異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第二十六話 一夜明けて……

 

 

 

 中央歴1639年 5月29日 ロウリア王国 王都ジンハーク

 

 

 

 

 昨夜の『紀伊』による艦砲射撃によってジンハークの周囲の荒野は地面深くまで掘り返されて荒れ果てており、それだけでも紀伊型戦艦の51cm砲の破壊力を物語っている。

 

 その上ジンハークを沿うように砲弾が着弾した衝撃と爆風で、城壁の一部が崩れていた。一部の家屋にも被害が出ているとのこと。

 

 だが何より一番の被害は、北側の城門と城壁が破壊されてしまったことであり、敵の侵攻を防ぐ為の術を失ってしまった。

 

 

 

『……』

 

 昼過ぎのハーク城の会議室では、重々しい空気が漂っていた。

 

 昨夜の砲撃で全員が眠れなくなり、実質徹夜であった事で出席しているメンバーの多くが目の下に隈を作り、ロウリア34世にいたっては顔色が悪く、額には汗が浮き出ている。

 

「そ、それでは……緊急会議を開始、します……」

 

 司会進行係が震える声で、会議開催を宣言する。

 

「パタジン将軍。現状報告をお願いします」

 

「ほ、報告を致します……」

 

 そんな中、パタジンは徹夜による寝不足で少しふら付きながらも、司会係に促されて立ち上がり、ロウリア34世に報告する。

 

「昨夜の謎の攻撃により、ジンハーク周辺に巨大なクレーターが出来ており、その内いくつかがジンハークの城壁付近にも出来ています。その時の衝撃で一部の城壁が崩れているとの報告があります。更に北側の城壁が広範囲に渡って、破壊されました」

 

 パタジンがそう告げると、王宮主席魔導師であるヤミレイを見る。

 

「ヤミレイ殿。この攻撃に何か心当たりは?」

 

「いや、全く心当たりはありませぬ」

 

 いかにも魔導師な風貌のヤミレイはパタジンの質問に首を横に振るうしかない。

 

「たった一回の攻撃であんな巨大なクレーターを作るのは不可能だ。ましてや、城壁を破壊する等と。何千もの魔導師が揃って爆裂魔法を使ったとしてもだ」

 

「なんと。では神竜によるブレスか!?」

 

「いや、それも違うだろう」

 

 王国軍の幹部が驚きの声を上げるが、ヤミレイは否定する。

 

 つまり、何も分からないとと言うことだ。

 

「……一体その攻撃はどこから来たのだ」

 

 一通り話しを聞いたロウリア34世は誰かに向けたわけではないが、質問を投げ掛ける。

 

「それにつきましては、今朝報告が入りまして」

 

 と、パタジンが口を開き、その今朝入った報告を読み上げる。

 

「昨夜、北側にある港が……攻撃を受けていたようです」

 

『っ!?』

 

 その報告に誰もが目を見開いて驚愕する。

 

「そんな馬鹿な!? 北側の港には600隻以上の軍船が居たのだぞ! そんな所に攻撃を仕掛けたと言うのか!?」

 

「信じられませんが、事実のようです」

 

 ロウリア34世はパタジンに向かって声を荒げるが、事実である為に彼は肯定するしかなかった。

 

「……それで、被害はどうなっている?」

 

「……」

 

「どうした? 早く報告をせぬか」

 

「は、はい……」

 

 明らかに顔色を悪くしたパタジンは、震える唇を動かして報告する。

 

「ひ、被害は……港の施設は壊滅的打撃を受け、造船所、集積していた物資、兵舎等は徹底的に破壊され、更に停泊していた軍船は、ほぼ壊滅したとのことです」

 

「なっ!?」

 

 パタジンの報告を聞き、ロウリア34世は目を見開く。

 

「早朝に竜騎士を飛ばして確認させたところ、港は見るも無残な状態であったのが確認されています」

 

「……」

 

「更に、生き残った者達の証言によれば……敵はたった一隻で、島と誤認しそうなぐらいに巨大であったとのこと」

 

「一隻!? たった一隻だと!? それに島と誤認しそうなぐらいに巨大だと!?」

 

 ロウリア34世は驚きのあまり声を荒げる。

 

