異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第十九話 ロデニウス沖海戦 参

 

 

 

 その後の戦闘は、もはや戦闘とは呼べない、一方的な蹂躙となった。

 

 

 『扶桑』、『山城』、『伊勢』、『日向』の四隻は向かってくるロウリア王国海軍艦隊に主砲を向け、三式弾を放った。

 

 一度の砲撃で放たれた三式弾計28発は時限信管により艦隊直上で炸裂し、一発に内蔵されている25mm×90mmの焼夷弾子1000個前後が雨の如く艦隊に降り注ぐ。

 

 雨の様に降り注いだ焼夷弾子は帆船に直撃すると、火を撒き散らしながら貫通し、船内でも火が撒かれた。

 

 ただでさえ木や布、火矢に使う油が入った壷など、燃えやすい物が多い帆船やガレー船に火の雨がばら撒かれた。どの様な結果になるのは、一目瞭然だった。

 

 

 一瞬にして炎が艦隊に燃え広がり、艦隊の動きが止まる。

 

 水夫達は慌てて帆やロープについた火を消そうとするが、続けて四隻の戦艦の主砲から三式弾が放たれ、上空で何度も焼夷弾子が降り注がれて、火の勢いは益々強くなっていく。中には焼夷弾子が直撃して絶命したり、火が燃え移って火達磨になる水夫もいた。

 

 運良く焼夷弾子から逃れた帆船は火から遠ざかろうとしたが、次の一手は既に打たれていた。

 

 『武蔵』、『翔鶴』、『瑞鶴』より発艦した艦攻、艦爆の流星改を中核とし、一〇〇式ロケット弾改を両翼に提げた戦爆として出撃した疾風と烈風の第二次攻撃隊が艦隊の左右より迫る。

 

 第二次攻撃隊は艦隊を離れようとする帆船とガレー船へと攻撃を開始した。

 

 今回流星改各機には25番や50番といった爆弾の他に、第一攻撃隊の流星改同様に三号爆弾を搭載している。

 

 艦爆隊の流星改はそれぞれの目標へと急降下を行い、爆弾倉と両翼下に提げた三号爆弾を投下する。

 

 投下された三号爆弾は目標直上にて炸裂して弾子をばら撒き、帆船に降り注ぐ。燃焼する弾子の直撃を受けて、帆船は一気に燃え上がる。

 

 艦攻隊の流星改は動きが鈍った艦隊上空にて爆弾倉の扉を開いて水平爆撃にて三号爆弾を投下し、投下後に親爆弾が炸裂して弾子が艦隊に降り注ぎ、炎を撒き散らす。

 

 そして止めと言わんばかりに、烈風及び疾風各機が一〇〇式ロケット弾改を放ち、ロケット弾の直撃を受けた帆船は粉々に吹き飛び、直後に機銃掃射を行う。

 

 三式弾や三号爆弾による被害を免れて、何とか後方へと逃げようとした帆船も、第二艦隊より分離して後方に回り込んだ『クリーブランド』達が砲撃を行い、帆船を沈めて行く。

 

 その中にはクワ・トイネ公国海軍のヤクモ級重巡洋艦とウネビ級計巡洋艦とマツ級駆逐艦の計七隻も加わっており、敵艦隊に向けて砲撃を行っていた。命中率はそれほど高くなく、本職からすればまだまだであるが、初めの頃ならこんなものである。

 

 ともかく、逃げようにも帆を焼かれて推進力を奪われた上に炎に包まれ、その上断続的に四隻の戦艦から三式弾による艦砲射撃と投下される三号爆弾、更に機銃掃射による攻撃を受け続けているロウリア王国海軍の艦隊には、最早どうする事もできない。

 

 

 まさに、地獄絵図であった。

 

 

「……」

 

 炎が上がって燃える船の上で、シャークンは諦めの境地に達して、炎に包まれる艦隊を見渡す。

 

(数の優位で、どうにか出来るものじゃなかった……。最初から勝負は決まっていたのか)

 

 シャークンはその場で立ち崩れて床に両膝を着き、遠くに見える艦隊を見る。

 

 『扶桑』、『山城』、『伊勢』、『日向』の四隻の戦艦は途切れる事無く砲撃を続け、上空ではワイバーンのような物が飛び交い、艦隊に攻撃を仕掛ける。後方では敵艦が続け様に攻撃を続けている。

 

(お前達は、一体どこから来たのだ……) 

 

 あまりにも常軌を逸した力の差に、シャークンは一人確信を得ていた。 

 

 

 あれはクワ・トイネでは無い、別の存在だと……

 

 

「っ!?」

 

