異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
中央歴1639年 5月29日 ギム
航空機による夜間奇襲を受け、ギムを占領していたロウリア王国 東方征伐軍は深刻な被害を受けていた。
「手酷くやられたな」
「えぇ」
幸運にも生き残ったパンドールは周囲を見ながら部下にそう言うと、彼は相槌を打つ。
周りでは生き残った兵士達によって破壊された建物やブロックの破片や死体の片付けが行われており、町の外ではどこかの部位が欠損した多くの死体が山積みにされ、その後火を付けられて焼却されている。死体は焼却しなければ腐敗し、やがて疫病の原因になりかねない。
「しかしまさか敵がワイバーンによる夜間奇襲を行うとは」
「全くの予想外でしたね」
「あぁ」
パンドールは昨夜のことを思い出し、苦虫を噛んだ様な表情を浮かべる。
暗い所がよく見えない鳥目のワイバーンで夜間攻撃を行うのは難しく、どれだけ熟練の竜騎士であっても至難の業であるのに、敵はそれをやってのけた。敵ながら見事だと思うと同時に、憎たらしく思うのだった。
まぁ本当はワイバーンではなく航空機なのだが、彼らがそれを知る由も無い。
「その上……」
と、パンドールが広場の一角を見ると、若い兵士達が捕らえられて集められている。
彼らは先の夜襲の騒ぎに紛れて味方を殺害した者達であり、逃亡しようとした所を捕らえられた。
味方殺しは重罪なので、彼らはこの後処刑されることになる。
ただでさえ兵力が少なくなったこの状況で自分から兵力を減らすようなことをするのは、正直に言えば愚かな行為だ。
だが、重罪を犯した者達を生かしておいても、彼らの立場は常に最悪なものになり、戦闘になれば後ろから殺される可能性がある。
その為、見せしめを含めて処刑せざるを得ない。
「この状況で味方殺しが起こるとはな」
「彼らは農村の出身でして、王都出身の者から絡まれていたようです。その絡みは日々酷くなる一方でして」
「……鬱憤が溜まった結果、昨夜の事が起きたというのか」
パンドールは額に手を当てる。
「……やはり軽く見てはいけなかったか」
彼自身その状況自体は把握していたが、肩入れすれば、その者達が自分の目の届かないところで余計な被害を受ける可能性があったので、深入り出来なかった。
「今となっては過ぎたことですが、もう少し気に掛けていれば、余計な犠牲が出ることは無かったかと」
「……」
悔やむ気持ちが募るが、パンドールは気持ちを切り替える。
「それで、今飛べるワイバーンはあるのか?」
「奇跡的にですが、何とか一騎だけ残っていました。ですが傷ついて、王都まで飛べるかどうか分かりませんが」
「生きて飛べるだけマシか。そのワイバーンの竜騎士は?」
「健在です。そのワイバーンが敵の攻撃から庇っていたようで、奇跡的に軽傷で済んでいます」
「主人想いのワイバーンだな」
少しだけ場の空気が和らいだところで、二人は町の外へと向かう。
予定通りならこのままエジェイ周辺に飛ばして先遣隊の安否を確認するつもりだったが、もはやその余裕など無い。その上魔信機が昨夜の奇襲で破壊されてしまい、早期に王都へ状況を伝える為に伝令としてワイバーンを飛ばすことになった。
馬では時間が掛かるのもあるが、そもそも馬自体昨夜の奇襲で全滅してしまっている。
「滑走路はどうなっている?」
「ハッ。生き残った者達を総動員して、少し前に直りました。後はワイバーンが無事に飛んでくれるのを祈るばかりですが」
「うむ」
パンドールと部下はギムの外にある滑走路に着くと、そこではワイバーンに話しかける竜騎士の姿があった。
「あの者があのワイバーンの?」
「はい。ムーラという者でして。今から王都へ向けて飛び立ちます」
「そうか」
