異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第百二十三話 鮫退治

 

 

 

 暗い海の中を、ゆっくりと進む影があった。

 

 

 グラ・バルカス帝国海軍の潜水艦……『シータス級潜水艦』

 

 

 重桜の伊400型潜水艦に酷似したその潜水艦は、ゆっくりと海中を進み、ロデニウス大陸近海を目指す。

 

 

 


 

 

 

「艦長。まもなくロデニウス大陸近海です」

「うむ」

 

 シータス級潜水艦『ミラ』 その艦橋にて副長の報告を受けて艦長が頷く。

 

「潜望鏡深度まで浮上せよ」

 

 艦長の指示を受けて副長が復唱し、『ミラ』はゆっくりと潜望鏡が使える深度まで浮上する。

 

「しかし、どうにも気に入らんな」

「何がです?」

「なぜ我々潜水艦乗りが、諜報員の運び屋としてこき使われなければならん。このような任務、潜水艦の本来の役目ではないではないか」

「そう言われましても、最近我々には仕事がありませんでしたから、仕事があるだけマシではありませんか?」

「ふん」

 

 機嫌の悪い艦長を宥めようと、副長はポジティブな意見を述べる。

 

 グラ・バルカス帝国の潜水艦は転移後、まともな敵がいないとあって、通商破壊染みた作戦に投入されることはあったが、専ら潜水艦は哨戒任務に就くことが多かった。しかしそれでも哨戒任務は中型の潜水艦で事足りたので、シータス級といった大型の潜水艦は内地で待機する日々が多かった。

 その為、シータス級潜水艦の乗員は本土にて暇を持て余していた。

 

 そんな時に、シータス級潜水艦の長い航続距離に目を付けた諜報部が、諜報員を各地へ派遣する為に、彼らを運ぶ手段としてシータス級潜水艦を用いるようになった。

 

 この『ミラ』もフィルアデスと呼ばれる大陸に諜報員を送る為に、各文明圏の海にある無人島に建造した潜水艦基地をいくつも経由して、ロデニウス大陸近海に着いたのだ。

 

「しかし、分からんな。こんな遠く離れた文明圏外に、本当に我が帝国に匹敵する国が存在するのか?」

「給料泥棒の諜報部と違って、海軍と陸軍の諜報部がそれぞれ情報を掴んでいるので、間違いは無いかと」

「……」

 

 艦長は納得し難い、と言ってそうな表情を浮かべて静かに唸る。

 

 彼らの目的はフィルアデス大陸に諜報員を送る事だが、同時に件のロデニウス大陸に諜報員を送る目的がある。というより、そちらの方が主目的であり、フィルアデス大陸へ諜報員を送るのはついでである。

 

 先のロデニウス連邦共和国と旧パーパルディア皇国の戦争で、グラ・バルカス帝国は海軍と陸軍がそれぞれ独自に持つ諜報部より諜報員を現地に送り込み、技術力と兵力の調査していた。当初は旧皇国の調査であったが、エストシラント空襲にて、襲来した航空機からロデニウスが帝国並みの技術力を有している可能性が出てきた。

 

 その為、帝国の海軍と陸軍は再度諜報員の派遣を行い、諜報部も諜報員の派遣を行う事を決定した。

 

 しかし、帝国の諜報部の悪評は、未だに払拭できていないようである。

 

 

「……艦長」

「うむ。潜望鏡上げ!」

 

 艦長の指示を副長が復唱し、『ミラ』の潜望鏡が上げられる。

 

「さてと、何が見えるか」

 

 艦長は制帽を前後逆にして潜望鏡を覗き込む。

 

(敵艦らしき影は見当たらないな)

 

 潜望鏡を旋回させて海上の様子を確認する。

 

 海上はとても穏やかであり、帝国周辺の汚れた海と違ってここは汚れていない澄んだ海である。

 

 

「ん!?」

 

 すると艦長は何かを見つけ、言葉を詰まらせる。

 

