異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第四十四話 ロデニウス連邦共和国への疑惑

 

 

 

 

 ムーの軍港で騒動が起きたその日の夜。

 

 

 

 夜遅くであったが、それでもムー政府は緊急の会議を開き、話し合いを行っていた。

 

 

 

「―――以上のことを踏まえて、ロデニウス連邦共和国について、どう思っている?」

 

 ムー国の首相が会議に参加している閣僚を見渡して問い掛ける。

 

「かの国とは、慎重に付き合っていく必要があると思います。まだ不明な点が多い上に、今回の一件で帝国との関連疑惑が浮上しましたもので」

 

「私も賛成です。舵の切り方を誤れば、ロデニウスは第二のグラ・バルカス帝国になりかねません」

 

 閣僚達の多くはロデニウスとは慎重に付き合っていくべきだという意見が多い。

 

 というのも、ロデニウス連邦共和国が第二文明圏の国々に対して宣戦布告した第八帝国こと『グラ・バルカス帝国』との関わりがあるのではないかという疑惑が出たからである。

 理由はもちろん、『尾張』の外観が原因である。

 

 『尾張』の外観がレイフォルをたった一隻で滅ぼしたグラ・バルカス帝国の戦艦『グレード・アトラスター』に酷似していたからだ。

 

「マイラス君。君から見て、ロデニウスの外交官はどう思えた?」

 

 首相は参考人として召喚されたマイラスに、ロデニウス連邦共和国の外交官について尋ねる。ちなみに彼は驚きすぎたせいか、げっそり痩せている様にも見える……

 

「はい。外交官達の話し方はとても丁重で、落ち着いた態度をしていて、とても文明圏外の国の人間とは思えませんでした」

 

「そうか。次の質問だが、専門家の君から見て、彼らの技術力はどのくらいあると推測している?」

 

「そ、それは……」

 

 マイラスは正直に質問に答えるべきかどうか悩み、口ごもる。

 

 技術仕官から見て、彼らの技術力は明らかに自国を越えているのは理解している。しかし荒唐無稽な内容な物も多い。正直に言うべきか彼は悩んだ。

 

「嘘偽り無く、君の正直な意見が欲しい。ここで誤った知識を身に付けて彼らと付き合えば、後で痛い目に遭うのは我々だ」

 

「は、はい」

 

 首相の後押しもあって、マイラスは意を決して口を開く。 

 

「ロデニウス連邦共和国の技術力は……ハッキリ言って我が国を大きく上回っているものであると思われます」

 

 彼の言葉に、室内にざわつきが広がる。

 

 しかし意外にも否定的な野次はあまり飛んで来なかった。

 

 というのも、各閣僚には資料として数枚の写真が配られており、それを見たからである。

 

 

 アイナンク空港で様々な角度から撮影された『PBJ-1H』を捉えた写真

 

 艤装を展開した『大和』達KAN-SENを撮影した写真や軍艦形態の『エンタープライズ』と『ティルピッツ』、更に『尾張』を撮影した写真である。

 

 これらの写真はあの場に居合わせた軍人達の一部がカメラを使い、撮影したからである。

 

 そしてムーから離れた海域に停泊している軍艦を航空機から空撮したり警備艇より撮影された写真もその中にあった。

 

 

「その上、彼らにはKAN-SENと呼ばれる、人の姿をした軍艦の存在もあります。写真に写っている軍艦を踏まえましても、彼らの技術力の高さが伺えます」

 

「そうか……」

 

 首相は腕を組み、『大和』達が写っている写真を見つめる。

 

(人間の姿を持つ軍艦、か。信じがたい話だが、軍港に居た多くの者達の証言がある上にこうして写真に姿が収められている以上、信じるしかあるまい)

 

 人の姿をした軍艦。端から聞けば荒唐無稽な話だ。言葉だけなら信じようとはしなかっただろう。

 

 だが、写真と言う証拠と、多くの人間の証言がある以上、信じないわけにはいかない。

 

「尚、これは外交官の一人である『ヤマト』殿からお聞きした話ですが、国交を結んだ後は貿易はもちろんのこと、技術輸出も検討しているとのことです」

 

 マイラスのその言葉に閣僚の誰もが目の色を変える。

 

「そ、その技術輸出とは、どこまでを輸出するのかね?!」

 

「それに関しては、まだ詳細をお聞きしていないので、何とも言えません。ですが場合によっては、武器兵器の技術やそれ自体の輸出も検討するとも言っていました」

 

『……』

 

 すると閣僚達は隣同士でヒソヒソと話を始める。

 

(ロデニウス。彼らはどこまで知っている?)

