異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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ドンパチの始まりであります


第十七話 ロデニウス沖海戦 壱

 

 

 

 中央歴1639年 4月18日 ロデニウス沖 

 

 

 

「いい景色だ。美しい……」

 

 朝日が空と海を照らす中、海を埋め尽くさんばかりの数の帆船が東に向かって波を掻き分けて進む。ロウリア王国海軍の艦隊、4000隻以上の、正確には4500隻の大艦隊である。

 

 その艦隊の中心部を航行する旗艦に乗艦している艦隊司令官・海将シャークンは艦隊を眺めながら呟いた。

 

 海を覆い尽す大量の帆船が一隻一隻隊列を崩さず、海面に反射した光を受ける白い帆を輝かせながら風いっぱいに進む姿は、美しいとしか言えない。

 

 その一隻一隻に多くの水夫や、揚陸軍を乗せて、艦隊はクワ・トイネ公国の経済都市マイハークを目指す。そして500隻の艦隊がロウリア王国の南の港から出発し、クイラ王国を目指している。

 

 6年もの間、ロウリア王国は第三文明圏の列強国『パーパルディア皇国』から屈辱的な条件を呑みつつ、多くの軍事援助を受けて、ようやく完成した大艦隊。これだけの艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸には存在しない。

 もしかすると、その軍事援助を行ったパーパルディア皇国でさえ制圧出来そうな気がする。

 

(いや……パーパルディア皇国には『砲艦』と呼ばれる、船そのものを破壊する兵器を積んだ軍船があるらしいな)

 

 そんな艦隊を眺めていて彼は一瞬野心を覗かせたが、シャークンは理性で野心を打ち消した。

 

 いくら以前よりも遥かに強化されたとは言えど、第三文明圏の列強国に挑むのは、あまりにもリスクが高い。

 

 そうやって皇国に挑んで逆に滅ぼされた国は数知れない

 

 シャークンは野心を振り払うように艦隊を眺めて、艦隊の進行方向である東を見る。

 

 

 

 まさか上空で自分達の動きを見ている者が居るとも知らずに。

 

 

 

 特異な形状をしている『三式艦上高速偵察機』に乗る操縦手と偵察員の妖精達は海面を覆い尽くして進むロウリア王国海軍の艦隊を眺めていた。

 

 偵察員の妖精は艦隊発見の報の電文を平文で母艦へと送る。

 

 その後しばらく三式艦上高速偵察機は艦隊から見つからないように、雲に隠れながら艦隊の動きを見張る。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 明朝にマイハークを出港した派遣艦隊は第二艦隊を前衛にして、西に向かって進んでいた。

 

 後方に居る第一艦隊の『武蔵』は『翔鶴』、『瑞鶴』を引き連れ、周囲を『榛名』『摩耶』『鞍馬』『冬月』『春月』『北風』『宵月』達が囲い、上空を警戒しながら航行している。

 空母三隻の甲板では、外側にあるエレベーターを使って甲板に上げられた艦載機の発進準備が行われている。

 

 

「……」

 

 空母『武蔵』の防空指揮所に出ている『大和』と『武蔵』は双眼鏡を首に提げて、上空を見上げていた。

 

「索敵機が飛び立ってそろそろ一時間が経過します」

 

「……そうか」

 

 『武蔵』が懐中時計を手にして時間を告げると、『大和』はボソッと呟き、西を見つめる。

 

(もうそろそろ、か)

 

 『大和』はこれまでの経験から予想し、上着の左袖をずらして手首にしている腕時計を出し、現在の時刻を確認する。

 

 

 すると防空指揮所に備えられた艦内電話が鳴り、防空指揮所に居る妖精がすぐさま受話器を取り耳に当てる。

 

「索敵機より入電!『我、敵艦隊を発見。距離、西方に200km、速力5ノットで航行中!』以上です!」

 

「こっちでも確認したよ、兄様」

 

「見つけたか」

 

 妖精が通信員の妖精より索敵機からの報告を『大和』に伝え、『武蔵』も索敵機からの視界で見た光景を伝える。

 

 報告を聞いた彼は頷き、『武蔵』を見る。

 

「作戦第一段階開始! 航空隊、発艦始め! 『翔鶴』、『瑞鶴』にも打電!」

 

「はっ! 航空隊、発艦始め!」

 

