異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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更新が遅れて申し訳ありません

少し精神的にやられていたので、しばらく筆を置いていました。投稿を始めて4周年目を迎えたのに、今後どうなるか分かりませんが、出来る限りのことははしていく予定です。

今回は駆け足気味です。


第百三十話 野望の始まり

 

 

 

 カルアミーク王国

 

 

 この島にある王国であり、この島を統治する国である。

 

 

 建国以来外界との繋がりは全くなく、島の中だけで済んでいたこの王国だが、建国以来数少ない王都を騒がせる騒動が起きていた。

 

 

 

「なんと、面妖な」

 

 王都アルクールの王城。国王のブランデはバルコニーより空から降りてくる奇怪な存在に驚いていた。 

 

 少し前に王国に正体不明の存在が接近中との報告があり、すぐに飛行騎士団に出撃命令を下して迎撃に向かわせた。

 

 しかし少しして騎士の一人が戻って来て、正体不明の存在は王国と国交を結びに遠路遥々やって来たと言ってきたとの報告を受けた。

 

 国王の側近らは追い返すべきだ、すぐに排除するべきだと過激な意見を出していたが、国王ブランデはわざわざ遠くからやって来て追い返すのも悪いと思ったのか、彼らを連れてくるように命令したのだ。

 

 どんな連中が来たのかと半分興味津々、半分不安を覚えつつ待っていると、やって来た存在に驚きを隠せなかった。

 

 火喰い鳥とは似ても似つかない姿をして、大きな音を発している得体のしれない物体。それに数人の人間が乗り込んでいるのだ。彼らかすれば驚きを隠せないのも無理はない。

 

 実際、王都では市民たちが空を飛んでいるそれを見て恐怖に陥り、大混乱を起こしている。

 

「火喰い鳥ではない。外の世界には、あんなものが存在するのか」

 

 彼がそう呟いていると、それことヘリコプターは城の中庭に一機ずつ着陸していき、乗り込んでいる者達を降ろしていく。

 

 全員を降ろすと、次のヘリが降りて乗員を降ろしていく。それを繰り返して外交官と護衛の一個小隊を降ろして、ヘリ全機は『大和』に向かって帰還する。

 

 


 

 

「いやぁ、一時はどうなるかと思いましたよ」

 

 と、ヘリから降りたヤゴウは額の汗をハンカチで拭う。彼以外の外交官たちも汗をハンカチで拭っている。

 

 彼らにとって、今回が初の外交官としての仕事である。それが初っ端から一触即発になっていたのだから心労は相当なものだっただろう。

 

 彼らの初仕事とあって、外交官を兼任している『大和』は護衛に専念出来るようになったのだ。

 

「とは言えど、本番はこれからだがな」

「あぁ……」

「……」

 

 『出雲』は腰に佩いている太刀に手を置きつつ、『アーク・ロイヤル』はM14のトリガーガードにあるセーフティーを外し、『オーディン』は周囲に視線を向けるなどして、各々周囲を警戒している。

 

 周りでは外交官と護衛たちを警戒した雰囲気で睨みつけている兵士達と、火喰い鳥に跨る騎士たちの姿があり、下手な行動を取れば即座に殺すと言わんばかりである。

 

 もちろん外交官の護衛のイーネ達も警戒を露にしており、万が一の事態に備えていつでも撃てるようにしている。

 

「戦闘になるようなことに、ならなければいいな」

「うぅ……会談前に荷が重くなるようなことを……」

 

 『出雲』の言葉にヤゴウは胃の辺りを押さえる。

 

 さすがに初仕事の彼らには強いプレッシャーである。

 

 

 すると城の奥から兵士を引き連れた大臣と思われる男性がやって来る。

 

「話は聞いている。我がカルアミーク王国と国交を結ぶために遠路遥々来たそうだな」

「はい。我がロデニウス連邦共和国は貴国と国交を結ぶために遠くのロデニウス大陸よりやってきました」

「そうか。国王様は貴殿らに興味を示されている。代表はついてこい」

「ありがとうございます」

 

 ヤゴウは一礼すると、他の外交官と護衛数人を連れて、残りの護衛をここに待機させて大臣らの後に付いて行く。

 

 

 


 

 

 

 所変わり、外洋にて停泊中の艦隊の方では……

 

 

「……」

 

 自身の艦体の甲板にて、『大和』は腕を組んで島を見つめている。

 

 その隣で『加賀』も島を一緒に見つめている。

 

 彼らの元に島にある国家とのファーストコンタクトがあったと報告が入り、会談が行われようとしていると連絡が入って数時間が経過している。陽は少しずつ落ちて空をオレンジ色に染め上げている。

