異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第十四話 艦隊到着

 

 

 

 中央歴1639年 4月16日 マイハーク港

 

 

 マイハーク港はトラック泊地より派遣された工作艦や妖精によって近代化と拡張が行われ、更に大型船舶が入港可能なように新しい港が出来ており、港の景観は一部を残してガラリと変わっている。

 

 

 

「……」

 

 港にある海軍司令部の最上階にある一室にて、窓から港を見つめるパンカーレは深刻な表情を浮かべている。

 

 視線の先には、港の埠頭で出港準備を行っている船がいくつもあった。

 

 しかしその姿は以前までの帆船やガレー船ではない。

 

 それらは例えるなら『魚雷艇』規模の船であるが、搭載している武装はブローニングM2重機関銃を単装か、連装にして搭載している個体もあれば、『零式機銃』を連装にして搭載されている個体もあるし、『九九式四〇ミリ連装機関砲』を搭載している個体もあると、バリエーション豊かである。

 しかし魚雷艇そのものではないので、魚雷は搭載していない。

 

 トラック諸島にある造船ドックでクワ・トイネ公国海軍向けに建造された『乙型哨戒挺』である。

 

 クワ・トイネ公国海軍は近代化に先駆けて既存の帆船やガレー船を魔改造して機械動力船や銃火器の運用を学び、その後この乙型哨戒挺を輸入し、運用している。

 

 哨戒挺とあって、外洋航行性は低く航続距離は短いので、沿岸防衛を主眼にしているものの、これまでの軍船と比べると比較にならない戦力となっている。

 

 しかしその中に、哨戒挺を上回る軍艦が八隻ほど港に停泊している。

 

 それは最近になってトラック泊地で建造され、クワ・トイネ公国海軍に導入された『マツ級駆逐艦』と『ウネビ級軽巡洋艦』と『ヤクモ級重巡洋艦』である。

 

 マツ級駆逐艦は『松型駆逐艦』の設計を基に建造された駆逐艦で、クワ・トイネ公国海軍向けにトラック泊地で建造された。

 

 基本設計は松型駆逐艦と同じだが、主砲は『長十センチ連装高角砲』を二基四門を搭載し、『零式機銃』を八基八門、『九九式四十ミリ四連装機関砲』を一基四門を搭載している。

 

 本来であれば魚雷発射管や爆雷投射装置があるのだが、まだ兵器の扱いに慣れていないクワ・トイネ公国海軍の水兵では危険であると判断されて、まだ搭載されていない。

 しかしクワ・トイネ公国海軍の水兵達の練度が問題無いと判断されれば、搭載される予定だ。

 

 マツ級駆逐艦は今日までに『マツ』『タケ』『ウメ』『モモ』『クワ』の五隻が竣工して、クワ・トイネ公国海軍へと引き渡されてトラック泊地から派遣された教官の指導の下、訓練を行っていた。

 

 

 ウネビ級軽巡洋艦は『阿賀野型軽巡洋艦』の設計を基に、構造の簡略化を行い、安全性を重視しつつ量産性と整備性を高めた巡洋艦で、15.2cm連装砲を三基六門、長10cm単装高角砲を四基四門、零式機銃を八基八門、九九式四十ミリ連装機関砲を三基六門を搭載している。

 このウネビ級巡洋艦も本来なら魚雷発射管を搭載しているのだが、マツ級駆逐艦同様の理由で現在搭載されていない。

 現在『ウネビ』『イズミ』の二隻がクワ・トイネ公国海軍に引き渡され、訓練を行っている。

 

 ちなみにウネビ級軽巡洋艦の名前を聞いた『大和』と『紀伊』は『何だか行方不明になりそう』と呟いていたそうな。

 

 

 ヤクモ級重巡洋艦は『妙高型重巡洋艦』の設計を元にウネビ級軽巡洋艦同様に一部設計を変更した重巡洋艦で、武装は50口径20cm連装砲を五基十門を搭載し、長10cm連装高角砲を四基八門、零式機銃を十基十門、九九式四〇ミリ連装機関砲を四基八門搭載している。