 『武蔵』は敬礼をすると、すぐに艦載機の発艦命令を出し、同時に『翔鶴』、『瑞鶴』へと連絡する。

 

 

 『武蔵』、『翔鶴』、『瑞鶴』の甲板では、暖機運転を行っていた艦載機が対空機銃座要員の妖精達に帽触れで見送られながら次々と甲板に埋め込まれた油圧式カタパルトを使い、発艦していく。

 

 『武蔵』からは『疾風(しっぷう)』40機と『流星改』50機、『翔鶴』、『瑞鶴』からは『烈風』が60機ずつの計210機が飛び立つ。

 

 

 ちなみにこの疾風と呼ばれる機体、艦載機としては異様な姿をしている。

 

 レシプロの艦載機としては大型の部類に入るが、何よりの特徴は機体の前後に発動機とプロペラを持っていることであろう。

 

 この機体の姿は別世界の、鉄血に該当するナチスドイツと呼ばれる国で開発された『Do 335』と呼ばれる戦闘機に瓜二つの姿をしている。まぁ実際の所この疾風は、そのDo 335の設計を基に陸上機として採用されていた機体を艦載機として設計を引き直して開発された艦上戦闘機である。

 

 その性能は艦上戦闘機としては上位に入る代物で、二基の発動機によって高い出力を誇る。火力も『MG151/20』を国産化した零式機銃を四基搭載しているとあって、航空機としては破格の威力を有する。

 

 艦上戦闘機としての性能は良かった。しかし色々と扱いの難しい代物であったのだが、何より機体サイズと構造が問題で、運用できる空母は限られてしまい、問題なく運用出来るのは実質的に大和型航空母艦のみであった。それ以外の空母ではカタパルトは必須として、場合によっては補助ロケットを使って無理矢理飛ばすしかない。

 

 ちなみに疾風(しっぷう)の陸上機仕様は疾風(はやて)と呼ぶ。非常にややこしい名称であるが、まぁ海軍と陸軍の当時の関係が関わっていたりする。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 『武蔵』の艦首側とアングルドデッキ側の飛行甲板に埋め込まれた油圧式カタパルト四基全てを使い、次々と疾風が飛び立つ。発艦した疾風はその出力に物を言わせて一気に高度を上げていく。

 

 その後に爆装した流星改が艦首側とアングルドデッキ側のカタパルトを用いて次々と発艦する。

 

 『翔鶴』、『瑞鶴』から発艦する烈風も飛行甲板に埋め込まれた油圧式カタパルトを用いて次々と発艦する。発艦する烈風は全て両翼下に対地、対艦攻撃を目的にした『一〇〇式ロケット弾改』を四発ずつ計八発の提げており、戦爆として出撃している。

 

「第一次攻撃隊、発艦完了。続いて第二次攻撃隊の発艦準備に取り掛かれ!」

 

 『武蔵』はすぐに第二次攻撃隊の出撃準備を命令する。

 

 三隻の空母にはそれぞれ艦攻、艦爆仕様の流星改が搭載されており、それぞれの空母で第二次攻撃隊として編成され、発艦準備が行われている。

 

 しかし本来であれば戦闘機の他に艦爆、艦攻と共に組んで発進するのが常識だ。

 

 しかし第一次攻撃隊は戦闘機が殆どで、『武蔵』から少数の艦爆流星が出撃しているだけである。

 まぁ、この特異的な編成の理由は後に分かる。

 

「全艦、上空警戒を厳にせよ。異常が見つかればすぐに報告しろ」

 

 『大和』はすぐに他のKAN-SEN達に対空戦闘を行えるように指示を出して伝える。

 

 

「これは……」

 

 防空指揮所に案内されて、事態が動く様子を後ろから見ていたブルーアイは呆然と立ち尽くしていた。

 

 クワ・トイネ公国空軍で最近運用が始まった航空機が次々と『武蔵』や、隣を航行している『翔鶴』、『瑞鶴』の甲板から飛び立っていく光景に、ブルーアイは圧倒される。

 

「これが航空母艦。航空機と呼ばれる飛行機械を海上で運用する軍艦です」

 

「空母……航空機……」

 

「運用次第では海戦の戦局を大きく変えます」

 

「……」

 

 『大和』の説明を聞いて、ブルーアイは目を見開いて驚くも、すぐさま『大和』より渡されたカメラを手にして艦載機の発艦光景を撮影する。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 場面は変わり、ロウリア王国海軍艦隊

 

 

 艦隊は順調に東に向かって海を突き進んでいる。

 

「……」

 

 険しい表情を浮かべているシャークンは、腕を組んで空を見上げていた。

 

(何だろうな。このざわついた感覚は)

 

 長年の経験ゆえか、戦の前にある不安な予感が彼の胸の中で渦巻いていた。

 

(敵が来る……のか?)

