異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
中央歴1639年 7月01日 クワ・トイネ公国 マイハーク
この日、ロデニウス大陸の歴史上最も大きな転換点を迎える、重大な会議が行われていた。
参加者はクワ・トイネ公国及びクイラ王国、そしてロウリア王国の政府首脳人である。そしてその中にはトラック泊地より代表として『大和』と『紀伊』の姿もある。
ロウリア王国は先の戦争で首脳陣は一部を除いて入れ替えられており、首脳陣に新顔が目立つ中、臨時的に国を率いる首相として就任したパタジンの姿がある。
「それでは、始めましょう」
カナタのその一言により、今後を左右する重要な会議が始まった。
会議は予想されたロウリア王国側の反対意見が思ったより少なかったので、予想よりスムーズに事が進んだ。
その後は『大和』と『紀伊』の意見を取り入れつつ、三ヶ国の首脳陣は話し合いの末に一つの決定を下した。
それはロデニウス大陸に存在する三ヶ国を統一し、大陸そのものを一つの国家とする計画である。
パーパルディア皇国の脅威もそうだが、この世界における弱肉強食という実情がある以上、いつまでも国同士でいがみ合っているわけにはいかないと、『大和』は考えていた。
まぁそれ以上に、ロウリア王国はパーパルディア皇国に対して多額の借金を抱えている以上、ほぼ確実にそれを理由にしてかの国から宣戦布告を受けるだろうという確定事項があるのだ。
その煽りを、クワ・トイネ公国とクイラ王国も受けてしまうのだ。
そんな中で、三ヶ国がパーパルディア皇国と戦おうとしても、連携出来ずに戦いはうまくいかず、無駄な犠牲が出てくる可能性が非常に高い。
その為、『大和』と『紀伊』はカナタ首相と話し合いをして、パーパルディア皇国に対抗するために、統一国家の建国計画を立てた。当初は一部の者が難色を見せたものも、最終的にクワ・トイネ公国の首脳陣全員が賛成を表明した。
この考えはクイラ王国に伝えられ、クイラ王国の王はこれを快く受け取り、計画に賛同した。
ロウリア王国の臨時首相として就いたパタジンにも計画を伝えたところ、彼も賛同し、首脳陣も全員が賛同した。まぁ借金返済が事実上不可能であるので、パーパルディア皇国から確実に宣戦布告を受けることが分かっている以上、賛同せざるを得ないという面もあるだろうし、トラック泊地の力を目の当たりにしたからこそ、その計画に彼らは希望を見出しているのかもしれない。
それからして今日この日に三ヶ国の首脳が集まって、計画について事細かく決めるための会議が行われ、会議の末にこの統一国家建国計画は遂行に移すことが決まった。
その後三ヶ国の国民に対して統一国家建国に関する投票が行われ、その結果はクワ・トイネ公国とクイラ王国の国民はもちろんのこと、ロウリア王国の国民も統一国家建国に賛成を示した。
当然ロウリア王国側の貴族から反対意見があったものも、戦争により影響力が低下していたとあって、反対意見は半ば無視されて流されることになった。
そして一週間後の中央歴1639年 7月7日
ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国とクイラ王国、ロウリア王国の三ヶ国は統一を行い、元クワ・トイネ公国首相カナタを大統領とする『クワ・トイネ州』『クイラ州』『北ロウリア州』『南ロウリア州』の四つの州を持つ新たな国家『ロデニウス連邦共和国』が建国された。
国の建国としてはかなり短い期間で達成した統一国家建国であるが、これも裏で活躍してくれた三ヶ国の首脳陣の努力があってこそである。
そして『大和』達トラック泊地は、一応ロデニウス連邦共和国の海軍の一組織として組み込まれはしたが、その特性を考えて独立性を有する組織として活動することになった。
『大和』はトラック泊地の司令長官兼外交官として就任し、『紀伊』は海軍の連合艦隊司令長官として就任した。
とは言ったものも、実質的に二人の司令長官は肩書きみたいなものなので、外交官として就任した『大和』以外はほぼ今まで通りと思えばいい。
とてもひっそりではあったが、この世界で新たなる国家の歴史が、始まろうとしていた。
