異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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今回はキリが良い所で終わる為に、短めです。


第五十一話 夢を抱く者

 

 

 

 トラック諸島の冬島の地下研究所で新しいKAN-SENが誕生して、意外な事実が発覚している頃。

 

 ムー使節団の姿は、トラック泊地の春島の飛行場にあった。

 

 

 

「これが次世代の航空機を担うとして期待してされている、ジェットエンジンを搭載した航空機です」

 

 『大和』は格納庫に収められている航空機を一瞥して、マイラス達に説明をする。

 

 格納庫には、橘花改と『景雲三型改』が収められており、万全の状態へとする為に妖精達が念入りに整備している。

 

 

 ちなみに景雲三型改とは、景雲二型改に更なる改良が加えられた機体で、景雲二型改では取り込む空気の量が不足してジェットエンジンが不完全燃焼を起こしていたが、翼の根元にあった吸気口を機首に移動させ、尚且つ大きくしたことで取り込む空気の量を増やした。それに伴い機首に搭載されていた機銃は翼の根元に移動させられた。これは機銃が発砲時に出す燃えカスをジェットエンジンが吸い込まないようにする為だ。ジェットエンジン自体にも改良が加えられており、少し程度だが性能が向上している。

 その姿は双発機になった『F-86 セイバー』に近いかもしれない。

 

 橘花改自体も更なる改良が加えられて性能が向上しているが、元々ジェットエンジンの開発を行うために作られた試作機である上に、リーン・ノウの森で見つけた例の機体の件もあるので、これで改良は打ち止めである。

 

 そして景雲三型改も元々試作機であったが、良好な性能を発揮したので量産を前提に開発が進められた。だがこれもリーン・ノウの森で見つけた例の機体によって旧式機の烙印を押されてしまい、現在ではジェットエンジン開発の一環で改良を続けていく予定である。

 

 

「ジェットエンジン?」

「ジェットエンジンとは、簡単に言えば空気を取り入れて、エンジン内で熱して勢いよく後ろに向かって噴射して推進力を得ます」

「なるほど」

「近くで見ても?」

「えぇ、どうぞ」

 

 マイラスとアイリスは『大和』より許可を得て、橘花改と景雲三型改を近くで見る。

 

「このジェットエンジンを搭載した戦闘機は、どのくらいの速度が出るのですか?」

 

 橘花改と景雲三型改を隅々まで見ているマイラスとアイリスの二人を見ながら、ラッサンが『大和』に問い掛ける。

 

 『大和』は政府から性能の開示を行うように指示を受けているので、ジェット機の性能を明かす。

 

「そうですね。おおよそ1000km/h前後は出ますね」

「せ、1000km/h!?」

 

 ラッサンは規格外の速度に驚きのあまり声を上げる。そしてマイラスとアイリスも驚きのあまりサッと振り向いている。

 

 そりゃムーの戦闘機であるマリンが380km/hに対して、ジェット機はほぼ三倍近くの速度なのだから、驚くのは無理ない。

 

「といっても、それはこの景雲三型改の方が出せる速度で、こちらの橘花改はせいぜい880km/hぐらいしか出ませんので」

「それでも、十分過ぎますよ」

 

 マイラスはそう言うと、景雲三型改を見る。

 

 プロペラの無い不思議な形状をした戦闘機。一見すればこれが本当に飛ぶのかという疑問が浮かぶばかりだ。

 

(だが、それだけの速さで飛ぶ航空機か……)

 

 しかし疑問を抱く彼は、それ以上に未知なる速度で飛ぶ航空機に、憧れに近い感情が湧き上がっていく。

 

「しかし、こうしてこのジェット機を見ると、神聖ミリシアル帝国の天の浮舟みたいね」

「天の浮船?」

 

 アイリスが景雲三型改を見ながら呟くと、聞き覚えの無い言葉に『天城』が首を傾げる。

 

「第一文明圏の列強国で、この世界最強の国家として君臨している『神聖ミリシアル帝国』で運用されている飛行機械です。遠くからだったのでよく分からなかったのですが、何となくこんな構造をしていましたね」

