異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

43 / 132
第四十三話 海の王者の顕現

 

 

 

 

 その後歴史資料館を後にした『大和』達は自動車で移動し、次の見学場所である海軍基地へと到着した。

 

 

 この世界で二位の力を持つムー国の海軍基地は、その名に恥じない立派なものである。

 

 

 輸送船やタグボートのような補助艦艇があれば、巡洋艦、戦艦、更に最近就役した航空母艦等の様々な軍艦が埠頭に停泊しており、乗組員達が軍艦の清掃整備をして常に万全な状態を保っている。

 

 

 その中で、とある埠頭に停泊している戦艦の前に、マイラス達がやって来た。

 

「これは我がムーが建造した最新鋭の戦艦、ラ・カサミ級戦艦一番艦『ラ・カサミ』です。いかがでしょうか?」

 

 マイラスは『ラ・カサミ』の前で自国の最新鋭の戦艦を『大和』達に披露する。

 

 戦艦という存在はただでかい軍艦というわけではなく、その国の技術力と国力を表す極めて重要な存在でもあるのだ。この『ラ・カサミ』もムーの最新鋭の技術を詰め込み、国が威信を掛けて建造した戦艦なのだ。

 

 故に、戦艦という存在は他国に対しての抑止力として働くのだ。

 

 だからこそ、マイラスは自信を持って『ラ・カサミ』披露をした。まぁロデニウス連邦共和国の技術の一片を聞かされ、心の大半は諦めが占めていたかもしれないが。

 

 

「これは……」

 

「『三笠』司令……」

 

「……」

 

「確かに、似ているわね」

 

 『ラ・カサミ』を見て、四人はそれぞれの反応を見せていた。

 

「? どうしましたか?」

 

 意外な反応を見せる四人に、マイラスは尋ねる。

 

「あっ、いえ。よく似た戦艦がトラック泊地にありますので、少し驚いていました」

 

「似ている? この『ラ・カサミ』にですか?」

 

「えぇ。『三笠』と言う戦艦でして、本当によく似ているんです」

 

「そうなんですか。しかし『三笠』ですか。なんだか『ラ・カサミ』に似た響きですね」

 

「言われてみれば、確かに」

 

 『大和』は納得したように呟く。

 

(ってか、簡単に流されたけど、『ラ・カサミ』と同等の戦艦がロデニウスにあるのか)

 

 マイラスは軽く流された事実に、げんなりとする。航空機で発展があるのなら、それ以外の分野が発展していないわけがない。

 

「ってことは、その『三笠』もKAN-SENだったりするのですか?」

 

「えぇ。その通りです。ですがKAN-SENとしては半ば引退したようなもので、現在は陸戦隊の司令官として就任しています」

 

「そ、そうなのですか」

 

 マイラスはもはや苦笑いしか出来なかった。

 

 『ラ・カサミ』と同等の戦艦が半ば引退していると言う事実。つまりこれはロデニウスでは『ラ・カサミ』を上回る戦艦が主力として就役している可能性が高いからだ。

 

 造船技術でも、ムーは敗北している事実を裏付けた瞬間であった。

 

「あの、『ヤマト』殿? ロデニウスには、どれだけの戦艦があるのですか?」

 

「あぁ、そうですね……おおよそ20隻以上は居ると思っていただければ」

 

「に、20……」

 

 その数に、マイラスは言葉を失う。

 

 決して多い数ともいえないが、しかしそのどれもが『ラ・カサミ』を上回る戦艦だとすれば、十分すぎる数となる。

 

 それだけでも、ロデニウス連邦共和国の国力を大いに表している。

 

「おや? ムーには空母もあるんですね」

 

 と、『尾張』が向こう岸の埠頭に停泊しているムー海軍の空母を見つける。

 

「えっ? あ、あぁ、あれは『ラ・コスタ級航空母艦』と言う、ムー初の航空母艦であります。洋上にて航空機を運用する、最近実戦配備始まったばかりの艦種となります」

 

「なるほど。規模的には軽空母みたいだな」

 

 『エンタープライズ』は空母の規模から、軽空母ぐらいはあると推測する。彼女の言葉を聴き、マイラスはギクリと体を震わせる。

 

「そ、それで、ロデニウスでは、空母はどのくらいの数が配備されていますか?」

 

 マイラスは恐る恐る『大和』に尋ねる。

 

「そうですね。こちらも20隻前後はあると思っていただければ」

 

「は、はぁ……」

 

 ロデニウスが配備している空母のおおよその数を聞き、もはや彼は息を吐くような声を漏らすしかなかった。

 