 このヤクモ級重巡洋艦もマツ級駆逐艦とウネビ級軽巡洋艦同様魚雷発射管を搭載される予定だったが、同様の理由で今は搭載されていない。

 現在『ヤクモ』の一隻がクワ・トイネ公国海軍に引き渡され、艦隊旗艦として訓練を行っている。

 

 

(艦隊が強化されて、ロウリア王国にも勝てると思っていたが、数が足りなさ過ぎる)

 

 ロウリア王国が出した海軍の戦力は、4000隻以上の軍船。その数を聞いてパンカーレは絶句した。

 

(国力の差が、ここまであったとは……)

 

 ロウリアが大国である事は周知の事実であったが、彼は改めてロウリア王国との国力の差を認識した。

 

 例え以前と比べ物にならないぐらいに戦力が強化されたといっても、以前よりも数は少なくなっているとあって、圧倒的物量の前には無力だ。

 最近ようやく配備された巡洋艦と駆逐艦があっても、たった八隻では数に呑まれるのが目に見えている。

 

 

「そういえば、今日トラック泊地から援軍の艦隊が来るんだったな」

 

 ふと、パンカーレはトラック泊地より援軍となる艦隊が派遣される事を思い出す。

 

 既に一週間前からトラック泊地よりやって来た輸送船団が日を跨いでマイハークを訪れて、その積荷を港に下ろして行った。

 

 中身は何でも彼らの陸上部隊の装備であり、彼らが港に設置した巨大クレーンに吊られた代物に、港に居た水兵が驚いていた。

 まぁ自分もその一人ではあるのだが。

 

 その他にも帆船並の大きさを持つ小船が浜辺に乗り上げると、そこから鉄の化け物こと戦車や装甲車、自動車を揚陸していた。

 

 その揚陸作業を二頭身の生物と巨大なヒヨコが行っていたのは、彼らには衝撃的な光景であった。

 

「……」

 

 パンカーレは目を瞑り、トラック泊地を訪れてKAN-SEN達の演習を見学し、その戦いぶりを目の当たりにした光景を思い出した。

 自分の常識を上回る、衝撃的な光景であった。

 

 

 巨大な軍艦が火を吹いて砲撃を行い、標的の周りに巨大な水柱が上がる光景。

 

 ワイバーンとは異なる、航空機と呼ばれる飛行機械が空を舞い、激戦を繰り広げる光景。

 

 KAN-SENと呼ばれる可憐な女子(おなご)達が海の上を走り、砲撃を行い、小さな航空機を飛ばし、近距離戦闘を行う。

 

 

 その光景は未だに鮮明に思い出せる。

 

 だからこそ、トラック泊地より援軍が来ると知った時、彼の中に安心感が込み上げてきた。

 

(軍以外の、それも自国の以外の組織に国防を任せなければならないのは、軍人として失格なのだろうな)

 

 以前までの自分なら、軍人としてのプライドで援軍を断って自分達だけで戦おうとしていただろう。

 

 だが、彼らの事を知り、ロウリア王国が戦争を仕掛けてきて、海から4000隻以上の軍船がマイハークを目指していると聞かされると、軍人としてのプライドなどどうでもよくなった。

 

 プライドを嘆いた所で、そんなものは戦いの前では何の役にも立たないのだから。

 

 

 コンコン……

 

 

「入りたまえ」

 

 思考の海に浸っていると、ノックの音がしてパンカーレが振り向きながら入室を許可する。

 

 「失礼します」と一言と共に扉が開かれ、最近採用された新制服に身を包む一人の男性が入室する。

 ちなみに制服のモデルはなぜか鉄血の海軍の制服らしい。

 

「ブルーアイ、出頭しました」

 

「来たか、ブルーアイよ」

 