二人が見守る中、ムーラと呼ばれる竜騎士はワイバーンに跨り、一声掛けてからワイバーンを走らせる。
ワイバーンはふらついた走りであったが、それでも翼を羽ばたかせて滑走路から飛び立つ。
「……魔信が壊れていなければ、あの者に危険な飛行をさせる必要は無かったのに」
「仕方ありません。この状況をすぐにでも報告しなければ、王都が危険に曝されます」
「そうだな……」
おぼつかない飛び方で王都ジンハークを目指すワイバーンとムーラの姿を見送り、二人は短く会話を交わす。
その王都が今とんでもない事態になっていることは、彼らが知る良しも無いが。
「では、我々はやるべきことをやるとするか」
「はい」
パンドールは再び町の中央広場へと向かう。
―――――――――――――――――――――――――――――
所変わり、ギムから4km離れた丘の陰。
丘の陰に身を隠している『アークロイヤル』と『グラーフ・ツェッペリン』の二人は草原を模した偽装を施したテントの下で、その時が来るまで待っていた。
周囲を二人の護衛に就いている妖精達が警戒して、こちらの存在が敵に露呈しないようにしていた。
「……」
二人はそれぞれ水筒に淹れて来た紅茶を飲み、水筒の蓋兼カップを閉めて傍に置くと、『グラーフ・ツェッペリン』は懐から懐中時計を取り出し、時刻を確認する。
「そろそろ時間だな」
「そうか」
彼女がそう言うと、『アークロイヤル』は椅子から立ち上がって丘を登り、頭を出して双眼鏡を覗く。
「……」
『アークロイヤル』は双眼鏡でギムの様子を伺い、状況を確認する。
「……頃合だな」
丘の陰から頭を出して双眼鏡でギムを見ていた『アークロイヤル』は耳に手を当てる。
「『アークロイヤル』から『出雲』へ。突入されたし」
『了解した』
通信で合図を送ると、彼女は立ち上がってライフル銃型の艤装を構えて、右目にホログラフのサイトが現れる。それと同時に彼女の隣へとやってきた『グラーフ・ツェッペリン』が腰の艤装にある飛行甲板に零戦改を出して、発艦準備を整える。
―――――――――――――――――――――――――――――
所戻り、再びギム。
「さて、これからどうするか……」
半壊した役場の一室にて、パンドールは僅かに残った将校達と話し合いをしていた。ちなみになぜかアデムの姿は無いが、誰も気にした様子は無い。まぁ気にする余裕が無いというのが正しいか。
「エジェイの攻略に向かった先遣隊の安否も分からず、ワイバーンも王都へ伝令と増援要請に向かった騎以外は全滅。兵士の数も昨夜の夜襲で多く減っている。エジェイ攻略に使う予定だった投石器とバリスタは全て破壊され、来たばかりの補給物資も全て失った。増援は到着まで早くても二日前後掛かる」
パンドールの言葉に誰もが暗い表情を浮かべる。
完全に詰んでいる……
そうとしか言えない状況なのは明白である。
今日中に伝令の為に飛ばしたワイバーンが王都に到着して増援が送り込まれたとしても、到着まで早くても二日以上掛かる。
当然奇襲を行ったのだから、敵はすぐそこまで来ていると思っていた方がいい。つまり、増援が到着するよりも敵が先に着く。
「増援が来るまで、我々だけでどうにかこの状況を乗り切るしかない、か」
パンドールはそう呟くが、それが不可能だというのは誰よりも分かっていた。
あまりにも戦力が少な過ぎる。普通なら撤退すべき状態だが、そう簡単に下せる判断ではない。
もしこのままギムを放棄して撤退すれば、敵がギムを奪還するのは当たり前として、そのままギムを拠点にロウリア王国領内へ逆侵攻する可能性が高い。それを防ぐ為にも、ここで敵を食い止めなければならない。
まぁそれ以前に、見下している亜人に負けたくないというプライドがあったりするが、頑なにプライドに縋っても、碌な事は無いが。
誰も良い案が浮かばず、沈黙が続くばかりであった。
――――ッ!!
