異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
時系列は遡ること、一年前……
トラック諸島が転移する、少し前のことである。
第二文明圏
その日、ある国で悲劇が起きた。
国交開設を行うために赴いた国の使節団が、不敬を買ったとして相手国によって使節団全員が処刑された。その中にはその国の皇族が含まれていたそうである。
悲劇的な内容であったが、この世界ではよくある事だと、どの国も興味を示さなかった。
しかし、これが世界を揺るがす大きな悲劇の幕開けになるとは、誰も予想しなかった。
その後その国こと、『グラ・バルカス帝国』はパガンダ王国へ宣戦布告し、わずか数日という短さで、パガンダ王国を滅ぼした。
そしてその後、グラ・バルカス帝国はレイフォルに対して宣戦布告をして、攻撃を開始した。
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第二文明圏 列強国レイフォル ムー大陸西方海域
レイフォルより出航した43隻もの艦隊が、西へ針路を取って進んでいた。
突如として現れた『第八帝国』と名乗る新興国家は、周辺の国々を統合、制圧し、あろうことか第二文明圏全ての国に宣戦布告してきた。
野蛮な国、蛮族と放っておいたが、レイフォルの西側にある小さな島国であり、レイフォルの保護国でもあるパガンダ王国を滅ぼしたしたことが、レイフォル皇帝の逆鱗に触れる。
レイフォルの皇帝は竜母や100門級戦列艦を含む主力艦隊を差し向け、パガンダ王国沖合いに展開する第八帝国の敵艦隊の撃滅を命じた。
100門級戦列艦と竜母の艦隊は帆をいっぱいに張り、『風神の涙』と呼ばれる風を起こす魔法具を使用し、12ノットの速度で向かった。
「将軍! 偵察中の竜騎士から敵艦発見の報告が来ました!」
竜母から飛び立った偵察中のワイバーンロードから魔信を通じて報告が上がり、通信士が声を上げる。
「敵は1隻のみですが……全長が250mを超え、信じられない大きさの大砲を搭載しているとの事です!!」
報告を聞いた将軍バルの眉間に皺が寄る。
もし偵察に上がったワイバーンロードの竜騎士の報告通りなら、敵はこちらのどの戦列艦よりも大きいことになる。
竜騎士の言葉を信じないわけではないが、にわかに信じ難い内容とあって彼は一考する。
「艦隊針路を敵艦に取れ! 艦隊護衛の3騎を残し、残りの竜騎士を敵艦攻撃に向かわせろ!」
「はっ!」
一考した末に、将軍バルは指示を下し、船員達が動く。
波をかき分け、艦隊は針路を敵艦へ向ける。艦隊の乱れない動きから、艦隊錬度の高さが伺える。
竜母と呼ばれる母船から、攻撃隊のワイバーンロードが青空へ向かって発艦していく。
飛び立ったワイバーンロードは空中で編隊を綺麗に組み、竜騎士たちは西へ向かった。
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グラ・バルカス帝国 国家監査軍所属の超弩級戦艦『グレードアトラスター』は、護衛も無しに、単艦で東に向かっていた。
260m以上はある巨体が海水を押し退け、水面を割って進む。
46cm砲という巨砲を三連装にした主砲を前部に二基、後部に一基の3箇所に設置した計9門の主砲は、誇らしげに水平線を向く。
幅の広い船体の中央部には、城郭のように聳え立つ艦橋があり、その後ろには斜めに立てられ黒煙を吐き出す煙突、三本のマストが立つ。
艦中央には、ハリネズミのように高角砲や機関砲が所狭しに並べられて設置されており、必ず航空機を撃ち落すという強い意志がひしひしと伝わる。
更にこの艦には、帝国にて新たに開発された近接信管と呼ばれる代物が搭載されている。
この近接信管の開発により、砲弾が直撃しなくても、飛行物体が近くに来るだけで砲弾自身が出すレーダー波の反射により、砲弾が破裂し、その破片で飛行物体を撃墜する。
数年前までは、時限式信管が使用されていたが、この近接信管の導入により、砲弾命中率は20倍と、飛躍的に向上した。
主砲はレーダー照準射撃を導入しており、命中精度も向上、砲の威力はこの世界のどの大砲よりも大きい。
主砲の最大飛距離は、40kmもあり、前世界においても、この世界においても、最大最強の戦艦に違いない。
重要区画の装甲は、46cm砲の直撃にも耐えうる装甲となっており、不沈戦艦との異名もある。
そして『グレードアトラスター』のその姿は……軍事関連に詳しい者ならこう思うだろう。
『大和型戦艦に酷似している』と……
理由は不明だが、一部を除けば確かに『グレードアトラスター』は大和型戦艦に酷似した姿をしている。
『グレードアトラスター』は先のパガンダ王国への攻撃に参加予定だったが、機関不調により出撃が遅れ、彼女の姉妹艦3隻が参加することになった。
