異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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評価していただき、ありがとうございます。


第三章 ムー接触編
第四十話 ムーの接触


 

 

 

 中央歴1639年 7月26日 第二文明圏 ムー国

 

 

 

 第二文明圏の列強国として君臨しているムー国。その歴史は長く、幾多の困難を乗り越えて、ムーは広大な国土を持つ列強国として君臨している。

 そしてこの世界では極めて稀な科学文明を発達させた国でもある。

 

 

「うーん。これは……」

 

 自身の仕事場としているオフィスにて、技術仕官の『マイラス』は腕を組み、首を傾げて唸っていた。

 

 彼の視線の先には、机に置かれている数枚の写真がある。

 

 それらの写真に写されているのは、一隻の軍艦であった。

 

 その軍艦はレイフォルをたった一隻で滅ぼしたとされるグラ・バルカス帝国の戦艦……『グレードアトラスター』である。

 

 この写真は偶々レイフォルに潜入していたムーの諜報員が撮影したもので、諜報員はグラ・バルカス帝国がレイフォルを入植する前に離脱して、この写真を上層部に届けた。

 

(この写真から見ても、この戦艦がどれだけ技術が進んでいるのかが分かる。もう少し近ければ、推測できる部分も多かったんだがな)

 

 写真からでも技術仕官であるマイラスには、この戦艦がどれだけ技術が進んでいるのかが理解できた。

 

(諜報員は岬から撮影したと言っていたけど、そう考えるとこの戦艦は推定でも200m以上は確実にある。となると載せている主砲は我が国の『ラ・カサミ級戦艦』を大きく上回っている可能性すらある……!)

 

 推測を立てていく内に、戦艦の規模がとんでもないものであると、自身の推測でも驚愕する。

 

(三回発砲炎があるとなると、少なくとも主砲は三基ある。なんて化け物なんだ!)

 

 マイラスは頭を抱えて、更に唸る。

 

(こんな戦艦が作れるということは、グラ・バルカス帝国の技術水準は我が国を大きく上回っている可能性がある。なぜそんな国が突然現れたんだ)

 

 戦艦=国力を表している国柄であり、その戦艦の存在がグラ・バルカス帝国の国力を何より示している。

 

 だがマイラスからすれば、なぜそんな技術水準を持った国が突然現れたのか。その事実に恐怖と共に疑問を抱いた。

 

 余程の鎖国体制を敷いていたなら考えられるが、それでも端的な情報は得られる。なので、今まで全く知らなかったのはありえない。

 

(まるで突然現れたような、そんな気がする……)

 

 マイラスは内心呟き、ふとこのムーに伝わる伝承を思い出す。

 

「……一体この先どうなるんだ」

 

 マイラスは先の見えない状況に呟くと、マグカップを手にして淹れた後放置してすっかり冷めてしまったコーヒーを飲む。

 

 

 

「マイラス中尉!!」

 

 と、オフィスの扉が開かれてマイラスの部下が入ってくる。走って来たのか、部下は少し息を切らしている。

 

「なんだ?」

 

「外務省より連絡です! 至急アイナンク空港の空軍基地に来て欲しいとのことです!」

 

「空軍基地に? 一体なんでまた……」

 

 マイラスは思わず首を傾げる。

 

 これが工場や空港の航空機の格納庫なら分かるが、行くのが空軍基地である。

 

 疑問は尽きないが、命令である以上従うしかない。

 

 マイラスは資料を仕舞い、オフィスを出る。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 マイラスの外務省からの呼び出し先は、空軍基地が併設されている民間空港、アイナンク空港だった。

 

 列強ムーには、民間空港が存在する。まだ富裕層でしか飛行機の利用は無く、晴天の昼間しか飛ぶ事は出来ないが、民間航空会社の経営もある程度は成り立っている。

 

 民間の航空輸送はマイラスの知りうる限り、第一文明圏の列強国『神聖ミリシアル帝国』と第二文明圏の列強国『ムー王国』でのみ成り立たせている。これは事実上、列強上位国を示す証である。

 

 機械超文明であるムーが発明した自動車と呼ばれる内燃機関搭載車輌に乗り、車内で揺れること数時間、技術士官マイラスは空軍基地アイナンク空港に到着した。

 

 

(しかし、わざわざ急遽空軍基地に呼び出すとは、一体何だろうか?)