 

 首相は内心そう呟き、目を細める。

 

 

 ムーはグラ・バルカス帝国という新たな脅威の発生に頭を悩ませていた。

 

 当然ながらムーはグラ・バルカス帝国への警戒を強め、現在軍備の増強を行っている。

 

 そこへ自国よりも技術力の高い国が国交を求めてやってきた。それも技術輸出の話を仄めかして。

 

 それ故に、かの国が帝国に関して何らかを知っているか、何かと関わっているのではないかと疑うのも仕方ないことであろう。

 

 尤も、ロデニウス側にそんな意図は全く無いし、グラ・バルカス帝国のことなんか全く知らないのだが。

 

 

「分かった。その話の云々は後ですればいい。本題は……彼らがグラ・バルカス帝国と関わりがあるかどうか、だ」

 

 首相の言葉に、誰もが息を呑む。マイラスもまた、息を呑みつつ、手汗で湿る手を握る。

 

「この戦艦……名前は確か『オワリ』と言ったか? この戦艦がレイフォルをたった一隻で滅ぼしたグラ・バルカス帝国の戦艦と非常に酷似しているそうだな」

 

 首相は軍港にて撮影された『オワリ』を写した写真と、レイフォルにて撮影されたグラ・バルカス帝国の戦艦こと『グレードアトラスタ』の写真を見比べる。

 

「確かに、よく似ているな」

 

「この高い構造物とか、ほぼ同じでは無いか?」

 

「まさか、帝国と深く関わっているのか?」

 

 と、二枚の写真を見て小さく閣僚達が呟く。

 

「首相。発言の許可を願います」

 

 マイラスは挙手をして自身の発言の許可を首相に求めると、彼は「許可する」と承認する。

 

「ありがとうございます。私個人の意見ではありますが、ロデニウス連邦共和国とグラ・バルカス帝国は無関係であると思われます」

 

「なぜそう言い切れるのかね?」

 

「はい。戦艦はその国の技術力と国力を示す重要な存在です。レイフォルを滅ぼした戦艦も恐らくグラ・バルカス帝国にとっては最新鋭の戦艦だと思われます。そんな自国の最新鋭の技術の結晶が詰まった戦艦の技術を、他国に渡すとは思えません」

 

 彼が述べた意見を聞き、閣僚達の何人かは納得したように頷く。

 

「何より、かの戦艦と『オワリ』はまず大きさが違います」

 

「違うだと?」

 

 首相が怪訝な表情を浮かべて言葉を漏らす。

 

「はい。このグラ・バルカス帝国の戦艦は、当時撮影された距離と、写真に写る大きさから計算して、推定で200メートル以上はあると思われます」

 

「に、200メートル以上だと!? 我が国の最新鋭戦艦『ラ・カサミ』よりも大きいと言うのか!?」

 

 閣僚の一人が驚きのあまり、怒鳴るような形でマイラスに尋ねる。

 

「はい。もちろん推測の域でしかないので、実際とは異なる場合もあります。ですが、ロデニウスの『オワリ』ですが……目測で300メートルを越していると思われます」

 

『な、なにぃぃぃぃぃ!?』

 

 マイラスの衝撃発言に閣僚達が声を揃えて叫ぶ。

 

「そんな馬鹿なことがあるか!! そのような巨大な船を文明圏外の国が作ったと言うのか!! 我が国でもそれどころか200メートル級の軍艦すら建造出来ていないのだぞ!!」

 

 そして閣僚の一人が野次を飛ばすが、首相が手を上げると、閣僚は黙り込む。

 

「……マイラス君。それは、本当なのかね?」

 

「はい。当然こちらも私の推測の域ですので、実際とは異なる場合もあります」

 

「……」

 

「ですが、自分達の国で作った戦艦よりも巨大な戦艦を作る為の技術を、他国に渡すとは考えられません。外観に関しては、偶然の一致だと思われます」

 

「……なるほど」

 

 マイラスの意見を聞き、首相は頷く。

 

「少なくとも、二国間に関係性は無い。君はそう言いたいのだな?」

 

「……はい」

 

「……」

 

 首相は両手を組み、深く息を吐く。

 

「……グラ・バルカス帝国と関わりがあるのなら、将来敵になる国とわざわざ仲良くなって、技術輸出を検討するなど言い出さないだろう」

 

「……」

 

「だが、まだ疑いが晴れたわけではない。早い内にかの国の技術の根本を、見る必要があるな」

 

 首相の言葉に、誰もが頷く。

 

(かの国に頼めば、出来るか?)