 

 使節団を送り届けたヘリも『大和』の艦体に戻って来ており、次の出発に備えて補給を行っている。

 

「……」

「総旗艦」

 

 何も言わず島を見続けている『大和』に『加賀』は声を掛ける。

 

 最後の連絡があってから既に数時間が経過している。旧パーパルディア皇国という前回のこともあって、不安を感じないのかといえば、嘘になる。

 

 長く連絡が無ければ、最悪な状況もありうるのだ。

 

(俺達の出番が無ければいいが……)

 

 彼は内心呟きつつ、外交官たちの安全を祈りつつ、『大和』艦載機の出番が無いことを祈る。

 

 

「艦長!」

 

 しばらくして、艦橋より妖精がやって来る。

 

「どうした?」

「外交官の護衛より入電! 会談はうまくいったようで、国交開設に向けて調整に入れそうだとのこと!」

「っ! そうか」

 

 吉報を聞き、『大和』は安堵の息を吐く。

 

 

 ヤゴウ達はカルアミーク王国の国王ブランデとの会談を行い、会談中にロデニウス連邦共和国について話すと向こうからすれば荒唐無稽な内容に大臣や側近が噛み付く場面が多かったものの、その度にブランデ国王咎められ、予想より長引いたものの会談は何とか進んでいく。

 そしてブランデ王国はこの島の外海に大いに興味を示し、ロデニウスへ使節団の派遣を検討するとのこと。国交開設は使節団の調査報告を受けて可否を決めるとのこと。

 

 

「すぐに本国へ一報を伝えろ」

「ハッ!」

 

 『大和』の指示を受け江妖精は本国へ報告する為に、すぐに艦橋に戻る。

 

「何とかなりそうだな」

「そうだな。だが、まだ俺達はようやく一歩を踏み出せたばかりだ。国交開設に向けてはこれからだ」

「そうだな」

 

 『加賀』も安堵の表情を浮かべるが、『大和』の表情はどこか強張っている。

 

 国交開設に向けてようやく第一歩を踏み出せたばかりだ。これからどうなるかは外交官たちの手腕に掛かっている。まぁ初仕事の彼らにはかなりの重圧になってそうだが。

 

 とはいえ、手ごたえは十分あるので、余程の事が無ければ心配することはないだろう。

 

「……」

 

 しかし、それでも彼の中には、拭えない不安があった。国交開設に関する不安ではない。言い知れない何かが、胸中にて渦巻いている。

 

 そんな彼の雰囲気に気付いて「どうした?」と、『加賀』は声を掛ける。

 

「いや、何でもない」

 

 『大和』は何ともないのを伝えると、踵を返して歩き出す。『加賀』は怪訝な表情を浮かべつつ彼の後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時系列は遡る事数か月前……

 

 

 

「フ……フハハハハ!!!」

 

 男性は面白可笑しいといった様子で笑っている。その隣に居る男性も満足げな様子で口角を上げている。

 

 彼らが居るのは闘技場のような場所であり、そこには二つの存在が相対している。

 

 片方は箱状の物体に八つの車輪がついている、まるで装甲車のような物体であり、その先には炎に包まれて力尽きている男性らしき人影があった。

 

「何てザマだ! 王国最強と謳われた魔法剣士ラーガの攻撃が効かず、成す術もなく嬲り殺されるとは!!」

 

 狂気染みた表情を浮かべる男性こと、カルアミーク王国の三大諸侯の一人、『マウリ・ハンマン』は、この結果に大変満足している様子である。

 

「大変満足してもらえて、こちらも苦労した甲斐があったものです」

「あぁ! とても満足だ。この魔炎戦車があれば、恐れるものは無い!! よくやったぞ、オルドよ!!」

 

 マウリは横に控えている男性こと大魔導士オルドを褒める。

 

 

 ここはカルアミーク王国にある霊峰ルード、その一角に簡易的に作られた集落。そこにはかつて世界を支配した魔帝の遺跡があり、その魔帝の遺跡の調査をオルドが行っていた。

 

 その魔帝の遺跡の調査によって魔帝関連の技術を発見した。しかしその多くは彼らからすればあまりにも難解な内容とあって、解析には多くの時間は有することになった。オルドと魔導士達はその中から可能な限り再現できる技術を見出し、その技術を用いて完成したのが『魔炎駆動式戦車』である。

 

 箱状の車体に大砲のようなものが固定され、片側に四つずつ計八つの鉄輪を持つ簡易的な自走砲みたいな構造をしている。大砲のようなものからは砲弾では無く、火炎弾を発射する。