「艦長? どうされましたか?」

「……副長。見たまえ。君の意見を聞きたい」

「は、はい」

 

 明らかに動揺している艦長の姿に副長は戸惑いながらも、制帽を前後逆にして潜望鏡を覗き込む。

 

「なっ!?」

 

 潜望鏡を覗き込んだ副長は驚愕の声を漏らす。

 

 潜望鏡の先にある洋上に、巨大な戦艦が浮かんで航行していたのだから。

 

 それはロデニウス大陸の周囲を試験航行している『紀伊』である。

 

 自国の海軍並みの戦艦が文明圏外に存在している、という事実にも驚いているが、彼らが驚いているのはそれ以上に―――

 

 

「一体なぜ、この文明圏外にグレードアトラスター級戦艦がいるのだ!?」

 

 『紀伊』がそのグレードアトラスター級戦艦に酷似していたことが、艦長と副長の二人に衝撃を与えた。

 

 

 紀伊型戦艦は早期に完成させる為、設計自体は不沈戦艦としての雛形が出来ていた大和型戦艦の設計を拡大発展させたものなので、その造形は大和型戦艦に酷似している。

 そしてグラ・バルカス帝国のグレードアトラスター級戦艦が大和型戦艦に酷似した姿をしているので、彼らが紀伊型戦艦をグレードアトラスター級戦艦と見間違えるのも無理はない。

 

 

「で、ですが、グレードアトラスター級ではこんな遠くまで来れません。このシータス級ですら基地をいくつも経由してようやく着いたのですから。それにあれだけの大きさで同行していれば、我々が気付かないはずがありません」

「そ、そうだな。確かに……いや、それはそれで厄介だぞ」

 

 二人は動揺こそしたが、すぐにあのグレードアトラスター級戦艦に酷似した戦艦は自軍の物ではないと判断するが、それはそれで別問題が露になる。

 

 グレードアトラスター級戦艦を建造できるほどの技術力を持った国が存在している。その事実は帝国からすれば脅威そのものである。そして海軍と陸軍の諜報部の報告が真実であることが証明された瞬間でもあった。

 

「ぬぅ……まさかこんなことになろうとは」

 

 艦長は再度潜望鏡を覗き込み、件の戦艦こと『紀伊』を覗き込む。

 

 『ミラ』は元々諜報員をフィルアデス大陸とロデニウス大陸に送り込むのが任務であり、敵艦との遭遇は想定されていない。

 

 艦長は悩んだものの、さすがに目の前に戦艦という獲物がいても、それにつられて不用意な行動を起こすような人間では無かった。ましても敵の正体が分かっていない以上、下手な行動は出来なかった。

 

「どうします? 幸い周囲には駆逐艦は居ません。まだ本艦の存在はまだ見つかっていないと思われます。ここは潜行してやり過ごすべきかと」

「そうだな。このまま潜行してやり過ごすしかあるまい。バッテリーの蓄えと空気はどうだ?」

「問題ありません。潜航する前に洋上航行を行っていたのが幸いでした。少なくとも、しばらく海中に潜んでも問題はありません」

「そうか。潜望鏡下ろせ。深度120まで潜航。しばらく待機する。聴音は逐一戦艦の動きを監視しろ」

「了解」

 

 副長は頷いて艦長の指示を静かにハッキリとした声で復唱し、乗組員は指示に従って行動する。

 

 『ミラ』は潜望鏡を下ろし、ゆっくりと深く潜っていく。

 

 

 

 もう既に自分達の存在が露呈しているとも知らずに……

 

 

 


 

 

 

 所変わって、『紀伊』

 

 

 

「潜水艦だと?」

 

 防空指揮所にて、『紀伊』は艦橋直下にある戦闘情報管制室より艦内電話にて潜水艦発見の報を受けていた。

 

『はい。対潜哨戒中の二式飛行艇が発見しました。本艦より右舷20海里、深度120にて潜航中とのこと』

「そうか……」

 

