異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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アズレンにアイオワ級戦艦の二番艦『ニュージャージー』が実装されるみたいですね。
アイオワ級が実装されるのなら、未完成に終わった『ケンタッキー』や『イリノイ』もいつかは実装される……と良いな……


第三十九話 ムー大陸西方海域海戦 弐

 

 

 

 

「つ、通信途絶。攻撃に向かった竜騎士隊は、全滅しました!!」

 

「な、何だとっ!?」

 

 通信士の言葉に、将軍バルは驚愕のあまり目を剥き、吼える。

 

 攻撃に向かったのは、レイフォルでも選りすぐりの精鋭で構成された竜騎士達だ。それが全滅したと言う事実は、彼らに大きな衝撃を与えた。

 

 ただでさえ空を高速で飛行するワイバーンを撃ち落とすのは、列強国といえどそう簡単な事ではない。それがワイバーンの上位種にあたるワイバーンロードなら尚更である。

 

 なのに、敵はワイバーンロードを易々と撃ち落とした。それもたった1隻の船にだ。

 

「文明圏外の蛮族風情に……しかも、たった1隻に! こうなったら戦列艦の餌食にしてくれるわぁ!! 栄えある列強レイフォル艦隊が、竜騎士がやられた程度でおめおめと引き下がるわけにはいかんのだぁっ!!」

 

 将軍バルは、瞳に怒りを宿し、敵船を撃滅することを決意する。

 

 

 

 

『間もなく、全艦が射程距離に入ります』

 

 レーダー室よりスピーカーを通して艦橋に報告が入る。

 

「うむ。既に本艦の射程距離ではあるが、まだ命中率が悪いからな……」

 

 ラクスタルは腕を組み、静かに唸る。

 

 『グレードアトラスター』の主砲の有効射程距離は25km前後であり、それ以降となると命中率は下がっていく。レーダー射撃によって多少命中率が上がっているが、それでも決して高くない。

 

「……敵の砲弾の射程距離は確か、2kmくらいしか飛翔しないと資料にはあったが、間違いないか?」

 

 彼は隣に立つ参謀に尋ねる。

 

「はい、間違いありません。ただし列強を名乗るだけあって、砲弾はきちんと炸裂します。球形砲弾ではなく、火薬と違う原理で炸裂するらしいのですが、詳細はよく分かっていません。威力は黒色火薬レベルの爆発であるようです」

 

「……我が国よりも100年以上文明が遅れているな。向こうは我々を蛮族と思って見下しているようだが、技術の差を理解できていないとは。敵の指揮官が哀れだよ」

 

 勝利を確信したラクスタルは、攻撃指令を出す。

 

「命中率が高く見込める約8kmまで近づいてから艦を横を向け、全砲門にて敵を撃つ。指揮所は射撃管制を行い、着弾地点が重複しないようきちんと振り分けろ。各主砲、副砲はレーダー照準射撃を実施せよ」

 

 通信士を通じてラクスタルの命令は下された。

 

 

 

 将軍バル配下のレイフォル艦隊43隻は、ワイバーンロードからの位置情報から敵艦の現在地を割り出し、風神の涙を使用して帆をいっぱいに張り、最高速力でグラ・バルカス帝国の戦艦『グレードアトラスター』に向かっていった。

 

「間もなく敵が見えてきます」

 

 懐中時計を見ていた航海士が、距離と速力から現在位置を報告する。

 

 その言葉にバルは望遠鏡を覗き込み、片目を見開いて水平線を睨んだ。

 

「っ! 見えたっ……!!」

 

 彼は敵船を見つけて声を上げるが、直後に絶句する。

 

 報告よりも、ずいぶんと……位置情報として見るに、やけに近くに見える。

 

(いや、違う!遠近感が狂うほど敵艦は大きいのか!?)

 

 彼はその事実に驚愕する。偵察したワイバーンロードからの報告どおりとは言えど、彼を改めて驚愕させるのに十分であった。

 

 しかし、300年無敗を誇ったレイフォル艦隊。100門級戦列艦を含む43隻にかかれば、いかに大きかろうと、たった1隻ではどうにもならない。

 むしろ大きければ弾は当たりやすくなるだけだ。

 

 艦隊は砲艦を全面的に押し出し、横一列に並んで進む。

 

「我が国の精鋭兵が扱う、炸裂式魔法が付与された砲弾の味を、しっかりと味わってもらおうか」

 

 砲撃準備を完了した状態で、艦隊は帆いっぱいに風を受け、敵巨大艦への距離を詰めていった。

 

 敵巨大艦までの距離、あと8km。

 

 その時、敵艦が回頭すると横を向き、レイフォル艦隊に横っ腹を見せる。その行動に誰もが怪訝な表情で見つめる。

 

