異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
トラック泊地陸戦隊によるジンハーク攻略が始まっている頃、ハーク城の地下
「上は始まったようですね」
僅かに地響きが地下へと伝わり、その振動によって天井から砂が落ちてきて『黒潮』は手で顔を覆って庇う。
そこは船着場のような場所であり、ずっと奥へと続く水路がある。
ここは王族が万が一の事態の時に城から脱出する秘密の水路であり、地下水路を抜けた先は、川が広がっている。
『黒潮』達は城を調査している時にここを見つけ、目標の逃走を阻止すると共に、お客の出迎えの為にここに居る。
『黒潮』以外に『霧島』、『暁』の姿があり、この場に居ない『十六夜月』と『黄昏月』は上にて状況を見ているとのこと。
「……」
『暁』は水路に何らかの機械を入れて、耳を当てている。
「どうだい?」
「まだでござる」
『霧島』の問いに、『暁』は集中しながらも短く答える。
「……」
『黒潮』は警戒しつつ、その時を待つ。
「っ!」
すると暁が耳に当てている機械から、モールス信号のように一定の間隔で電子音が響く。
彼女は少し待って音を聞くと、再び同じ間隔の電子音が響く。
「『黒潮』様。合図のモールスです」
「来ましたか。返信のモールスをお願いします」
「ハッ」
『黒潮』に命じられて、暁は機械に付けられた電鍵を短く二回と長く四回、最後に短く二回と、一定の間隔で押して水中へ音を放つ。
しばらく待っていると、水面で動きがあり、直後には水中から何かが出てきた。
「お待ちしていました、特戦隊の皆様」
『黒潮』は水中から出てきた者達に頭を下げて一声掛ける。
「状況は?」
「既に陸戦隊がクワ・トイネ公国陸軍と共に戦闘を始めています。ロウリア王国の目は陸上部隊に向いています」
「そうか」
『黒潮』から状況を聞いた者は頷き、船着場へと上がる。
船着場に上がったのは、ウェットスーツを身に纏う東洋風の男性であり、背中に背負うケースを下ろすと、防水袋を取り払う。
彼の名前は『U-666』と呼ばれる、潜水艦の男性型KAN-SENである。
『U-666』に続いて、四人の少女達が船着場へと上がり、それぞれ背中に背負っているケースを下ろして防水袋を取り払う。
黒髪の一部が白いサイドポニーにした髪形で、露出の多いダイビングスーツ風の水着を身に纏い口元をサメの歯の様な模様替えが描かれたネックウォーマーで覆った『U-47』
腰まで伸びた紫の髪の一部をサイドアップにした髪形で、小さめの制帽を頭に乗せて露出の多い水着の上に上着を羽織り、オーバーニーソックスを履いた『U-73』
青味をおびた黒髪を二つの束にした髪形をして、帽子を被っており、露出の多い水着の上にシャツを着て、長さの異なる靴下を履いた『U-101』
銀髪を同色のリボンで一本結びにした髪形で、機銃を模した黒いカチューシャを頭につけて、一部が透けている水着を纏いオーバーニーソックスを履いた『U-522』
彼女達はUボートと称される鉄血の潜水艦のKAN-SEN達である。
そして彼らは『特殊作戦隊』略称『特戦隊』と呼ばれる、KAN-SENと少数の妖精達で構成されたトラック泊地所属の特殊部隊である。
彼らは潜水艦と言う静粛性に優れた特性を生かし、『大和』と『紀伊』が前線での破壊工作を行う特殊部隊を編成させた。
前の世界ではこの考えは意外と功を奏した場面が多かったそうな。
この場に居るKAN-SEN達以外にもUボート+αが居るのだが、彼女達は妖精と共に地上にて輸送部隊に対して破壊工作を行って補給を妨害している。
これまでロウリア王国の補給部隊や輸送隊を襲っていたのは、特戦隊のUボート達であったのだ。
船着場に上がった彼らはケースから装備品を取り出し、それを身に着けるとケースに収められた一丁の銃を取り出す。
