異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
評価していただきありがとうございます!!
今回意味深な部分がありますが、お気になさらないように……
中央歴1639年 4月17日 マイハーク港
空はオレンジ色に染まり、太陽が地平線に沈んでいく中、港では未だにクワ・トイネ公国海軍の水兵達が作業をして、戦闘に向けて準備をしている。
その中でもクワ・トイネ公国海軍に導入されたヤクモ級重巡洋艦とウネビ級軽巡洋艦、マツ級駆逐艦も出港準備に入っている。
港外で投錨している派遣艦隊は、艦艇より電灯がついて辺りを明るくしていた。
「……」
自身の艦体の飛行甲板に立つ『武蔵』は、少し不安な表情を浮かべて海を見つめている。
(これから行われる戦いは、セイレーンやKAN-SENじゃない……人間が相手)
潮風をその身に受け、一本結びにしている長髪を靡かせながら、『武蔵』は一抹の不安を抱き、目を細める。
トラック泊地のKAN-SEN達はその特殊な出で立ちから、多くの敵と戦ってきた。セイレーンやKAN-SENはもちろん、時には人間とも戦った。
人間が相手なのは今回が初めてと言うわけではないが、そう何度も戦いたい相手では無い。
「……」
彼はため息を付く。
「むーさし」
と、後ろから声を掛けられて『武蔵』が振り返ると、一人の女性が立っていた。
茶髪の長い髪をポニーテールにして、紅のワンピースの上に振袖の先が黒い白の着物を羽織った服装をしており、腰には鞘に収めた刀を提げている。
彼女の名前は『瑞鶴』 翔鶴型航空母艦の二番艦。そのKAN-SENである。
「『瑞鶴』。準備は終わったの?」
「うん。みんな気合が入っているわ」
『武蔵』がそう問い掛けると、『瑞鶴』はそう答えつつ、彼の傍へと近付く。
「そういう『武蔵』の方は?」
「久しぶりの出撃とあって、全員意気軒昂だよ」
「あはは。まぁ、そうだよねぇ」
容易に想像できたのか、彼女は苦笑いを浮かべる。
「『翔鶴』の方は?」
「『翔鶴』姉も同じだって。気合が入り過ぎて暑苦しいって」
「そ、そうなんだ」
似たような報告ばかりで、『武蔵』は苦笑いを浮かべる。
彼らの所の妖精は意外と血気盛んのようである。というより重桜の空母の搭乗員達はどこも似たようなものである。
と言っても、こんな会話があるのは彼らだけなのだが。
「……」
「『瑞鶴』?」
『武蔵』は急に静かになった『瑞鶴』が見ている方向を向く。
「綺麗よね」
「……うん。そうだね」
『瑞鶴』が沈黙して一点を見ている理由を察して、『武蔵』は頷く。
夕日に照らされたマイハークの町並みは幻想的な雰囲気を醸し出しており、とても発展して豊かである事を示している。
「こんな状況じゃなかったら、この光景をゆったりとした気持ちで見れたんだろうなぁ……」
と、彼女は前へと出した左手の薬指にしている指輪を見ながら、ボソッと呟く。
「……あの子達に、この光景を見せたかったなぁ……」
「『瑞鶴』……」
寂しそうな表情を浮かべる彼女の呟きに、『武蔵』は何も言えなかった。
「あっ! そうだ!」
と、『瑞鶴』は思いついたように声を上げて、『武蔵』の手を取る。
「ねぇ、『武蔵』 ロウリア王国との戦いが終わったら、あの子達と『翔鶴』姉と一緒に観光しに行こうよ!」
「えっ? 観光?」
「うん! ただ連れて行くだけなら、良いんじゃない?」
「うーん……」
『武蔵』は困ったように眉を顰める。
彼がなぜ困っているかというと、『瑞鶴』の言う『あの子達』を外に連れ出すことであった。
とても重要な存在とあって、例えアズールレーンやレッドアクシズ、セイレーンがいないこの世界であっても、その存在を晒して果たしていいのか……
「あら、『瑞鶴』。何だか楽しそうね」
と、知った声がして二人は声がした方を見ると、一人の女性が微笑みを浮かべて立っていた。