『っ!?』
すると轟音が町に響き、同時に何かが上空を通り過ぎる。
「これは、まさか!」
聞き覚えのある音に、彼の表情に焦燥の色が浮かぶ。
「パンドール様!! 昨夜のワイバーンがまた現れました!」
「くっ、やはりか!」
役場に駆け込んだ兵士がパンドールに敵の襲来の報告をすると、彼は驚きのあまり声を上げる。
兵士達が逃げ戸惑う上空を零戦改とF6F-6が飛び交い、地上に対して機銃掃射を行いつつ、両翼下に懸架しているロケット弾による攻撃を行う。
『アークロイヤル』と『グラーフ・ツェッペリン』から飛び立った航空隊はミニチュアサイズでギムまで接近し、目の前で実物大のサイズへ変わって攻撃を開始した。
機銃掃射を受けた兵士は身体が木っ端微塵に粉砕されるか、身体のどこかが吹き飛ぶかでその命が刈り取られたり、ロケット弾の着弾時に爆発し、その爆風で吹き飛ばされる破片によって深い傷を負うか手足が吹き飛ばされるかで重傷を負う。
兵士達の中には弓を構えて矢を放ったり、石を投げる者が居たが、まぁ高速で飛行する戦闘機に当たるはずも無く、その何とかしようとする努力は徒労と化す。むしろ逆に別の機に狙いを定められて機銃掃射を受け、その命を散らす。
兵士達が空からの攻撃から逃れようと建物の中に避難するが、FW190Mとヘルダイバー、アヴェンジャーによって建物に対して爆撃が行われ、投下された爆弾は建物に直撃して爆発し、運が良ければ建物の外壁だけが破壊されて、小さな破片が飛び散って兵士たちに小さな傷を負わせるぐらいで済ませられるが、運が悪ければ爆弾が建物の外壁を貫通して中で爆発し、兵士達の命を刈り取った。
「何なんだよ、あれは!!」
「こんなの勝てるわけねぇだろっ!!」
そんな中、兵士が恐怖のあまり叫びながら逃げるが、破壊されや建物の瓦礫に躓いて前のめりに倒れると、零戦改の機銃掃射が行われ彼の頭上を弾丸が通り過ぎる。
「クソッ! クソッ! 何なんだよ!? 本当に――――」
奇跡的に助かった兵士は悪態を付きながら顔を上げるが、彼は最後まで言うことが出来なかった。
彼の視線の先はちょうど町の外を見ることが出来たので、そこから見えたのは―――
ギムに向かってくる一団の姿であった。
―――――――――――――――――――――――――――――
『アークロイヤル』と『グラーフ・ツェッペリン』による航空攻撃が始まると同時に、モイジ率いる西方騎士団が73式装甲車と61式戦車を先頭に、ジープとトラックにてギムへと接近していた。
ロウリア王国軍は空の航空機の攻撃に気を取られていたとあって、西方騎士団の接近に気づけたのは、ほとんど目と鼻の先になってからであった。
「行くぞ!! あの時の雪辱をここで晴らす!! やつらを排除して、ギムを取り戻すぞ!!」
『オォォォォッ!!』
轟音に負けないぐらい大声でモイジが叫ぶと、西方騎士団の面々が雄叫びを上げる。
そして西方騎士団は73式装甲車と61式戦車を先頭にしてギムへと突入し、トラックから四式自動小銃や一〇〇式機関短銃を手にした西方騎士団の兵士達が降車する。
敵の侵入を許したロウリア王国軍の兵士達は剣を握り、西方騎士団に向かって走る。
上空のワイバーンもどきの攻撃で戦意が削られていたが、相手が亜人と分かるや否や、兵士達は憎しみを孕んだ声を上げて突撃した。
こちらが勢いよく攻勢に出れば亜人はビビッて逃げ出すに違いない。誰もが偏った認識を持っていた。
しかし彼らに襲い掛かったのは、銃弾の嵐だった。
西方騎士団は各々が手にしている四式自動小銃や一〇〇式機関短銃を構えると、狙いを定めて引き金を引く。73式装甲車と61式戦車に載せられているブローニングM2重機関銃や62式機関銃が連続して銃声を発せさせる。
大小様々な銃声と共に放たれた大小様々な弾丸はロウリア王国軍の兵士の身体を貫き、断末魔と共に次々と倒していき、その命を刈り取る。
「撃て撃て!! やつらを近づけるな!!」
モイジは自身が持つ四式自動小銃を構えて狙いを定め、引き金を引きながら大雑把な指示を出す。
