異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第二話 接触

 その世界には多くの国が存在し、国ごとによって技術力の発展具合が異なっている。

 

 

 その為、その世界では国力と技術力の高さ次第で『第一文明圏』『第二文明圏』『第三文明圏』と国ごとにランク付けされている。

 

 

 その三大文明圏から遠く外れた大東洋と呼ばれるこの海域には、一つの大陸がある。

 

 大陸は地球におけるオーストラリア大陸の半分ほどの大きさで、大陸と呼ぶには小さく、島と呼ぶには大き過ぎる。

 

『ロデニウス』と呼ばれるこの大陸には、3つの国家が存在する。

 

 

 ・肥沃な土地を有し、広大な穀倉地帯を持つ農業立国……『クワ・トイネ公国』

 

 ・砂漠地帯が広がり、作物の育たない貧しい土地を持つ国……『クイラ王国』

 

 ・人間のみの国であって、エルフ、ドワーフ、獣人などの亜人を迫害し続け、ロデニウス統一を目論む国……『ロウリア王国』

 

 

 クイラ王国とクワ・トイネ公国は両国共に住民の三分の一はエルフ、ドワーフ、獣人などの亜人が占めている。その為、亜人の殲滅を国是としているロウリア王国とは、政策的にどうやっても友好を保てなかった。

 

 クイラ王国とクワ・トイネ公国は、互いに助け合い、互いに補い合うことで、ロウリア王国に対抗してきた。

 

 しかしここ最近ロウリア王国の活動が活発とあって、両国は警戒を強いられていた。

 

 いつ戦争が起きてもおかしくない不穏な空気が、ロデニウス大陸に漂っていた。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 中央歴1637年 11月24日 

 

 

 

 その日は快晴な空が広がっていた。

 

 

 クワ・トイネ公国 第6飛竜隊所属の竜騎士であるマールパティマは、相棒の飛竜と共に公国北東方向の警戒任務に就いていた。

 

「……」

 

 公国北東方向には、国はおろか何もない。東に行っても、海が広がるばかりで何も無いが、現在クワ・トイネ公国とロウリア王国とは緊張状態が続いているので、何が起こるか分からない。最悪こういった何も無い領域からの奇襲が想定される。哨戒は常に厳重だ。

 故に、彼は目を皿にして周囲を見渡す。

 

「にしても、今日はやけに冷え込むな」

 

 寒さに身体を震わせながら、彼は呟く。

 

 まだ冬前なのだが、今日は昨日と比べて一層冷え込んでいた。そのせいでいつもよりワイバーンの動きが鈍い。

 

「こりゃ、急いだ方が良さそうだ」

 

 ワイバーンは寒さに弱い変温動物に該当する生物だ。このまま更に冷え込むとなると、ワイバーンが飛べなくなる恐れがある。そうなれば墜落は確実だ。

 

 そろそろ哨戒ルートの変針位置に差し掛かり、彼は相棒の針路を変えようと手綱を引こうとした。

 

 

「―――――!?」

 

 

 その瞬間、彼は何かを見つけた。

 

「なんだ、あれは?」

 

 自分以外にいるはずの無い空に、何かが見える。

 

「友軍……?」

 

 彼は思わず声を漏らす。

 

 ロウリア王国からここまで、ワイバーンでは航続距離が絶対的に不足しているので、味方のワイバーン以外に考えられない。しかし自分以外にこの空域を偵察する飛竜と竜騎士は居ないはず。

 

 粒のように見えた飛行物体は、どんどん近づいて来て、次第に大きくなってその全容が見えてきた。それと同時に聞いたことの無い音がしてくる。

 

 それが近づくにつれ、彼はそれが味方のワイバーンでは無いことを確信する。

 

「羽ばたいていない、だと?」

 

 その姿を見て思わず彼は声を漏らす。

 

 ワイバーンを含む飛行生物であれば、翼を羽ばたいて飛んでいるはずだ。

 

 

 しかしそれは羽ばたいていない……

 

 

 彼はすぐに通信用魔法具を用いて司令部に報告する。

 

「こちら第6飛竜隊所属マールパティマ。我、未確認騎を確認。これより要撃し、確認を行う。現在地―――」

 

 通信を終えて、再び未確認騎を睨みつける。

 