その後機関不調を直した彼女は、今回のレイフォル攻撃に単艦で参加することになった。
本来であればありえない出撃の仕方であったが、世界に向けたパフォーマンス的な意図があるので、このような形となったのだ。まぁこの大役を任された『グレードアトラスター』の乗員達からすればたまった物ではないが。
「……」
『グレードアトラスター』の艦長ラクスタルは、前方に広がる海を眺めていた。
「しかし、いくら命令とは言えど、本艦だけで攻撃を行うことになるとは」
ラクスタルの隣に立つ『グレードアトラスター』の副長がどこか不満な様子で声を漏らす。
「そうだな。この『グレードアトラスター』が強いのは分かっているが、この艦とて無敵ではない」
彼はそう言うと、視線を下に向けて甲板を見る。
この世に完全無欠の軍艦は存在しない。確かに『グレードアトラスター』は世界最大の砲を持ち、特に対空迎撃能力はかなり高い。彼女が世界最強の戦艦というのも間違いではない。しかし戦艦だけで出来ることは高が知れている。現に単艦の状況で航空機の波状攻撃を、そして巡洋艦と駆逐艦に肉薄されて、魚雷を撃ち込まれれば、彼女とてただでは済まない。故に軍艦というのは複数居て、互いの欠点を補うのだ。
『レーダー室より艦橋。レイフォル艦隊から多数の飛行物体がこちらへ向かって来ております』
すると、レーダー室からの報告がスピーカーを通して艦橋内へに伝えられる。
「総員、第一種戦闘配置」
「総員、第一種戦闘配置!」
艦長のラクスタルは静かに命令を下すと、副長が復唱し、周囲が慌しくなる。
スピーカーよりラクスタルの指示が艦内や甲板に伝えられ、乗組員達が慌ただしく動く。
防弾性の装甲を持つドームに覆われた機関砲に、機銃要員はクリップで纏められた機関砲弾を弾薬箱から取り出して挿入口に差し込み、機関砲の仰角を上げつつ旋回し、射撃準備を整える。
三連装の高角砲では、近接信管を持つ砲弾が半自動装填装置により薬室へ装填され、砲身の仰角が上げられて目標へ向けて砲塔が旋回する。
ワイバーンという、彼らからすれば御伽噺の中でしかお目に掛かれないと思われた架空の生き物だ。だが、この世界では実在している。
パガンダ王国との戦闘で、そのワイバーンとグラ・バルカス帝国の戦闘機との交戦が初めて行われた。その結果は全騎撃墜。帝国の戦闘機部隊の損失はゼロ。
帝国の『アンタレス型艦上戦闘機』の前に、敵は手も足も出なかったそうだ。
『敵騎の速度は時速350km。あと8分で、目視圏内に入ります』
通信士より報告を聞き、ラクスタルは目を細める。
敵に艦攻や艦爆の類はいない。しかし、こちらには上空支援が一切無い。そして援護してくれる護衛艦も居ない。
『グレードアトラスタ』は設計段階で対空戦闘を想定した戦艦であり、対空迎撃能力は他の戦艦よりも抜きん出ている。多数の高角砲や機関砲、最新のレーダーに高射装置、更に近接信管を装備しているとはいえ、向こうには魔法という不確定要素がある以上、不安はある。
もしかすれば予想外の手痛い被害を受ける可能性がある。そんなことが起こるのも戦場である。
『間もなく敵騎が見えます』
報告が入り、ラクスタルを含め副長や参謀達が首に提げている双眼鏡を手にして覗く。
東の空に、けし粒の様な黒い点が見え始める。レイフォルのワイバーンロードの編隊である。
しかし敵騎の速度が遅いため、中々大きくならない。
「対空戦闘用意」
「対空戦闘用意!」
ラクスタルは命令を下し、副長が復唱する。命令が下った高角砲の砲塔と機関砲郡の銃口が高射装置によって算出された諸元に従って旋回して砲身の仰角が上がり、空を睨む。
「艦長、まずは対空主砲弾を試してみてはいかがでしょうか?」
と、副長がラクスタルに意見具申を行う。
これまでの対空迎撃に用いる主砲弾は時限式信管による物であったが、現在は新型の近接信管を持つ主砲弾が開発され、試験的に『グレードアトラスター』に配備されている。
主砲による対空迎撃は近距離戦闘では使えないので、使うのであれば距離が開いている最初期に使用する必要があった。
敵騎との距離は、およそ30km。相対速度を考えたら、そろそろ使用することが望ましい。
「そうだな……主砲発射準備。第一、第二砲塔に対空砲弾を装填、一斉射撃を行う。甲板上にいる者は直ちに艦内に退避せよ」
ラクスタルが指示を出し、スピーカーから放送と共に警報が鳴らされ、外に居る甲板要員の者が艦内か物陰に避難し、主砲がゆっくりと動き始める。
前部の主砲二基計六門が、重厚感溢れる動きでゆっくりと空を向く。
「レーダーと連動。諸元入力。発射準備完了!」
敵との相対距離を概算で計算し、レーダーと連動して表示された諸元を基に主砲の砲身の仰角を固定した。
「……ッ撃ェェェ―――ッッ!!」
ラクスタルは一間置いて、号令を放つ。
直後、6門の砲が一斉に射撃する。
――――ッ!!