雪の様に白い銀髪を腰の位置まで伸ばしており、瑞鶴が羽織っている着物の様に、振袖の先が黒い白い着物を身に纏っている。『瑞鶴』と同じ腰に鞘に収まった刀を提げている。
翔鶴型航空母艦の一番艦『翔鶴』。そのKAN-SENであり、瑞鶴の姉である。
「『翔鶴』」「『翔鶴』姉」
二人が女性こと『翔鶴』を呼ぶと、彼女は二人の元に歩み寄る。
「楽しそうに話していたけど、何を話していたの?」
「うん。実はね――」
『瑞鶴』は楽しそうに、『翔鶴』にさっき『武蔵』と話していた事を話す。
「あら。それは良いわね」
話を聞いて翔鶴は両手を合わせて笑みを浮かべる。
「きっとあの子達も喜ぶわ」
「でしょ?」
『瑞鶴』も笑みを浮かべる。
「ねぇ、『武蔵』。良いでしょ?」
「うーん。そうだね……」
『武蔵』は『翔鶴』と『瑞鶴』を交互に見て、笑みを浮かべる。
「まぁ、終わったら、一緒に出かけてもいいかな」
「うん!」
「はい」
「でも、僕の一存じゃ決められないかな。外に連れて行くにしても、兄様の許可が要るし」
「あぁ、やっぱりそうだよねぇ……」
「……」
『瑞鶴』は苦笑いを浮かべて、『翔鶴』はどこか気に入らないようにムッとした表情を浮かべる。
「よぉ、『武蔵』」
と、噂をすれば何とやら。三人の元に『大和』がやって来る。
「兄様」
『武蔵』が気付くと、鶴姉妹も『大和』を見る。
「お義兄様」
「お義兄さん!」
「おう、『翔鶴』に『瑞鶴』」
『大和』は二人を見ると、笑みを浮かべて『武蔵』を見る。
「楽しそうな雰囲気だな、『武蔵』」
「っ!」
兄にそう言われて『武蔵』は顔を赤くする。
「遠くから話は聞いてたが、良いじゃないか」
『大和』はマイハークの街並みを見る。
「戦いが終われば、楽しんで来い。思い出作りも大切だからな」
「やったぁっ!」
「ありがとうございます」
「ありがとう、兄様」
総旗艦の『大和』が許可を出したことで、三人は喜ぶ。
「良いってことよ」
そんな三人の様子に、『大和』は微笑みを浮かべる。
「総旗艦! 『紀伊』指揮艦より電文です!!」
すると電文を持った『武蔵』の通信兵の妖精が『大和』の元へとやって来る。
『大和』は妖精より電文の紙を受け取り、内容を読む。
「『こちら「紀伊」。第二艦隊は間も無くマイハークに到着。遅れたのは申し訳ない』か」
『大和』は安堵に近い息を吐く。
第二艦隊が遅れた原因は道中一隻のKAN-SENが機関不調を起こして、速度を落とさざるを得なかった。
今は良くなって速度も戻っているが、それによって到着が予定より遅れてしまったのである。
『大和』は『武蔵』達と別れて反対側へと歩いていく。
―――――――――――――――――――――――――
所変わって派遣第二艦隊 旗艦『扶桑』
「何とか間に合ったな」
「はい」
特徴的な形状を持つ『扶桑』の艦橋にて、『紀伊』が安堵の息を吐く。それに相槌を打つように隣に立つKAN-SEN『扶桑』が笑みを浮かべる。
周りには『山城』、『伊勢』、『日向』が続き、その周囲を重巡、軽巡、駆逐艦が囲いながら進んでいた。
『うぅ、ごめんなさい、将軍様ぁ。私のせいで』
無線で今にも泣きそうなKAN-SEN『山城』の声が『紀伊』の耳に届く。
「気にするな。機関不調なんて誰にだってあるんだ。お前にだけに起こることじゃない」
『でも、将軍様ぁ……』
今にも泣きそうな『山城』に、『紀伊』は困ったような表情を浮かべる。
艦隊が遅れる原因となった機関不調を起こしたKAN-SENとは、『山城』の事であった。
KAN-SENのメンテナンスは定期的に行っているが、どういう事か『扶桑』と『山城』はどこかしらの不調が発生してしまう。
『扶桑』と『山城』には独自の改装が施されたことで速度が向上している分不調が起き易いものも、最近は『扶桑』の方は落ち着いているが、なぜか『山城』だけどこかしら不調が発生してしまう。