 

 車を降りた後、職員に控え室へと通され、マイラスは窓から外の景色を眺めつつ外務省から呼び出された意味を考える。

 

 考えられるとすれば、自分の専門としている技術関連である可能性がある。しかしそれならわざわざ彼に限定して呼び出す必要は無い。他の技術仕官で事足りることだ。

 

「うーん」と唸っていると、控え室の扉が開かれる。

 

 軍服を着た男性―――マイラスの上司である情報通信部部長―――と、外交用礼服を着た男性の二人が部屋に入ってくる。

 

「待たせたな、マイラス君。彼が、技術士官のマイラス君です」

 

 部長が外交用の礼服を着た男性に紹介する。

 

「我が軍一の技術士官で、この若さにして第1種総合技将の資格を持っています」

 

 マイラスの技能に男性二人は「おぉ……」驚いたように声を漏らす。

 

「初めまして、技術士官のマイラスです」

 

 マイラスは慣れない笑顔を作り、二人の外交官の握手に応えた。

 

「かけたまえ」

 

 一同はソファーに腰掛け、上役らしき外交官が話を切り出す。

 

「さて、何と説明しようか……」

 

 顎に手を当てて、どう言うべきかと外交官が悩み、少しして口を開く。

 

「今回君を呼び出した用だが、端的に言うと、正体不明の国の技術水準を探って欲しいのだよ」

 

「正体不明の国……。巷で噂になっているグラ・バルカス帝国の事ですか?」

 

 正体不明と聞き、マイラスはグラ・バルカス帝国ではないかと考えて、そう答えた。

 

 だが、外交官は否定を意味して横に首を振るう。

 

「いや、違う。しかしこちらも新興国家だ。本日ムーの東側海上に巨大な軍艦が一隻現れた。海軍が臨検したところ、『ロデニウス連邦共和国』という国だと名乗っていた。心当たりはあるかね?」

 

「いえ。聞いたことがありません」

 

 聞き覚えの無い国の名前にマイラスは首を傾げる。

 

「そうか。その軍艦にはロデニウスから派遣された大使が乗っていて、我が国と新たに国交を開きたいと言ってきた。我が国と国交を開きたいと言ってくる国は珍しい事では無いが、問題は彼らの載ってきた船だ。……帆船では無いのだ」

 

「軍艦と聞いて帆船ではないと薄々気付いていましたが、まさか……」

 

「魔力感知器にも反応が無いので、魔導船でもない。恐らくは機械による動力船であると思われる」

 

「やはり、そうでしたか」

 

 マイラスはそう言うも、内心は驚愕している。

 

 文明圏外の国に、ムーと同じ機械文明があったのだから。

 

「しかも、機械で動く船は一般的で、軍用船のみではないようだ」

 

「っ!」

 

 機械動力船が一般的と聞き、マイラスは目を見開く。

 

 軍用船だけが動力船であれば、民間船などはまだ帆船を使っている可能性があった。しかし一般的にも動力船が普及しているということは、それだけ技術が成熟しているということである。

 

「それだけではない。更に大きな問題がある。我が国の技術的優位を見せるために会談場所をここ、アイナンク空港に指定した。そしたら向こうは飛行許可を願い出て来たのだよ」

 

「当初は『外交官がワイバーンで来るのか、なんて現場主義な国なんだ』と笑っていたんだがな。いざ飛行許可を出してみたら、軍艦から飛行機械を飛ばしてやって来たのだよ」

 

「なっ!?」

 

 マイラスは驚愕のあまり絶句する。

 

 軍艦から飛行機械を飛ばした。それはつまり軍艦が『空母』であるという可能性が非常に高い。ムーでもようやく実戦配備が進んでいる空母を、そのロデニウス連邦共和国は既に空母を実用化している可能性が出てきたのだ。

 

 技術仕官として、まさに驚愕な事実である。

 

「先導した空軍機によれば、相手は大型の双発機であるようだ。しかしそれでも速度は空軍機と足並みを揃えられるほどの速さであったそうだ」

 

「双発機でマリンと足並みを揃えられるほど、ですか」

 

 マイラスは呟くと、息を呑む。

 

 ムー空軍や海軍で採用されている主力戦闘機の速度は380km前後は出る。その戦闘機と足並みを揃えられるとなると、その双発機は相当速いとなる。

 

 だが、何より彼が一番気にしているのは、軍艦から双発機が飛び立ったという事実である。

 

 双発機となれば必然的に機体は大型化する。そんな大きな機体をどうやって空母から飛び立たせた? そう考えれば、必然的に巨大な空母であると考えるのが自然の流れになる。だがそれだけで双発機を限られたスペースから飛ばすのは難しい。

 

 状況が状況でなければ考察の海に浸っていたところだが、今はそれどころじゃないので、彼は頭を切り替える。

 

「それで、自分の出番となった訳ですね」

 

「そういうことだ。彼らの言い分によれば、ロデニウス連邦共和国は第三文明圏フィルアデス大陸の更に南に位置するらしい。だとすると文明圏外国家だが、あの飛行機械の技術はパーパルディア皇国を超えているように思える。我が国との会談は1週間後に行われるので、その間に彼らを国内の観光に案内し、我が国の技術の高さを見せつつ、相手の技術水準を探ってくれ」

 

「分かりました。やってみます」

 

 技術士官のマイラスは、このところ情報分析の仕事ばかりだったので、久々に技術者魂の震えを感じた。未知の飛行機械とはいかなるものだろうか、早く見てみたくてうずうずとしていた。

 

 四人は一斉に起立し、解散した。 

 

 

 




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