64式小銃や四式自動小銃とは雰囲気の異なる銃で、全体的に黒く、全長が短い。
これは『AKM』と呼ばれる、北方連合のあちこちにて沼や地面に埋まっていた物を妖精達が見つけたアサルトライフルに分類される銃火器だ。
64式小銃と異なる弾薬の7.62×39mm弾を使用する銃で、構造は比較的簡素的であり、そのお陰でどのような劣悪な環境でも確実に動作する堅固な構造をしている。
様々な環境で活動する特戦隊にとっては、正にうってつけな銃であったので、少数が作られて、独自のカスタマイズが施されている。
元々木製であった部品をポリマー製の物に変えて、ストックも固定式から伸縮が可能なパイプストックにしている。
ちなみにこのAKMはその強固な構造から陸戦隊の主装備として採用しようとしたが、陸戦隊から反対を受けて採用の話しは見送られた。
その反対理由は『射程が短い』や『射撃精度が悪い』とのこと。
『U-666』達はAKMを取り出して、先端の竹を割ったかのようなマズルブレーキの代わりに専用設計のサプレッサーを取り付け、マガジンを差し込んで槓桿を引き、薬室に初弾を送り込む。
装備を身に纏った彼らは、次に自分達の艤装に触れると、艤装が光り輝いて自分達の身体に纏う。
艤装を背中に背負い、身体を挟み込む形で腰から分割した艤装を出しているような形をしているが、この機構はトラック泊地所属の特戦隊のUボートのみに施された独自改装であり、これにより潜水艦のKAN-SENも地上でも軍艦としてのスペックを発揮できるようになった。
潜水艦のKAN-SENは他のKAN-SENと違って艤装が独立しているので、常に触れていないとKAN-SEN自体に軍艦のスペックを発揮出来ないでいた。
「では、案内を頼む」
「分かりました」
『黒潮』は頷くと、『暁』と『霧島』を引き連れて出入り口へと向かい、『U-666』達もその後に付いて行く。
―――――――――――――――――――――――――――――
一方ジンハークの第一城門と第二城門の間にある街に留まっているトラック泊地陸戦隊とクワ・トイネ公国陸軍は、第二城門前にてロウリア王国軍と戦闘を繰り広げていた。
『うわぁぁぁぁっ!?』
74式戦車から放たれた榴弾が地面に着弾すると同時に爆発し、爆風と飛び散る破片をもろに受けた兵士達が四肢のどこかが千切れ飛んで吹き飛ばされる。
「いでぇ、いでぇよぉぉ!?」
「助げでぐれ゙……」
「脚が、俺の脚がねぇ!? どこに行ったんだぁ!?」
「み、見えない。みんなどこにいるんだ!?」
ロウリア王国軍の兵士達は身体のどこかが失い、激痛によってもだえ苦しむが、周りの兵士達はそれに構っていられる余裕は一切無かった。
「くそっ! 何なんだよ、あの武器は!? なんであんな武器を亜人共が持っているんだ!?」
「俺が知るか!! それよりあの小さいな生物は何だよ!」
兵士達は建物や物の陰に隠れて文句を叫ぶ。
クワ・トイネ公国陸軍の兵士達は四式自動小銃を構えて射撃を続け、ロウリア王国軍の兵士を一人、また一人と倒していく。
「撃て撃て!! ロウリアのやつらを蹴散らせ!」
クワ・トイネ公国陸軍の指揮官が自身も四式自動小銃を構えて射撃をしながら周りに向けて叫ぶ。
ジープに懸架されている62式機関銃がクワ・トイネ公国陸軍の兵士によって操作され、機関銃から連続して銃声を放ち、薬莢とベルトリンクが排出される中、放たれた銃弾は何とか近づこうとするロウリア王国軍の兵士達の身体を貫いて倒していく。
73式装甲車の天板に設置されたブローニングM2重機関銃も大きな銃声を連続して放ち、建物や物陰に隠れている兵士達に弾が貫通して次々と兵士達が倒されていく。
その中で、トラック泊地陸戦隊の妖精達は他と違い機敏な動きで障害物の間を移動し、的確に射撃を行い、ロウリア王国軍兵士を確実に倒していく。
中にはロウリア王国軍の兵士が建物の陰から飛び出て剣を振るうが、妖精は手にしている64式小銃を前に出して振り下ろされる剣を受け止める。