 幸い高度差は殆ど無い。彼は一度すれ違ってから、距離を詰めるつもりだった。

 

「大きいな……」

 

 彼と相棒のワイバーンは、未確認騎が目の前まで来て、その姿を確認する。

 

 その物体は、彼の認識によればとてつもなく大きかった。翼は羽ばたいておらず、緑色に腹だけ白い色合いをして、翼に付いた何がが4つ『ブーン』と甲高い音共に高速回転している。

 そして胴と翼に黒い円と白縁のマークが描かれている。

 

 

 それが航空機と言う、それも『連山』と呼ばれる爆撃機だとは、彼が知る良しも無いが。

 

 

 彼は愛騎を羽ばたかせて反転する。その直後連山が通り過ぎて、風圧が重く圧し掛かり、吹き飛ばされそうになるも、何とか耐える。

 

 そのまま一気に距離を詰める……つもりだったが、飛行物体には全く追いつけない。

 

「くっ!! なんなんだ、あいつは!!」

 

 どんどん距離を離されていく状況に、彼は驚愕の一言を発するしかなかった。

 

「っ!? なんだ!?」

 

 するとその未確認騎の尻尾の部分、それもその中に、何か小さな生き物が動いているのが見えた。

 

「あれは一体……!」

 

 マールパティマは一瞬呆けるが、ハッとして通信用魔法具を手にする。

 

「司令部!! 司令部!! 我、未確認騎を確認しようとするも、速度が違いすぎる! 全く追いつけない! 未確認騎はマイハーク方向へ進行。繰り返す。マイハーク方向へ進行した!」

 

 竜騎士マールパティマが通信を送っている間に、連山から引き離されていき、もはや追尾は不可能であった。

 

 

 まさか自分が居る上空よりも更に高い所にも、もう一機居るとは、彼は予想もしなかった。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 クワ・トイネ公国 第6飛竜隊 基地

 

 

 マールパティマからの報告を受けた司令部では、蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。

 

「未確認騎だと!?」

 

「はい。速度は我がほうを遥かに凌駕し、しかも羽ばたかない騎であると、竜騎士マールパティマより報告がありました」

 

 通信司令は基地の通信士カルミアに問うと、彼は司令にマールパティマからの報告を伝える。

 

 ワイバーンでも追いつけない速度の未確認騎がよりにもよって、クワ・トイネ公国の経済の中枢である経済都市マイハークに向かって飛んで来ると言う。

 

 もし未確認騎によってマイハークに攻撃を受けたら、軍の威信に関わる。

 

 未確認騎は報告からの速度からして、恐らく既に本土領空へ侵入している筈。

 

 第6飛竜隊基地全区画に、通信魔法で指令が流れる。

 

「第6飛竜隊は全騎発進セヨ! 未確認騎がマイハークへ接近中。領空へ侵入したと思われる。発見次第撃墜セヨ! 繰り返す発見次第撃墜セヨ!」

 

 指令を聞き、待機していた竜騎士達が一斉に待機所から出て、自身の相棒の飛竜へと駆け寄る。

 

 滑走路から次々と、第6飛竜の竜騎士、ワイバーンが舞い上がる。

 

 その数12騎、全力出撃である。

 

 彼らは透き通るような青い空に向かい、舞い上がっていった。

 

 

 

 第6飛竜隊は、運良く未確認騎の正面に正対した。報告に寄れば、相手は超高速飛行が可能な物のようだ。

 

 点ほどの大きさの未確認騎は、みるみるうちに大きくなる。

 

「なんと面妖な……」

 

「一体何だ!? あれは!!」

 

「化け物か?」

 

 未確認騎を目撃した隊員達は、各々の感想を呟く。

 

「速いな……」

 

 飛竜隊の隊長が呟く間にも、未確認騎との距離が縮まる。

 

 その速さ、相対速度を考慮しても相当に速い。

 

 相手は報告通り、高速飛行が可能なようである。

 

 飛竜隊 隊長は魔信で、各隊員に的確に指示を行う。

 

『導力火炎弾の一斉射撃を行う。相手は我がほうの速度を遥かに凌駕しているという情報がある。すれ違う一瞬しかチャンスはない。各人、日頃の訓練の成果を見せよ』

 

