異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第四十一話 ロデニウス驚異の技術力

 

 

 

 

 応接室を出たマイラスは空港東側にある駐機場へ着くと、既に大きな人だかりが出来ている。整備班の技師、飛行機械開発主任、管制官など、基地の人員の殆ど全員が集まっている印象だった。

 

 人込みを掻き分けて、マイラスはロデニウス連邦共和国の大使が乗ってきた飛行機械を眺め、唖然としていた。

 

 灰色のカラーリングに、両翼には一基ずつのエンジンとプロペラが付いており、二枚の尾翼を持つ大型の双発機である。

 

(大きいな。ラ・カオスより小さいといっても、とても洗練された機体設計だ。それに、これほどの機体をどうやって空母から飛ばしたんだ?)

 

 マイラスはその飛行機械……『PBJ-1H』を見てすぐに使われている技術の高さを理解する。そして同時にこれだけの機体を飛ばした空母に興味を抱いた。

 

(だが、この機体の上部にあるこれは何なんだ? こんな物を付けていたら、空気抵抗を大きくするようなもんだが……)

 

 しかし彼にとって疑問なのは、その機体の上部に大きな膨らみがあったのだ。技術仕官である彼からすれば、大きな膨らみは空気抵抗を大きくするようなものである。洗練された機体形状なだけに、疑問を抱いた。

 

 だが、それ以外に関しては、高い技術力で作られている飛行機械であると理解できた。

 

 

 このPBJ-1Hは『大和』の『カンレキ』にある『大戦』で投入されたコードネーム『アップルガス』と呼ばれる電子管制機のアイディアを基に、というよりほぼそのまま使った電子索敵機である。

 

 爆弾倉や防護機銃をオミットし、レーダー等の電子機器をこれでもかと詰め込んだ機体であり、艦載機として運用する為の改装が施されている。

 

 しかし艦載機としては疾風よりも大きな機体となってしまったので、この機体もまた大和型航空母艦のみでしか運用出来ないという難点がある。一応カタパルトさえあれば翔鶴型でも発艦は可能だが、着艦が難しいとのこと。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

「……はぁ」

 

 滑走路でPBJ-1Hを見た後、空港詰所の応接室へ向かうマイラスの足取りは重い。

 

 ロデニウス連邦共和国の飛行機械は、おそらくムーでは作れない航空機である。

 

 少なくとも、エンジンについては彼らはムーよりも優位である可能性が高い。

 

 しかし、ムーには高さ100メートルを超える超高層ビルや、時速が380kmも出る戦闘機、それを操る技量の高いパイロット、そしてムーの最新鋭戦艦『ラ・カサミ』がある。まだまだ勝機は残っている。

 

(どうなることやら……)

 

 マイラスは内心不安を抱えたまま、ロデニウス連邦共和国の使者が待つ応接室の扉をノックした。

 

 

 コンコン

 

 

「どうぞ」

 

 中から声がして扉をゆっくりと開けると、中には二名の男性と、二名の女性がソファーに座っていた。

 

 一人は黒い軍服を身に纏う黒い長髪の中性的な男性で、もう一人は灰色の軍服を身に纏い、頭に角が生えて、尻辺りから床に着きそうなぐらいに長い鱗に覆われた尻尾が生えている。

 

(黒い軍服を着ている方の男性……一瞬女性かと思ったけど、男性なんだな)

 

 マイラスは黒い軍服の男性を見て、その女性のような顔つきに長い髪から一瞬女性かと思ったが、制服の襟の隙間から覗く喉仏を見て男性だと認識する。

 

(もう一人は……竜人か? でもこんな姿だっけ?)

 

 マイラスは角と尻尾が生えている男性を見て、噂に聞く竜人を思い出すが、何か違うような気がして内心疑問を呟きつつ、女性二人を見る。

 

 二人とも長さが異なる白く見える銀髪をしており、それぞれ意匠の異なる軍服を身に纏っている。

 

 (綺麗な人だなぁ)と彼は内心呟くも、すぐに気持ちを切り替える。

 

「初めまして。会議までの一週間、ムーをご紹介させていただきます、技術仕官のマイラスと申します」

 

 マイラスが自己紹介をすると、黒い軍服を身に纏った男性が立ち上がり、挨拶をする。

 

「私はロデニウス連邦共和国にて外交官と司令官を兼任しています『大和』と申します」

 

 二人は右手を差し出して握手を交わす。

 

(自分の人のことは言えないけど、若いな。しかもこの若さで外交官と司令官を兼任とは。大変だろうなぁ)

 

 マイラスは『大和』の肩書きを聞き、その凄さを内心で呟く。

 

「こちらは私の補佐としてロデニウス連邦共和国より同行している『尾張』に『エンタープライズ』『ティルピッツ』といいます」

 

 『大和』が紹介を始めると、『尾張』、『エンタープライズ』『ティルピッツ』が立ち上がり、頭を下げる。

 

 

