異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第十六話 作戦会議

 

 

 

 

 空母武蔵 戦闘情報管制室

 

 

 大和型航空母艦には今で言うCICのような場所が装甲戦闘艦橋の下に設けられている。優秀な通信設備を持つここで、戦闘情報を整理し、戦局を見極めつつ、各艦へ的確な指示を出す。

 現在では一部の電子機器を更新しており、当時よりデジタルな内装に変わっている。

 

 そんな戦闘情報管制室に、『大和』達が集まっていた。

 

 

「……」

 

 『大和』は近くでワゴンの上で紅茶を淹れているKAN-SEN『ベルファスト』と『ニューカッスル』を横目に、部屋を見渡す。

 

「全員集まったな」

 

 『大和』は今回派遣が決まったKAN-SEN達を見回して、欠員がいないのを確認する。

 

「現在の状況を確認する」

 

 『大和』は手にしているタブレット端末を操作し、ディスプレイが埋め込まれたテーブルに海図を表示させ、その上から別データを重ねる。

 

「特戦のUボートによる索敵で、敵艦隊はここから西方260kmの位置に居ることが判明している。船足は5ノット程度と遅いが、確実にこちらに向かってきている」

 

 ディスプレイに表示された海図に敵艦隊が居る海域に赤い点を表示させ、矢印が出てマイハークまで繋げる。

 

「『黒潮』達の情報では、敵艦隊の数は4000隻以上だそうだ」

 

 『紀伊』は自身の尻尾の先で頭の後ろを掻きながら手にしているタブレット端末を操作し、赤い点の上に数字を表示させる。その数字を見たKAN-SEN達は驚きこそしなかったが、一部は「ふーん」と声を漏らす。

 

「数だけは凄いな」

 

「そうね。数だけ(・・・)は、ね」

 

 と、ブロンドのロングヘアーをサイドテールにして、白いクロークを纏う少女ことKAN-SEN『クリーブランド』が呟くと、相槌を打つように隣に立つ銀髪少女ことKAN-SEN『プリンツ・オイゲン』が皮肉めいて呟く。

 

「敵の戦力は帆船やガレー船で、武装は水夫の放つ弓矢と船に搭載されているバリスタ程度だ。それと敵艦に乗り込んで白兵戦を行う水兵ぐらいだ。あとは後方にワイバーンを飛ばすための基地があるから、航空戦力も充実している」

 

 『大和』はタブレット端末を操作し、ディスプレイに敵戦力の帆船とガレー船、ワイバーンに跨る竜騎士が写った写真を表示させる。

 

「帆船ねぇ。この程度の武装で攻めて来る敵が、何だか哀れに見えてくるわね」

 

 帆船を見た『プリンツ・オイゲン』はため息を付く。

 

「ワイバーンの性能は……零戦改どころか九六式にも満たないのね」

 

「というより、複葉機にすら満たないよ」

 

 ディスプレイに表示されたワイバーンのスペックを見て、『翔鶴』は哀れめいた様子で声を漏らすと、『武蔵』が補足ついでにため息をつく。

 

「こうして敵の戦力を見ると、こんなに技術の差があるんですね」

 

 『冬月』はその事実を確認して、声を漏らす。

 

「総旗艦。相手の戦力を考えますと、これだけの戦力を出すのは過剰なのでは?」

 

 『Z23』は『大和』に意見を述べる。

 

 技術的な面を考えれば、射撃武器が弓矢かバリスタ程度しかない帆船や白兵戦を仕掛ける水兵を乗せたガレー船、空飛ぶトカゲことワイバーン相手に戦艦5隻、空母3隻どころか、巡洋艦数隻ですら投入するのはあまりにも過剰である。

 数は必要になるが、駆逐艦だけでも十分対処可能だ。

 

「まぁ、確かに相手の戦力を考えれば、過剰だな。だが、向こうには魔法という不確定要素がある以上、決して侮れん」

 

「……」

 

「でもお義兄……じゃなかった。総旗艦。相手が帆船程度なら、航空機の攻撃だけでも十分じゃ」

 