 

 シャークンは不安は残るが、気を引き締める。

 

 相手はこちらの半分の戦力も無いクワ・トイネだが、国を守る為に決死の勢いで攻撃してくるだろう。油断は出来ない。

 

 

 

「ん?」

 

 ふと、空の向こうに黒い点が一瞬見えて、彼は目を細める。

 

「なん……っ」

 

 しかし直後に風が吹いて目が乾き、一瞬目蓋を閉じて擦り、目蓋を開けて再び前を見る。

 

 見間違いと思っていた黒い点が複数あり、しかもさっきよりも大きくなっている。

 

「っ! まさか!?」

 

 東から何かが空を飛んで向かってきている。敵が居る方向から味方のワイバーンが飛んでくるはずが無い。

 

「敵襲! 敵襲だ! 空から来るぞ!!」

 

 シャークンが叫ぶと、水夫達は一斉に戦闘配置に付く。

 

「通信兵!! 至急司令部にワイバーン部隊の上空援護を要請しろ!! 急げ!!」

 

「はっ!」

 

 通信兵はすぐさま司令部へと連絡を入れている中、シャークンは空を見上げて、目を見開く。

 

 まだ黒い点であったはずなのに、さっきよりもずっと近くにまで接近していた。それによって点ではなく、ある程度形が分かるぐらいにまでである。

 

 それはワイバーンの姿からはかけ離れており、羽ばたいておらず、何やら「ブーン」という聞き慣れない音と共に接近していた。

 

 

 それは『翔鶴』、『瑞鶴』より発艦した戦爆烈風120機と『武蔵』艦載機の流星改50機である。

 

 

「あれは一体……!」

 

 シャークンが驚いている間に、周りでは水夫達が弓矢やバリスタの準備をして身構える。

 

 だが、ワイバーン相手にそれらの攻撃が無駄に終わる事を誰もが知っている。

 

 ワイバーンには、ワイバーンしか対抗出来ないのだから。

 

 しかしだからと言って何もしないわけにはいかない。当たらなくても牽制になるし、運が良ければ矢が刺さって落とせるかもしれない。

 そんなラッキーパンチが出るのを願いつつ、彼らは待ち構える。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 その頃、艦隊から上空援護を要請されたワイバーン本陣では、ワイバーンが次々と飛び立っていた。

 

「400騎のワイバーンが飛び立つのは、壮大だな」

 

 次々と飛び立つワイバーンを眺めるワイバーン運用部隊の司令官は思わず声を漏らす。

 

 これだけのワイバーンが出撃するのだ。我が軍の勝利は確実となる。司令官はそう思い抱く。

 

「……」

 

 ただ、オペレーターの一部はその後ろ姿を睨むように見ていた。

 

(400騎全てのワイバーンを投入するなんて。これで何かあったらどんな事になるか)

 

 司令官の後ろではオペレーターが内心で愚痴っていた。

 

 確かにワイバーンの強さは良く知っている。これだけの数を投入するなら勝利は確実だろう。

 

 しかし、だからこそこのワイバーン400騎に何かあったら、今後の作戦に支障をきたす可能性が高い。

 

 オペレーターの男性はそのことを危惧するものも、口出しできる立場に無いので、彼は黙ったまま自分の仕事に没頭する。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 そして艦隊に敵のワイバーンこと烈風隊が展開しつつ艦隊に向かって降下する。

 

「来るっ!!」

 

 シャークンは敵が攻撃態勢に入ったと身構えると、烈風各機は両翼に提げている一〇〇式ロケット弾改を間隔を空けて発射する。

 

 発射されたロケット弾は勢いよく艦隊へと突っ込み、帆船に直撃か海面に衝突して爆発を起こし、帆船を粉々に吹き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

