異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第百二十一話 妖精達の飽くなき探求心

 

 

 

 中央歴1640年 6月2日 フィルアデス大陸

 

 

 大陸上空を飛行するのは、旅客機仕様の連山であり、ある場所を目指して飛行している。その護衛には目的地にある飛行場よりやって来た四発の双子機天雷がついている。

 

 

「もうそろそろ到着するな」

「そうだな」

 

 機内には、『大和』と『土佐』、『蒼龍』と『飛龍』の姿があった。

 

「しかし、色んな意味で不安だな。あいつらが一体どんなことをやって来たかを知るのが」

「それは否定できんな。制約の無い環境下だからな」

 

 『大和』と『土佐』の二人はどこか不安な様子を見せている。

 

 彼らが今向かっているのは、先の戦争でロデニウス連邦共和国が旧パーパルディア皇国より得たパールネウスと周辺の領土である。

 

 この領土はロデニウス連邦共和国の海外領土となり、『フィルデア州』と名付けられた。

 

 フィルデア州はロデニウス連邦共和国の領土であるの間違いないが、その実態には少しばかり特殊な事情が絡んでいる。

 

 


 

 

 ここで話は変わるが、トラック泊地に住み着き、KAN-SEN達を支える存在『妖精』について少しだけ話そう。

 

 二頭身で可愛らしい見た目をしているのが特徴的だが、身体能力は成人男性を上回り、頭脳も高い。可愛らしい見た目とは裏腹に、妖精達はハイスペックの持ち主である。

 

 そして何よりこれは彼女達の存在理由であり、本質であるが、妖精達は根っこからの技術者であり、探究者でもある。だから彼女達はKAN-SENの為に研究開発を行う。全ては自分達の探求心を満たすために。

 

 だが、彼女達には、ある問題がある。それは彼女たちの数である。

 

 というのも、彼女達妖精は理由と要因は不明だが、日に日にその数が増えており、トラック諸島では住む場所が手狭になって来ていた。なので妖精達はトラック諸島の一部を埋め立てたり海上油田のような洋上建築技術を用いて島の拡張を行ってきた。

 だが、さすがに島の拡張では限界が来ていて、この世界に来た当初はかなり手狭になっていた。

 

 その後ロデニウス大陸の国々が統一し、『ロデニウス連邦共和国』として建国した際、『大和』はカナタと妖精達の居住スペースを確保できないかと相談し、その結果南ロウリア州の誰も居ない土地に妖精達の居住スペース兼研究開発設備と造船所が造られることになった。

 

 当初は南ロウリア州の住人と妖精達が考え方の相違で衝突しないか不安であったが、両者は良好な関係を築いて今に至るので、とりあえず一安心であった。

 

 

 だが、これだけやっても、妖精達の数は増え続けており、再び妖精達の居住地が手狭になって来た

 

 さすがにロデニウス大陸には余った土地が無いので、新たに彼女達の居住区を確保出来なかった。トラック諸島の拡張もさすがに限界が来ており、さすがに妖精達も海上油田の様に洋上に建築物を作るのは難しく、その上水棲魔獣の襲撃もあるので、建築は進んでいない。

 

 さてどうするかと、『大和』達と妖精達は悩んだ。

 

 そんな時に、旧パーパルディア皇国と戦争が始まった。

 

 戦争の終盤にて、『大和』達はカナタと相談して皇国との戦争に勝利し、皇国が持つ領土を手に入れられないかと考えた。カナタも戸惑った様子だったが、皇国から領土を得るという案には賛成し、講和会議にて旧皇国側の人間と協議し、パールネウス周辺の領土を手に入れた

 

 そしてパスティア共和国が建国される前に、妖精達は譲渡されたパールネウス周辺へ降り立ち、さっそく自分達の居住区兼研究開発設備の建設に入った。

 

 たった二週間という短さでパールネウスを更地にし、整地した後に飛行場を作り、居住スペースに家を建て、研究開発を行う各々の設備を立てた。

 一連の設備の完成までに掛かったのは、たった一ヶ月程度であるのは、彼女らの技術力以上に、彼女達の圧倒的な人海戦術があってこそだろう。

 

