異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第四話 会談に向けての接触

 

 

 時は下ること二日後

 

 

 

 中央歴1637年 11月27日 クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク

 

 

 

 三日前にクワ・トイネ公国の領空侵犯した未確認騎によって、クワ・トイネ公国はいつも以上に緊張に包まれており、そんな中でクワ・トイネ公国海軍の艦隊はマイハーク港で出港準備をしていた。

 

 飛来した未確認騎は偵察が目的だったのか、しばらくマイハーク上空で旋回していたが、クワ・トイネ公国のワイバーン部隊が攻撃の為に接近すると、未確認騎は速度と高度を上げてワイバーンの追撃を振り切り、空の彼方へと飛んでいった。

 

 これ以降、クワ・トイネ公国軍は警戒し、軍船は出港準備をしている以外の動かせる物は全て哨戒に就かせて、ワイバーン部隊も警戒網をいつもの三倍以上に拡大して警戒に当たっている。

 

 

 マイハークにある防衛司令室には、各方向からの哨戒状況が報告されるも、今の所異常は無く、何も発見されていない。

 

「……」

 

 公国軍のノウカ司令はこの未確認騎に、不安を抱いていた。

 

 ロウリア王国はもちろん、第三文明圏の列強国『パーパルディア皇国』ですら報告にあった物を持っていない。そもそも何処の所属なのかも分からないとあって、軍の緊張感を倍増させていた。

 ただ唯一分かる事とすれば、未確認騎の胴と翼に黒い円に白い縁を持つマークが描かれていただけだ。

 

 当然こんな紋章をした国は、少なくともこのロデニウス大陸には存在しない。そもそも紋章なのかも怪しい。

 

 緊迫した状況が続くばかりだった。そのせいでたった三日しか経っていないが、多くの者はストレスで寝不足により目の下に隈を作り、一部の者はやせ細っているようにも見える。

 

「ノウカ司令は何だと思いますか? 例の所属不明騎の正体を」

 

 緊張した面持ちの若手幹部がノウカ司令に問い掛ける。

 

「うむ……俺は直接見ていないから何とも言えないな。ただ、竜騎士一人見ただけなら与太話で済むが、第6飛竜隊全員が目撃していて、更にマイハークの住人や騎士団からの目撃情報もある。少なくとも未確認騎が存在していることは間違いない」

 

 ノウカは自分の考えを整理するように、持論を続ける。

 

「未確認騎が飛来した東には国が存在しないし、北東方向には群島と集落があったはずだが、報告にあった騎はとても持てまい。可能性があるのはロウリア王国と、北の第三文明圏列強国パーパルディア皇国だが、これまでに記録した二国の兵装に、当てはまりそうな特徴が見られない」

 

 彼は一旦中断すると、テーブルに置いているコップを手にして水を一口飲んで喉を潤し、持論を再開する。

 

「未確認騎が二国の新鋭騎という可能性も捨てきれないが、根本的に形状が違うのだ。俺の勘では、どちらの所属でもないと考えている」

 

「そうですか……」

 

 経験の浅い若手幹部が、不安を隠せず肩を落とす。

 

 

 その不安を煽る様に、通信員が鋭く声を上げた。

 

「司令!! 司令!!」

 

 司令と若手幹部の表情が緊張に染まり、通信員へ同時に目を向ける。

 

「軍船ピーマから報告! 『未確認の大型船を発見。現在地、マイハーク港から北へ65km。これより臨検を行う為、同船に向かう』との事です!」

 

「大型船だと……?」

 

 通信員からの報告を聞き、更に司令部の緊張が高まる。

 

 ただでさえ未確認騎の出現でマイハークは混乱して、軍は緊迫してピリピリとした状態だというのに、そこへ未確認の大型船の発見の報だ。ノウカの胃に締め付けられるような痛みが走る。

 

 しかしこの大型船が件の関係者である可能性は高いので、過激な行動は厳禁だ。ロウリア王国と緊張状態にある中で、新しく敵を作るわけにはいかない。

 

 ノウカは軍船ピーマの船長ミドリへ適切な行動を行うように指示を出した。

 

 

 後にノウカは自伝書にこう記していた。

 

 

『あの時の判断がロデニウス大陸の全てを決めた。判断次第で私は「歴史上最良の判断を下した司令」か、「歴史上最低の判断を下した司令」と言われていたかもしれない。私の場合は前者であった』と

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一方その頃、大型船の臨検に挑んでいる軍船ピーマでは……

 

 

 

「……一ついいか?」

 

「何でしょう?」

 

「私は、夢を見ているのか?」

 

「いえ。これは紛れも無く、現実です」

 

 軍船ピーマの船長ミドリは、顔を真っ青にしながら副船長に問い掛けるも、彼もまた顔色を悪くしながら答える。

 

 それはピーマの船員達も同じであり、驚愕の表情に染まった顔で見上げている。

 

 なぜなら、軍船ピーマの前方には、彼らの常識を遥かに超える巨大な船舶が停泊していた。

 

