異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
中央歴1639年 6月08日 クワ・トイネ公国 マイハーク
夕日が地平線の彼方へと沈んで行き、空がオレンジ色に染まっていく中、いつ来るか分からない襲撃に備えてマイハークは物々しい雰囲気であった。
軍港には第一陣の派遣艦隊と交代する形でクイラ王国に派遣された艦隊が補給がてらマイハークにやってきて、第一陣から残った一部のKAN-SEN達と共に海からの襲撃に備えていた。
その内容は以下の通りである―――
戦艦:『ビスマルク』(旗艦)
『ティルピッツ』
重巡洋艦:『プリンツ・オイゲン』
『ローン』
軽巡洋艦:『最上』
『マインツ』
駆逐艦:『Z23』
『Z46』
『時雨』
『綾波』
それ以外にも派遣艦隊が来る前に、このマイハークにて艦艇の砲撃訓練の指導官としてやって来ていたKAN-SEN達も、このマイハークの防衛に参加している。
戦艦:『デューク・オブ・ヨーク』
『リットリオ』
巡戦:『オーディン』
ハッキリ言ってしまうと、仮にもロウリア王国が海から攻めて来たとしても、絶対に守り切れる自身がある光景である。尤もロウリア王国にそんな戦力は無いのだが。
しかしこうして見れば見るほど、極めてバランスの悪い戦力である。
トラック泊地最大の悩みは戦艦、空母が多く、巡洋艦、駆逐艦が少な過ぎるというバランスの悪さである。
どうにかしようにも、KAN-SENの建造に必要な『メンタルキューブ』が不足しているし、あってもなぜか高い確率で戦艦か空母が建造されるので、駆逐艦と巡洋艦を増やそうとして逆に戦艦と空母が増えるという、悪循環に陥る謎現象が起きる。
これでもだいぶ増えた方だが、それでもバランスの悪い事に変わりは無い。
「……」
マイハークの港の埠頭にて、『デューク・オブ・ヨーク』は沖合いに停泊してるとあるKAN-SENの艦体を見つめる。
夕日に照らされ、静かに佇むその巨体は港湾外にて投錨し、停泊している。
その巨体を持つそれの名は『紀伊』……
ロウリア王国の北側の港と王都ジンハーク周辺へ艦砲射撃を行った『紀伊』はマイハークへ戻り、そこで艦隊と合流して『樫野』より弾薬の補給を受け、現在待機している。
「美しいな」
と、隣に立つ女性が『紀伊』の姿を見て、感嘆とした声を漏らす。
若草色の髪を背中まで伸ばし、前髪のほんの一部がオレンジ色になっており、一部を除いた戦艦系のKAN-SENの例に漏れずスタイル抜群な身体つきをしている。ティアラ風な髪飾りをして白い軍服調の服装を身に纏い、その上に黒い裏地が緑のマントを羽織っており、ストッキングに金の装飾が施された白いブーツを履いた格好をしている。
彼女の名前は『リットリオ』 ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の二番艦のKAN-SENである。
『リットリオ』は夕日に照らされて静かに佇む『紀伊』の姿を見て、そう声を漏らした。
「やはり彼こそが、戦艦として頂点に君臨するに相応しい。そうは思わないか?」
「さぁ、どうかしらね」
彼女の問いに『デューク・オブ・ヨーク』は短く答える。
「君には分かるはずだ。あの場に居たのなら、彼の圧倒的力を、彼の勇ましさを。そして彼の恐ろしさを」
「……」
妙に『紀伊』に関して熱弁する『リットリオ』の言葉を聴き、彼女の脳裏に『カンレキ』が過ぎる。
連合軍側の戦艦の熾烈な砲撃に曝されながらも顧みず突き進み、圧倒的な防御力を発揮して艦隊を突破し、輸送船団を撃滅した彼の姿を。
そしてその絶大な火力を発揮し、多くの船を沈めた、モンスターの姿を……
「今でも思い出せば鳥肌が立つよ。あの状況の中に突っ込み、猛攻に曝されながら突き進むあの姿を。それでおいて尚闘志を衰えさせないその姿を」
「……」
「あの猛々しい姿を見せ付けられたら、私なんかちっぽけな存在だと認識させられるよ」
と、彼女は頼んでもないのに、その時の事を語り出す。
「そんなモンスターと今では共に戦う仲間、か。世の中どうなるか分からないものだ」
『リットリオ』はそう言うと、僅かに口角を上げる。
ここまでくれば分かると思われるが、この二人は『紀伊』が存在した世界線の『大戦』での『カンレキ』を有するKAN-SENである。
故に本来の彼女達を知っている指揮官が居れば、二人の性格が少し違うと思われるが、それは彼女達の『カンレキ』が異なっているのが関わっていると思われる。
「ところで、君の愛しの彼はどこに居るんだい? 姿が見当たらないが……」
「……」
「そう睨まなくても、冗談だよ。少しだけからかっただけさ」
彼女から僅かに殺気が篭った視線を向けられるも、『リットリオ』は謝罪しつつのらりとかわす。
「……トチローなら艦体の整備に行っているわ」
「そうか。まぁ我々の出番は無いと思うが、備えても無駄にはならないからな」
「……」