 報告を受けた『紀伊』は目を細め、静かに唸る。

 

『先ほど海軍司令部及びトラック泊地へ連絡を入れましたが、この海域で活動している我々の潜水艦は居ないとのことです』

「……分かった」

 

 『紀伊』は一旦受話器を本体に戻し、再度受話器を取って聴音に繋げる。

 

「聴音。そっちでも確認しているな?」

『はい。こちらでも潜水艦を見つけました。ですが……』

「なんだ?」

『かなり喧しいです。艦内でドラム缶を鳴らしているかのような騒音を発しています』

「騒音だと?」

 

 聴音の妖精からの報告に『紀伊』は首を傾げる。

 

 潜水艦は隠れるのが任務である。潜水艦にとって自ら居場所を知らせるようなことは自殺行為にも等しい。その為潜水艦には必ずと防音対策を施すはずである。

 しかしその潜水艦からは煩いレベルで騒音が発せられているという。

 

 疑問が浮かぶものの、彼は気持ちを切り替える。

 

「……分かった。引き続き潜水艦の監視を続けろ」

『了解』

 

 『紀伊』は受話器を置き場に戻し、息を吐く。

 

「何があったの?」

「対潜哨戒の二式飛行艇が潜航中の潜水艦を見つけたそうだ。聴音も確認している」

「潜水艦?」

 

 『榛名』が『紀伊』に問い掛けると、潜水艦発見の報に彼女は驚く。

 

「でも、この辺りで活動している潜水艦は…」

「あぁ。いない。一応司令部とトラック泊地に確認したが、一隻も居ないそうだ」

「じゃぁ、一体どこの……」

「それは分からん。今の所何も動きは無いみたいだが」

 

 『紀伊』は顔を上げると、六機の二式飛行艇が潜水艦が潜んでいるであろう海域上空を旋回している。

 

「とにかく、領海に入っている以上、相応の対処をして、相手の出方を見る」

 

 彼はそう言って、状況の推移を見守る。

 

 

 


 

 

 

 上空を旋回している二式飛行艇は編隊を解き、一機が高度を下げる。

 

「どうだ? 潜水艦の位置は?」

「殆ど動いていないようです。深度も変わらず120を維持。恐らく海中に潜んで『紀伊』をやり過ごそうとしているのかと」

「よし。まずは潜水艦に警告だ。鹿威しを落とせ」

「了解」

 

 機内でそうやり取りがあると、二式飛行艇は旋回して再び潜水艦が潜んでいる海域上空を飛行する。

 

 その海域へと差し掛かると、磁気探知機で潜水艦の位置を把握して二式飛行艇の底部のハッチが開き、ワイヤーに繋がれている鹿威しなる物体が投下される。

 

 鹿威しは機体からワイヤーに繋がれ、ゆっくりと下ろされて海面に着水すると、その効果を発揮する。 

 

 

 

「ん?」

 

 『ミラ』の艦内では、ヘッドフォンを耳に着けて周囲の音を拾っているソナー手が何かに気付く。

 

「聴音。どうした?」

「先程、海面に着水音らしき音が……」

「っ! 爆雷か!?」

「いえ、爆雷ではありません。でも、何だこの波を切る音は?」

 

 艦長は焦りを見せるが、爆雷ではないと安堵すると同時に、紛らわしい報告をした聴音手に苛立ちを覚える。

 

 ただでさえ潜水艦にとって爆雷の至近距離の爆発は致命傷になりかねない。神経質になるのも無理はない。

 

「じゃぁ、一体なん―――」

 

 艦長は苛立ちを募らせつつも、聴音手に問い掛ける。

 

 

 ―――ッ!