 ちなみにパールネウスを更地にする際、妖精達は旧皇国の歴史なんて知らね、と言わんばかりに歴史的建造物や芸術品を容赦なく破壊していって、財宝等があればそれらはパスティア共和国に譲渡したそうである。

 

 現在は街の発展を目指して基地兼研究開発施設周辺にて工事を行っている。

 

 

 だが、なぜ『大和』たちがその妖精達の居住区に向かうのに不安を抱くのか。

 

 それは南ロウリア州に作られた居住区兼研究開発設備にて、前例があったからだ。

 

 

 妖精達の居住区は、ある意味魔境なのだから。

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 

『……』

 

 ふと、『大和』が視線を横に向けると、『蒼龍』と『飛龍』の姿が視界に入る。

 

 二人の様子はどこか落ち着かない様子で、時々お互いをチラッと見ては顔を赤くしてすぐに視線を逸らしている。連山に乗り込んでからずっとこの状態である。

 

「あの二人、あれから引き摺り過ぎな気がするが」

「……まぁ、色々あったのだろう。私達みたいに」

 

 どこか呆れた様子で呟く『大和』に、察している『土佐』は頬を薄っすら赤く染めて少し言いづらそうな様子を見せる。

 

 

 結論から言うと、先日の宴会の後で、色々あったのだろう。『大和』達も含め、イロイロと……

 

 

 何があったって? 紳士諸君なら察してくれると助かる。

 

 

 

 ―――ッ!!

 

 

 

 すると轟音が響き、『大和』達はとっさに窓を見る。

 

「今のは、ジェットエンジンの!」

「おいおい。もうジェット機を作ったのかよ」

 

 『蒼龍』が轟音の正体に気付き、『大和』は既にジェット機が作られている事実に、呆れた様子を見せる。

 

 連山の傍を通り過ぎたジェット機は大きく迂回し、天雷と代わる形で連山と並行して飛ぶ。

 

「あれは……」

「……」

「えっ、あんな機体、知らないんだけど」

「う、うん」

 

 上から驚いた『土佐』、無表情の『大和』、戸惑いを隠せない『飛龍』、げんなりとした『蒼龍』の順で声を漏らす。

 

 

 連山の両側を飛行するジェット機は橘花改でなければ景雲シリーズのどれでもない。ましても最近配備が進んでいるF-4 ファントムⅡでもない。

 

 ジェットエンジンが一基しかない単発機であるが、最大の特徴はまるで矢の鏃を彷彿とさせる一体となった形状であり、他のジェット機と比べると異質な姿をしている。

 

(ドラケンじゃねぇか。もうあんな物を作っていたのかあいつら)

 

 ジェット機を見て『大和』は、その知識からジェット機の正体を知り、呆れかえっていた。

 

 

 

 今から向かうのは、妖精達が欲望を解放し、欲望の赴くままに研究開発を行う、正に魔境な場所なのだ。『大和』の言うドラケンと呼ばれるジェット機も、妖精達が欲望のままに作り上げた代物の一つなのだ。

 

 といっても、さすがにこの短期間で一から作れる代物ではないので、恐らく元があるものを精巧に作ったのだろう。

 

 ともあれ、このフィルデア州では、その元ある物から多くの物が開発されているのだろうというのは、さっきのドラケンで違いないだろう……

 

 

 


 

 

 

 連山は飛行場の航空管制に従って滑走路へと着陸し、脇の駐機場へと移動すると、上空で警戒していた天雷とドラケンが順に滑走路へと着陸する。

 

 

『……』

 

 連山の扉が開き、外に出た『大和』達は、その光景に唖然となった。

 

 上空からでもその発達具合に驚いていたが、滑走路に下りた彼らは、別の意味で衝撃を受けた。

 

「……兄上。気のせいで無ければ……あちこちで見慣れない機体が散見されるのですが」

「安心しろ『蒼龍』。俺にもそれらが見える」

 

