異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
竜の伝説編じゃないよ
第百二十六話 やるべきことはまだまだ続く
中央歴1640年 7月4日 トラック諸島
「ん……」
窓から差し込む日光の光に照らされ、『大和』は目を覚ます。
(朝、か)
眠たげな様子を見せて上半身を起こして身体を伸ばし、固まった身体を解す。
「……」
固まった身体を伸ばして解しつつ横の方に顔を向けると、寝間着姿の『天城』が静かに寝息を立てて寝ている。
(何だか静かに寝れたのは久しぶりな気がする)
彼女の頭を優しく撫でながら、内心呟く。
これが『赤城』だったら穏やかな朝を迎えることは出来なかっただろうし、『加賀』や『土佐』でも少なくとも疲労が溜まった状態で朝を迎えることになっていただろう。
『天城』はそういうのが少なく、こうして穏やかな朝を迎えることが出来る。
なんでかって? そこは察してくれ。
「ん……」
と、頭を撫でられている『天城』が声を漏らすと、ゆっくり目を開ける。
「悪い。起こしたか?」
「いえ。総旗艦様と同じ時に目を覚ましていましたので」
「そうか」
『大和』は起こしてしまったことを謝罪するも、彼女は既に起きていたのを伝える。
その後『ベスファスト』と『エディンバラ』のメイドの二人がやって来て、朝食を取りつつメイドの二人から髪の手入れが行われる。
『大和』自身は長い髪を切りたいのが本音だが、『天城』を筆頭にした一部のKAN-SENから好評とあって、残して欲しいと懇願されている。
その為、残してもらう代わりに髪の手入れは『天城』を筆頭に、メイドのKAN-SENが行うことになっている。
朝食を食べ終え、髪の手入れが終わった後、二人は身だしなみを整えて部屋を出る。
トラック諸島の春島
春島にある建物の一室にて、『大和』と『天城』、『紀伊』、『ビスマルク』の四人が集まっている。
ちなみに『紀伊』と『ビスマルク』の二人も『大和』達と同じ朝を迎えたとかなんとか……
「うーむ。まさかこんな所に国が存在していたとはな」
『紀伊』は机に並べられている写真を見て呟く。
写真は数日前にフィルアデス大陸付近を高高度を飛行していた偵察型の雷神によって撮影されたもので、そこには明らかに文明が形成されているであろう集落が写っている。
島は周囲を山で囲われ、中央に窪みがあってそこが平地になっており、その平地に集落がある。
(なんだか青ヶ島みたいだな)
と、写真に写る集落がある地形を見て、『大和』は人間だった頃の知識を思い出す。
「集落の規模を見ると、ロデニウス大陸の旧三ヵ国レベルの国家規模であると思われます。この集落を他の国々はご存知なかったのですか?」
「あぁ。カナタ大統領や近隣の国々にこの集落について問い合わせてみたが、集落があったことは知らなかったそうだが、そもそも人が住んでいるとは思っていなかったそうだ」
『天城』の疑問に『ビスマルク』が答える。
カナタ大統領や近隣の様々な国々にこの集落のことについて問い合わせていたが、どうやら誰も知らなかったそうである。それどころか、そんなところに人が住んでいるとは思ってもみなかったそうである。
「まぁ、海から見ればただの山にしか見えないだろうからな。この海域もワイバーンの航続距離外にあるし、海も荒れているようだし、竜母も近づけなかったんだろう。まぁそもそも旧皇国がこんなところまで勢力範囲を広めていなかっただろうし」
『紀伊』はこの集落がある地形を別写真を見ながら、今まで存在を認知されなかった原因を推測する。
この国家規模の集落がある場所は、周りを山で囲われた地形をしており、外から見れば断崖絶壁の島にしか見えない。空から見てようやく集落が見えるレベルである。しかしこの島がある海域はフィルアデス大陸から離れているので、ワイバーンの航続距離外にある。
