異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
猿ハンテン様より評価8を頂きました。
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中央歴1639年 6月15日 シオス王国。
この国は第三文明圏の外側にある島国であり、各国との貿易が盛んな国である。
「大変です!! 大変です、王様!!」
そんなシオス王国の王城の謁見室に、文官が息を切らして扉を蹴破らん勢いで開けて入ってきた。
「何事じゃ、そんなに息を切らして」
シオス王国の国王は慌てた様子の文官を見て声を掛ける。
普通なら謁見の手順があるのだが、それを無視してでもやって来た態度から、余程の緊急事態であると国王は察し、彼を責めることはしなかった。
「我が国最大の貿易相手国であるロウリア王国が、クワ・トイネ公国とクイラ王国の二国を相手に戦争を開始した件についてですが……」
「あぁ、ついにロウリア王国がロデニウス大陸を統一したのか? 二国とも我が国の大切な貿易相手じゃというのに、悲しいことじゃが……」
国王は顔に手を当てて悲しげに言葉を述べる。まぁ尤もなことを言うと、貿易相手が二国もいなくなって国の国益が損なわれることに悩んでいたりする。まぁ最大の貿易相手のロウリア王国が居れば、その損失分を賄える。彼はそう考えていた。
だが、文官は全力で首を横に振る。
「王様、違います!! ロウリア王国が敗れたのです!! 信じられますか? あのロウリア王国が負けたのです!!」
「……は?」
文官の言葉を聴き、一瞬の沈黙の後、国王は間抜けな声を漏らす。
「ですから、ロウリア王国が負けたのです!!」
「馬鹿な!? 戦力比を考えれば、ロウリア王国が二国を攻めるのに苦労することはあっても、負けることは絶対にありえんじゃろ。そんなことは戦争の素人でも分かることじゃぞ!?」
「ですが、現にロウリア王国は負けました。それも徹底的に。更に不確定情報ですが、ロウリア王国の国王が敵に捕らわれたという情報も」
「何じゃと……」
国王は信じられないというような表情を浮かべる。
ロウリア王国の国力は知っているし、その戦力はクワ・トイネ公国とクイラ王国が力を合わせても大きく上回るものであった。
それなのに、ロウリア王国が負けた……
「何が、一体何が起きているんじゃ?」
「それについては、ここ最近のクワ・トイネ公国とクイラ王国の変化が大きく関わっているかと」
「二国の変化、か」
思い当たる節があるのか、国王は顎に手を当てる。
「そういえば、大分前にクワ・トイネ公国との貿易の際の報告があったな」
「はい。見慣れない武器を載せた軍船に、クワ・トイネの物ではない旗を掲げた見慣れぬ軍船。中には巨大な鉄船を見たという荒唐無稽な報告もありましたが……」
「……当時は全く信じなかったが、その荒唐無稽な報告が本当じゃとしたら」
「ロウリア王国が負けたのも、頷けるかと」
「……」
国王は顎に置いていた手を下ろして、腕を組む。
「力を付けたのは、ロウリア王国だけでは無かったという事か」
「……」
「……世界が、変わろうとしているのかもしれんな」
国王はボソッと呟く。
「ともかく、今後はクワ・トイネ公国とクイラ王国との貿易が中心になるじゃろうな」
「えぇ。ですが我が国最大の貿易相手国が落ちた以上、これまで通りにはいかないかと」
「……」
国王は深くため息を付き、今後どうなるか分からない不透明さに、頭を痛めるのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
所変わって、パーパルディア皇国 国家戦略局
蝋燭の炎が揺らめき、暗い部屋に二人の男の影を作る。
「――――以上、ロウリア34世はクワ・トイネ公国の者に捕らわれました。その後パタジンという名の将軍が臨時的に首相となり、ロウリア王国の臨時政府を立ち上げたようです」
男は冷や汗を掻きながら上司にありのままを報告する。
「簡単に言ってくれるな。ロウリア王国に我々がどれだけの支援を行ってきたと思っているのだ? 皇帝陛下の耳にでも触れたら国家戦略局そのものが危険に曝されるぞ!! そうなれば、お前も私もただでは済まんぞ」
「も、申し訳ございませぬ!!」
男は深々と頭を下げる。