 全体的に暗い鼠色をした船舶で、端から端を見ても見渡せないほどの巨大さで、彼らはそれが船ではなく、島ではないかと思い始めていた。

 それが『航空母艦』と呼ばれる軍艦であるとは彼らが知る良しも無いが。

 

「しかしこれは……まさか鉄で来ているのか?」

 

「まさか。鉄を浮かせるなんて無理だと言うのに、それでこの大きさの船を浮かせるなんて」

 

 ミドリの言葉に副船長は反論するが、目の前に現実がある以上、これ以上否定のしようがない。

 

 

 島と錯覚しそうなぐらいに巨大な船体を持つその空母の名は、大和型航空母艦の二番艦『武蔵』である。

 

 300mを超える巨体に多くの艦載機を搭載出来る格納庫を持ち、まるで現代の空母を彷彿とさせるアングルドデッキを持つ飛行甲板に四基の油圧式カタパルトを備え、その甲板は500kg級の爆弾の直撃にも耐える装甲が施され、その表面を速乾性のある黒色の特殊なセメントでコーティングが施されている。

 

 

 ちなみにその空母の後方に艦隊が待機しているが、相手に警戒を抱かせないように空母単艦で来ている。まぁその大きさで逆に警戒心を煽っていなくもないが……

 

 

 しばらくしてミドリと護衛の船員は臨検の為に、軍船ピーマをゆっくりと武蔵へと接近させて、横付けする。

 

「見れば見るほど、なんて大きさだ」

 

 ミドリは顔を上げられるだけ上げて武蔵を見上げる。 

 

 すると武蔵の脱出挺を下ろす為のクレーンが作動して、ワイヤーに吊るされた脱出挺が軍船ピーマの傍に下ろされる。本来ならタラップを使って艦内に案内するものだが、機密上艦内に入れる訳にいかず、直接甲板に上がってもらう為にこの方法を取っている。

 

「ここから乗り降りするのか」

 

 ミドリは周囲を見渡すと、臨検の為に何名か船員を連れて行く事を言って、数名の船員と共に脱出挺に乗り込む。

 

 しばらくして一番上まで脱出挺を引き上げて、彼らは甲板に降り立つ。

 

『……』

 

 そして彼らの顔は二度目の驚愕に染まって、呆然とする。

 

 とても船の上に居るとは思えないぐらいに足元は安定して、一度に複数の騎馬戦の試合が出来そうなぐらい広大な甲板が広がっている。

 

 甲板上には見た事の無い物(航空機)が多く置かれて、ミドリは違う世界に迷い込んだのではないかと言う錯覚に見舞われている。当然後ろに立つ護衛の船員もまた同じ感覚に見舞われている。

 

 と同時に、その物の整備を行っている謎の生き物に困惑するばかりだった。

 

 その生物を簡単に説明するなら、二頭身な見た目の人間であり、ドワーフより背が低い。可愛らしい見た目をした、不思議な生物だ。

 

 

 すると艦橋根元にある扉が開かれ、そこから五人の男女が出て来て、ミドリ達の元へとやって来る。

 

「ようこそ。自分はこの空母の艦長『武蔵』と申します」

 

 五人の内、一人の男性こと『武蔵』が姿勢を正して敬礼をする。

 

(若いな。一瞬女かと思ったが、男だったのか。それに二人は血縁がありそうだな)

 

 ミドリは『武蔵』と隣に居る男性を見比べて、その中性的な顔つきに髪の長さから一瞬女かと思ったが、格好や身体つきから男と分かり、そっくりな顔つきから二人は兄弟であると判断する。

 

(女の方は獣人のようだが、三人の内二人は剣士か)

 

 ミドリは三人の女性を見て、女性の頭に生えている獣の耳や角に気付く。その内二人の腰に剣が提げられているのを見て、三人の護衛であると判断する。

 ちなみにミドリを含む船員達は二人の剣士の内、片方の女性こと『出雲』のある意味異様な格好に戸惑いを覚えていた。

 

「私はクワ・トイネ公国第2艦隊所属、軍船ピーマの船長、ミドリです。ここは我がクワ・トイネ公国の近海であり、このまま進むと我が国の領海に入ります。貴船の国籍と、航行目的を教えていただきたい」

 

 ミドリは気持ちを切り替えて自己紹介と相手の国籍と航行目的を聞くと、五人は目を見開く。

 

「我々の言葉が分かるのですか?」

 

「? そうだが?」

 

 中央に居る男性の意図の読めない質問にミドリは首を傾げる。

 

「失礼しました。言葉が通じていないものばかりかと思っていまして」

 

「そうですか……」

 

 ますます意図の読めない状況になり、ミドリは首を傾げるばかりであった。

 

「申し遅れました。自分は代表としてこの艦に乗艦しています『大和』と申します」

 

「秘書艦の『天城』と申します」

 

 と、男性こと『大和』と女性こと『天城』がそれぞれ敬礼をする。『武蔵』の隣に立つ女性こと『土佐』と『出雲』も頭を下げる。

 

「代表、ですか?」

 

「えぇ。自分達は貴国、クワ・トイネ公国政府と会談を申し入れたいのです。ひいては貴国と交流を結びたいと考えております」

 

