圏でも魔石関連の貿易があると」

「はい。その魔石の採掘場で、王国はかなり前から問題を抱えていまして」

「と、言いますと?」

「かなり前の出来事になるんですが、新しく魔石の採掘場を作ったんです」

 

 ルミエスは『蒼龍』に説明を始める。

 

「最初は何も問題無かったんですが、掘り進めるにつれて謎の奇病に掛かる鉱夫が続出したんです」

「謎の奇病ですか」

「はい。記録によれば最初は体調を崩して、次第に肌が荒れて、髪の毛が抜け落ちて、最終的に身体がボロボロになって亡くなったそうです」

「……」

「その奇病に掛かる鉱夫が続出したので、その採掘場は禁忌所として封印されて、今も残っています」

「壊してないんですか?」

「どうもその採掘場で取れる魔石は純度が良く、その質の良さから採掘場を崩すのがもったいなかったそうで、将来的に問題解決を視野に入れて残したそうです」

「なるほど」

 

 物凄い未練たらたらな判断に、『蒼龍』はどことなく微妙な表情を浮かべる。だが同時に放っては置けないという判断に納得する。

 

「しかし、それとどう関係か?」

「お父様は、その禁忌所の問題解決にロデニウスにご協力を要請したいそうです」

「なるほど。しかし、よろしいのですか? 何だかんだで国の重要な場所なはずでは」

「高い技術力を持つロデニウスであれば、長きに渡ってアルタラス王国が抱える問題を解決できると、お父様は考えておられるかと」

「そうですか。興味の引かれる内容ですので、カナタ大統領は前向きになってくれると思います」

 

 彼が追う言うと、ルミエスの表情に喜色が浮かぶ。

 

「とりあえず、可能な限り予定を立てられるようにしておきます」

「ありがとうございます」

 

 ルミエスはお礼を言いながら頭を下げる。

 

 その後二人は他愛も無い世間話をして、時間を過ごした。

 

 

 ちなみに、終始ルミエスの後ろでリルセイドは微笑みを浮かべて見つめており、『蒼龍』の横でどこか不機嫌そうな『飛龍』が彼を見つめていた。

 

 

 


 

 

 

「……」

 

 会場の様子を『三笠』は酒が注がれたグラスを手に、ゆっくりと見回していた。

 

「よぉ、『三笠』」

 

 と、声を掛けられて振り向くと、『紀伊』の姿があった。

 

「おぉ、指揮艦ではないか。宴は楽しんでいるか」

「あぁ。楽しんでいるよ」

 

 彼女の下へと近づきながらそう答えると、二人はグラスを軽く当てて乾杯する。

 

「改めまして、先の戦争では、お疲れ様です」

「礼には及ばんよ。我はやるべきことをやっただけのことだ」

 

 『紀伊』が礼を言うと、『三笠』は謙遜して答える。

 

「しかし、こうして再び皆と宴が出来るのも、皆が頑張ってくれた賜物だな」

「えぇ。そうですね」

 

 二人は会場の様子を見渡しながら、言葉を交わす。

 

 

「……『三笠』」

「なんだ?」

「すまないな。あんたに気苦労を掛けさせて」

 

 『紀伊』がデュロで起きたことについて謝罪すると、『三笠』は真剣な表情を浮かべる。

 

「……指揮艦が謝ることではない。責任は確認を怠った我にある」

「しかしなぁ」

「それに、あの者達のみならず、あの事件があった以上、他の者でもあのような事が起きえたのだ。それを考慮しなかった我が浅はかだったのだ」

「……」

 

 『三笠』の頑なな姿勢に、『紀伊』は何も言えなかった。

 

「戦争というのは、あそこまで人を変えるのだな」

「……」

「指揮艦」

「なんだ?」

「彼らの復讐を止めた私の判断は、正しかったのか?」

 

 と、『三笠』はどこか虚ろな目で『紀伊』に問い掛ける。今まで見たことの無い、弱り切った彼女の姿に、『紀伊』は戸惑いを見せる。

 

「……」

 

 彼女からそんな目を向けられた『紀伊』は、気持ちを落ち着けつつグラスの酒を飲み、傾けたグラスに入っている氷が音を立てる。

 

「少なくとも、過ちを犯した彼らを止めたことに変わりはありません。それは正しい行動です」

「……」

「ですが、彼らの行動も一概に否定はできません。復讐するしないを決めるのは自らです。我々第三者が決める事ではありません」

「……」

「でも、彼らの感情を肯定するわけにもいきません。法治国家で一つの復讐を認めれば、一つ、また一つと、復讐の連鎖が連なっていき、歯止めが利かなくなります」

 

 『紀伊』が述べる言葉を、『三笠』は何も言わず黙って聞く。

 

「だからこそ、我々は我々のやり方で、復讐をやり遂げたのです。あなたの行動は正しかった。それは胸を張って誇っても良いんです」

「誇ってもいい、か」

 

 彼女はそう呟きながらグラスに入っている酒を見つめ、一気に飲み干す。

 

「そうだな。少なくとも、愚行を止めることは出来たのだな」

「えぇ」

「……」

 

 『三笠』はグラスに入っている酒を飲み干し、深く息を吐く。

 

「それで、彼らはどうなるのだ?」

「彼らの判断次第で、変わって来ると思います。例の制度を受けるかどうかは」

「そうか……」

 

 彼女はそう言うと、氷だけが残ったグラスを見る。

 

「ならば、我もいつまでも引き摺っているわけにもいかんな!」

「ですね」

 

 と、いつものテンションに戻った『三笠』に、『紀伊』は笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 




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