 ロデニウス連邦共和国は既に空母を実用化し、実戦配備していることを示していた。まぁこの点に関しては薄々気づいていたが。

 

 

 

 その後『大和』は埠頭から海面を見つめて、何かを確認する。 

 

「湾内の深度は大丈夫そうだな。それじゃ頼むぞ、『エンタープライズ』、『ティルピッツ』」

 

「あぁ」

 

「分かったわ」

 

 と、二人は頷くと、彼女達の身体が輝き出す。

 

「っ! これは!」

 

 一瞬光で目がくらんで彼は目を瞑り、瞼を開けると、『エンタープライズ』と『ティルピッツ』の二人には、さっきまで無かったはずの鋼鉄の装備を纏っていた。

 

 『エンタープライズ』は右手に空母のアイランドを模した部分を持つ巨大な弓のような物を持ち、腰に接続されたユニットから伸びて身体の左側に飛行甲板を模したユニットがあった。

 

 『ティルピッツ』は背中に巨大な機械のようなものを装着しており、まるで鮫の様な頭部を模したものが彼女の両側から前へと突き出ており、その一つ一つに戦艦の主砲を模したユニットが接続されている。

 

 そして彼女達の後に、『大和』と『尾張』の二人も艤装を展開して身に纏う。

 

「お、おぉ……!」

 

 マイラスは艤装を身に纏った『大和』達を見て、思わず声を漏らす。

 

 細身の女性が背負うには似合わない大きな艤装を身に纏い、『ティルピッツ』に至っては怪物のような見た目の艤装が自らの意思を持って動いている光景が彼にとっては異様なものであった。

 

 だが何より彼が驚いているのは『大和』と『尾張』の巨大な艤装である。

 

(KAN-SENは人の姿をした軍艦だって言っていたけど、なるほど。身に纏っている機械に軍艦の特徴があるんだな)

 

 マイラスは『大和』達を一人一人観察して納得する。

 

(『ヤマト』殿に『エンタープライズ』さんは見たところ飛行甲板みたいなものを持っているってことは、空母のKAN-SENかな? だが『ヤマト』殿の飛行甲板は変わった形をしているな。あの出っ張りは何の役目があるんだ?)

 

 彼ら二人を見比べて、艤装に飛行甲板のようなものを持っているとあって、二人が空母のKAN-SENでは無いかと予想する。この辺りはさすが技術者と言うべきか。

 

(『オワリ』殿と『ティルピッツ』さんは戦艦なんだな。『ティルピッツ』さんの艤装はとても変わっているけど、『オワリ』殿の艤装はなんて大きさなんだ)

 

 次に『尾張』と『ティルピッツ』の艤装を見て、彼女の艤装の特異性に目を引かれるが、何よりマイラスの興味を引いたのは『尾張』の艤装であった。

 

(あんなでかいのに、よくバランスを崩さないよな。というか鎧を身に纏ったせいで威圧感が増したな)

 

 マイラスは艤装を纏った『尾張』の姿に圧倒されると同時に、疑問を抱く。

 

(それにしても、『オワリ』殿の艤装にある主砲……なんか見覚えがあるのは気のせいだろうか?)

 

 彼は『尾張』の艤装にある三本の砲身を持つ主砲塔を見て、どことなく見覚えのあるような気がして首を傾げる。

 

「それでは、今からお見せします」 

 

 『大和』が『エンタープライズ』と『ティルピッツ』に目配りすると、二人は頷いて埠頭の端へと移動し、地面を蹴って跳躍する。

 

「あっ!」

 

 マイラスは思わず声を上げるが、二人は水面に着水するも、身体は沈む事無く水上に浮かんだままで、二人は『ラ・カサミ』の隣に水上を移動する。

 

 すると二人の艤装がほのかに光り輝くと、艤装がキューブ状に分解していき、そのキューブ状の物質が増殖していくと、まばゆい光を放つ。

 

 

 

「……」

 

 そして光が晴れて、そこに現れた物を見て、マイラスは大きく口を開けて呆然となる。

 

 なぜなら、『ラ・カサミ』の隣に更に大きな戦艦と空母が現れたのだから。

 

 

 『ラ・カサミ』よりも一回り以上大きく迷彩が施された船体に、低めに抑えられ、どっしりとした重厚な外観を持った戦艦であり、連装砲を四基八門搭載したその威容は、まさに戦艦に相応しい姿である。

 ビスマルク級戦艦の二番艦『ティルピッツ』は、その威容をムー国の人間に見せ付ける。 

 