 と、『瑞鶴』が『大和』に問い掛けると、一部の戦艦のKAN-SENが彼女の言葉にムッとする。

 

「普通ならな。だが、魔法で物質の強度を上げる事が可能かもしれん。そうなれば、航空機の機銃程度では沈められん。かといって爆弾や魚雷で沈めようとすると、相手の数が多い。とても現実的じゃない」

 

「あっ、そっか。そういう可能性もあるんだよね」

 

「そういうことだ」と『大和』は呟く。

 

 彼が過剰なまでに戦力を連れてきたのは、万が一を想定しているからである。

 

 とは言うものも、実質的にロウリア王国側の艦隊と直接戦闘を行うのは『紀伊』率いる第二艦隊であり、第一艦隊は空母による航空攻撃で、『榛名』や『摩耶』達は空母の護衛を行うので、直接戦闘に参加はしない。

 

「それに、いくらこちらに技術的優位があったとしても、4000隻以上の船を相手にする以上手を抜くわけにはいかん。蟻でも大群であれば象を殺せるからな」

 

 『大和』は例え話をしつつ、タブレット端末を操作して表示しているディスプレイのデータを変える。

 

「俺達は明朝0300時にマイハークを出港。敵艦隊の位置を掴んだ後、五航戦は第一次攻撃隊を発艦。敵艦隊を攻撃する」

 

 ディスプレイに一通りの作戦の流れを表示させる。

 

「第一次攻撃隊の編成だが、今回ばかりは特殊だ。三人はもう一度確認しておくように」

 

 『大和』はタブレット端末を操作して編成表を『武蔵』、『翔鶴』、『瑞鶴』が手にしているタブレット端末へと送信する。すぐに三人のタブレット端末に編成表が届き、タブレット端末を開いて編成表を確認する。

 

「当然向こうも攻撃を受ければ航空支援としてワイバーンの出撃要請を出すだろう。ワイバーンの迎撃は『武蔵』の戦闘機隊が当たってくれ」

 

「了解しました」

 

「それと、敵騎はあえて全てを撃ち落さず、少数だけ残しておいてくれ。残りは第二艦隊が片付ける」

 

 『紀伊』は尻尾にタブレット端末を乗せると、『ニューカッスル』より紅茶が淹れられてソーサーに載せられたティーカップを受け取りながら、『武蔵』に要望を出す。

 

「航空戦力ではなく、水上戦力でワイバーンを撃ち落す。それで敵の戦意を削ぐ」

 

「うまくいくでしょうか?」

 

 『ニューカッスル』より紅茶が淹れられてソーサーに載せられたティーカップを受け取りながら、『鞍馬』は少しばかり不安な表情を浮かべて、『紀伊』に問い掛ける。

 

「そこは向こう次第だろうな。向こうにだって軍人としての意地はあるんだ」

 

 彼はそう答えて、ティーカップを手にして紅茶を飲む。

 

「だが、可能であれば流血は少ない方が良い。ワイバーンを超える存在による攻撃に加え、ワイバーン以外のもので一方的にワイバーンが落とされる。戦意を削がれて降伏するのか、不利を悟って撤退してくれるのなら、御の字だ」

 

 『大和』はタブレット端末をディスプレイに置き、『ベルファスト』よりソーサーごと紅茶が淹れられたティーカップを受け取り、ティーカップを手にして香りを楽しみつつ、紅茶を飲む。

 

 最強の空の戦力とされるワイバーンが、ワイバーン以外のものでいとも簡単に撃ち落されたのなら、敵の戦意は大きく削がれるだろうと考えてであった。

 

「艦隊の防空は対空戦闘が得意なKAN-SENで構成しているが、今回は作戦の要として『扶桑』、『山城』、『伊勢』、『日向』にある。頼んだぞ」

 

「はい。総旗艦様」

 

「空の守りは任せてください、殿様!」

 

 『扶桑』と『山城』は頷いて肯定する。

 

「あの時みたいに『大和』達の空は守ってやるさ」

 

