異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第五話 報告

 

 

 クワ・トイネ公国 第2海軍司令室

 

 

「ノウカ司令!! 軍船ピーマから一報が入りました!!」

 

 軍船ピーマからの未確認の大型船発見の報からしばらくして、軍船ピーマから続報が入る。

 

「読め!!」

 

「『大型船の臨検を行ったところ、同船に敵対意思無し。なお、同船には船の派遣元、トラック諸島の艦隊司令部の代表が乗り込んでおり、我が国と交易締結を視野に入れた会談を希望している。船の大きさは、長さ目測320m、幅目測77mほどあり、帆またはオールのようなものは確認できていない』」

 

「な、何だその大きさは!? まるで宮殿ではないか!?」

 

 内容を聞いたノウカは驚き、思わず声を上げる。大型船と聞いていたが、その規模は予想を遥かに上回っていた。

 

「『先日の未確認騎の件については、トラック諸島の哨戒騎が哨戒飛行中、我が国に侵入したとのこと。同事案については……諸島ごとこの世界に飛ばされてきたと、代表は申し立てている』……だそうです」

 

「諸島ごと転移してきただと!? なんと荒唐無稽な、そんな事を上に報告しなければならんのか!!」

 

 さすがに黙って聞いていられず、ノウカは叫んだ。言葉が通じたらしいのは幸いだったが、これならまだ言葉が通じぬ相手の方がマシであった。

 

「300m以上もの鉄の船が動いている、というのも荒唐無稽ですが、こちらは彼らが目で確かめられた事実ですので……報告しないのはあまりにもまずいかと愚考します。また、続きに『代表が我が国に正式に謝罪したいと申し入れあり。まずは公国の外務担当への取次ぎを要請している』とのことです」

 

 通信員はノウカより幾分冷静に答え、その上で仕事を全うした。

 

「ぬ、ぬぅっ……!! とんでもないことになったな……」

 

 ノウカは頭を抱えて静かに唸る。

 

 こんな荒唐無稽な事を報告すれば自分の正気を上層部に疑われかねない。こんな緊迫した状況でふざけた報告をしたと、下手すると更迭もありうる。

 

 しかし内容が内容とあって、報告しないわけにもいかない。もし報告不備が判明し、それによって不祥事が発生すれば、物理的に首が飛びかねない。

 

「……ハッ、そうだ!」

 

「どうされましたか?」

 

「確か今、未確認騎について政治部会が開催されているはずだ。早急に報告を入れよう」

 

「了解」

 

 ノウカは報告する義務を全うすることを選び、通信員は臨検の状況をクワ・トイネ公国 公都に魔力通信で送信した。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 クワ・トイネ公国 政治部会

 

 

「……」

 

 国の代表が集まるこの会議で、首相のカナタは悩んでいた。

 

 三日前の事、クワ・トイネ公国の防衛、軍務を司る軍務郷から、正体不明の飛行物体がマイハークに空から侵入し、都市を偵察するように旋回して去っていったとの報告が上がる。

 

 ワイバーンの数倍の大きさでありながらも、ワイバーンが全く追い付けないほどの高速を出して、マイハークに侵入してきたという。

 

 国籍は全く不明。機体に黒い円に縁の白い丸が描かれてあったとのことだが、そんなデザインの国旗を制定した国など、この世界には存在しない。

 

「皆の者。この報告について、どう思う? どう解釈する?」

 

 カナタは発言すると、情報分析部長が手を挙げ、発言する。

 

「当部分析担当班によれば、同物体は西方の第二文明圏の大国『ムー』が開発している、飛行機械に酷似しているとのことです。しかし、ムーの飛行機械は、最新の物でも最高速力が時速350kmらしく。今回の飛行物体は、明らかに500kmを超えています。ただ……」

 

「ただ……なんだ?」

 

「はい、ムーの遙か西、文明圏から外れた西の果てに新興国家が出現し、圧倒的武力にて付近の国家に侵略戦争を行い、猛威を振るっているという報告があります。彼らは第二文明圏の大陸国家群連合に対して、宣戦を布告したと、昨日諜報部から情報が入っています。彼らの武器については、全く不明です」

 

 会場に僅かな笑いが巻き起こる。文明圏から外れた新興国家が、三大文明圏五列強国の内、二列強国が存在する第二文明圏の全てを敵に回して宣戦布告したというのは、無謀にも程がある。そう遠くない内にその新興国家は列強に返り討ちにされて滅ぶだろう、と言うのがこの場に居る者達が抱いた感想だ。

 

「しかし、新興国家はムーから遙か西。ムーまでの距離でさえ、我が国から2万km以上離れています。いくら圧倒的武力を持つとは言え、今回の物体が彼らの物であることは考えにくいのです」