目に見えない速さで何かが飛び、大きな破裂音が鳴る度に味方が死んでいく。
そんな見た事の無い攻撃と共に放たれる銃声は、彼らには死神の声に聞こえたのかもしれない。言い知れない恐怖により、ロウリア王国側の兵士は完全に浮き足立ち、その間にも銃弾の雨は容赦なく襲い掛かり兵士達の数が減っていく。
兵士達は建物や瓦礫の陰に隠れて銃撃を凌ごうとするが、その反対から零戦改やF6F-6が機銃掃射を行って命を刈り取り、西方騎士団に同行している61式戦車が砲撃を行い、物陰に隠れているロウリア王国の兵士を殺傷する。
どこからともなく攻撃が来て仲間たちが次々と死んでいく。そんな恐怖に耐え切れず、逃げ出そうとする者が続出する。
しかしそれを逃さないと言わんばかりに、西方騎士団の面々は逃げようとする者から優先して始末していく。ここで逃がせば、次の戦いで戦力として加えられる可能性がある。それならここで一人でも多く倒しておく方が後々が楽である。
まぁもし彼らがこの場で武器を捨てて降伏の意思を見せていれば、命は助かっただろうが。
「な、なんだ……あれは」
役場の窓からその光景を見ていたパンドールは、呆然と立ち尽くしていた。
外では兵士達が勇敢に戦いに挑もうとして、大きな破裂音と共に地面に倒れたり、その音に恐怖して逃げ戸惑う兵士達と、阿鼻叫喚な光景が広がっている。
上空では相変わらずワイバーンのようなものが飛び交い、時折降下しては攻撃を加え、兵士を殺傷し、建物を破壊している。
地上ではこのギムの防衛を担っていたクワ・トイネ公国の西方騎士団がロウリア王国軍の兵士を次々と倒している。剣や槍、弓矢ではない、大きな音を放つ見た事の無い武器で、兵士達を次々と倒していく。
その傍には
中には
騎士道精神などこれっぽちも無い、あまりにも一方的な戦闘に、彼のプライドが、彼の戦意が、ゴリゴリと削り取られていく。
(先遣隊は、あの武器によって壊滅させられていたのか……)
そしてパンドールは一つの確信を得る。
先遣隊からの連絡が途絶えたのは、魔信が故障したり、伝令を送る暇が無いわけじゃない。部隊が全滅したからだ。
昨日までなら先遣隊が全滅したと全く考えなかっただろうが、今なら分かる。
(亜人が……あれほどの力を……)
『な、何だお前!』
『あ、頭に、角が……』
『何だ、その背中にある物は……』
すると下の方が騒がしくなる。
『ぎゃぁぁぁぁっ!?』
『何だこの女!?』
『は、速過ぎて、剣筋が―――』
『つ、強過ぎる!?』
『ば、化け物だっ!?』
下の方で悲痛な叫びがして、パンドールは身体を強張らせ、窓の下を見ると、突然役場の入り口が爆発し、建物を揺らす。
すると後ろから兵士がやってくる。
「ぱ、パンドール様! すぐにお逃げください! 恐ろしく強い亜人の女がすぐそこまで来て――――」
兵士はパンドールに報告しようとした瞬間、彼が立っている床が突然爆発し、兵士は粉々に粉砕される。
「っ!?」
その爆発によってパンドールが立っている床が崩れて、彼はそのまま一階へと落下する。
「ぐっ!」
背中を強く打ち付けて彼は一瞬息が詰まり、意識が飛びかけた。
「ぐ……うっ……」
彼は激痛に顔をしかめつつも、とっさに身体を起こす。
「……」
そして彼の視線の先には、一人の女性がパンドールを見つめている。
紫色の髪をポニーテールにして、額からは先端が赤く白い二本の角が生えた女性で、身体のラインが浮き出ている白いレオタードの上に簡素な黒い甲冑を身に付け、更にその上から表地が白く、裏地が赤い着物を羽織っている。
腕には白い包帯を巻き、脚には黒いガーターストッキングに黒い鋼鉄のブーツを履いている。
そして背中には砲口から硝煙を漏らしている三連装の砲塔を三基持つ巨大な艤装を背負い、背中には二本の太刀を収めている収納ケースを背負っており、その二本の内一本を彼女は右手に持っており、先ほどまで兵士たちを切り捨てていたせいか、その刃は赤く染まっている。
彼女の名前は『出雲』 『架空存在』と言われる特殊なKAN-SENの一人である。