 『ティルピッツ』と同規模の船体に飛行甲板を持ち、左側に艦橋を持つ空母の一般的スタイルを持ち、飛行甲板には翼を折り畳んだ状態で『F8F ベアキャット』と『A1 スカイパイレーツ』が並べられている。

 ヨークタウン級航空母艦の二番艦『エンタープライズ』もまた、空母でありながらもその威容を見せ付ける。

 

「な、なんて大きさなんだ!?」

 

 『ラ・カサミ』が巡洋艦にしか見えない二隻の戦艦と空母の大きさに、マイラスは驚愕のあまり声を上げる。

 

(戦艦の主砲は『ラ・カサミ』と同じ連装だが、この大きさなら『ラ・カサミ』の30.5cmを確実に上回って、その上に砲の数も倍……。防御も確実に『ラ・カサミ』を上回っている。撃ち合いになれば『ラ・カサミ』じゃ……勝ち目は薄い)

 

 『ティルピッツ』を見てマイラスは驚愕し、その性能を予想する。

 

 主砲の大きさはラ・カサミを上回り、砲身長は砲の大きさが異なるから一概に言えないが、それでも長い砲身を持っている以上、その威力と弾速は『ラ・カサミ』を上回っているだろう。

 一部の例を除き、防御も自身の主砲に耐えうる性能を有しているのが戦艦であるので、確実にラ・カサミを上回る装甲を有している。その防御を破るにはかなり近づかなければならないが、その前に『ラ・カサミ』は撃沈されるのがオチである。

 

 それにより、マイラスは『ラ・カサミ』では『ティルピッツ』には勝てないのを悟る。いや、そう理解するしかない現実が目の前にあるのだから。

 

 しかし何よりマイラスが驚いたのは、『エンタープライズ』とその艦載機である。

 

(戦艦とほぼ同じ大きさの空母である以上、艦載機の数だって多いし、何より艦載機はどれもマリンやジーンを大きく上回っているのに違いない!)

 

 F8F ベアキャットとA1 スカイパイレーツを見ただけで、マイラスはその性能を予想する。

 

(だが、この空母でも空港にあった航空機を飛ばすのは難しいはず。だとすると、海軍が臨検した空母は、どれだけ大きいんだ!?)

 

 そして『エンタープライズ』を見て、マイラスはもう一つの推測を立てて、その推測に驚愕する。

 

 当然『エンタープライズ』と『ティルピッツ』が突然現れたことで、軍港は蜂の巣を突いたような騒ぎとなっていた。

 

(いや、それよりも一番驚異的なのは、KAN-SENの特性じゃないか!?)

 

 マイラスは戦艦と空母の性能よりも、何よりKAN-SENの特性について、一つの推測が思い浮かぶ。

 

(KAN-SENならよほどの特徴が無ければ人間と見分けが付かない。これなら易々と国内に潜入できる。だとするなら……)

 

 その推測を思い浮かべて、マイラスの顔は真っ青に染まる。

 

 

 KAN-SENが人間の状態で国内に密かに潜入すれば、『エンタープライズ』と『ティルピッツ』ぐらいの空母や戦艦をムー国の首都オタハイトに面する海に展開することが可能なのだ。

 

 

 そんな悪夢のような展開が予想できる。もはや戦力評価なんて当てに出来ない。

 

 

「―――……ラス殿。マイラス殿!」

 

「ハッ!?」

 

 と、『大和』から強めに呼ばれて、半ば意識が飛んでいたマイラスはハッとして彼を見る。

 

「いかがでしょうか? 『エンタープライズ』と『ティルピッツ』を見て、KAN-SENの能力を見て」

 

「は、ハハハ……もう、何て言って良いか、言葉が見つかりません……」

 

 マイラスは乾いた笑い声を漏らして、頭の後ろ掻く。

 

「そ、それで、『ヤマト』殿のようなKAN-SENは、どれくらい居るのでしょうか?」

 

「申し訳ありません。さすがにそこまでは御教えすることは機密に当たるので」

 

「で、ですよね……」

 

 さすがにKAN-SENの総数までは機密に当たるので、『大和』は教えず、マイラスは肩を落として俯く。

 

 数が多いのか少ないのかと言う予想が出来ないだけに、より一層恐怖を煽る。だが、少なくともKAN-SENは彼らだけではないというのは確かだ。

 

「ですが、代わりと言っては何ですが、自分と『尾張』のどちらかの軍艦形態をお見せしようと思います」

 

「えっ?」

 

 『大和』の思わぬ 提案にマイラスは顔を上げる。

 

「その、良いのですか?」

 

「えぇ。このくらいまでなら開示可能範囲ですので」

 

「そうですか。でも、どちらともは、流石に無理ですか?」

 

「そうしたい所ですが、自分と『尾張』が同時に展開するとその巨体のあまり港の機能を阻害しかねないので」

 

 さりげない『大和』の言葉に、マイラスはもう何度目かの驚愕を覚える。

 

(み、港の機能を阻害しかねない!? こ、この二人は一体どれだけ大きいんだ!?)