 

 会議は振り出しに戻る。結局分からない事に変わりは無い。

 

 ただでさえ、ロウリア王国との緊張状態が続き、準有事体制のこの状況で、未確認だと正体不明など、不確定要素が多過ぎる情報は首脳部を悩ませた。

 

 敵意が無いのであれば接触してくれば良いだけの話。しかし、わざわざ領空侵犯といった敵対行為を執られたが為に、警戒せざるを得ない。

 

『……』

 

 会議室は再び沈黙によって包まれる。

 

 

 

「失礼します!!」

 

 場の空気が膠着したその時、政治部会に外交部の若手幹部が、扉を蹴破るような勢いで開けて、息を切らして飛び込んでくる。

 

「何事か!! 今は会議中であるぞ!!」

 

 外務卿が声を張り上げると、「も、申し訳ありません!」と若手幹部は謝罪する。

 

「構わん。その様子ではよほど重要な事なのだろう。用件を言いたまえ」

 

「ハッ! 報告します!!」

 

 外務卿を制しつつカナタが発言を許可して若手幹部が報告を始める。要約すると、以下の通りだ。

 

 

 ・本日朝、クワ・トイネ公国の北側海上に、長さ300m以上もある超巨大船が現れた。

 

 ・海軍が臨検を行ったところ、彼らは敵対の意思は無い旨を伝えてきた。

 

 ・捜査の結果、複数事項が判明した。なお、発言は同船に乗艦していた『大和』と名乗る代表からの申し立てである。

 

 

 ・我々はこの世界とは異なる世界から突如基地がある諸島ごと転移してきた。

 

 ・元の世界との全てが断絶された為、哨戒騎にて付近の捜索を行っていた。その際に我が国の航空機が領空を侵犯してしまい、その件について謝罪を行いたい。

 

 ・クワ・トイネ公国と会談を行いたい。ひいては国交を結びたい

 

 

 あまりに突拍子も無い話し過ぎて、政治部会の誰もが信じられない思いでいた。

 

「領空侵犯しておきながら、謝罪だと? 常識が無いにも程がある!」

 

 外務卿のリンスイが声を荒げる。

 

「それに異世界から諸島ごと転移しただと? 冗談も大概にしろ!」

 

「そんなやつら追い払ってしまえ!」

 

 リンスイに続いて過激な意見が次々に飛び出す。

 

 まぁ当然の事である。諸島ごと異世界から転移など、神話に登場する事はあっても、現実にはありえない。ふざけていると思われても仕方無い。

 

「静かに!!」

 

 と、カナタが大声を上げて机を強く叩いて大きな音を立てると、会議室は一瞬で静かになる。

 

「皆の意見も分かる。私も信じられない気持ちでいっぱいだが、ここは彼らに会ってみようじゃないか」

 

「で、ですが首相!?」

 

「それに、その者達は領空侵犯に対して謝罪を行いたいと申し出ている。転移云々や会談についてはさておき、それ以外は筋が通っているじゃないか」

 

『……』

 

 カナタがそう言うと、誰も反論を口にしなかった。

 

「そもそも、攻撃するつもりなら、未確認騎が現れた時に行っているはずだ。そして我が軍の臨検にも応じていないだろう」

 

「それは、確かに……」

 

 そう言われて、誰もが冷静になって納得する。

 

「それに、もし彼らと会談を行い、条約を結ぶ事が出来れば、彼らの技術を輸入出来るかもしれない。会ってみる価値は十分にあると思う」

 

「……首相がそう仰るのなら、異論はありません」

 

 リンスイは渋々とカナタの提案を受け入れる。

 

「彼らの代表をここに招きたまえ。会談を受け入れると」

 

「分かりました」

 

 カナタの指示を受けて若手幹部はすぐに会議室を出る。

 

 

 

 その後トラック諸島の代表こと『大和』とカナタ首相による会談が行われ、最初に『大和』により領空侵犯に対する謝罪を行い、その後様々な情報交換を行った。

 

 しかし互いに相手を知らな過ぎるとあって、その上言葉は通じても、文字が読めないというアクシデントも相まって、会談は思うように進まなかった。

 

 そこで『大和』はクワ・トイネ公国に自分達の事を知ってもらう為に、トラック諸島へのクワ・トイネ公国より視察団の派遣を提案した。カナタも『大和』達の技術に興味があったので、前向きに検討すると伝えた。

 

 その後はトントン拍子に話し合いが進み、その日の夜に政治部会で緊急会議が行われ、外務局より視察団がトラック諸島へと派遣される事が決定した。

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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