「ぐ、何だ、この!」
ロウリア王国軍の兵士は妖精を押さえ込もうと力を入れるが、妖精はピクリとも動かない。
可愛らしい見た目とは裏腹に、妖精の力は成人男性を上回っている為、生半可な力では彼女達には叶わない。
すると妖精は更に力を入れて兵士を押し返す。
「うわぁ!?」
まさか押し返されるとは思っておらず、彼は体勢を崩しかけると、その隙に妖精は素早く64式小銃を突き出し、先端に取り付けた銃剣を兵士の喉元に突き刺し、その勢いで兵士を地面に押し倒す。
「ガッ!?」
地面に倒されて兵士は抵抗するが、妖精は兵士の上に立って自身の体重で押さえ込む。
すぐに銃剣を抜いて妖精は近づこうとしたロウリア王国軍の兵士に64式小銃を構え、即座に射撃を行って兵士達を倒す。直後に足元の兵士の頭に銃弾を一発打ち込んで止めを刺す。
「……」
74式戦車のキューポラから上半身を出して、キューポラリングに備え付けられているブローニングM2重機関銃をロウリア王国軍の兵士に向けて銃撃を行っている『グナイゼナウ』は周囲を見渡して警戒している。
「っ! 姉さん! 前方から敵増援です!」
『グナイゼナウ』はジンハークの第二城門が開かれ、そこからロウリア王国軍の増援が出てきたのを見つけ、姉の『シャルンホルスト』に伝える。
『重装歩兵の部隊か』
『シャルンホルスト』も増援を確認し、出てきたのは重装甲の鎧を身に纏い大きな盾を持つ重装歩兵の姿である。
「各車! 弾種榴弾! 目標敵重装歩兵!」
『グナイゼナウ』が喉元に装着した咽喉マイクに手を当てて指示を出すと、74式戦車と61式戦車の砲塔が旋回して、砲口が重装歩兵へ向けられる。
重装歩兵は盾を構えて、防御態勢を取る。
「撃てっ!!」
彼女の号令と共に、105mmと90mmの戦車砲が咆え、放たれた榴弾が重装歩兵団へと飛翔し、次の瞬間には爆発を起こす。
彼らの鎧や盾が大砲の砲撃に耐えられるはずも無く、前面に立っている重装歩兵は吹き飛ばされ、隊列の中で榴弾が爆発したことで多くの重装歩兵が吹き飛ばされる。
更に上空から流星改が急降下して、抱えている50番と25番の陸用爆弾を重装歩兵の真上から投下し、落下した三発の爆弾は騎士団の中で爆発し、全員が爆発によって吹き飛ばされ、その命を散らした。
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「重装歩兵! 全滅しました!」
「魔導師はどうした! すぐに第二城壁へと向かわせろ!」
「北側に配置している部隊を全て防衛に回せ! なんとしてもやつらを食い止めるのだ!」
「城壁内の通路が使えない!? だったら迂回してでも必ず向かわせるんだ!」
司令部はてんわわんやな状態で混乱しており、次々と入る報告がパタジンの精神を蝕む。
「っ! パタジン様! 北から敵ワイバーンの増援です!」
と、次に入った報告に誰もが絶句する。
ただでさえ制空権が取られて空からやりたい放題に攻撃を受けているのに、更なる空の戦力が投入されたのだ。もはや絶望以外のなんでもない。
しかも、地上は見たことない鉄の怪物に、敵兵の一人一人が大きな音を放つ謎の武器を持っており、その音が鳴った直後には、兵士の命が刈り取られているとの事だ。
北部海岸の沖に待機している『大和』と『エンタープライズ』、『エセックス』は艦載機への補給を済ませて待機し、陸戦隊が第一城門を突破したタイミングで攻撃隊を出させたのである。
「ヤミレイ殿率いる魔導師隊を向かわせて敵ワイバーンを迎撃させろ! 他の魔導師も北部に向かわせて敵ワイバーンを迎撃させるのだ!」
パタジンは指示を出して通信兵がすぐさま各所へ魔信で指示を伝える。
「……」
指示を出し終えると彼は椅子に座り込み、頭を抱える。
(どうする? どうすればいい。どうすれば敵の攻撃を退けられる?)