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中央歴1639年 7月13日 トラック諸島。
ロデニウス連邦共和国海軍の一大拠点として新たにスタートさせたトラック泊地。
「これでパーパルディア皇国への備えは出来た。後は国内の軍備を整えるだけか」
「そうですわね」
トラック諸島のある島に訪れた『大和』と『天城』の二人は、とある場所へ向かっていた。
「しかし、本当によろしかったのですか? 当初はあくまでも独立した組織として活動するはずでしたのに」
『天城』は少しばかり不安な表情を浮かべて『大和』に問い掛ける。
当初『大和』はあくまでも独立した組織として活動し、要請があれば戦力を送る民間軍事会社のような形で活動していこうと考えていた。これは旧世界にて、アズールレーンやレッドアクシズによって自分達を取り込もうとする動きに警戒していたように、転移後も同じスタンスで居ようとしたのだ。
一応一組織として組み込まれはしたが、それでも独立した組織としての機能を有している。
「まぁ、別にレッドアクシズやアズールレーンの一組織として組み込まれるわけじゃないんだ。ロデニウス大陸には俺達の力を手に入れようとする者達も居ないしな」
「……」
「この世界の一員として生きていくのも、悪くないんじゃないかって思ってな」
「そうですか……」
「不満か?」
「いいえ。総旗艦様が望まれるのであれば、私は何も言うことはありません。それが総旗艦様が望まれる平穏に繋がるのであれば」
「……すまないな」
『大和』は短く謝ると、二人は倉庫の前へ辿り着く。
倉庫の前には大山敏郎が妖精達と共に待っており、妖精達と話している所後ろから近づいて来ている気配に気付いて振り向き、『大和』達を見つけて振り向く。
「お待たせしました、敏郎さん」
「来たか、『大和』。いつでも良いぞ」
敏郎は妖精達と共に倉庫の扉を開けて中に入ると、『大和』と『天城』もその後に付いて行く。
「おぉ……」
「これは……」
倉庫の中に入ると、『大和』と『天城』は中にある物を見て思わず声を漏らす。
倉庫の中には、妖精達があちこちで各々の作業を行っている巨大な代物があった。
「まだ機体は七割ほどしか完成していないが、エンジンは既に完成している。機体が完成すれば試験飛行が可能になるな」
敏郎は巨大な代物を見ながら、作業の進行状況を『大和』に伝える。
「これほど大きな機体を、よく作れましたね」
「深山や連山の開発ノウハウがあってこそだよ。最も、妖精の技術力があってこそ実現できたんだがな」
タブレット端末を操作しながら敏郎はため息を付く。
「ですが、敏郎さんの頭脳があってこそ、ここまで出来たと思っています。俺達だけじゃ、ここまでの代物は作れなかったと思います」
「そんなに持ち上げないでくれ、『大和』。妖精の助力無しじゃ俺は何も出来なかったんだ。祖国でも、そんな感じだったしな」
「敏郎さん……」
悲壮な雰囲気の敏郎に、『大和』は何も言えなかった。
「まぁでも、ここに来て俺の実力が実を結んだって言うのは、否めんな」
敏郎は咳払いをして、気持ちを切り替える。
「試作機が完成すれば、試験飛行を行う予定だ。だが、量産については、そう簡単に数は揃えられないな」
「深山や連山でも同じでしたので、その点は仕方ないかと」
敏郎の言葉に『天城』がフォローを入れる。
彼女の言うとおり、この機体の規模は深山と連山を有に超えている。その為量産出来るかどうかも怪しいのだ。尤も、それはこのトラック泊地にある工場のみでの話なのだが。
「まぁ、今は試作機が完成しないと話にならない。でも慌てず丁寧にお願いします」
「分かっている。必ずこいつを完成させるさ」
敏郎はニカっと笑顔を浮かべてサムズアップする。
「ところで、こいつの名前は決まっているのですか?」
『大和』は機体を見上げながら敏郎に問い掛ける。
彼の脳裏には人間だった頃のミリオタとしての知識に、よく似たものがあった。
「こいつか? いやまだ決まっていない。こいつが完成するまでには、決めておきたいな」