 

 

 すると『ミラ』の艦内に、反響しているような不気味な音が響く。

 

「なっ……」

 

 艦長はその音に聞き覚えがあり、背筋が凍るような、ぞわっとした感覚が全身を走る。

 

 その音は一定の間隔で発せられて、艦内に嫌に響く。

 

「これは……」

「まさか、探針音か!?」

 

 副長が青ざめていると、艦長が音の正体を口にする。

 

「馬鹿な。帝国でもまだ実戦配備が進んでいないものだぞ!? なぜそんなものを奴らが!?」

 

 ありえない事態に艦長は取り乱すが、その間にも探針音は響き渡っており、その音で艦長は現実に引き戻される。

 

 グラ・バルカス帝国でも対潜ソナーの開発は行われており、一応実用化に至っているが、まだ実戦配備は進んでいなかった。

 

 そして同時に対潜ソナーがあるということは、ロデニウスにも潜水艦が存在しているという裏付けでもあるのだ。しかも帝国よりも技術が発達している可能性が高い。

 

 その事実を突きつけられて、艦長の中で常識とプライドが崩れていく。

 

 

 ちなみに先ほど二式飛行艇が投下した鹿威しと呼ばれるものはソナーではなく、探針音を記録した音声を発するスピーカーである。

 

 潜水艦にとって自らの存在を探られているという状況だけでも脅威なので、ロデニウスでは警告として投下した鹿威しから探針音を発している。もちろん相手に本当の探針音ではないのを悟らせない為に、高音質でソナー音の間隔のパターンをいくつも用意している。

 

 

 

「どうだ? 潜水艦に動きは?」

「鹿威し投下後も、動きがありませんね」

 

 二式飛行艇は鹿威しを投下後、磁気探知機で潜水艦の位置を逐一確認しているが、潜水艦に動きは無い。

 

「動きは無いか。なら、旋回して潜水艦上方にマーカーを落とす。無線手。他のウミネコにも伝えろ。これより威嚇を行うと」

「了解」

 

 機長の指示を受けて無線手は他の二式飛行艇に次の行動を伝える。

 

 警告を受けて動きが無ければ、次は強制的に領海退去を促す威嚇を行う。

 

 二式飛行艇は鹿威しを回収し、旋回して磁気探知機で海中を探査して海中に潜む潜水艦を探知し、直後にマーカーの発煙筒数本が投下され、着水と共に赤い煙を出す。

 

 後方を飛行していた二機の二式飛行艇が高度を下げて、爆雷投下体制を取る。

 

 投下するのは威嚇用の炸薬を減らしたヘッジホッグであり、潜水艦に被害は出ないが、潜水艦に自身の位置を特定され、攻撃されているというのを知らせるためである。

 

 そしてマーカーの発煙筒の煙が出ている所に、機体側面のハッチが開かれて威嚇用のヘッジホッグが二発ずつ計四発が投下され、着水する。

 

 

 

「艦長。いかがしますか?」

 

 探針音が響く中、冷静を保って副長が艦長の指示を仰ぐ。

 

「……」

 

 艦長もまた何とか冷静さを取り戻し、この状況をどうするか思考する。

 

「? 艦長」

「どうした?」

「探針音が、遠ざかります」

「なに?」

 

 聴音手がそう報告すると、さっきまで艦内に響いていた探針音が徐々に小さくなっていく。

 

「諦めた、のでしょうか?」

「……」

 

 副長は希望的観測を述べるも、艦長はこの状況に違和感を拭えなかった。

 

 むしろ、嫌な予感というのがこみ上げて来て、息を呑む。

 

「聴音。探針音が無くなった以外で、他に何か無いか?」

「いえ。他には何も……」

 

 聴音手は何とか音探を調整して耳を澄ませるも、色んな音が混じって聞き取りずらかった。

 

 防音対策が施されていないシータス級は、艦から騒音がまき散らされるので、聴音手の為に機関を停止させなければならない。しかしそれでも色々な音が漏れているので、周囲の音が聞き取りずらいのだ。

 

「っ!? 着水音!? 爆雷です!」

 

 しかしその直後に大きな着水音が聴音手の耳に届き、艦橋内に戦慄が走る。

 