モイジ率いる西方騎士団とは違う方向から彼女は別働隊を率いてギムに侵入し、妖精達が周囲を制圧していく中、役場を警護していたロウリア王国軍の兵士達を彼女は愛用の太刀で切り捨てて入り口を艤装の主砲を吹き飛ばして中に侵入した。
そして一階の奥の方まで進んだところで、二階から声がして彼女は斜め上の天井に向けて主砲を放ち、天井を崩した。
「き、貴様……!」
パンドールは身体中の痛みに耐えながら立ち上がり、腰に下げている剣の柄を手にして、鞘から抜き放つ。
「お前がここの指揮官か」
「そうだ。ロウリア王国 東方征伐軍を任された、ロウリア王国三大将軍が一人、パンドールである!」
「……トラック泊地所属、『出雲』だ」
パンドールが口上を述べて、『出雲』も自身のことを伝えつつ、手にしている太刀の柄を両手で持ち、身構える。
「パンドール将軍。既に勝敗は決している。降伏すれば部下共々身の安全は保障する」
「降伏だと……」
降伏勧告を受けて、パンドールの視線が鋭くなる。
「軍人魂を見せ付けるのは結構だが、その命を無駄にする必要は無い。生き恥を曝すことは、罪ではない」
「……」
「……」
二人の間に沈黙が続くが、パンドールが口を開く。
「その心遣いに感謝するが、私は国に、国王様に命を捧げた身だ。この命は国王様の為に、国を守る為にあるのだ!」
パンドールは『出雲』の降伏勧告を拒み、剣の柄を両手で握り締め、身構える。
「……是非もなし」
『出雲』は両手を力を強めて太刀の柄を握り締める。
「ヌオォォォォォ!!」
パンドールは地面を蹴り上げるように走り出し、手にしている剣を『出雲』に向けて横へと振るう。
『出雲』は太刀を剣の振るわれる先へとやり、剣を受け止める。
「ぐぅ!」
パンドールはすぐさま剣を引き、更に剣を振るうも、『出雲』は少ない動きで太刀を動かし、彼の剣を受け止める。
(な、何だ、この固さは!?)
彼は剣から伝わる感触に、驚愕の表情を浮かべる。
まるで石壁に剣を叩き付けているような、固い感触しかなかった。つまり向こうは全く剣をブレさせていないのだ。
「ぬぅ!」
パンドールはすぐに剣を引っ込めて再び振るう。
―ッ!!
しかし次の瞬間、彼の身体を何かが一閃し、動きが止まる。
「……」
『出雲』はいつの間にかパンドールに対して背中を向けており、彼女は手にしている太刀を振るって血を払う。
すると直後に生々しい音と共に何かが地面に落ちる音がして、彼女は再度後ろを振り向く。
「……」
彼女の視線の先には、身体が真っ二つになったパンドールが内臓をぶちまけて床に倒れており、血を吐き出す。
「ッ……見事な、腕だ……完敗、だ」
掠れた声でパンドールは『出雲』を見ながら、彼女の剣の腕を賞賛する。
「……言い残すことはあるか?」
『出雲』は太刀の先をパンドールの首元に当てながら、そう問い掛けた。
「……最期に、貴様のような、強者と剣を交えて、誇りに思う、ぞ」
「……」
『出雲』は彼の最期の言葉を聞き届けると、太刀の剣先でパンドールの首を切り裂く。
パンドールは血を吐き出すと、大量の血を首から流し、そのまま息を引き取った。
「……見事」
『出雲』は血振りをして艤装に太刀を納め、黙祷をする。
そしてロウリア王国 東方征伐軍の将軍パンドールの死によって、残存したロウリア王国軍の兵士は武器を捨てて西方騎士団に降伏した。
こうしてギムは多大な被害を受けながらも、再びクワ・トイネ公国の元へ還ったのであった。
感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。
竜の伝説編はやっておくべき?
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やっておいた方が良い
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別にやらなくても良いんじゃね?
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オリジナル要素を加えてやるべき