竜母もそれまで旧パーパルディア皇国ぐらいしか持っていなかったので、他国が空から見られることは無かった。当の皇国もここまで竜母を派遣する理由も無いし、そもそも荒れた海域なので、バランスの悪い竜母では転覆の危険があった為、近づくことは無かったそうである。
「カナタ大統領はどう考えている?」
「大統領はこの国家と接触、ひいては国交を結びたいと考えているそうだ。既に閣議も進んでいて、決まるのも時間の問題だそうだ」
「相変わらず判断と行動が早いなあの人は」
「判断が早いのは悪いことでは無いが、いささか早急な気がしなくもないな」
『ビスマルク』はそう呟くと、お茶が淹れられた湯呑を手にして飲む。
カナタ大統領としては多くの国と国交を結んで、国益に繋げたいというのもあるが、何よりフィルアデス大陸を含めた周囲の情勢安定化を狙っている。
「護衛についてはどうなっているんだ?」
「外交官の護衛には陸軍から適当な一個小隊を選ぶそうだ。外交官を運ぶと共に護衛を兼ねた戦力をKAN-SENから選ばれる予定だ。まぁその護衛の一人は俺になるだろうな」
「あぁそうか。『武蔵』は艤装の検査。『蒼龍』はアルタラス王国に向かったからな」
「一応『蒼鶴』に『飛鶴』、『葛城』も候補にあったが、未知の海域に向かう以上、経験が浅い三人は不向きだ」
「そうですね」
各々がそれぞれ口にする。
まだ確定したわけでは無いが、既に外交官の派遣を行う為の計画が練られており、護衛には陸軍から一個小隊が選ばれて付ける予定で、道中の護衛にはKANーSENが付くことになっており、外交官を運ぶ『大和』を除いて他のKAN-SENは現在選定中である。
外交官を運ぶ役目は『大和』以外に『武蔵』や『蒼龍』、第二世代のKAN-SENの『蒼鶴』、『飛鶴』、『葛城』が候補にあったが、『武蔵』は艤装のオーバーホールの為にトラック泊地のドックに入渠し、『蒼龍』は先日のパーティーにて話された一件についての話し合いの為にアルタラス王国に向かっているので、二人は候補から外された。
『蒼鶴』、『飛鶴』、『葛城』の三人は経験不足とあって、早々に候補から外された。
結果『大和』が選ばれたわけだが、彼の場合はそれ以外に、今使っている艤装に最後の活躍の場を与えたいという思いがあったりする。そう遠くない内に彼は建造途中の新型艤装に変えることになる。
「それで、こんな地形をしている以上、船を着けての上陸は無理だな。まぁそうなると空から行くだけなんだが」
「それについてはヘリコプターを使う予定だ。あれなら着陸できる場所があれば降り立てるからな」
「ですが、見た目の特異性もそうですが、騒音とやらで警戒されませんか?」
「そう考えて、ワイバーンで何とかいけないかと考えていたが、どうもワイバーンは身体の構造上垂直離陸が出来ないそうだ。その上離着陸も地面を整地しているとしていないとじゃ飛び立てる距離がだいぶ異なるし、何より竜騎士以外で乗せられる人数は一人だけ。とても現実的じゃない」
「そうですか」
と、『大和』は腕を組んで悩むように目を瞑って首を傾げ、説明を受けて『天城』は納得する。
ワイバーンは身体の構造上垂直離陸が出来ないので、どうしても飛ぶには滑走距離が必要になる。その滑走距離も整地しているのと整地していないのでは飛び立つまで距離が大きく異なるので、少なくとも向こうでは整地された場所が少ないので、飛び立ったり着陸するのは難しい。その上乗せられる人数も操縦する竜騎士を含んで二人まで。
どう考えても外交官を運ぶのには向いていない。
風竜なら翼の構造上垂直離陸が可能な上に力もあるので積載量も多いが、彼らはプライドの高い種族。いくら『龍驤』の頼みとあっても、認めた者以外を乗せるのは無理とのこと。
その結果、外交官と護衛の兵士を運ぶのは、軍で採用されたばかりのヘリコプターを使うことになった。