 

 この魔炎戦車は四人の魔導士によって起動し、その際に車体に炎を纏うのが特徴である。

 

 先ほどこの魔炎戦車の戦闘実験が行われ、その相手にカルアミーク王国最強と謳われた魔法剣士ラーガが宛がわれた。彼は家族を人質に取られており、彼らに従うしかなかった。

 

 最初にラーガの実力を確かめる為に魔獣が宛がわれ、彼は王国最強の実力をいかんなく発揮して魔獣を全滅させた。その後に、魔炎戦車と対決した。

 

 その結果、ラーガは魔炎戦車に傷を負わせることも出来ず、最期は魔炎戦車の突進によって轢かれ、その後放たれた火炎弾によってその身を焼かれ、命を落とした。

 

 

「して、オルドよ。この魔炎戦車。どのくらい用意できる?」

「はい。現在ある鉱石量ですと、最大でも30台が限界かと」

「ほう! あの化け物が30台も手に入るのか! ならば30台が出来次第、行動に移す!」

 

 オルドより魔炎戦車をどれだけ作れるかと聞き、その台数に驚きつつ喜びをあらわにした。あれだけの戦闘力を持つ兵器が30台も手に入るのだから、喜びを隠せないのは当然と言える。

 そして何より、今ある鉱石量でそれだけの数が作れるのだから、今後更に多くの鉱石を手に入れられる算段があるので、更なる大量生産が可能であるのは判明したのも、理由の一つだろう。

 

 彼は魔炎戦車が30台揃ったタイミングで、何かを行おうとしているのだ。

 

「それと、魔獣もそうだが、例のあれは使えるのだな?」

「はい。そちらのほうも滞りなく準備が進んでいます。ですが準備の手間暇を考えますと、魔炎戦車同様30騎揃えるのが限界かと」

「30か。だが、十分な数だ」

 

 と、マウリは狂気の笑みを浮かべて満足そうにうなずく。

 

 遺跡の調査で得られたのは魔炎戦車を作り出した技術のみならず、とあるものを発掘していた。それは液体に浸された生物が入ったカプセルであり、それが複数確認されている。

 

 それをオルド率いる魔導士達は、偶然にも発掘したそれを動かすことに成功し、中身を取り出すことが出来た。しかも魔力を送り続けたことでカプセルの中に入っていた生物が息を吹き返したのだ。

 

 その生物は非常に高い戦闘力が高く、尚且つ人に従順という性質をしており、マウリはその生物を魔獣と共に此度の一件に用いる予定である。 

 

「マウリ様。計画成就の暁には、約束を果たしてもらいますぞ」

「遺跡の調査の為の資金と人材か。もちろん約束は果たす。好きにするがいい。だが、それだけで良いのか? 他に名誉や地位もあるだろうに」

「私はそのようなものに興味はございません。遺跡の調査が全てですので」

「欲の無いやつだ」

 

 オルドの迷いなく、しかし狂気を孕む濁った瞳にマウリは一種の恐怖を覚えるも、改めてオルドとの約束をつける。

 

 彼ら魔帝の遺跡の調査に御執心であり、地位も名誉もこれっぽちも興味が無い。ぶっちゃけ言えば此度の一件に関しても、遺跡の調査が続けられるのならどっちの結果に転ぼうともどうでも良いのだ。

 

「それで、ラーガの家族はいかがしますか?」

「あぁ、どの道魔獣の餌にするのだろう。既に用済みだが、それまで妻と娘は好きにしろ」

「では、他の者達にはそのようにお伝えします」

 

 オルドは頭を下げてその場を後にする。

 

「くくく……これで、我が計画は……成就する!」

 

 一人残ったマウリは、闘技場に居る魔炎戦車を見つめ、小さく笑い声を漏らし、やがて訪れるであろう未来を夢想する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、マウリ・ハンマンは魔獣と魔炎戦車、騎士といった戦力を揃えて、イワン侯領の街、ワイザーへ侵攻を開始した。カルアミーク王国三大諸侯の一人、マウリ・ハンマンによる謀反である。

 その目的は王国の支配。そして外の世界への進出であった。

 

 ワイザーは魔獣と魔炎戦車によって瞬く間に壊滅させられ、街の人々は魔獣の餌となり、生存者はいなかった。

 

 だが、マウリ・ハンマンの謀反を伝えるべく伝令が放たれていたので、この事は王都アルクールへと届けられた。

 

 

 

 マウリ・ハンマンの謀反が伝えられたのは、ロデニウス連邦共和国から使節団が到着した、二日後の事であった。

 

 

 




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