 ちなみに『エンタープライズ』はいつも着崩している黒いコートだが、さすがに公の場に出るとあってちゃんと着込んでいる。

 

 

「今回ムー国をご紹介いただけるととのことで、大変嬉しく思い、感謝いたします」

 

 『大和』は丁寧な言葉にて、お礼を述べる。

 

 文明圏外の国の者とは思えないほど、落ち着いた態度で、丁重な言葉使いだ。マイラスは少しだけ安堵する。文明圏外の国は野蛮なイメージが先行しがちだからだ。

 

 よく見るとロデニウスの使者は、それぞれの荷物は傍に置いており、既に出発準備を整えていた。

 

「それでは、長旅でお疲れでしょうから、本格的にご案内するのは明日からとします。本日はこのアイナンク空港のご案内した後、首都内のホテルにお連れします」

 

 マイラスは『大和』達に今日の予定を説明しつつ、応接室を出て空軍格納庫内に使者を連れて行く。

 

 

 格納庫に入ると、全体が白く、青のストライプが施された機体が用意されていた。

 

 ノーズにプロペラが付き、その横に機銃が2機配置され、車輪は固定式であるが、空気抵抗を減らすためにカバーが付いている複葉機であった。

 

 どうやらロデニウス連邦共和国の航空機を見た技師達が、対抗心を燃やしたらしい。ピカピカに磨かれていて、一目で整備が行き届いた機体だと推測される。

 

 マイラスは複葉機に近づき、説明を始めた。

 

「この鉄竜は、我が国では飛行機と呼んでいる飛行機械です。この飛行機は我が国最新鋭戦闘機『マリン』です。最大速度は、ワイバーンロードよりも速い380km、前部に機銃……えぇと、火薬の爆発力で金属を飛ばす武器ですね。これを搭載し、1人で操縦可能なように設計されています。メリットとしては、ワイバーンみたいに、ストレスで飛べなくなる事も無く、大量の糞の処理や未稼働時に食料を取らせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードよりも上です」

 

 わざわざ文明圏外の人間に説明するような内容であったが、マイラスは自信満々に『大和』達に説明する。

 

(さぁ、どうだ?) 

 

 彼は四人の反応を窺う。

 

 

「複葉機か。今じゃ特殊用途以外じゃ使っていないな」

 

「えぇ。自分と兄さんが少し前まで『零観』を使っていましたけど、今は『瑞雲』に更新されましたからね」

 

「私も『瑞雲』に更新されているから、複葉機はもう使っていないわね」

 

 『大和』が懐かしそうに呟くと、『尾張』と『ティルピッツ』が語り合う。ちなみに『零観』とは『零式水上観測機』のことである。

 

(もう、使っていない? まさか複葉機は主力じゃないのか!?)

 

 マイラスは彼らの会話を聞き、驚愕する。

 

 複葉機が主力では無いとすれば、ロデニウスはムーではまだ構想段階の単葉機を実用化している可能性が出てきた。

 

(しかしズイウンは機体名としても、使っている? 一体何のことなんだ? 彼らはパイロットもしているのか?)

 

 彼らの会話の中に気になるワードが出て来たが、マイラスは首を傾げる。

 

 しかしマイラスから彼らを見ても、とてもパイロットには見えない。格好からそう思うのかもしれないが。

 

 色々と疑問は尽きないが、彼は頭を切り替えて質問をする。

 

「あなた方の国では、複葉機はもう使われていないのですか?」

 

 マイラスの質問に『大和』は一考するも、政府からはこちらに有利を出す為に、ある程度の情報開示を行うようにと指示が出ているので、彼はマイラスの質問に答える。

 

「そうですね。少し前まで特殊用途として水上機の複葉機は主力として使われていましたが、現在では機種更新が行われたので、主力として運用している複葉機はありません。極限られた使い道として運用されているだけです」

 

「そうなのですか。それに、水上機?」

 

「水面を滑走路として飛び立てる飛行機のことです。よほど荒れていないならどこの海でも滑走路にして飛び立てます」

 

「なるほど。それはとても便利そうですね」

 

 マイラスは思わぬ収穫に、内心ほくそ笑む。

 

 

 ちなみにこの極限られた運用というのは、連絡機として零式水上観測機が使われているとか。

 

 

「ですので、主力戦闘機を含めて、飛行機はどれも単葉機になっています」

 

「単葉機が主力ですか」

 

 と、マイラスはこの時点で自国の技術力がロデニウスと比べて劣っているのを感じ始めていた。しかし、まだ分からないと僅かな期待を抱いて、質問を続ける。

 

「それでは、失礼を承知でお聞きしますが、あなた方の国ではどのような戦闘機が使われているのですか?」

 

「そうですね……主力機ではない旧式機ではありますが、それでも570km前後は出ます。それと機関砲の口径は20mmですね」

 

「ごひゃっ!? それに20!?」

 

 数値を聞いてマイラスは思わず声を上げる。

 