 隊長は魔信を切り「……一体何なんだ? あれは……」と呟く。

 

 

 飛竜隊12騎が横一線に並び、口を開ける。

 

 導力火炎弾の一斉射撃。これが当たれば、落ちない飛竜はいない。

 

 飛竜の口の中に徐々に火球が形成されていく。

 

 タイミングを窺っていると、未確認騎が上昇を始めた。既にワイバーンの最大高度4000mを飛んでいた彼らにとって、それは想定外の事態であった。

 

 未確認騎は凄まじい上昇能力でぐんぐん高度が上がっていく。

 

 第6飛竜隊は、未確認騎をその射程に捉える事無く、引き離された。

 

「我、未確認騎を発見。攻撃態勢に入るも、未確認騎は上昇し、超高々度を保ったままマイハーク方向へ進行した。繰り返す――――」

 

 隊長は報告しながら、上昇する未確認騎を忌々しく睨みつける。

 

 

 

 

 

 

「あれは……」

 

 連山の機内で、二頭身の人間みたいな生き物と巨大なヒヨコが防護機銃や操縦席に着いている中、機体後部にある防護機銃席の窓より、一人の男性が竜に跨る鎧を纏った人間を見て思わず声を漏らす。

 

 艶のある黒髪を腰までストレートにして伸ばしている中性的な顔つきの男性で、眼鏡を掛けて漆黒の第二種軍装を身に纏っており、頭には菊花紋章が付けられた制帽を被っている。

 

「兄上と紀伊さんの言う通り、異なる世界なのか?」

 

 先ほどの異質な存在を目の当たりにして、男性は息を呑む。

 

 彼は後部防護機銃から通信機の前に来ると、首に掛けているヘッドセットを耳に当てて通信機のスイッチを入れる。

 

「オオワシ1からHQへ。偵察中未確認機と接触。されど速度と高度を上げて振り切りました。このまま偵察を続行します」

 

『HQ了解。もし危険と感じたら、迷わず撤退しろ』

 

「オオワシ了解」

 

 男性は通信を切ってヘッドセットを外す。

 

「兎に角、写真には収めないと」

 

 男性は次に連山に備え付けられたカメラを使い、地上の様子を撮影する。

 

 

 

 

 マイハーク防衛騎士団 団長イーネは、第6飛竜隊からの報告を受け、上空を見上げた。

 

 一般的に飛竜から地上への攻撃方法は、口から吐く火炎弾である。矢をばらまいたり、岩を落とす方法も過去には検討されたが、空を飛ぶ生き物は重たい物を運ぶ事が出来ない。

 

 単騎で来るなら、攻撃されても大した被害は出ない。おそらく敵の目的は偵察と推測される。

 

(しかし、一体何なのだろうか?)

 

 飛竜でも追いつけない正体不明の物。飛竜の上昇限度を超えて飛行していく恐るべき物。それがまもなく経済都市マイハーク上空に現れる。

 

 団長イーネは、様々な疑問を抱いて空を睨んでいた。

 

 

 遠くの方から音が聞こえ始めた。ブーンといった聞き慣れない音。

 

 しばらくして、それはマイハーク上空に現れた。

 

 未確認騎は高度を落とし、上空を旋回した。

 

 大きく奇妙異な物体。大きくて緑に腹は白い機体、羽ばたかない翼。怪奇な音、翼と胴体に黒い丸が描かれている。

 

 明らかな領空侵犯。しかし飛竜は遙か遠くからこちらへ向かっている最中。

 

 攻撃手段はあることにはあるが、今回は接近が速過ぎて何も準備が出来ていない。

 

 事実上現時点では対抗手段が無い。

 

 イーネは矢を放つべきか考えたが、どの道矢を放っても当たる以前に届かないだろうし、何より流れ矢によって民間人に被害が及ぶ可能性がある。

 

 未確認騎はマイハーク上空を何度も旋回し、やがて満足したのか北東方向へ飛び去った。

 

「攻撃が目的では無かったのか……」

 

 未確認騎が飛び去った方向を見ながらイーネが声を漏らす。

 

 

 

 後に行われたインタビューで、彼女は当時のことをこう答えた。

 

 

『あの時、あの瞬間が、全ての始まりだった』と……

 

 

 




感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。

竜の伝説編はやっておくべき?

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