「信じられないのは承知していますが、多くの者が同じ証言をしていますので、信憑性は高いかと」

 

「……」

 

 ロウリア34世は顔を真っ青にして、黙り込む。

 

「生存者の証言を照らし合わせた所、恐らくジンハーク周辺への攻撃も件のものであると思われます」

 

「そんな馬鹿な! 港からここまでどれほどの距離があると思っているのだ!?」

 

 三大将軍の一人であるミミネルがあまりにも現実離れた内容に異を唱える。

 

「信じられないのは私とて同じだが、破壊の痕跡を見ればジンハーク周辺の攻撃とほぼ一致している。これは紛れもない事実だ」

 

「っ……」

 

 しかし正論を唱えるパタジンに、ミミネルはそれ以上言う事が出来ない。現に王都周辺は昨夜の攻撃で荒れに荒れている。

 

「それと、もう一つ報告する事があります」

 

 と、パタジンがそう告げると誰もが息を呑む。

 

「今朝、ギムを占領した東方征伐軍所属の竜騎士が満身創痍の状態で戻ってきました」

 

「なに?」

 

 ロウリア34世は怪訝な表情を浮かべる。

 

「どういうことだ?」

 

「その竜騎士……名はムーラと言いまして、そのムーラによりますと……」

 

 パタジンは息を呑んで一間置き、口を開く。

 

「ギムを占領した東方征伐軍は……甚大な被害を受けたとのことです」

 

「な、何だとぉっ!?」

 

 更なる衝撃的な報告に誰もが驚き、ロウリア34世は声を上げる。

 

「そんな、馬鹿な……」

 

「東方征伐軍はエジェイを攻略していたのではないのか!?」

 

「それが、エジェイ攻略の為に先行させた先遣隊からの連絡が途絶し、その確認の為に明朝ワイバーンを飛ばす予定だったそうです」

 

「……」

 

 ロウリア34世にそう説明した事で、軍関係者は悲痛な表情を浮かべる。

 

 誰もその日の内にワイバーンを飛ばさなかったのかと批判できないからだ。東方征伐軍のワイバーンの多くを引き抜くように指示を出したのは、自分たちなのだから。

 

「その日の夜に、敵ワイバーンからの攻撃を受けたようです」

 

「何!?」

 

「港の奇襲と同時に!?」

 

 誰もが驚愕し、ロウリア34世に至っては目が完全に生気を失っている。

 

「一夜中攻撃が続き、東方征伐軍は壊滅的打撃を受けたようで、早期報告と増援要請の為に、奇跡的に生き残ったワイバーンと竜騎士を飛ばしたようです」

 

「……」

 

「報告は、以上となります」

 

 パタジンは脚の力が抜けたように椅子に座り込む。

 

『……』

 

 報告が終わると、会議室はもはや悲愴感しかなかった。

 

「なぜだ。なぜこんな事に……」

 

 ロウリア34世は頭を抱え、ブツブツと呟く。

 

(このままでは、我が国は負ける。我々よりも劣っている亜人風情に、負けると言うのか?)

 

 これだけの力の差を見せ付けられれば、普通であれば降伏を選ぶであろう。だが彼のプライドが、彼の亜人への差別意識が、取るべき判断を鈍らせていた。 

 

「……背に腹は変えられん。パーパルディア皇国の使者に、本国への援軍要請を伝えるのだ」

 

 彼としてはこれ以上パーパルディア皇国に関わりたく無かった。これ以上関われば、どうなるかなど目に見えているからだ。しかし、それでも藁にも縋る思いでこの状況を打開できる力を彼は欲した。

 

 第三文明圏の列強国であるパーパルディア皇国の力ならば、敵に勝てるかもしれない。

 

「へ、陛下。そのパーパルディア皇国の使者なのですが……」

 

 と、再びパタジンが口を開く。

 

「早朝に、城を後にして帰国の途に着きました」

 

「……なに?」

 

 信じられないと言わんばかりにロウリア34世は目を見開く。

 

「使者は本国からの帰還命令が出たと仰っていましたが……」

 

 パタジンはそう報告したが、どう考えても使者は面倒ごとから逃げているようにしか見えない。

 

「……」

 

 パタジンはとても言いづらそうに報告すると、ロウリア34世は再び顔を伏せる。

 

 