 すると、艦に三基付いている巨大な砲塔と、艦橋前で艦尾に一基ずつ装備された、やや小ぶりの砲塔が旋回し、砲口がレイフォル艦隊を捉えた。

 

「ま、まさか……この距離で届くというのか?」

 

 敵の砲が動き、艦長はゾッとする。

 

 すると敵艦が煙に包まれ、数秒遅れて轟音が彼らの耳に届く。

 

「敵艦発砲!!」

 

「まだ届かんよ。所詮蛮族の子供だましだ」

 

 バルは腕を組み、鼻を鳴らす。

 

 自分達の戦列艦の大砲の射程外なのだから、文明圏外の蛮族の大砲など届くはずが無い。そう思っていた。

 

 しかしバルの予想は外れ、レイフォル艦5隻の前後に水柱が上がる。うち3隻の付近に上がった水柱は、とてつもない高さに達し、いくつかの艦の甲板に雨の様に海水が降り注ぐ。

 そして近くに居た戦列艦は、その衝撃で大きく船体を揺らされる。

 

「な、なんという威力!?」

 

 海水ではない冷たいものが背筋を流れ、艦隊の乗組員達の緊張が一気に高まる。

 

 直後に、敵艦の副砲が再度噴煙を上げ、2隻の戦列艦の横に水柱が上がる。

 

「もうこんなに近くまで、砲撃が補正されているというのかぁっ!」

 

 矢継早に砲弾を浴び、レイフォル艦隊が焦る中、ついに強烈な破砕音が響いた。

 

「戦列艦『ガオフォース』に被弾!!」

 

 放たれた三発の副砲のうち、一発が80門級戦列艦ガオフォースに直撃する。

 

「か……」

 

 戦列艦に着弾した15cm副砲の弾は、戦列艦『ガオフォース』の対魔弾鉄鋼式装甲を易々と突き破り、運の悪い事に弾薬室で爆発した。

 

 

 ――――ッ!!!

 

 

 衝撃を感じるほどの轟音と共に黒煙が上がり、『ガオフォース』は船体を真っ二つにして、水面に飲まれていく。

 

「戦列艦『ガオフォース』……轟沈!!!」

 

「なにぃ!!……お、おのれぇ!! 艦隊、全速前進!」

 

 バルは怒りに任せて指示を出すが、直後に敵艦の主砲が放たれる。

 

 今度は3隻が狙われたらしく、一本の水柱が上がり、2隻から煙が上がっていた。

 

 大きな水が引いた後、煙が混じった2隻の姿は海上から消えていた。

 

「戦列艦『トラント』轟沈!!! せ、戦列艦『レイフォル』轟沈!!」

 

「な、何!? れ、『レイフォル』が!?」

 

 信じられない報告に、乗組員達に衝撃が走る

 

 戦列艦『レイフォル』 国名を頂くこの艦は、レイフォル無敵の象徴であった。

 

 100門級戦列艦であり、最新式の対魔弾鉄鋼式装甲を持ち、国内では世界最強と謳われていた。

 

 それが、蛮族の超巨大戦艦の超巨大砲により、我が方の射程圏のはるか外側からの攻撃により、あっさりと、たったの1撃の被弾で爆散、轟沈した。

 

 しかし、現実は悲嘆にくれる暇を与えてはくれなかった。

 

 更に『グレードアトラスター』の砲撃が続く。

 

 歴戦の猛者たち、最高の艦と最高の乗組員たちが、ただの一撃も加える事無く、一方的に砲撃を受け、消滅していく。

 

 レイフォル艦隊は風神の涙を使用しているにも関わらず、敵の帆の無い超巨大戦艦の方が、圧倒的に速い。

 

 このままでは、射程距離に入れない。

 

 敵からの一方的な砲撃はなおも続き、一隻、また一隻と猛烈な爆風と共に撃沈されていく。

 

「ちくしょう! ちくしょう!」

 

 大将旗を掲げる、100門級戦列艦『ホーリー』に乗艦する将軍バルは、両手を握り締めてワナワナと身体を震わせ、何度も悪態を付き、地団太を踏む。

 

 気付けば自分が乗る『ホーリー』以外の全ての艦は撃沈された。

 

 敵艦は、現在自分の艦の周囲を旋回しつつ、全砲門をこちらに向けている。

 

 圧倒的な力を持った超巨大艦が、周りを旋回している。

 

 誰が見ても勝ち目は無い……。余程の奇跡が起きなければ、この状況をひっくり返す事なんて不可能だ。

 

「……降伏旗を掲げよ」

 

 命令が下り、乗組員達の顔が屈辱にまみれる。

 

 戦列艦『ホーリー』のマストに、この世界で降伏を宣言するための、降伏旗が掲げられる。

 

「敵艦、近づきます」

 

 降伏旗を確認し、その旗の意図を理解したのか、巨大戦艦が近づいてきた。

 

「おのれぇ……おのれぇ……蛮族どもが。この俺の顔に泥を塗りつけやがって。ただでは済まさん。本艦に近づいてきたら、全砲門一斉射。敵巨大戦艦を撃沈せよ!!」

 

「し、しかし、降伏後に攻撃など。栄えあるレイフォルの名を汚します! そんな卑怯なことは―――」

 

 将軍の卑怯な命令に、参謀が反対を進言した。

 

 

 ―――ッ!!