 『蒼龍』が眼鏡をはずして目頭を押さえながら『大和』に問い掛けるが、彼は物凄く呆れた様子で答える。

 

「これは……」

「こんなに、凄いの?」

 

 二人の後ろでは『土佐』と『飛龍』がその光景に唖然としていた。

 

 滑走路の脇の駐機場の他に、扉が開いている格納庫には、少なくとも彼らには見た覚えが無い航空機の数々が駐機されているのだ。

 

 先ほどのドラケンと呼ばれるジェット戦闘機はもちろん、F-4 ファントムⅡに景雲三型改に酷似した戦闘機など、様々な姿形をしたジェット戦闘機があり、それぞれに妖精達が付いて整備を行っている。

 

 更に深山改や連山改、雷神とは異なる爆撃機と思われる大型の航空機の姿もちらほらとある。

 

(端から見ればマニアが泣いて喜ぶ光景だな)

 

 『大和』は内心呟く。どれも彼の知識にある物ばかりであり、その手のマニアからすれば泣いて喜ぶぐらいのたまらない光景なのだろう。しかもそれが飛べる状態なのだから、尚更である。

 

 だが、当事者からすれば、ある意味SAN値が削れる思いである。知らない内に色んな物を開発していると、恐怖心が芽生えると思う。

 

 しかしそんな彼女たちの飽くなき探求心があるからこそ、『大和』達は強くなり、その状態を維持し続けられるのだろう。

 

(これも、ピュリファイアが持ってきたデータから作り上げたんだろうな)

 

 内心呟く彼は、妖精達が作ったジェット戦闘機の大本を推測する。

 

「本当に、好きにさせたらここまでするんですね」

「あぁ。資材は自分達で用意すれば好きにして良いって言ったが、南ロウリア州の連中もそうだが、一体どこから調達しているんだか」

 

 『大和』は頭に右手を当ててため息を付く。

 

 

 先述の通り、妖精達は探究心と物作りの欲望の塊である。彼女たちは常に何かを作ったり探求したりしている。これを規制すると彼女達のモチベーションが下がるし、何より欲求不満によって暴れかねない。

 

 そういったことを避けるために『大和』は妖精達の行動に規制を掛けなかった。その代わり自分立で必要な物は用意するという条件を付けていた。

 

 すると妖精達はどこからか資材を調達してきており、なんの制約を掛けることなく研究開発を行っている。

 

 この世界に転移後もそれは変わらず、どこからか資材を調達してきて研究開発に勤しんでいる。

 

 南ロウリア州の連中もロデニウス大陸の地下資源に手を出しているとは言えど、明らかに使われているであろう資材の量が多いので、どこからか資材を調達してきて艦船関連の研究開発を行っており、なんだったら自前の造船所で軍艦の建造を行っている。

 

 

(一体どこから資材を調達してるんだか。何かやばい事をしているような気がしてならないな)

 

 『大和』は妖精達の謎に、セイレーン以上の言い知れない恐怖を抱くのだった。

 

 すると彼らの下に73型小型トラックに代わる新型車両『高機動車』がやってくる。

 

「お待ちしていました、総旗艦殿」

「ん」

 

 高機動車からバンダナを被った妖精が降りてきて敬礼して、『大和』達も敬礼を返す。

 

「それでは、我が施設(楽園)を案内します。お乗りください」

(なんか別の意味に聞こえた気がするのは気のせいか?)