 その後ロウリア34世はとても喋れる状態じゃなくなり、会議は中断となった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 クワ・トイネ公国 政治部会

 

 

「エジェイの防衛は成功し、ギムも『アークロイヤル』殿と『グラーフ・ツェッペリン』殿による夜間奇襲によって占領軍に壊滅的打撃を与え、その後『出雲』殿と西方騎士団により、ギムを奪還した」

 

 会議室ではカナタ首相を筆頭に首脳陣が集まり会議が行われている。

 

「『紀伊』殿単独によるロウリア王国北側の港への奇襲。そしてジンハーク周辺へ威嚇攻撃も成功しています」

 

「うむ。まさかここまでとは……」

 

 カナタがそう呟くと、誰もが納得したように頷く。

 

 ギムへの航空機による夜間奇襲に、戦艦一隻による港への艦砲射撃。更に王都ジンハークへ向けた長距離砲撃。どれも彼らからすれば本当に実現できるのかどうか懐疑的だったが、彼らはやってのけた。

 

 

 ちなみにこの作戦だが、初期の案はかなりぶっ飛んでいた。

 

 当初ギムへの攻撃は『紀伊』による艦砲射撃を行う予定であった。その為文字通りギムはこのロデニウス大陸から完全に消え去っていたかもしれなかったのだ。そしてギムへの攻撃後『紀伊』はロウリア王国北部の港へ攻撃を行い、そしてジンハーク周辺へ攻撃する流れであった。

 

 しかしさすがに時間が掛かるとあって、『紀伊』はロウリア王国北部の港へ艦砲射撃を行い、王都ジンハーク周辺へ砲撃を行い、ギムへの攻撃は『アークロイヤル』と『グラーフ・ツェッペリン』による航空攻撃となったのだ。

 

 

「ここまでトントン拍子に事が進むと、かえって恐ろしく思えますね」

 

「あぁ。だが、これでギムは取り戻す事が出来た。状況はどうかね?」

 

「現在エジェイよりトラック泊地陸戦隊がギムを目指しているようです。到着後は工兵隊により町の一部を修復するようです」

 

「そうか」

 

 カナタはギムを奪還出来た事に安堵の息を吐く。

 

「……しかし、本当にこの作戦を行うのですか? 『ビスマルク』殿」

 

 と、カナタはタブレット端末を手にしながら、『大和』と『紀伊』の代行として出席している『ビスマルク』に問い掛ける。

 

 クイラ王国の防衛を終えて、第二陣の派遣艦隊と交代する形でマイハークにやってきた彼女は『大和』の要請でこの場に居る。

 

「あぁ。戦争の早期終結の為にも、この作戦は行うべきだ」

 

 『ビスマルク』はそう言うと、手にしているタブレット端末を操作して、スクリーンに投影している画面が変化する。

 

「ロウリア王国は王都に最も近い北側港が攻撃を受けたことで、付近の浜辺からこちらが上陸してくると予想して戦力を配備するだろう」

 

 スクリーンに投影されている画面が、彼女がタブレット端末を操作する度に変化して、作戦内容がクワ・トイネ公国の首脳陣に告げられる。

 

「だが、ロウリアには判断を難しくさせる為に、一手を打つ」

 

 その内容をビスマルクはタブレット端末を操作して、スクリーンに表示させる。

 

「しかし、本当にうまく行くでしょうか?」

 

「そこは向こうの考え次第だろう」

 

 疑問を呈する軍務郷に、『ビスマルク』はそう答えてタブレット端末をテーブルに置き、息を吐く。

 

「戦争の早期終結が好ましいが、ここは一旦こちらの体勢を整える為に、あえて時間を掛ける。それが総旗艦と指揮艦の判断だ」

 

「そうですか……」

 

 カナタは頷くと、スクリーンに映る画面に視線を向ける。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 トラック諸島 整備工場

 

 

「『アークロイヤル』達と『紀伊』はうまくやったみたいだな」

 

「そうですわね」

 

 タブレット端末に表示された報告内容を見ながら『大和』が呟くと、同じ報告書をタブレット端末で見ている『天城』が相槌を打つ。

 

「ギムも『出雲』とモイジ殿率いる西方騎士団によって奪還。とりあえず、今のところ問題は無いか」

 