 

 彼はある事を考え、それに期待する。

 

 

 

 その後会議は12時を過ぎても、続いたと言う。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、『大和』達が泊まっている高級ホテル。

 

 

「マイラス殿。相当驚いていたな」

 

「それもそうだろう。人間が軍艦の姿に変貌しただけでも相当なものなのに、『尾張』も見せたのなら、彼らの衝撃は計り知れないわ」

 

 タブレット端末に表示している資料を確認している『エンタープライズ』が海軍基地での披露の際のことを呟くと、『尾張』の尻尾を撫でている『ティルピッツ』が答える。

 

「でも、本当に良かったのだろうか? KAN-SENの存在を明らかにして。かえってムーにいらぬ誤解を招いたような気がする」

 

 『尾張』は不安な表情を浮かべて、腕を組む。

 

 案外彼の予想は当たっていたりするが。

 

「私達の存在が抑止力になるのなら、明らかにする価値はあるはずよ」

 

「抑止力か……」

 

 彼女の言葉を聴き、『尾張』は呟きつつ、尻尾を動かす。

 

「……」

 

 『エンタープライズ』は顔を上げて、部屋の隅で通信機を前にしている『大和』を見る。

 

 

「そっちは変わりないか、『武蔵』?」

 

『うん。こっちは大丈夫だよ、兄様』

 

 通信機を前にしてマイクを手にする『大和』は通信相手である『武蔵』と会話を交わしている。

 

『時折ムー国の海軍や沿岸警備隊の船がやって来て、航空機が上空を飛び回ってこっちを見張っているけど、遠くから見ているだけで何もして来ないよ。むしろ珍しい物を見にやって来ている感じだね」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 『武蔵』から話を聞き、『大和』は思わず苦笑いを浮かべる。

 

 『武蔵』が空母なのはムー側も理解しているだろうし、そう考えれば規格外な大きさで、変わった形状の飛行甲板を持つ『武蔵』はムーからすれば異質だろう。それ故に、監視というより観察しているというのが正しいだろう。

 

 完全に『武蔵』が物珍しい珍獣扱いである。

 

「それで、補給はどうなっている?」

 

『「樫野」さん達を乗せた二式飛行艇が二日後に到着する予定だよ』

 

「予定通りだな」

 

 ちゃんとことが思い通りに進んでいるとあって、『大和』は安堵する。

 

 ムーまでの航路は非常に長く、その上未知の航路とあって慎重に進んでいたので、予想よりも長く消耗のある旅になっている。その為『武蔵』は道中補給要員のKAN-SENの補給を受けてムーに向かっている。

 

 今回も補給要員のKAN-SEN達を乗せた二式飛行艇がアルタラス王国より出発し、『武蔵』へ合流して補給を行う予定である。

 

 しかし帰りは今回の補給さえ受ければ、無駄な消耗をすることなくアルタラス王国にある港まで進んでいける。

 

「とりあえず、ムーとの会議が終わるまで、その場で待機だ。何も起こらない事に越したことは無いが、万が一に備えて警戒は緩めるな。そして何より、その万が一起きた場合は、連れてきたKAN-SEN達と身を守る為の行動をしろ。そこからの判断はお前に任せる」

 

『了解。通信終わり』

 

 そうして『大和』はマイクのスイッチを切り、背もたれにもたれかかる。

 

(ひとまず、やれるだけのことはやった、が)

 

 『大和』は目を細めて天井を見つめる。

 

(あの時のマイラス殿は、『尾張』を見て何か別の意味で驚いていたような気がするのは気のせいか?)

 

 海軍基地でのKAN-SENのお披露目の時を思い出し、『尾張』の軍艦形態を見せた時のマイラスの反応に違和感を覚えていた。

 

 もちろん『尾張』の巨大さで驚いていた部分もあるだろう。しかしそれと共に、別の何かに驚いていたようにも見えた。

 

(……考えても無駄か。何に驚いていたかは俺達には関係ない事だろうし)

 

 『大和』はため息を付き、席を立って『エンタープライズ』達の元へ向かう。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 中央歴1639年 8月1日

 

 

 その後ロデニウス連邦共和国とムー国の間で国交開設に向けた会議が行われ、今日この日に両国の間に国交が結ばれた。

 

 

 そしてムー国はロデニウス連邦共和国へ視察団の派遣を行うことを発表した。

 

 

 しかもロデニウス連邦共和国の外交官達が本国へ帰るのに便乗してである。

 

 

 『大和』達はムーからの要請に驚きを隠せなかったが、その後本国に問い合わせてどうするか判断を仰ぐ。

 

 

 カナタ大統領の考えとしては、列強国であるムーの機嫌を損ねたくない思惑があり、他の閣僚も同じ意見とあって、『大和』達はムーからの視察団を乗せて本国への帰路に着く事になった。

 

 

 




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