 直後、『山城』より放たれた三式弾がなぜか上空で時限信管が作動せずにシャークンが座乗している帆船の近くに着弾し、水柱を上げて船体が大きく揺れる。

 

 しかしシャークンは船体が揺れた衝撃で吹き飛ばされ、海へと落ちる。

 

 直後海面に着水した衝撃で信管が作動した三式弾は海中で爆発し、帆船は爆発に巻き込まれて船体を抉られながら転覆する。

 

 シャークンはすぐに近くを漂っていた木材にしがみ付き、沈み行く帆船と、炎に包まれる艦隊を見る。

 

「あぁ……神よ……」

 

 その絶望的な光景に、彼は嘆くしかなかった。

 

 

 そしてそれが、艦隊の運命を決した。

 

 

 旗艦を失った事で指揮系統が崩壊し、生き残った帆船やガレー船の行動は異なった。

 

 馬鹿正直にシャークンの突撃命令を遂行しようとする船長は前進を命令したり、船員達が前進命令を下す船長を殺害してまで逃げようとしたり、経験豊富な船長の冷静な判断で逃げの一手を打つ船など、行動は様々であった。

 

 しかし、それでも滅びの運命に変わりは無かった。

 

 逃げようとする船は攻撃機の標的にされて、爆撃や機銃掃射を受けて、海の藻屑と化した。

 

 

「これは……」

 

 上空を飛行する偵察型の疾風こと三式艦上高速偵察機に乗り込むブルーアイは、目下の光景に思わず声を漏らす。

 

 ブルーアイは『大和』の提案により、戦闘の光景を近くで見る為に三式艦上高速偵察機の偵察員席に乗り込み、『武蔵』より飛び立った。

 

 その後敵艦隊の外縁部の上空を低高度で飛行していた。

 

 彼は炎が上がり、もはやまともな行動が出来ない艦隊が戦艦四隻と後方に回り込んだ数隻の軍艦、クワ・トイネ公国海軍所属の軍艦、航空機に蹂躙される阿鼻叫喚な光景に、息を呑む。

 

「一方的だ……」

 

 その容赦の無い光景に、もはやその一言しか言えなかった。

 

「これが、彼らの力か……」

 

 ブルーアイは冷や汗を掻きつつも、『大和』より渡されたカメラを使い、報告の為の資料としてその光景を撮影した。

 

 

 ちなみに、この戦闘による報告で、クワ・トイネ公国海軍は航空機による攻撃の有用性を認め、戦艦よりも多くの空母の建造を目指したそうな。しかし同時に戦艦の長距離砲撃の魅力もあり、クワ・トイネ公国海軍内に航空機主義者と大艦巨砲主義者に分かれることとなるのだった。

 

 

 

 それからしばらく四隻の戦艦と巡洋艦、駆逐艦による砲撃と艦載機による爆撃が続けられ、4500隻のもロウリア王国海軍の艦隊は壊滅し、一部生き残った帆船は降伏し、ほんの僅かは運良く海域を離脱して母港への帰路に着けた。

 その後『雷』や『電』を中心に漂流者の救助作業が行われた。

 

 救助された者は三桁ほどの人数しか居らず、それ以外は焼死体や肉片となって海に浮かんでいた。その上救助された者も無傷ではなく、特に火傷を負った者が多かった。そしてその中に、シャークンも含まれていた。

 

 

 ちなみに救助作業の際に、ロウリア王国海軍の艦隊にパーパルディア皇国から観戦武官として派遣されたヴァルハルという男が救助された。

 彼は乗船していた帆船が他の帆船と衝突した衝撃で海に放り出された事で難を逃れたそうな。

 

 

 ともあれ、ロデニウス沖で発生した海戦は、ロウリア王国海軍艦隊の壊滅と言う圧倒的な結果を残し、同時にKAN-SENの力を知らしめた戦闘となった。

 

 

 

「終わりましたね、兄様」

 

「あぁ」

 

 空母『武蔵』の防空指揮所にて『武蔵』が『大和』に声を掛けると、彼はアングルドデッキに順に帰還する『武蔵』の艦載機を見ながら短く返す。

 

「少なくとも、これでロウリア王国は海から攻める力を失っただろう」

 

「だと良いんですけど……」

 

「仮に多くの戦力が残っていたとしても、今回の一件で防衛の為に戦力を回すはずだ。向こうとてそのくらい理解しているはずだ」

 

 不安を口にする『武蔵』に、『大和』は持論を彼に説く。

 

「まぁ、そのまま引き篭もってくれるのなら、こちらとしては好都合だがな」

 

「……?」

 

 『大和』の意味深な発言に、『武蔵』は首を傾げる。

 