 ブルーアイと名乗った男性は姿勢を正して敬礼をすると、パンカーレは彼に敬礼を返す。

 

「いよいよ明日だな」

 

「はい。観戦武官としての任務。必ず遂行して見せます」

 

「うむ」

 

 ブルーアイの言葉を聴き、パンカーレは頷く。

 

 

 先日トラック泊地より観戦武官に関する連絡があり、クワ・トイネ公国政府はこれを了承し、海軍上層部へ伝えた。

 

 パンカーレは観戦武官として副官のブルーアイを指名し、彼の派遣を決めた。

 

 

「すまないな。せっかく譲渡された軍艦の艦長になったというのに」

 

「いえ、構いません。この任務はとても重要であると理解していますので」

 

「そうか」

 

 すまなそうに表情を暗くするパンカーレに、ブルーアイは言葉を掛ける。彼はウネビ級軽巡洋艦の二番艦『イズミ』の艦長として就任しているからだ。

 

「今回の戦闘は我が海軍の発展へ繋がる。頼んだぞ」

 

「はっ!」

 

 ブルーアイは再度敬礼をする。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 中央歴1639年 4月17日 マイハーク港

 

 

『……』

 

 マイハーク港では、その場に居た誰もが呆然と立ち尽くしていた。

 

「相変わらず、とんでもない大きさだな」

 

「は、はぁ」

 

 パンカーレは苦笑いを浮かべ、ブルーアイは戸惑いを隠せなかった。

 

 

 なぜなら、港の外には自分達の常識を超える大きさの軍艦が何隻も停泊していた。その上以前やってきたよりも、数と種類が多い。

 

 今では彼らの軍艦に匹敵する軍艦を有しているが、それでも港は大騒ぎであった。

 

 

「それに中央に居る船は、最初に我が国にやって来た超巨大船だな。たしか空母とやらだったか?」

 

 パンカーレは艦隊の中に一際目立つ軍艦こと空母『武蔵』を見て、その時の事を思い出す。

 

「あれが、そうなのですか」

 

「君は初めて見るかね?」

 

「えぇ。他の軍艦は見た事ありますが、空母を見るのは初めてです」

 

「そうか。まぁここに来るのは駆逐艦や巡洋艦ぐらいだったからな」

 

 そんな会話を交わしていると、空母より何かが飛んできた。

 

 その乗り物の上部には、細長い板のような物が高速で回転し、前部にも小さいが同じ細長い物が回転して低速でありながらもこちらに向かって飛行している。

 

 それは『カ号観測機』と呼ばれるオートジャイロである。

 

「どうやら迎えが来たようだな」

 

 パンカーレはブルーアイに向き合うと、敬礼をする。

 

「頼んだぞ」

 

「はい。観戦武官としての任。果たして参ります」

 

 ブルーアイも姿勢を正して敬礼をする。

 

 

 

 その後ブルーアイは港の埠頭に器用に着陸したカ号観測機に乗り込み、『武蔵』へと向かった。

 

「凄い……」

 

 カ号観測機は艦隊に接近し、後部座席に座るブルーアイは目の前に広がる光景に思わず声を漏らす。

 

 多くの艦艇が停泊し、その中にはクワ・トイネ公国海軍がまだ有していない戦艦や空母も含まれており、ブルーアイの目はそれらに向けられている。

 

 だが中でも一際目立つのが、艦隊の中央に停泊している『武蔵』であり、近くに停泊している『翔鶴』と『瑞鶴』が軽空母に見えるほどだ。

 

 

 今回トラック泊地より派遣された艦隊の内約は以下の通りである。

 

 

 派遣第一艦隊

 

 空母:『武蔵』(旗艦) 総旗艦『大和』乗艦

    『翔鶴』

    『瑞鶴』

 

 防空戦艦:『榛名』

 

 重巡:『鞍馬』

    『摩耶』

 

 駆逐艦:『冬月』

     『春月』

     『北風』

     『宵月』

 