「今回のロウリア王国への支援は、お前の知っての通り、我ら国家戦略局の独断だ。上手くいけばロデニウス大陸の地下資源に人的資源、権益を一気に掌握し、その手柄をもって皇帝陛下にご報告する予定だったが……」
上司は忌々しい様子で暖炉の火を睨み、歯軋りを立てる。
「他官庁も黙らせることが出来て、我らの評価も相当なものになっていたはずが、今となっては自分の命の危険を考えなければならない」
「……返す言葉もございません」
上司の言葉に部下は頭を下げ、力なく答える。
「しかし―――」
と、上司は顎に手を当てて、暖炉の火を見つめる。
「ロウリア王国は我が皇国の支援を受けたとは言えど、ロデニウス大陸の半分を牛耳る規模を持っていたはずだ。それでおいて自国の半分の規模しかない農民の国と貧しい国に負けるとはな。信じられんが、敵はどんな方法でロウリアに勝ったのだ?」
「それが……諜報員には二国を調べるように指示を出しましたが、その後の定期連絡が全く無いことを考えれば、恐らく戦闘に巻き込まれて死亡したものかと」
「……戦闘を見ていた民間人からでも情報の一部ぐらいは訊き出せるだろう?」
「はい。追加の諜報員を派遣して民間人より話を聞くように指示を出しました。この時には既に戦争は終えていましたが……」
部下は一旦間を置いて呼吸を整え、口を開く。
「しかし、民間人から聴取すると、皆一様に現実離れした意見が出るばかりで」
「と、いうのは?」
上司は怪訝な表情を浮かべながら問い掛ける。
「空中戦力はどれもワイバーンを上回る速度で飛ぶ鉄竜が主力で、地上設備を破壊し、兵士が次々と殺されたと。地上戦力にも鉄の猛獣を従え、ブレスを吐けば一気に数十人の兵士が命を落としたと。それに加え兵士一人一人が大きな音を出す杖を持って、音が鳴る度にロウリア王国の兵士が倒れていったと。そんな事ばかりです」
「それは既に情報操作が入っているな。民間人を黙らせる為に、何らかの情報統制と操作を行っているのだろう。文明圏外の蛮族の癖に、小賢しいことを」
上司は馬鹿にするように鼻を鳴らす。
「それに最後のは、まるで我々の持つ銃みたいだな」
「えぇ。蛮族にしては、巧妙に考えております。しかしなぜ文明圏外の蛮族が銃を知っていたのかは……」
「偶々似ていただけだろう。……そういえばロウリア王国から帰ってきた者達も、おかしなことを言っていたな」
上司はこの前ロウリア王国から帰ってきた職員の報告を思い出す。
王都ジンハークのハーク城に滞在していた国家戦略局の職員達が事前連絡も無しに本国へ戻ってきた。
その時の報告も、荒唐無稽な内容であった。
『ジンハーク周辺で尋常ではない規模の爆発が何度も発生し、北側の城壁が門ごと完全に破壊された。敵は恐らく我々の想像出来ない規模の巨大な魔導砲を有している可能性が高い』
このような報告をした職員達は一様に顔面蒼白にして訴えていた。
しかしこんな荒唐無稽な内容を信じられるはずも無く、職員達は長い間僻地に居た事で精神的に不安定になり、幻覚を見たのだろうと考えて、精神病院へ強制的に入院させられた。
「我らの得た情報は、外務局にお伝えした方がよろしいでしょうか?」
「お前、死にたいのか? それは自殺行為と言うんだ。そんな事をすれば、すぐに皇帝陛下の耳に入り、我らの首が刎ねられるぞ」
上司がそう言うと、部下は息を呑む。
「ロデニウス大陸に関する情報と、ロウリア王国への支援の履歴は全て破棄しろ。我らとの関わりを一切残すな。国家戦略局と自分、そして家族の為にもな」
「は、ハッ!」
「それとロウリア王国へ出向いた職員にも厳重な口止めをしておけ。もし従わないのなら始末しても構わん。ヴァルハルは……まぁ奴は死んだからどうでもいいか」
上司は書類を暖炉に放り込むと、一瞬にして紙に火が付いて燃え上がり、書類に記載された情報が燃え尽きる。
ロウリア王国へ支援を行ったパーパルディア皇国 国家戦略局は、ロウリア王国が引き起こした侵略戦争の一部始終を、徹底して隠蔽した。
しかし……これが決して選んではいけない最悪の選択であったとは、国家戦略局の誰もが予想しなかった。
そしてこの時の出来事が後の世に伝わると、専門家はこう言った。
『この時の情報があったら、皇国の今後に大きな影響を及ぼしただろう』……
―――――――――――――――――――――――――――――
クワ・トイネ公国 政治部会