敏郎は頭の後ろを掻いて苦笑いを浮かべながらそう口にする。
「『大和』も考えてくれるか? 考えてくれると助かるんだが……」
「そうは言っても、うーん」
『大和』は機体を見上げながら声を漏らす。
「まぁ、一応考えておきます」
彼は頷き、妖精達によって作られる機体を見上げる。
「それで、空母の艦載機の改修はどのくらい進んでいますか?」
「あぁ。重桜の空母の艦載機を優先に行っている。既に『武蔵』や『翔鶴』『瑞鶴』を筆頭に行っている。『大和』の艦載機も最近終わっているし、これから『赤城』と『加賀』、『蒼龍』の艦載機も行っていく予定だ。『エンタープライズ』達の艦載機はみんなが終わってからだな」
「そうですか」
『大和』は敏郎より報告を聞くと、倉庫の隅に視線を向ける。
そこには性能向上の改修を終えて、翼を休めている艦載機の姿があった。
この他にF8F ベアキャットとA-1 スカイパイレーツにも改修が施される予定であるが、元の性能の高さもあって、重桜の艦載機の改修が優先されている。
(準備は整いつつある、か)
進みつつある準備に、『大和』は安堵する。
「そういえば、指揮艦様達がこの前の調査で発見した『例の物』の調査はどうですか?」
「あぁあれか。いやぁ、な……」
と、『天城』が問い掛けると、なぜか敏郎は苦笑いを浮かべる。その様子に『天城』と『大和』は怪訝な表情を浮かべて首を傾げる。
「調査自体は進んでいるんだが……妖精達が日夜狂喜乱舞していてな。もう、その雰囲気ときたら……」
「あー、なるほど」
敏郎の口から語られる妖精達の様子を容易に想像出来てか、『大和』は苦笑いを浮かべるしかなかった。
ロデニウス大陸には『リーン・ノウの森』と呼ばれるエルフ族が代々守り続けている聖域がある。そこには太古の昔、この大陸にて魔王と戦った『太陽神の使い』に関する物が眠っている噂があった。
『大和』はその話に興味を持ち、クワ・トイネ公国を通してエルフ族にその神話に関する調査を行いたいと交渉していたが、彼らにとってリーン・ノウの森は聖域とあって、当然ながら簡単に調査の許可は下りなかった。
しかしロウリア王国との戦争にて、トラック泊地が事前にロウリア王国の動きをクワ・トイネ公国に伝えて、エルフ族の集落を疎開させるようにしたとエルフ族に伝わると、その恩返しの一環で特別に調査の許可が下りた。
数日前に『紀伊』を筆頭に技術関連の専門家として敏郎や技術者の妖精、護衛に『出雲』と『高雄』、『デューク・オブ・ヨーク』等のKAN-SENの他に陸戦隊が同行した。
エルフ族の案内の下、リーン・ノウの森を進み、最深部にある石造りのドーム状の建造物へたどり着く。
そしてそこで、彼らは衝撃的な物を発見したのだ。しかも多くを、その上非常に良い状態でだ。どうやらそれがエルフ族が代々に伝える『太陽神の使い』の種類の違う神の船や鉄の地竜であるようである。
その後エルフ族との間で話し合い、森の最深部にある『例の物』の詳しい調査を行う許可を取った。しかしそれは彼らにとって御神体なので、外に持ち出すわけにいかない。その為、現地で調査を行うことにしたので、常時案内役のエルフ族の配備を依頼し、妖精達による詳しい調査が行われている。
とても状態が良かった為、妖精達は新鮮な獲物を見つけた獣の如く群がり、目をぎらつかせて調べているそうな。
「まぁ、彼女達がやる気なのは良いとして……」
『大和』は咳払いをして、気持ちを切り替える。
「これで色々と抱えていた問題が一気に解決できそうですね」
「そうだな。リーン・ノウの森で発見された『例の物』のお陰で、一気に技術が飛躍しそうだ」
「その上、旧世界で妖精達が各地で見つけた『過去の遺物』が、もしかすれば役に立つかもしれませんね」
「そうだな」
『大和』の言葉に敏郎は頷き、彼は脳裏にその時に見た『例の物』を思い浮かべる。
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所変わって、ロデニウス連邦共和国の四つある州の一つ、クワ・トイネ州
「アルタラス王国との国交は何とか無事に終えそうだな」
「はい」
大統領の執務室にて、ロデニウス連邦共和国の大統領として就任したカナタが秘書より報告を聞いていた。