「つまり、貴君は一国の使者、というわけですか」

 

「一国ほどではありませんが、そういう事です」

 

 『大和』はミドリの発言に一部訂正しつつ、肯定する。

 

 

 その後『大和』は航行目的をミドリに告げ、自分達の置かれた状況を説明する。

 

 あまりにも荒唐無稽な内容にミドリは信じられなかったが、現物がある以上報告しないわけには行かず、第二艦隊の司令を通じて政府へと伝えた。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『武蔵より入電。「我、クワ・トイネ公国と呼ばれる国の海軍と接触に成功。政府の反応待ちの為、現在待機中」です』

 

「そうか。何とか穏便に接触出来たか」

 

 露天防空指揮所で状況の推移を見守っていた『紀伊』は通信員より報告を聞いて安堵の息を吐く。

 

(まぁ、ここからなんだがな)

 

 『紀伊』は内心呟くと、艦内電話の受話器を戻し、腕を組み目を細める。

 

 何とか国の関係者と接触出来ても、その後の会談がうまくいかなければ意味が無い。下手すると話し合いが頓挫して、最悪戦争に発展しかねない。

 

 そうならない事を祈るばかりだが……

 

 彼は傍で不安な表情を浮かべる小人を安心させるように優しく頭を撫でる。

 

『「武蔵」……大丈夫かな……』

 

 と、『紀伊』より後方にいる空母KAN-SEN『瑞鶴』の不安な声が無線に流れる。

 

「心配するな。あいつの防御力なら戦艦にでも遭わない限り、問題は無い」

 

『それは……そうなんだけど』

 

 『紀伊』の言葉を聞いても、『瑞鶴』の不安は消えない。

 

(まぁ、大切な者が一人危険な所へと赴けば、不安になるもの無理はないか)

 

 彼は彼女の気持ちを理解して、内心呟く。

 

「それに、万が一の事を考えて、『大和』はお前達に艦載機の発艦準備をするように指示を出したんだろう」

 

 『紀伊』は後方に待機している二隻の空母の飛行甲板に、発艦準備を整えている艦載機の姿を捉える。

 

『……』

 

『大丈夫よ 「瑞鶴」』

 

 と、無線に『瑞鶴』以外の女性の声が割り込む。

 

『いざとなったら、指揮艦様が先走ってその力を振るって突っ込んでくださるわ』

 

「おい 『翔鶴』」

 

『冗談ですわ』

 

 『紀伊』が無線に割り込むと、『翔鶴』と呼ばれた女性はタイミングよく謝罪する。

 

『しかし、指揮艦様もいざとなれば単艦でも突っ込むお積もりですよね?』

 

「……」

 

 『翔鶴』からの指摘に『紀伊』は何も言わなかった。

 

(まぁ、確かにそのつもりだったが)

 

 『紀伊』はため息を付いて、自分の艦体を見る。

 

 

 周りに居るKAN-SENの艦体と比べると、非常に巨大な艦体をしている『紀伊』 近くに居る戦艦ですら軽巡はおろか下手すると駆逐艦にしか見えない。その姿はかの有名な大和型戦艦の姿に酷似している。だが、その大きさは大和型を優に超えている。

 

 何せ全長だけでも328mはあり、全幅は45.2m。基準排水量ですら9万tを超える。この時点で現代の原子力航空母艦を超えているが、最大の特徴はかの大和型戦艦の持つ世界最大の『46cm』砲を超える『50.8cm』砲を有している事であろう。

 その51cm―――以後四捨五入した数値で表記します―――の45口径を三基九門有する。搭載している副砲も大和型より大きく重巡並の20.3cmの55口径を二基六門有する。そして主砲の次に特徴的なのが対空迎撃兵装で、高角砲と機銃をハリネズミの如く配置し、噴進砲を四基持つ、世界最大の艦載砲を持ちながら、航空機に対する対空戦闘も考慮した設計となっている。

 

 世界最大の艦載砲を有している所に目が行きがちだが、防御も力を入れられており、自身の主砲に耐えうる装甲はもちろん、特に魚雷防御に力が入れられており、大和型戦艦以上の迷宮とも言われた複雑に分けられている防水区画に加え、スポンジ層とゴム層を設けることで魚雷直撃時の衝撃を分散させる。そのお陰で普通の戦艦なら致命傷になりかねない魚雷を何十本と受けても戦闘続行可能と言う、驚異的な防御力を持つ。

 まさに不沈戦艦と呼ぶに相応しい防御力である。

 

 だからこそ、紀伊型戦艦が単艦でも大抵はどうにかなるのだ。

 

 そんな紀伊型戦艦が二隻も存在しているのだから、恐ろしい限りである。その二番艦『尾張』は紀伊の後方に控えている。

 

 

「とにかく、警戒は緩めるな! いざという時は俺達が動く事になるんだからな!」

 

『了解!』

 

 『紀伊』は気持ちを切り替えて他のKAN-SEN達に指示を出す。

 

(頼んだぞ 『大和』)

 

 気を引き締めつつ、彼は戦友に望みを託す。

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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