「あぁ。任せておけ。あの時と違って兄……じゃなかった。姉さんと同じ装備だが、必ず守ってみせる」

 

 『伊勢』と『日向』も頷いて肯定する。

 

「……あぁ。任せたぞ」

 

 しかし『伊勢』と『日向』がそれぞれ肯定した瞬間、『大和』の表情に一瞬陰りが差すも、彼は気持ちを切り替えて返事をする。

 

「ねぇねぇ、指揮艦。もし敵が降伏せずに向かってきたら、どうするの?」

 

 と、オレンジ色のショートヘアーに鈴が付いたチョーカーを付けている少女ことKAN-SEN『フォックスハウンド』が『ニューカッスル』より紅茶が淹れられてソーサーに載せられたティーカップを受け取りながら、『紀伊』に質問する。

 

「退く判断を下す機会は二回あった。それを無視してでも進むのなら、殲滅するだけだ」

 

「本当に向こうが哀れになるわね」

 

 敵がどうなるかを察して、紅茶が淹れられたティーカップを持つ『プリンツ・オイゲン』はため息を付く。

 

「ロウリア王国側の艦隊が降伏せず攻撃を続行するのなら、作戦は第二段階に移行する」

 

 『大和』はティーカップをソーサーに置き、ディスプレイに置いたタブレット端末を操作して表示している画面を切り替える。

 

「五航戦は第二次攻撃隊を出す。編成と搭載兵器はさっきの編成表にも載っている」

 

「確認はしました。ですが―――」

 

「本当に、こんな攻撃をするの?」

 

 と、『翔鶴』と『瑞鶴』は『大和』に戸惑いながらも問い掛ける。

 

「敵に対して効果的な攻撃を行い、確実に数を減らす。相手の構成を考えた末の攻撃だ」

 

「それは……」

 

 『武蔵』は何か言いたげであったが、口を閉じる。

 

「同時に第二艦隊は敵艦隊に対して攻撃を行う。敵が降伏するまで攻撃は続けろ」

 

『……』

 

 彼の容赦の無さにKAN-SEN達の多くは息を呑む。

 

「この作戦で今後の戦局が左右される。各員気を引き締めてかかれ」

 

『了解!』

 

 『大和』の言葉を聞き、KAN-SEN達は一斉に敬礼をする。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 作戦会議後、解散したKAN-SEN達は各々の場所へと戻って行く。『大和』は空母武蔵の艦内にある長官室に居た。

 

「……」

 

 椅子に座り、改めて敵の戦力と進攻具合をタブレット端末の画面に表示させて確認している。

 

「……はぁ」

 

 彼はため息を付いて、机にタブレット端末を置き、両手を組んで上へと上げて身体を伸ばし、左右に動いて筋肉を解す。

 

(海戦は別に問題無いとして、陸もそこまで問題があるわけじゃないが……)

 

 『大和』は頭の中で今後の戦局の動きを予想する。

 

(問題はギムでの一件を終えた後か)

 

 腕を組み、天井を見上げる。

 

 この海戦に勝利して、次に地上で行われるであろうエジェイに勝利して、ギムでの一件を終えたとしても、この戦争は終わらないだろう。

 

(こちらの技術的優位は揺るがないが、物量は向こうの方が上だ。長期戦はこちらに不利)

 

 伊達にこのロデニウス大陸の半分を牛耳っている国ではない。それなりの物量はある。それに魔法という不確定要素がある以上、長引かせるのは得策ではない。

 とは言え、向こうに混乱を起こさせる為にもあえて時間を掛けて一手を投じなければならないが。

 

(やはり、一気に王都へ攻め入るしかないか)

 

 戦争を長引かせない為にも、短期決戦に挑むしかない。

 

 まぁ、以前よりロウリア王国を仮想敵国とした作戦計画を考えていたので、そう難しく考えるような事ではない。

 

 近い内にクワ・トイネ公国とクイラ王国との会談で、この作戦計画を話し合う予定だ。

 

 

 コンコン……

 

 

「誰だ?」

 