 

 内心で叫び荒れるも、マイラスは辛うじて保っている精神を総動員して気持ちを落ち着かせて、冷静になる。

 

「そ、そうですか……」

 

 彼は何とか落ち着き、『大和』と『尾張』を見る。

 

(『ヤマト』殿も気になるが、どうも『オワリ』殿が気になるなぁ)

 

 二人を見比べて、マイラスはどうしても『尾張』の艤装の形状が気になってしょうがない。

 

 確かに『大和』がどんな空母かどうかというのがあるものも、どうしても戦艦としての『尾張』が気になる。

 

「で、では、『オワリ』殿。お願いできますか?」

 

「分かりました」

 

 選ばれた『尾張』は頷くと、埠頭の端へと移動して、地面を蹴って跳躍する。

 

 海面に着水すると同時に、『尾張』は前へと進んで軍港の湾内中央へと移動する。

 

 その光景に軍港に居るムーの軍人達が注目する。

 

 そして『尾張』の艤装がほのかに輝いてキューブ状に分解されると、キューブ状の物質が増殖していき、その直後にまばゆい光を放つ。

 

「……」

 

 マイラスはその様子を息を呑んで見守る。

 

 

 そして光が晴れると―――

 

 

 

 

「なぁっ!?」

 

 軍港の港内に現れた戦艦の姿に、マイラスは目が飛び出らんばかりに驚愕する。そしてそれは軍港に居るムーの軍人達も同じであった。

 

 港内に、島が現れた。そうとしか表現できない、『ラ・カサミ』が小船にしか見えない超巨大な戦艦が湾内に姿を現した。

 

 まるで島を思わせる巨大な船体に城郭を思わせる高く聳え立つ艦橋。船体中央には高角砲や機関砲が所狭く並べられ、副砲の両側に噴進砲が設置されていると、必ず航空機を撃ち落すという絶対的な意思がひしひしと伝わる。

 そして戦艦の象徴であり、最大の武器である主砲もまた、規格外な大きさをしている。それが前部に二基、後部に一基の計三基が搭載されている。

 

 紀伊型戦艦の二番艦『尾張』。その規格外な規模の戦艦はムーの人々にその威容を見せ付ける。だが同時に、その均等の取れた芸術的な美しい姿を見せ付けた。

 

 

 ちなみに『尾張』は以前までは『紀伊』と違って、鋼材不足によって高角砲を載せる台座が作れないとあって、代わりに噴進砲を多く搭載していたのが特徴的だったのだが、現在ではちゃんと鋼鉄製の台座を作って設置し、『紀伊』同様の装備が施されている。

 

 

 その『尾張』の出現により、『エンタープライズ』と『ティルピッツ』は完全にそっちのけで誰もが『尾張』に注目していた。

 

 だが、そんな中でマイラスだけは別の意味で驚愕していた。

 

「こ、この戦艦は……!」

 

 『尾張』の姿を見て、マイラスの脳裏に過ぎるのは、自身の元に送られた写真に写る戦艦の姿であった。

 

 

 

 ムーの諜報員が命がけで撮影した、レイフォルをたった一隻で滅ぼしたとされるグラ・バルカス帝国の戦艦……

 

 

 

 『尾張』の姿は、まさにその戦艦に酷似していたのだ。

 

 ちなみに紀伊型戦艦だが、設計期間を大幅に短縮する為に不沈戦艦としての雛形が出来ていた大和型戦艦の設計を拡大発展させた設計であるので、その姿は大和型戦艦に酷似している。

 

 だが、その酷似した姿が、今回ある意味一波乱を生んでしまっていた。

 

(な、なぜあの戦艦がここに!? ま、まさかロデニウスはグラ・バルカス帝国と関わりがあるのか!?)

 

 彼は内心戦慄し、目を見開いて『尾張』を見るしかなかった。

 

 

「……」

 

 そんな中、『大和』はマイラスの異変を察して、目を細める。

 

 

 




感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。

竜の伝説編はやっておくべき?

  • やっておいた方が良い
  • 別にやらなくても良いんじゃね?
  • オリジナル要素を加えてやるべき
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。