「機関始動! 急げ!!」

 

 艦長はすぐに機関始動を指示するが、直後『ミラ』の傍で爆発が起き、船体を大きく揺らす。

 

『うわぁぁぁっ!?』

 

 艦内が大きく揺らされ、乗組員達が倒れかける。

 

「ひ、被害報告!!」

 

 尻餅を付きながらも、艦長はとっさに立ち上がり、壁に設置されたマイクの傍に向かってプレストークボタンを押す。

 

『こちら機関室! 異常ありません!』

『魚雷室! 異常ありません!』

『右舷中央部で浸水発生!』

「応急修理、急げ!!」

 

 各所より被害報告が上がり、浸水が発生する被害が出ている。艦長はすぐさま指示を出して、プレストークボタンから指を離す。

 

「馬鹿な。我々の位置が特定された? いや、そもそも爆雷はどこから落とされたんだ!?」

 

 艦長は混乱していた。いくら相手が対潜ソナーを持っていたとしても、そう簡単に発見されないと思っていたからだ。

 

 だが彼が一番驚いているのは、爆雷がどこから落とされたのかが分からない事である。洋上にはあの戦艦以外に軍艦は居なかった。にもかかわらず、爆雷が落とされた。それも潜水艦の位置を正確に把握して。

 

「まさか、航空機から爆雷が落とされたのでは?」

「ありえん! どうやって航空機が本艦の位置を掴んだんだ!!」

 

 副長は爆雷が航空機から落とされたものだと推測するが、空を飛んでいる航空機がどうやって海中に潜んでいる潜水艦の位置を掴んだのか。

 

 帝国の対潜ソナーは軍艦クラスの艦でようやく載せられるサイズであり、航空機には載せられないと考えていた。

 

 そのまさかの航空機に潜水艦を見つける術を載せていようとは、彼らには想像できなかった。

 

 

 その直後、更に『ミラ』の傍でヘッジホッグが四発落とされ、爆発して艦を大きく揺らす。

 

 威嚇用の炸薬を減らしたヘッジホッグは『ミラ』に致命的なダメージを負わせていないが、ただでさえ隠れるのが仕事の潜水艦にとって、常に見つかって攻撃されているという状況は、精神をすり減らす。

 

「なぜだ。なぜ本艦の位置が分かるんだ!?」

 

 大きく揺れる艦内では、誰もが混乱し、恐怖する。

 

「ど、どうします!?」

「どうするたって……」

「恐らく、これは威嚇かと思われます! 先程から至近距離で炸裂していますが、被害は軽微です。ですが、多く見積もっても後二回。本命を落とされれば、確実に沈められます」

「ぬぅ……」

 

 副長の推測を聞き、艦長は息を呑む。

 

 このままでは沈められる。艦長もそれくらい予想しているが、どうするべきか、悩みあぐねいていた。

 

 いや、帝国軍人としてのプライドの高さから、下すべき判断が下せないといった方が正しいか。

 

「このままでは、沈められます。浮上しますか?」

「馬鹿を言え!! 我が帝国海軍が、何もせずに敵に身を晒せというのか!!」

「ですが、このままでは本艦は沈められます! まだ威嚇で済んでいるなら、向こうもまだこちらと戦闘を交える気は無いと思われます!」

「ぐぬぬ……」

 

 副長の言葉に、艦長は何も言い返せなかった。

 

 艦長も分かってはいるが、帝国海軍の軍人としてのプライドの高さから、その判断を下せなかった。

 

 その直後に、三回目のヘッジホッグ四発が投下され、『ミラ』の至近で炸裂する。

 

「っ!?」

 

 再び艦が大きく揺らされ、艦長は目を見開く。

 

「艦長!!」

「……」

 

 副長に一喝され、艦長は俯く。

 

「……止むを得ん。浮上しろ」

「ハッ!」

 

 悔しげな表情を浮かべて、艦長は渋々と浮上指示を出す。

 

 

 

 




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