「ともかく、各艦は周囲を警戒しつつ、漂流者を救助。可能な限り漂流者を救助した後、マイハークへ帰還する」

 

 『大和』は各KAN-SENに指示を出し、海上に浮かぶ漂流者を救助した後、マイハークへと帰還する。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

 

 ロウリア王国 ワイバーン本陣

 

 

 敵ワイバーン部隊接近の報を受けて、艦隊を守る為に飛び立った400騎のワイバーンであったが、その後多くの悲鳴と共に通信が途絶して3時間が経過した。

 

『……』

 

 司令部に重苦しい空気と沈黙が流れる。

 

 いくら待てど、全く帰ってこない竜騎士達。司令部は焦燥に包まれていた。

 

「……なぜ、帰って来ないのだ」

 

 司令官は誰に向けたわけではなく声を漏らすが、誰も答えなかった。いや、答えられなかったというのが正しいだろう。

 

(ま、まさか……全滅したのか!?)

 

 彼は内心で戦慄し、絶望を覚える。

 

 

 ロデニウス大陸の歴史において、ワイバーンは最強の生物である。しかし同時にこの大陸では貴重な種でもあり、数が中々揃えられない。

 

 ロウリア王国の600騎のワイバーンというのは、ロデニウス大陸の統一と言う前提に、パーパルディア皇国からの援助を得て、屈辱的な条件を飲み6年の歳月を経て、ようやくこの数に達した。

 

 圧倒的な戦力であり、確実にロデニウス大陸を統一出来るはずであった。

 

 そして、敵ワイバーンの出現の報を受け、飛び立っていった精鋭の400騎は歴史に残る圧倒的な大戦果を挙げて帰ってくるはずだった。

 

 

 だが、結果はどうだった?

 

 

 本陣に居た全てのワイバーンを投入して、一騎たりとも帰ってこない……

 

 

 考えたくない。考えたくないが、出撃した400騎が全滅した可能性が高い。

 

 しかし普通に考えて、仮に敵が大艦隊であったとしても、最強の生物であるワイバーン400騎を全滅出来るとは考えられない。

 

 何が起きた? 敵は一体何をしたのだ?

 

 こんな非常識な状況を、ロウリア王になんと報告すればいいのか、解らない……

 

 司令官はただただどうすればいいか、思考を巡らせるのだった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、クイラ王国沖

 

 

 

「……」

 

 停止している自身の艦体の甲板に立つ『ビスマルク』は腕を組み、前方の光景を眺めていた。

 

 彼女の視界には、火災を起こして転覆しかけている帆船や転覆しているガレー船の姿がある。

 

 

 ロウリア王国南部の港より出港した艦隊は、クイラ王国を目指して航行していた。

 

 その艦隊を哨戒中の『伊13』が発見し、クイラ王国から援軍要請を受けてトラック泊地から派遣された艦隊へ伝えられた。

 

 派遣艦隊を率いる『ビスマルク』はロウリア王国の艦隊に対して『伊13』に魚雷による攻撃を行わせ、雷撃を受けて艦隊は混乱し、動きが乱れた。

 

 そこへ『ビスマルク』と『ティルピッツ』による砲撃が叩き込まれ、更に艦隊側面を『吾妻』『高雄』『妙高』の三隻が迫り、艦隊に対して砲撃を叩き込む。

 

 これにより、ロウリア王国側の艦隊司令は不利を悟り、撤退を決意。部下の反対を押し切って生き残った艦隊を母港へ帰還させた。

 

 『ビスマルク』は撤退する艦隊の追撃を行わず、その様子を静観した。

 

 

(ヤマトに紀伊達の方を含めれば、これで敵は海から攻める気を起こすことは無い、か)

 

 彼女は小さく見える撤退中のロウリア王国側の艦隊を見つめつつ内心呟く。

 

「しかし、何と他愛も無い。鎧袖一触とはこのことか」

 

 沈み行くロウリア王国の帆船を見ながら、『ビスマルク』は声を漏らす。

 

 明らかな技術の差もあって、勝負は最初から見えていた。しかし、だからといって手を抜いていい理由にはならないが

 

「……」

 

 彼女は浅く息を吐き、左を見る。

 

 『ビスマルク』の後方には『ティルピッツ』が居り、艦体の甲板上に『ティルピッツ』と艦隊に同行している『尾張』の姿があった。

 

(今回の戦闘は、果たしてあの者(・・・)に対してどれほど価値のあるものか)

 

 彼女は内心呟き、『ティルピッツ』の艦橋に居る者を見る。

 

 

 

 その後『ビスマルク』達はしばらく海域に留まって敵の動向を監視し、問題が無いと判断した後に艦隊を率いてクイラ王国の港へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 




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