 

 

 直後に乾いた銃声が甲板に響く。

 

「至近弾を受けて、飛び散った破片によって参謀は戦死した……いいな?」

 

 将軍バルは、僅かに硝煙が残る拳銃を手に、据わった目で艦長に迫る。その様相に艦長は頷くしかなかった。

 

「なぁに、心配するな。我が方の炸裂主砲を、至近距離で食らえば、浮かんでいられる船など、この世にはない。どうせ敵は一隻しかいない。誰もしゃべらなければ、騙し討ちなど分からんさ」

 

 バルは周囲に居る部下達に言い聞かせながら、近づく敵艦を睨む。

 

「……砲撃用意」

 

 敵はまんまと近づいてくる。距離は3kmを切った。あと1km近づけば、ほぼ必中距離だ。

 

「バカめ……俺の艦隊を散々壊してくれた代償は高くつく――――」

 

 

 すると戦列艦『ホーリー』に接近していた敵艦の針路が突如右に向く。

 

「? なぜ急に針路を変えた?」

 

 砲撃命令を下す直前であっただけに、バルは苛立ちが募る。

 

 敵艦が右へ舵を切ったことで、戦列艦『ホーリー』との距離はどんどん離される。

 

 すると敵艦の主砲と副砲が戦列艦『ホーリー』に向けられる。

 

「て、敵艦の砲が全てこちらに向いています!!」

 

「な、なんだと!?」

 

 敵艦が砲撃態勢をとり、バルは目を見開く。

 

「ば、馬鹿な!? なぜばれたのだ!? 降伏旗を掲げているというのに!?」

 

 バルは狼狽しながらも、すぐさま砲撃命令を下そうとした。

 

 しかしその前に『グレードアトラスター』の46cm砲9門と15cm砲6門が轟音と衝撃波と共に、火が噴く。

 

 レイフォル艦隊最後の戦列艦『ホーリー』は、『グレードアトラスター』の一斉射を受け、乗員諸共この世から消滅した。

 

 

「降参の意思を見せておきながら騙し討ちをしようとしていたとはな。列強といっても、所詮この程度の品位しか持ち合わせておらんか」

 

 ラクスタルは冷たい視線で戦列艦『ホーリー』が浮かんでいた海面を見つめる。

 

 戦列艦『ホーリー』が騙し討ちをしようとしていたのを見つけたのは、偶然であった。

 

 見張り員が戦列艦『ホーリー』を監視していたところ、大砲の殆どがこちらを向いているのを見つけて、すぐさま報告したことで発覚した。

 

 これが数門が向いていただけならまだ疑うだけで済んだが、ほぼ全てが向いていたのなら確信犯である。

 

「これは徹底的にやらねばならんな。残弾は?」

 

「各砲門70発程度です」

 

「そうか。確か敵の首都は、海に面していたな?」

 

「はい。ここから東へ350kmほど先ですが……」

 

「ならば、首都に対して砲撃を行う。『グレードアトラスター』の全力を以ってしてだ」

 

「ハッ!」

 

 ラクスタルの指示を受け、副長は敬礼をし、すぐに艦内電話を使い各所へ指示を伝える。

 

 

 

 翌日の夕方、レイフォル国の首都レイフォリアは、戦艦『グレードアトラスター』の全力砲撃により、灰燼に帰した。

 

 皇帝は居城に受けた砲撃に巻き込まれて死亡し、軍部は無条件に降伏する。

 

 グラ・バルカス帝国はレイフォルを自国領に編入、数日後には入植が始まることとなった。

 

 戦艦『グレードアトラスター』は、たった1艦でレイフォル艦隊を撃滅し、その足で、レイフォル首都レイフォリアを焼き尽くし、降伏に追い込んだ世界最大最強の船として、恐れられる事となり、伝説となる。

 

 この世界の歴史にとって、それは激震となった。

 

 

 

 だが、世界は知る良しもなかった。

 

 

 

 グラ・バルカス帝国の持つ力が、この程度で済むものではないというのを……

 

 

 

 

 




感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。

竜の伝説編はやっておくべき?

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  • 別にやらなくても良いんじゃね?
  • オリジナル要素を加えてやるべき
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