「まぁとりあえずこの国については追々考えるとして」
『大和』は一旦この国家規模の集落の話を一区切りして、次の課題に移る。
「次はトーパ王国からの援軍要請についてだ。『天城』」
「はい。二週間ほど前にトーパ王国より我が国に援軍を送って欲しいとの旨の要請がありました。フィルアデス大陸の上、ちょうどトーパ王国の真上に位置するグラメウス大陸からくる魔獣の数が増えているとのことで、万全を期すために我が国に援軍要請を行ったようです」
「グラメウス大陸から多くの魔獣が来ているか。確かトーパ王国には特例として北連製の武器兵器を売却していただろ?」
「そうだが、どうやら武器兵器を用いても捌き切れない数の魔獣が来ているそうだ」
「それで我が国に援軍を要請した、というわけか」
『ビスマルク』は理解したように小さく頷く。
そこら中に魔獣が闊歩し、人は一人も住んでいないと言われるグラメウス大陸。トーパ王国はそのグラメウス大陸の真下にあり、日々大陸からくる魔獣の脅威と戦っている。
そんな事情があるので、ロデニウス連邦共和国はトーパ王国に特例として武器兵器の売却を大々的に行っている。主に寒冷地のトーパ王国に合わせて寒さに強い北連製の武器兵器が売却されている。
現地で派遣された教導隊によって訓練が行われ、トーパ王国の騎士たちは銃や野砲、戦車等の武器兵器を用いて魔獣退治を行っていた。
以前と比べ物にならない数の魔獣を討伐していたが、最近になってその魔獣の数が増えつつあり、その上統率されたような動きを見せる時があると、最近ではロデニウスの武器兵器を用いても魔獣を討伐するのに苦労しているという。
今までにない数の魔獣が来ているという、グラメウス大陸できな臭くなっているというのもあって、トーパ王国は万が一を考えてロデニウス連邦共和国に対して援軍の要請を行ったのである。
カナタ大統領は下手にトーパ王国を魔獣が突破すれば、復興途中の旧パーパルディア皇国の元属領だった73ヵ国に被害が及び、フィルアデス大陸の情勢が悪化しかねない。そう考えて、大統領はトーパ王国へ援軍の派遣を行うかの閣議を開いた。
閣議の結果、政府はトーパ王国へ軍の派遣を行う事を決定し、近日中にトーパ王国に向けて派遣する部隊が出発する予定である。
「派遣する部隊は『三笠』司令の部隊から抽出した臨時編成の部隊だったな」
「あぁ。その他に海上戦力として俺を筆頭に、戦艦と空母を何人か連れて行くことになっている」
「そうか。まぁ、それだけの戦力があれば問題は無いと思うが」
「世の中、そう思い通りにはいきません」
「だよな」
『天城』がそう言うと、『大和』は肩を竦める。
派遣する部隊は『三笠』司令率いる部隊から人員を抽出し、戦車数両を連れて行く臨時編成の部隊である。その他に海上戦力として『紀伊』を筆頭に、戦艦と空母のKAN-SENを数人派遣される予定である。
これだけの戦力ならば大抵の事はどうにでもなるが、彼らの経験上トントン拍子に事が進むとは思っていない。
「兎に角、少しの間俺と『紀伊』はここを空けることになる。その間『天城』と『ビスマルク』には留守を任せるぞ」
「分かりました」
「分かった」
『大和』に頼まれて『天城』と『ビスマルク』は頷く。
この二件で『大和』と『紀伊』のトラック泊地のツートップが不在になるので、二人から信頼されている『天城』と『ビスマルク』の二人が代理を務めることになっている。
それからは細々としたことを話して、話し合いを終える。
その後四人は二式飛行艇に乗ってトラック泊地からロデニウス本土へ飛び、政府の会議に出席する。
その会議にて、例の島にある国家規模の集落に外交官の派遣を行う事が決定し、準備が進められることになった。
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