大気を振るわせる轟音と衝撃波と共に、『グレードアトラスタ』の第一、第二砲塔の主砲が火を噴く。
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レイフォル軍竜母機動部隊より飛び立った攻撃隊40騎は敵の巨大艦に攻撃を加えるべく、編隊を組んで飛行していた。
ここまで何事も無く飛んでこれたが、敵騎が襲い掛かってこないとも限らない。強襲に備え、死角を無くす20騎の密集隊形を取り、その後方上空を更に同じ密集隊形の20騎が飛行する。
これだけ周囲を警戒していれば、どの方向からの奇襲に対処できる。
「……?」
すると誰かが異変に気付く。
空に黒い点が六つほど見える。
(何だ?)
数人がそう思った瞬間、爆発、轟音が彼らの間近で起こった。
一瞬のうちに、密集して飛行していた40騎中20騎は、『グレードアトラスター』の主砲より放たれた対空砲弾6発の近接信管から発せられる電波が敵騎を捉えて作動し、砲弾から放たれた洗礼を受ける。
空に信じられないほど大きな火炎で出来た花が咲き、20騎は炎に包まれる。
煙だけが残り、風によって煙が晴れると、前方低空を飛んでいた20騎は消滅していた。
後方にいた20騎はその光景を目の当たりにして、混乱に陥る。
『さ、散開しろぉぉぉ!!!』
これほど大きな爆裂魔法を使用する相手に、密集は危険と判断した小隊長が叫び、残った20騎は広範囲に散開する。
まもなく前方に、巨大な艦が目視範囲に入る。
(デカイ! しかも帆が無いだと!?)
そして彼らが目にしたのは、自分達の常識にある戦列艦を大きく上回る巨大な艦であった。そしてその艦には、遠くからでも巨大であると解るぐらい大きな大砲を複数積んでいる。
島のように巨大な艦に、誰もが恐怖を覚え、身体を震わせる。
『ッ!! 突撃ィィぃぃ―――!!』
しかし彼らは恐怖を振り払い、栄えある列強レイフォル軍の精鋭であるワイバーンロードの部隊は、グラ・バルカス帝国の戦艦『グレードアトラスター』に向かって行った。
相手はたったの一隻。先ほどの砲撃は大砲の大きさから見てそう何度も撃てるものでないし、素早く動かせる代物ではない。散開すれば敵は狙いを定められなくなる。小隊長はそこに勝機があると考えたのだ。
先程のような強烈な砲撃は無かったが、代わりに飛んできたのは、『グレードアトラスター』の艦中央にある高角砲より放たれた、無数の砲弾であった。
「量が……多すぎる!!」
まるで雨、光の雨だ。海上から空に向かう光の雨の中を、彼らは敵艦に向かって突き進む。
しかし砲弾はワイバーンロードの近くに来ると近接信管が作動して爆発し、一騎、また一騎と、撃墜されていく。
更にそこへ機関砲群の射撃が始まり、高射装置によって統率された弾幕はより一層緻密さを増した。その上その弾幕もまた標的の近くで爆発し、放たれた破片が竜騎士の身体を切り裂いて命を刈り取る。
近くに来ただけで爆発し、確実に敵騎を撃ち落す。彼らからすれば、あまりにも理不尽な攻撃だ。
「そんなの、反則過ぎるだろうがぁぁぁっ!!」
そんな理不尽な現実に小隊長は思わず叫ぶが、その直後高角砲より放たれた砲弾が彼の傍まで接近し、内蔵された近接信管が作動して砲弾が破裂し、破片が小隊長諸共ワイバーンロードを粉砕した。
そして10分後、その空を飛んでいる者はいなかった。
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竜の伝説編はやっておくべき?
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やっておいた方が良い
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別にやらなくても良いんじゃね?
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オリジナル要素を加えてやるべき