 そりゃムーの主力戦闘機であるマリンの380kmを大きく上回る速度であるのだから驚くのは当然であるが、何より驚きなのはこれで主力機の座から降りた旧式機であることである。

 

 その上、機関砲の口径が20mmである。マリンが7.92mmなので、それと比べれば大口径である。そんな大口径の機関砲で攻撃されれば、マリンは木っ端微塵になるだろう。

 

「そ、それは、凄いですね。しかも主力戦闘機ではない旧式機でそのくらい出るとは。主力機ではもっと出るのですか?」

 

「そうですね。細かい数値となると機密に触れますので、これ以上は答えられません。武装に関してはほぼ同じと考えても構いません」

 

 『大和』がそう答えると、マイラスは「そりゃそうか」と小さく呟く。

 

(航空機分野は完敗だ。恐らく他の技術も負けているかもしれない)

 

 技術者として、自国の技術力が他国の負けた事実にマイラスは酷く落胆する。 

 

(だが、仮にロデニウスと国交を結んで、技術供与を受けられれば、我が国の技術水準を上げられるかもしれない!)

 

 しかし逆に考えれば国交を結んだ時のメリットはかなり大きい。国交を結べばそれなりに技術を入手できる。上手くいけば兵器関連の技術を手に入れられるかもしれない。

 

 当然デメリットも大きいだろうが、メリットと比べれば些細なことだ。

 

 彼は頭を切り替えて、ポジティブに考える。

 

 

「ところで」

 

「な、何でしょうか?」

 

 と、深く色々と考えていたせいか、『大和』が声を掛けるとマイラスは少し驚いた様子で反応する。

 

「あそこにある機体は? 見たところこの機体より一回り大きいですね」

 

「えっ? あ、はい。そうですね」

 

 『大和』が指差す方向には、マリンとは違う複葉機が鎮座しており、マリンと比べると一回りほど大きい。こちらもマリン同様きちんと整備がされている。

 

「こちらは空軍及び海軍で運用されている軽爆撃機『ジーン』です。速度はマリンより遅いですが、何度か改良を加えたことで何とか320km前後に速度を引き上げられています。軽爆撃機とあって、搭載できる爆弾は少ないですが、数を揃えられるとあって期待が寄せられています」

 

「なるほど(ぱっと見九六式艦攻だなあれ)」

 

(ソードフィッシュみたいな複葉機だな)

 

 『大和』と『エンタープライズ』はジーンを見てそれぞれ感想を抱く。

 

 

 その後マイラスは『大和』達を連れて空港の外へ向かう。

 

 空港の外には、ムーの誇る自動車を待機させてある。馬を使わず、ガソリンを使用する内燃機関を積んだ、列強ムーの技術の結晶である。

 

 用意した車はしっかりとした作りで、尚且つ大人数が乗れる大型の車である。

 

 この自動車に乗ってホテルに向かうのだが、ロデニウスの使者四人は、驚く事なく車に乗車する。

 

(やっぱり、そうだよな)

 

 車が動き出しても特に驚いた様子も無く、マイラスは内心ため息を付く。

 

「ロデニウスにも、車は存在するのですか?」

 

 向かい合う形で座るマイラスが『大和』に問い掛ける。

 

「えぇ。正確ではありませんが、ざっと170万台ぐらいはあります」

 

「そ、そんなに走っているのですか? しかしそんなに走っていると、道が混雑してしまうのでは?」

 

「我が国には優れた交通システムを導入して、道路交通法を施行しています。よほどのことが無い限りは事故も起こさず、大混雑することもありません」

 

「そ、そうですか……」

 

 『大和』の説明を聞き、マイラスは精神的に疲れてきた。

 

 

 ちなみにロデニウス連邦共和国にて走っている自動車の多くは四輪駆動車やトラックが殆どで、市民の多くはこれらを好んで使っている。乗用車はタクシーや公用車でしか使われていない。

 

 まぁこれはクワ・トイネ州での農家業の人が農作物を運ぶ為や、クイラ州では採掘した鉱石や石油を貯めたドラム缶を運ぶ為にトラックを使うからであり、四輪駆動車はクイラ州の砂漠地帯で活躍しているからである。

 

 ちなみに意外かもしれないが、『大和』も自動車やバイクを所有しており、自動車は四輪駆動車の『73式小型トラック』で、バイクは北連製のサイドカー付きバイクである。

 この73式小型トラックやサイドカー付きバイクで嫁達とドライブに行ったりしている。

 

 

 しばらく整地された道を走り続け、やがて高級ホテルが見えてくる。

 

 運転手が車をホテルに横付けし、車から降りた五人はホテルへ入る。

 

「明日は、我が国の歴史と海軍の一部をご案内いたします。朝の9時頃お迎えに上がりますので、今日はごゆっくりとお休みください」

 

 マイラスは、『大和』達に部屋の使用法や礼儀などを一通り説明して、五人を部屋まで見送ってからホテルを後にした。

 

 




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