「この後アルタラス王国との協議次第で、今後の戦略に大きく響くからな。気を引き締めるように外務局に改めて伝えてくれ」
「かしこまりました」
秘書は手にしているタブレット端末のメモ帳アプリにメモをする。
「……しかし」
と、カナタは椅子を回して後ろを向くと、窓から街の景色を一望する。
大陸統一によって新たに建国されたロデニウス連邦共和国の首都クワ・トイネ。トラック諸島と接触してから発展をしていたが、あれから更に発展を遂げていた。
「まさかこの私がロデニウス大陸の統一国家の長になるとは……人生何が起こるか分からないものだな」
「そうですね」
「そう思うと、本当に濃い一年だった」
カナタは感慨深そうに呟き、深くゆっくりと息を吐く。
トラック諸島が転移して、クワ・トイネと接触して早一年。この一年はクワ・トイネのみならず、このロデニウス大陸の全てを変えた。
生活水準が変わり、強大な力を持つ武器兵器を手に入れ、あの旧ロウリア王国を打ち倒した。
そして、三ヶ国が統一し、新たな国家が建国された。
「だが、同時にこれから大きな試練が待ち構えているのも事実だ」
「……パーパルディア皇国、ですね」
「あぁ」
カナタは『大和』と『紀伊』より聞かされた話を思い出す。
「いずれあの国がこの大陸に魔の手を伸ばすのは予想できていた。例え旧ロウリア王国に支援を行わなくても、いずれな」
「……」
「……勝てると思うか。あの第三文明圏の列強国に?」
「技術的に考えれば、確実に勝てると思います。ですが物量は圧倒的に向こうの方が上です」
「……やはり物量か」
カナタは苦虫を噛んだ様に顔を顰める。
「現在陸海空軍の戦力は増強されつつあります。海軍では新たにトラック諸島で建造された戦艦と空母を導入、巡洋艦及び駆逐艦も数を増やしつつあるとの事です」
現在連邦共和国海軍は更なる発展を進めており、ヤクモ級にウネビ級、マツ級の増備に加え、新型の巡洋艦と駆逐艦の導入、先日トラック泊地より戦艦二隻と空母二隻が譲渡されて就役に向けて訓練を行っている。
「陸軍では戦車隊及び砲兵隊の訓練が進んでいます。今は監視付きではありますが、北ロウリア州、南ロウリア州でも訓練が開始されています」
「……旧ロウリア王国の出身者が反乱染みた事を起こさなければ良いのだが」
「万が一に備えて『出雲』殿と『土佐』殿、『三笠』殿が陸戦隊と共に監視しているようです」
「……彼女達の力が振るわれないのを祈るばかりだな」
彼はそう言うと、ため息をつく。
陸軍は61式戦車の他に74式戦車を導入し、陸戦隊の戦車隊より教導を受けてその戦力を増やしている。
そして旧ロウリア王国出身者も連邦共和国陸軍の一員として訓練が開始されたが、先の戦争の事もあって、その多くは心を入れ替えてロデニウス連邦共和国の一員として訓練に励んでいるが、一部に不満を持つ者が少なくない。
その為、訓練中はトラック泊地の陸戦隊が監視しており、万が一はすぐさま鎮圧できるようにしている。
「空軍はパイロットの数を増やしつつ、航空機を次々と導入しています」
「それでも、まだまだ足りないな」
「……」
「可能な限り準備を進めるんだ。あの国の性格を考えれば、長く待ってはくれないぞ」
「かしこまりました。改めて陸海空軍の各司令に伝えておきます」
秘書は頭を下げて、執務室を出る。
「……」
カナタは再度窓の方を向き、景色を眺める。
(守らねばな。この国を)
改めて決意を胸に秘め、彼は書類整理の作業を再開する。
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竜の伝説編はやっておくべき?
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やっておいた方が良い
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別にやらなくても良いんじゃね?
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オリジナル要素を加えてやるべき