 扉からノック音がして『大和』は声を掛ける。

 

『俺だ。入っていいか?』

 

「『紀伊』か。あぁ良いぞ」

 

 『大和』が入室を許可すると、扉が開かれて『紀伊』が入ってくる。

 

「どうした、『紀伊』?」

 

「いやなに、『扶桑』の所に戻る前にちょっと友人と話をな」

 

「そうかい」

 

 『紀伊』は近くにある椅子を引き寄せて腰掛ける。

 

「しっかし、これだけの大きさだが、中はそこまで複雑じゃないな」

 

「空母と戦艦とじゃ求められる構造が違うんだ。お前の所の迷宮と比べられるもんじゃないだろ」

 

「そりゃそうだ」

 

 『紀伊』は苦笑いを浮かべ、『大和』はため息を付く。

 

「そういやさっき、『武蔵』を見たぞ」

 

「『武蔵』を?」

 

「あぁ。相変わらず嫁達と一緒だったぞ」

 

「ふーん」

 

「といっても、嫁達の方が『武蔵』に寄っているって感じだったがな。『武蔵』のやつ戸惑っていたしな」

 

「そうか」

 

 容易にその光景が想像できてか、『大和』は苦笑いを浮かべる。

 

「それにしても、あの二人は変わったな」

 

「どっちかというと、『瑞鶴』の方が変わったと言えるがな。前まであんなに積極的じゃなかったはずなのに」

 

「確かに。一体どういった心変わりがあったのやら」

 

「さぁな」

 

 『紀伊』はそう呟くと、『大和』は相槌を打つ。

 

「まぁ、それはともかくとして」

 

 そう呟いてから咳払いをして、『紀伊』は気持ちを切り替える。

 

「『大和』。お前はこの戦争……どこで落とし所を付けようと思っている?」

 

「そうだな。とりあえず奪われたギムを奪還して、そこでロウリアと講和を持ち込む、っていうのが一番望ましいが……」

 

「進撃した軍を自分達の領土にまで押し返された程度で、連中が交渉の席に着くと思うか?」

 

「いや、無いな」

 

 『紀伊』が問い掛けると、『大和』は何の迷いもなく即答する。

 

「そんな程度で講和の席に着くのなら、世界はもっと平和さ。この世界に限らずにな」

 

「そりゃそうだ」

 

 『紀伊』はため息を付く。

 

 戦争を終わらせる為に、講和を求めるのがどれだけ大変で難しいかを、二人はよく知っている。

 

 互いに多くの犠牲を払い、戦争を終わらせた経験があるのだから。

 

「となると、逆侵攻は確実。敵の戦意が喪失するまで戦うか、最悪敵を殲滅して戦争を終わらせる、ってところか」

 

「可能なら前者が望ましいな。出来れば後者に至って欲しくない」

 

 『大和』は苦虫を噛んだように顔を顰める。

 

「そうなると、やっぱりロウリア王国を仮想敵国として立てた計画通りに進めるしかないか」

 

「そうだな。今のところ考えられる最善の策だ」

 

「だな」

 

 『紀伊』は頷くと、首を動かして骨を鳴らす。

 

「まぁ、話は変わるが……」

 

 と、『紀伊』は真面目な表情を浮かべて、『大和』を見る。

 

「あの様子じゃ、まだ引き摺っているみたいだな」

 

「……気付いたいたのか」

 

「そりゃ、お前とは長い付き合いだ。戦友の変化は何となく分かるのさ」

 

「……」

 

「まぁ、俺も人のことは言えないんだがな」

 

 彼がそう言うと、『大和』は黙り込み、『紀伊』は尻尾で頭を掻きながらため息を付く。

 

「割り切れとは言わないが、ある程度踏ん切りは付けておけよ。じゃないと、いつか参っちまうぜ」

 

 『紀伊』はそう言うとイスから立ち上がり、扉を空けて部屋を出る。

 

「……」

 

 『紀伊』が部屋から出た後、『大和』は深くため息を付き、椅子にもたれかかって天井を見上げる。

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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