「―――というわけで、ロウリア王国 国王ハーク・ロウリア34世はトラック泊地所属の特戦隊により、身柄を拘束されました。王を失ったことで国内の不満分子の活動が活発化し、軍は残存戦力をかき集めて不満分子の押さえに入っていますので、派兵する余裕は無いと思われます」
報告を聞き、政治部会に参加している議員達は安堵の息を吐く。
トラック泊地のKAN-SENと陸戦隊の力を知っていたとは言えど、物量に勝るロウリア王国を相手に果たして勝てるかどうか懐疑的だったが、結果は圧倒的勝利に終わった。
「ロウリア王国の残存兵力はどのくらいだ?」
「元々人口が多いとあって、まだ20万前後は残っています。ですがこれは各諸侯が出し合った総兵力ですので、各諸侯が対立を始めた今、この兵力が国外に向くことは現在ありません」
「そうか」
報告を聞き、カナタは頷く。
「本戦いでのロウリア王国の被害は、竜騎士団が多く、ワイバーンがほぼ全滅、騎乗者である竜騎士はまだ数が多いですが、ワイバーンが無ければ脅威になりえません。騎馬や歩兵にも多くの死者が出ているようです」
『大和』達は制空権の重要さからワイバーンが空へ上がる前に滑走路と周辺設備の破壊を優先したので、竜騎士自体の被害は思ったよりも少なかった。
「しかし何より多いのは海軍のようで、ロデニウス沖海戦の被害に加え、『紀伊』殿による港に対する艦砲射撃や『大和』殿率いる機動艦隊の艦載機による攻撃も相まって、活動可能な軍船は殆ど残っていないようで、水夫の数も開戦前の半数以下にまで減っているようです。その大半が熟練者であったようで、今後の水夫の教育はままならないかと」
予想以上の被害にさすがの議員達の中には同情を抱く者も居た。つまり事実上ロウリア王国は、海軍力を完全に喪失していることになる。
「少なくとも、ロウリア王国は今回の一件で我が国とクイラ王国に対してトラウマを抱えたようで、両国に対して更に侵略を行うとする気は無いようです。諸侯の中には我が国とクイラ王国との関係改善をしたいという書面を受け取っています」
報告を聞き、議員達はそれぞれの反応を示す。
少なくとも、ロウリア王国との関係改善が大きく進むことになりそうであるからだ。そして上手くいけば亜人排他思考を排除することも夢ではない。
「我が方の被害はジンハークでの戦闘で我が国とクイラ王国、そしてトラック泊地陸戦隊から計30名の死傷者を出しています。それと戦闘に関係ありませんが、『大和』殿の艦載機一機が故障して墜落したぐらいです」
最後の報告に失笑が出るが、カナタは咳払いをして気持ちを切り替える。
「とにかく、彼らのお陰でロウリア王国の野望は、これで完全に潰え、我が国とクイラ王国は救われたのだ。これは喜ばしいことだ。これからも彼らとは友好的に付き合っていこう」
カナタの言葉に誰もが頷き、喜びを表す。
「そして今後戦争が起きても、彼らだけに頼らず、我々だけでも国を守れるように、兵達の練度の向上、体制を整えるように、各員の努力を期待する」
そして彼の言葉を聴き、全員が頷く。
ロウリア王国によるクワ・トイネ公国への侵攻は、『大和』と『紀伊』の男性型KAN-SENを中心としたKAN-SEN達と陸戦隊の援軍により、ロウリア王国の大敗と言う結果にて終結を迎えた。
『結果は見えていたけど、やはり彼らの圧勝だったね』
『でしょうね。技術レベルが何世紀もの差があればこうもなるわ。これじゃ彼らの経験値にもならない』
『そうだね。でも戦闘という経験である事に変わりはないよ。それが人間相手なら尚更だ。旧世界では人間相手に戦う機会は無いからね』
『……』
『でも、この世界の在り方なら、いずれまた戦争は起きる。彼らは平穏を望んでいるけど、それは決して叶わない願いだ。兵器として生まれた以上、戦う運命からは逃れられない』
『運命、ね』
『ところで、例の物の準備できた?』
『えぇ。もう既に準備は終えたわ。欠如している部分も補填しておいたし。尤も、見つけられるかは彼ら次第ね』
『それは良かった。旧世界と違って周りの目が無いから、これで彼らはもっと強くなる』
『そうね。まぁ物に出来るかは彼ら次第だけど、引き続き彼らの観察を頼むわ』
『あぁ。もちろんだとも』
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