 爆発して粉々になる帆船を目の当たりにして、シャークンは目を見開く。

 

 ワイバーンの導力火炎弾なんか、比べ物にならない爆発だった。

 

 しかも爆発時に火矢に使う油に引火して、火を纏った破片が周囲に飛び散り、周りに居た帆船の帆やロープに火が移ってしまう二次被害が生じた。

 

 ロケット弾は何発も放たれたので、艦隊のあちこちで爆発が起き、外れたロケット弾が海面で爆発し、水柱を上げる。

 

 ロケット弾が命中した帆船やガレー船が水夫諸共粉々に吹き飛ぶ。その爆発で炎を纏った破片が周辺に広がり、その混乱で操舵ミスが生じて船同士で衝突する等、二次被害が発生して艦隊は大混乱に陥る。

 

「な、何という破壊力だ……」

 

 艦隊のあちこちで火が上がっている光景に、シャークンは呆然とした。

 

「っ! 矢だ! 矢を放て!当てる必要は無い! 牽制してやつらに攻撃の機会を与えるな!!」

 

 しかしすぐに気持ちを切り替え、シャークンは水夫達に指示を出す。

 

 艦隊のあちこちで水夫達が弓矢やバリスタを上空を旋回する烈風に向けて矢を放つも、600km/h以上の速度で飛ぶ烈風に当たるはずもないし、何より射程距離が足りていなかった。それどころか流れ矢が他の艦に直撃して、二次被害が続出する。

 

 ロケット弾を放った烈風各機は大きく迂回して機首を艦隊に向け、再び突っ込む。

 

(また来るか!)

 

 シャークンは身構えるが、烈風の機首と両翼がチカチカと細かく輝く。

 

 直後に連続して破裂音が耳に届くと、それと同時に帆船の甲板が抉られ、木片が宙を舞って飛び散る。その近くには身体が真っ二つに千切れたり、四肢のどれかが吹き飛んでいる水夫が血を流して倒れる。

 中には血と肉片、骨が混じった物が辺り一面に広がっていた。

 

 120機もの烈風はロケット弾を撃ち終えた後、零式機銃四門による艦隊への機銃掃射へと移ったのだ。

 

「う、腕が、俺の腕がぁぁぁぁぁっ!?」

 

「……」ゴフッ

 

「いでぇ、いでぇよぉ!?」

 

「足がっ!? 俺の足はどこに行ったんだぁっ!?」

 

 周囲では機銃掃射と二次被害を受けた水夫達がもがき苦しむ。

 

「何!? あのワイバーンはさっきと違う導力火炎弾が撃てるのか!?」

 

 シャークンは驚きのあまり声を上げると、銃弾が着弾した箇所を見る。

 

 零式機銃より放たれた20mmの『HE(M)(薄殻榴弾)』が甲板に着弾して、そこに大きな穴を開けていた。

 

 運が良ければ甲板に大穴が開く程度で済んでいるが、中には船内で炸裂したHE(M)(薄殻榴弾)によって火災が発生し、運が悪ければ甲板を貫通して船底に着弾して炸裂し、そこに大きな穴が開いて沈み出す船が出てくる。

 

「畜生! ワイバーンはまだかよ!」

 

 近くに居た水夫が悲痛な叫びを上げる。その直後烈風の機銃掃射により放たれたHE(M)(薄殻榴弾)が水夫に直撃し、文字通り木っ端微塵となって血と肉片が飛び散る。

 

 

 

 烈風隊とは別方向より艦隊上空に進入した流星改隊は一気に急降下体勢を取る。

 

 急降下を行った流星改各機は爆弾倉の扉を開き、まだ高い高度で両翼に下げている爆弾と共に爆弾を投下する。

 

 一機につき四発の爆弾が投下され、帆船やガレー船へ落下していくと、突然爆弾が炸裂して中から燃焼している弾子が大量に撒き散らされる。

 

 

 流星改が投下したのは『三号爆弾』と呼ばれるクラスター爆弾の一種である。

 

 これは親爆弾の中に多くの弾子こと子爆弾を内臓した爆弾であり、時間設定された時限信管が作動し、親爆弾が内部にある炸薬によって爆発し、中から燃焼した弾子を飛散させる。

 

 燃焼している弾子は対象に命中後、焼夷効果を発揮する。

 