「しかし、まだ予断は許されないかと」

 

「だな。慢心と油断だけは禁物だ」

 

 『大和』はそう言うと、タブレット端末を『天城』に渡して、後ろへと振り向く。

 

 そこにはハンガーに置かれた彼の艤装が安置されている。

 

「ですが、何も総旗艦様自らが出撃されなくても」

 

「言っただろ、『天城』。他に出られる空母が居ない以上、俺が出るしかない」

 

「ですが、時間を掛ける以上他の空母にも空きが出ます。わざわざ総旗艦様が出る必要は」

 

「……仲間達が戦っている中で、俺だけがのうのうと後ろで何もしないわけにはいかないだろ」

 

「……」

 

「それに―――」

 

 『大和』は『天城』の方を振り向き、右手を彼女の頬に添える。

 

「守るべき者が居るのに、何もしないわけにはいかないからな」

 

「総旗艦様は指揮をなされていますので、何していないわけでは」

 

「安全な場所で指揮をするのは、俺からすれば何もしていないのと同じだ」

 

「総旗艦様……」

 

 『天城』は添えられた手に自身の手を重ねる。

 

 

「……ですが、理由はそれだけでなくては?」

 

「……」

 

 と、ジトーと見る『天城』の問いに『大和』は視線を逸らす。

 

「……改修された艤装の性能も試すお積もりですね」

 

「……あぁ」

 

 一間置いて答えた『大和』に、『天城』はため息を付く。

 

「実戦で使えるかどうかは、使ってみないことには分からないだろ」

 

「それは、そうですが……」

 

「それに、それはあくまでもついでだ。俺はお前や『赤城』、『加賀』を……そして仲間達を守る為に戦うんだ」

 

「……」

 

 『大和』の決意に、『天城』は自身の頬に添えられている大和の手を重ねている手で押さえる。

 

「ズルいですわ……そう言われてしまったら、納得するしかありませんわ」

 

「……」

 

 そして『天城』は手を離し、『大和』は再び艤装が置かれているハンガーへと向かい、艤装に触れる。

 

 すると艤装が光り輝き、『大和』を包み込み、直後に光が弾ける。

 

「……」

 

 光が晴れると、そこには艤装を身に纏った『大和』の姿があった。

 

 背中には大きなユニットが装着され、そこから左側に向かって多関節のアームに接続されたアングルドデッキを持つ飛行甲板があり、左肩の横に来る様に配置された飛行甲板の大きさは大和の身長の三分の二ぐらいはある。反対側の右側に伸びるアームには水平連装式ショットガンに飛行甲板と艦橋が乗っけられた様な艤装があり、今はアームにマウントされているが、手にして使用する艤装である。両腕には舷側を模したような装甲板を組み合わせた艤装が装着され、右腕の艤装には何やら散弾銃のショットシェルのような灰色の弾頭を持つ物が付けられている。

 艤装を纏う前には無かったが、いつも着ている軍服の上に赤い裏地の黒いコートを身に纏い、制帽に赤いラインが入っており、靴には他のKAN-SENみたいにメカメカ部品が取り付けられている。身体に襷を掛けるようにショットシェルを保持する弾帯が巻かれており、弾帯には緑色の弾頭のショットシェルや、同色の弾頭を持つ実包の様な物が並べられて保持されている。

 そして腰の左側には重桜のKAN-SENの多くが所持している重桜刀が鞘に収められて提げられている。

 

 『大和』は重桜の空母としては異例のメカメカしい艤装を持っているのが特徴的であり、姉妹(きょうだい)艦の『武蔵』、『蒼龍』も同じ艤装を持つ。

 

「前より馴染むな。明石達は本当にいい仕事をする」

 

 身に纏った艤装を一瞥すると、右側のアームにマウントされた銃型艤装を手にしてアームから外すと、銃を構えるように艤装を構える。

 

 次に銃型艤装の固定部を外して中折れ状態にして銃身内部を確認し、元の状態に戻して、アームにマウントして戻す。

 

「『天城』。少し慣らし運転に行く。何かあったら連絡をくれ」

 

「分かりました」

 

 彼女が頷いたのを確認して、『大和』は整備場を出て艤装の馴染み具合を確かめに向かった。

 

 




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