パタジンは必死になってこの状況を打開する案を考えるが、どう考えてもこの状況を一変させる案が浮かばない。
普通なら降伏を選択するべき状況だが、ここに来ても彼らの亜人に対する迫害思考が邪魔をして、プライドの高さから降伏する選択肢を除外していた。
(どうする、どうすればいい……)
頭を抱えて、自身の髪を掴んで悩むパタジンに、誰もが声を掛けられないで居た。
『な、何だ貴様ら!?』
すると司令部の外が騒がしくなると、兵士達の短い断末魔が彼らの耳に届く。
「……なんだ?」
パタジンは異様な雰囲気に顔を上げて声を漏らす。
すると司令部の扉が少し開かれると、何かが三つ投げ込まれる。
誰もが身構えると、その直後その投げ込まれた三つの物体が突然眩い光と膨大な音と共に破裂した。
「ぎゃぁぁぁっ!?」
「目が、目がぁぁぁ!?」
狭い空間で膨大な音と共に眩い光が放たれたことで彼らの目と耳を奪い、更に平衡感覚が一時的に麻痺してしまい、その場に居た多くの者達はその場に倒れ、眩い光によって彼らの視界が真っ白に染まる。
「っ!」
パタジンも例外ではなく、目と耳が麻痺し、更に平衡感覚を失って椅子から立ち上がれないで居た。
すると扉が開かれて何人かが司令部へと入ってくる。
「っ!」
パタジンはぼやける視界の中で、司令部の出入り口付近に顔を向けると、蠢く影が見えた。
時折何かを蹴るような音や、空気が抜けるような音がする中、パタジンの目の前に人影がやってくる。
「な、何者だ……!?」
「答える義理はない。貴様には眠っててもらうぞ」
と、パタジンは顔に何かが覆われて、彼は暴れるも、急に意識が遠のき、やがて彼の意識は深い眠りに付いた。
「司令部制圧完了」
『U-47』は職員の一人の口を塞いで拘束しながら『U-666』に報告する。
彼は「良し」と頷くと、パタジンを椅子に縛り上げて、口に猿轡をして塞ぐ。
「これより目標へ向かう」
『Ja.』
彼がそう告げると、Uボート達は返事をして頷き、司令部を出る。
司令部の外では『黒潮』達が周囲を警戒しており、『十六夜月』と『黄昏月』の二人が合流していた。
「目標の元へ案内してくれ、『黒潮』殿」
「承知しました」
『黒潮』が頷くと、再び彼らは目標が居る謁見室へと向かう。
―――――――――――――――――――――――――――――
「なに!? 侵入者だと!?」
報告を受けた近衛兵団の団長ランドは驚愕の声を上げる。
「ハッ! 城内の見張りが少なくなって捜索したところ、多くの兵士達が殺害されていました! それと同時に侵入者のものと思われる痕跡が見つかっています!」
報告していた兵士が鉛色の筒状の物体を見せて、ランドは歯軋りを立てる。
「敵は一体どこから侵入したのだ! まだここまで敵は到達しておらぬのだぞ!」
彼の言うとおり、まだ陸戦隊は第二城門の前にてロウリア王国軍と攻防を繰り広げている。まだハーク城へ到達していない。
「そ、それが、全く不明です! 現在調査中でありますが……」
「調査などいい! すぐに兵を陛下の元へと向かわせろ! 万が一にも―――」
と、ランドは最後まで言わず、ぴたりと止まる。
「ど、どうされましたか?」
「……」
ランドはブツブツと呟き、そして歯軋りを立てる。
「まさか、敵は秘密の抜け道に気づいたのか? だとするなら、侵入者の目的は……」
そして彼は確信を得て、表情が怒りに染まる。
「何をしている! さっさと兵を陛下の元へと向かわせろ!!」
「は、はい!!」
兵士はすぐに踵を返して指示を伝えに向かう。
ランドも踵を返してすぐに行動を起こす。
(やつらの目的は陛下だ。この攻撃も全て真の目的から目を逸らす為の囮だったのか!)
彼は歯軋りを立てて内心で叫ぶ。
そう。彼の予想はまさにその通りであった。
『大和』と『紀伊』がクワ・トイネ公国の政府に提案した作戦。
それはロウリア王国の国王 ハーク・ロウリア34世の捕縛である。
当初は短期に戦争終結を求めて特戦隊と『黒潮』達忍び部隊共同で隠密作戦にてハーク・ロウリア34世を密かに捕縛し、国全体に降伏勧告をさせるつもりであったが、不確定要素が多いし、もし撤退時に見つかって包囲されれば、いくらKAN-SENとてそこから離脱するのは至難の業だ。最悪捕らえられる可能性があった。
そこで『大和』と『紀伊』はあえて時間を掛けてロウリア王国の戦力を減らしつつ、他に目を向けさせる為にビーズルを爆撃し、北部の海で艦隊を見せ付けるように展開して、二方面からの攻勢を行ったのだ。
これにより、ロウリア側の視線は北側と西側、南側へと向けられ、城壁を破壊したことで兵士の移動が行えないとあって、敵は特戦隊の動きに全く気づけないでいた。そして司令部を制圧して、指揮系統を麻痺させた。ここまでは『大和』と『紀伊』の二人の作戦通りであった。
しかし『大和』と『紀伊』にとって誤算だったのは、予想より早く作戦の真意に気づけた者が出てきたことである。
(やらせんぞ。何があろうとも、陛下の身は必ずお守りする!)
ランドはロウリア34世の元へと急ぐ。
感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。
竜の伝説編はやっておくべき?
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やっておいた方が良い
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別にやらなくても良いんじゃね?
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オリジナル要素を加えてやるべき