「尤も、これだけの戦力を相手に攻めて来られる戦力を向こうが持っているかは別だがね」
『リットリオ』の言葉を聴き、『デューク・オブ・ヨーク』は小さくため息を付く。
その頃、『紀伊』の露天防空指揮所で、『紀伊』が『ビスマルク』と作戦の確認をしていた。
「『ビスマルク』。特戦隊の準備はどのくらい整っている?」
「侵入ルートの確認は終えているし、『黒潮』達がそのルートを確保している。後はその時を待つだけよ」
「そうか。となれば、あとはどれだけ向こうの視線を他に向けられるかに掛かっている、か」
「そこは総旗艦達と『三笠』達に掛かっているわね」
「だな」
と、会話を交わしてから、二人はマイハーク港に視線を向ける。
多くのKAN-SENの艦体とクワ・トイネ公国海軍の艦艇が停泊したマイハーク港。空母こそ居ないが、これだけでも一国の海軍を滅ぼせそうと、そう思える光景である。
実際に出来そうな戦艦が『ビスマルク』の目の前に居るのだが。
「……何事も無ければ、次で終わる……けど」
「何が起きるか分からない。常に想定外な事が起こるのが戦場だ。この世に絶対的な事象は存在しない」
マイハークの港でヤクモ級重巡洋艦とウネビ級軽巡洋艦、マツ級駆逐艦へ補給作業が行われている光景を見ながら、『紀伊』は声を漏らす。
「……だが、次で必ず終わらせる」
「……」
「艦長! 総旗艦『大和』より電文です!」
すると露天防空指揮所に通信員の妖精がやってきて、『紀伊』に電文を渡す。
「……」
「総旗艦達がそろそろ到着するの?」
「あぁ。そろそろマイハークに到着するみたいだ」
『ビスマルク』が電文の内容を予想し、『紀伊』が正解を答えつつ彼女に電文を渡すと、防空指揮所に備え付けられている巨大な双眼鏡を覗き込む。
双眼鏡の先に、薄っすらと艦隊の姿が映っていた。
その艦隊の先頭に、『大和』の姿がある。
(新たな力を得た『大和』。果たしてどれほどのものか……)
彼は内心呟きつつ、『大和』に搭載された新たな力を思い出す。
今の『大和』には次世代級な力を扱うだけの設備を有しているが、その力自体が不足気味であるのが否めないのが現状である。
そう思いながら、『紀伊』はマイハークに向かってくる艦隊を見つめる。
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所変わって、奪還したギム
戦闘の傷跡が深く残っているギムの町
現在エジェイからトラック泊地陸戦隊とエジェイの一部の部隊がやってきて、必要最小限でギムの復興を行っており、ギムは西方騎士団によって周辺警備が行われている。
しばらくすればクワ・トイネ公国陸軍が多くの工兵隊を引き連れて、ギムへとやってくる予定である。
そして町の郊外にて、『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』率いる戦車部隊と、『グローセ』率いる砲兵部隊が集結していた。その中にクワ・トイネ公国陸軍の部隊が混じっている。
その中には、一度トラック泊地に戻り補給と編成変更を終えて、航空支援要員として陸戦隊と合流した『武蔵』と『翔鶴』、『瑞鶴』の姿があった。
「『三笠』司令。出撃準備、完了しました」
「そうか」
陸戦隊所属の喋れる妖精が『三笠』に報告すると、彼女は頷く。
「全軍、前進せよ!」
『三笠』は鞘から軍刀を抜き放ち、剣先を前に向けながら号令を放つ。
彼女の号令と共に先頭を74式戦車と61式戦車で構成された戦車隊が走り、その後を妖精達に混じってクワ・トイネ公国軍の兵士を乗せたジープやトラック、73式装甲車が続き、最後尾を砲兵隊が続く。
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所変わってロウリア王国 某所
ジンハークから南に離れた場所には大きな川があり、その川のどこかに、巧妙に偽装された横穴がある。
その巧妙に偽装されて隠されている横穴付近の水面が僅かに蠢き、水面が一瞬盛り上がって人が出てくる。
水中から出てきた人は偽装を取り払い、横穴の存在を確認する。
横穴を確認した人は何かを横穴を隠している偽装に何かを取り付けて、耳に手を当てて口元が動き、どこかに連絡を入れている。
連絡を入れた後、再びその身体を水中へと沈めて、何事も無かったかのように姿を消した。
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竜の伝説編はやっておくべき?
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やっておいた方が良い
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別にやらなくても良いんじゃね?
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オリジナル要素を加えてやるべき