 

 この他にも『紀伊』率いる第二艦隊が遅れて合流予定である。

 

 ちなみに『紀伊』が率いる第二艦隊の内約は以下の通りである。

 

 

 派遣第二艦隊

 

 戦艦:『扶桑』(旗艦) 指揮艦『紀伊』乗艦

    『山城』

    『伊勢』

    『日向』

 

 重巡:『プリンツ・オイゲン』

 

 軽巡:『クリーブランド』

    『ベルファスト』

    『ニューカッスル』

 

 駆逐艦:『フォックスハウンド』

     『Z23』

     『雷』

     『電』

 

 

 こうして見れば分かるが、第一艦隊はともかく、第二艦隊のKAN-SENの国籍はバラバラである。

 

 理由としては、そもそも国に支援されて運営しているじゃないので、KAN-SENの加入は流れてきた者が多く、常に同じ国のKAN-SENが仲間に加わるわけではないのだ。

 その上、旧世界ではKAN-SENの建造に必要となるメンタルキューブをなぜか中々手に入らなかったので、建造で仲間に加わったKAN-SENは僅かである。

 

 その為、トラック泊地に居るKAN-SENの数は少数精鋭といえるほどの少なさではないが、正規軍と比べて決して多くないし、その上非常にバランスの悪い艦隊であるのがトラック泊地の最大の悩みである。

 

 それに、敵の技術レベル的に考えると戦力が過剰の様に思えるが、『大和』曰く『足りなくなるよりかはマシ』とのこと。

 

 まぁこのように多くの戦力を投入出来るのも、クイラ王国から多くの資源を得られるからであって、それが無ければ半分ほどの戦力しか送れなかっただろう。

 

 

 閑休話題(それはともかく)

 

 

 これらに加えてクイラ王国への派遣艦隊も後日到着する予定とのこと……

 

 

 

「ようこそ『武蔵』へ。自分が艦隊の司令官、『大和』です」

 

「自分は本艦の艦長を務める『武蔵』と申します」

 

 カ号観測機が『武蔵』に着艦し、ブルーアイは妖精に艦橋へと案内されると、そこには二人の男性こと『大和』と『武蔵』がブルーアイに対して自己紹介しつつ、敬礼をする。 

 

「クワ・トイネ海軍より観戦武官として派遣された、ブルーアイと申します」

 

 それに続いてブルーアイは敬礼をして観戦武官として派遣された事を告げる。

 

(人のことは言えないけど、二人とも若いな。それに一瞬女性に見えたけど、よく見ると男性だな)

 

 ブルーアイは内心呟きつつ、中性的な容姿の『大和』と『武蔵』を見る。

 

 まぁ彼はエルフなので実年齢は外見を大きく上回るが、エルフ基準なら彼はまだ若い方である。

 

「早速ですが、敵艦隊に関する情報を」

 

 『大和』は海図を広げている机へとブルーアイを案内する。

 

「敵艦隊はここから西方270kmの位置に居ます。船足は5ノット程度と遅いですが、確実にこちらに向かってきています。

 我々は遅れてくる艦隊と合流後、明朝0300時を以って出港します。その後索敵を行い、敵艦隊を発見後、空母艦載機による攻撃を行います」

 

 ブルーアイは『大和』の説明を聞きながら驚いていた。

 

(どうやってロウリア王国の動きを掴んだんだ? こんな広大な海で……)

 

 ブルーアイの常識的に、出港時ならまだ分かるが、敵艦隊は海に出て数日は経っている。少なくともどの辺りに居るかを予想するのは困難である。

 

 まぁ潜水艦で敵艦隊の位置を掴んだとは、彼が知る由もないのだが。

 

「何かご質問がございますか?」

 

「……あっはい。そうですね」

 

 ブルーアイは一瞬呆けてしまったが、『大和』が声を掛けた事ですぐに気を取り直し、幾つか質問をした。

 

 

 

 

 




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