ちなみにこの現象に『紀伊』と『大和』は扶桑型姉妹の不幸っぷりに、別次元の彼女達の事を思い出したとかなんとか。
(引き摺りすぎだろう。まぁ、真面目な性格だから仕方ないんだが)
内心呟きつつ、落ち込んだ『山城』をどうしようか考えていると……
「『山城』。あまり指揮艦様を困らせてはいけませんよ」
『「扶桑」姉様……』
と、『紀伊』が悩んでいると、『扶桑』が優しく『山城』に声を掛ける。
「指揮艦様の言う通り、不意の事故である以上、仕方ないところがあります」
『……』
「それに、指揮艦様は気にするなと言っています。これ以上指揮艦様を困らせるのですか?」
『そ、そんな事は!』
「でしたら、気持ちを切り替えなさい」
『は、はい!』
姉にぴしゃりと言われて、『山城』は声を上げる。
(さすがだな)
『紀伊』はさすが姉だと尊敬する。
『到着したか、「紀伊」』
と、『大和』より無線連絡が入る。
「待たせたな」
『到着早々で悪いが、作戦を説明する。艦隊は投錨後、全KAN-SENは「武蔵」の戦闘情報管制室に集合してくれ』
「分かった。全員に伝える」
『紀伊』は一旦無線を切ると、すぐに全ての艦にチャンネルを繋げて『大和』の言葉を伝える。
―――――――――――――――――――――――――――――
「おっ、『大和』達が来たんだな」
その頃、マイハーク港の埠頭で、一人の男性が港に集結した派遣艦隊を眺めながら声を漏らす。
丸眼鏡に短足、寸胴という見た目の男性で、少しボロボロで汚れが目立つ重桜の軍服を身に纏っている。
彼の名前は『大山敏郎』。トラック泊地に住む数少ない人間である。
話せば長くなるような事情があって、彼はトラック泊地に住んでいる。出身地は重桜で、技術者として職に就いていたので、トラック泊地でも技術者として活動している。
重桜では随一の技術者であった彼は妖精達との交流で更に技術と知識を身に付け、KAN-SENの艤装の改良に携わっている。他にも武器兵器開発にも関わっている。
彼はトラック泊地から派遣されて、クワ・トイネ公国とクイラ王国の技術者に教育を行っている。今日はヤクモ級重巡洋艦とウネビ級軽巡洋艦とマツ級駆逐艦の扱いについての教育を行っていた。
「やっぱりこうして見ると大きいな」
敏郎は停泊している『武蔵』を見つめて、声を漏らす。
「『紀伊』は他の軍艦に便乗しているのか。作戦開始前には一目見たかったんだがな」
派遣艦隊に組まれている戦艦を見ていき、紀伊型戦艦の姿が無いと彼は少し残念そうにする。
どうやら彼は空母よりも戦艦が好きなようである。
「ここに居たのね、トチロー」
と、後ろから声を掛けられて彼は振り向くと、一人の女性が立っていた。
腰まで伸びたワインレッドの髪にスカイブルーの瞳をしており、耳がまるでエルフのように尖っている。胸元が開けた赤い制服に黒いマントを纏い、腰には黒いサーベルが鞘に収められて提げられている。
彼女は『デューク・オブ・ヨーク』 キング・ジョージ五世級戦艦のKAN-SENである。
「デューイ」
敏郎は彼女を愛称で呼ぶと、『デューク・オブ・ヨーク』は彼の隣に来て、停泊している派遣艦隊を見つめる。
「総旗艦達が来たのね」
「あぁ。KAN-SEN達が『武蔵』に移動しているから、恐らく作戦会議をするんだろう」
「そう……」
『武蔵』へとKAN-SEN達が内火艇で移動する姿を見ながら会話を交わし、敏郎が彼女を見る。
「デューイは行かなくていいのか?」
「私はここを任せると指揮艦から指示が出されている。参加する必要は無いわ」
「そうか。で、俺に何か用があるのか?」
「えぇ。そなたに艤装の調整をお願いしたいの。総旗艦達が来たのなら、そろそろ準備が必要になるわ」
「確かに……分かった、すぐに行く」
敏郎は頷き、『デューク・オブ・ヨーク』と共に彼女の艦体が停泊している埠頭へと向かう。
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