 更にこの弾子は円錐状の形状をしているので、場合によっては対象に命中後深く突き刺さり、対象に大きな被害を齎す。

 

 流星改は両翼に一発ずつ、爆弾倉に二発の三号爆弾を積んで出撃した。

 

 

 ばら撒かれた焼夷弾は帆船やガレー船に降り注ぎ、多くの焼夷弾が帆船に命中して燃えやすい木材やロープに、または帆に火が燃え移り、船上では水夫達が必死に火を消そうと奮闘する。

 

 ガレー船では焼夷弾が命中して火が燃え移り、焼夷弾の直撃を受けて命を落とす者が居れば、焼夷弾の火が服に燃え移り、火を消そうと彼らはとっさに海へと飛び込む。

 だがそれによってガレー船は焼夷弾の火により燃え上がってしまい、操者を失い勝手に走るガレー船が近くに居るガレー船に衝突して火が燃え移った。

 

 流星改各機が投下した三号爆弾により、艦隊のあちこちで火の手が上がり、艦隊の混乱はより一層強まる。

 

 

 しかし、彼らの悪夢は、始まりに過ぎないのだ。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『総旗艦様。第一攻撃隊より入電。攻撃成功。機銃による攻撃を続行中です』

 

「よし」

 

 無線で『翔鶴』より報告を聞いた『大和』は頷く。

 

「機銃でも効果を上げているみたいだね。何隻か沈みかけているよ。特に流星改が投下した三号爆弾は効果大だね」

 

「そうか。想定よりも向こうの防御は低いみたいだな」

 

 『武蔵』は索敵機からの視界で見た光景を『大和』に伝える。

 

「敵がこのまま素直に退いてくれれば、無駄な犠牲が出る事は無いが……」

 

 最後は小さく呟きながら、『大和』は腕を組む。

 

 

「索敵機より入電!『敵飛行編隊が接近中! 数は300以上!』です」

 

 と、艦内電話が鳴って受話器を取った妖精が、通信員の妖精より索敵機からの報告を『大和』に伝える。

 

 空母のKAN-SENは索敵機からの視界を共有できるといっても、視界は一定の方向に限定されるので、こういう時に索敵機に搭乗している妖精が周囲の索敵を行うのである。

 

「まぁ、そう思い通りにはいかない、か」

 

 『大和』は肩を竦める。

 

(ワイバーンの存在が向こうの士気を保っているのだろう。まぁ、この世界じゃワイバーンは空の最強戦力なのだから、希望を抱くだろうしな)

 

 内心呟くと、腕時計ではなく、上着のポケットに右手を突っ込んで懐中時計を取り出し、時刻を確認する。

 

(だが、その士気を崩させてもらう)

 

 『大和』は懐中時計をポケットに戻し、指示を出す。

 

「第二艦隊はこのまま前進。『榛名』は艦隊を離れて第二艦隊に同行せよ。『武蔵』の艦載機は艦爆を攻撃させた後に後退。艦戦は予定通り敵騎の迎撃を。『翔鶴』、『瑞鶴』は第一次攻撃隊を可能な限り攻撃を続けさせ、攻撃後は後退させて補給を受けさせろ」

 

「ハッ!」

 

『了解しました』

 

『了解!』

 

 すぐに無線で『翔鶴』、『瑞鶴』へと指示を出し、第二次攻撃隊の出撃準備をさせた。

 

 

(全く状況が読めない……)

 

 後ろで『大和』達のやり取りを見ていたブルーアイは全く理解出来なかった。

 

(ロウリア王国の艦隊に被害を与えたみたいだが、本当なんだろうか?)

 

 会話の内容からロウリア王国海軍の艦隊に被害を与えたみたいだが、果たして本当なのだろうか?

 

 彼らを疑うわけではないが、あまりにも遠過ぎて、戦場の状況が分からない。

 

 彼の中に疑念が生まれる。

 

「ブルーアイ殿」

 

「は、はい」

 

 と、『大和』が振り返りながらブルーアイに声を掛ける。

 

「宜しければ、もっと近い所で戦闘をご覧になりますか?」

 

「……はい?」

 

 まるでブルーアイの疑念に答えるかのような『大和』の突然の提案に、ブルーアイは思わず首を傾げる。

 

 

 




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