 

 バンダナ妖精の言い方に違和感を覚えるも、『大和』達は高機動車に乗り込み、施設の案内を受ける。

 

 


 

 

『……』

 

 『大和』達は目の前の光景に無表情を浮かべて立ち尽くしていた。

 

 彼らはバンダナ妖精に案内されて、基地の敷地内にある倉庫の見学をしていたのだが、そんな彼らの前には、何種類もの戦車が並べられていた。

 

「なぁ、これなんだ?」

「これまで作って来た戦車です」

「作ったって、えぇ……」

 

 『大和』が問い掛けるとあっけからん様子で応えるバンダナ妖精に、『飛龍』は呆れた様子を見せる。

 

 倉庫内の戦車は重桜の戦車から、北連、鉄血、ユニオン、ロイヤル、アイリス・ヴィシア、サディアの戦車があり、さながら戦車博物館である。

 その中には陳腐と化している重戦車や駆逐戦車の数々も含まれている。

 

「ここにある戦車は万が一を考えて常に整備していまして、その気になれば即座に戦力として投入できます。先日野盗の集団が襲撃を掛けてきましたが、ここにある戦車で殲滅しました」

「いや、別に聞いてないんだが……って、そんなことがあったのか」

 

 バンダナ妖精の説明に『大和』はもう深く考えないようにした。

 

 妖精達は何もただ作って研究するだけでは無く、ちゃんとそれを使うことも考えており、ここにある戦車もジェット戦闘機も、全て自衛のためにある。

 

 まぁこれだけバラバラだと、普通なら補給と整備に関しては地獄の様相を見せるのは違いないのだが、妖精達からすればそれすら片手間レベルなのだろう。

 

 しかし野盗も野盗である。なぜ彼女らの拠点に襲撃を掛けようとしたのか……

 

 地上は重戦車の群れに、上空からは航空機によって一方的に攻撃されている野盗の姿を想像してか、『大和』は呆れた様子でため息を付く。

 

 

「ところで、支援物資についてはどうなっている?」

「もちろん、輸送用のトレーラーを量産して73ヵ国とパスティア共和国へ運んでいます。後者に関しては鉄道が開通出来る算段が立ちましたので、大量輸送が可能となっています」

「そうか」

 

 戦車倉庫から出た『大和』達はバンダナ妖精より話を聞き、エンジン音を聞いて顔を上げると、荷を積んだコンテナを牽くトレーラーの一団が護衛の妖精達を乗せた高機動車に囲われて基地から出発していく光景が視界に入る。

 

 この基地はただ研究開発を行うだけの場所では無く、現時点ではパスティア共和国と旧皇国の元属領だった73ヵ国への支援物資を送る拠点として機能している。

 

 パスティア共和国はもちろん、旧皇国に搾取され、支配されてきた元属領の73ヵ国は国も民もボロボロであり、独立したは良いが、とても独力では国として立ち行かないレベルになっていた。その為、ロデニウス連邦共和国を筆頭に各国は73ヵ国へ支援を行っている。

 

 その為、この基地では連日に渡って輸送機による各国からの支援物資が届けられており、支援物資はここで作られた輸送用の大型トレーラーが牽くコンテナに載せられ、各地に輸送されている。

 以前輸送部隊が野盗の襲撃にあったが、護衛が付いていたので野盗を退けていた。この一件もあって、輸送部隊に付ける護衛の数を増やしている。

 

 しかし大型トレーラーでの輸送には限界があり、その上73ヵ国への輸送は整地されていない道を通るので、輸送に時間が掛かる。

 

 それを解消するべく、各国より許可を得て鉄道網の敷設を行っており、パスティア共和国と繋ぐ鉄路は完成間近であり、73ヵ国にそれぞれ繋ぐ鉄路は規模が規模とあって時間が掛かるとのこと。

 

「それと、例の施設の調査は?」 

「そちらの方の調査は本国の魔導士たちの協力を得て、進んでおります」

 

 次の問いに、バンダナ妖精は頷いて答える。

 

 旧パールネウスの地下に存在している例の魔帝関連の研究施設についての調査は、妖精達と本国より派遣された魔導士達によって行われており、調査は進みつつあるという。現時点での調査結果は、魔帝関連の施設の可能性が高いとのこと。

 

「やはり例の魔帝に関わる施設では無いかと、魔導士は予想しているようです」

「そうか。なら、引き続き調査を続けてくれ。もしかしたら、この施設に利用価値があるかもしれんからな」

「分かりました」

 

 バンダナ妖精は頷き、引き続き基地の案内を行う。

 

 

 

 




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