「なるほど」

 

 アイリスの説明を聞き、『大和』が頷く。

 

(第二文明圏のムーでこれほどの技術力なら、第一文明圏ならそれ以上の技術を持っていてもおかしくないか。まぁムーはイレギュラー的な所があるから一概に比べられないが)

 

 『大和』は内心呟きつつ、まだ見ぬ列強国の技術力の高さを予想する。

 

 

 

 その後『大和』とマイラス達は滑走路の脇へと移動すると、橘花改と景雲三型改が格納庫より出て滑走路へと移動し、ジェットエンジンが甲高い音を立てて始動する。

 

「ジェットエンジンは構造の都合上、滑走路はこのように舗装されたものでなければ、エンジンが異物を吸い込んで破損の原因になりかねません。この点はレシプロ機に劣りますね。まぁレシプロ機も舗装された滑走路を使うのが好ましいんですがね」

 

 『大和』がジェット機の構造や欠点を説明していると、最初に景雲三型改がゆっくりと滑走路を進み始め、次第に速度が増して行って、宙に浮いて飛び立つ。

 景雲三型改の速度が乗り始めた頃に、ようやく橘花改が進み始め、速度が乗ってきて景雲三型改が飛び立った直後に橘花改も空へ飛び立つ。

 

「おぉ」

 

 滑走路から飛び立ったジェット戦闘機にマイラスは思わず声を漏らし、空を見上げる。

 

 景雲三型改が大きく旋回して一気に加速し、彼らの上空を通り過ぎる。遅れて橘花改が彼らの上空を通り過ぎる。

 

「速い! とてもじゃないが、マリンでどうこう出来るものじゃないな」

 

 ラッサンは片手を伸ばして目の上に置いて太陽の光を遮って二機のジェット機を見る。

 

 ムーの戦闘機マリンでは当然追い付くのは不可能だし、高度優位を用いて奇襲を仕掛けようとしても、速度差によって追いつくことすら出来ないだろう。

 

「でも、これだけ速いと、燃料の消費はかなり多いのでは?」

「そうですね。ジェットエンジンは燃料を多く消費しますので、航続距離が短いのが欠点です。その為、迎撃機として運用するしかありません」

 

 アイリスの質問に『大和』は答えるが、この答えは正しくも偽りのあるもので、航続距離が短いのは事実だが、あくまでもこれは試作機の橘花改のことであって、景雲三型改は橘花改以上の航続距離を持っているので、別に迎撃機という限定的な運用しか出来ない事は無い。

 

 それに、技術の進歩によって、ジェット戦闘機の航続距離の短さも解消されていくだろう。

 

「ジェット機か……」

 

 マイラスは飛行する二機のジェット戦闘機を見ながら、誰にも聞こえないぐらい小さな声を漏らす。

 

 自国の戦闘機マリンよりも速く、高度な技術で作られたジェット機。それは技術者としてのマイラスの魂を震わせる。

 

(いつか俺も……ムーも、このジェット機を作れるだろうか)

 

 彼は今のムーでは作れそうに無い技術で作られているジェット機。技術が発展しても果たしてムーがジェット機を作れるかという不安がある。

 

(いや、作れないんじゃない、作るんだ! 俺の一生を掛けても、必ず国産のジェット機を作るぞ!)

 

 しかしすぐに彼は気持ちを切り替え、将来的に自国の技術のみで作る国産のジェット機を作るという目標を抱く。当然その道のりは険しく、彼もその険しさは分かっている。

 

 だが、それでも彼の決意に揺るぎは無い。

 

(マイラス。きっとあのジェット機を自分達の力で作ろうって意気込んでいるんでしょうね)

 

 その隣でアイリスは内心呟きながらモノクルの位置を整える。腐れ縁な仲であるが故に、彼女はマイラスの考えていることが何となく分かるのだ。

 

(私も、必ず祖国の発展に貢献しないとね)

 

 そして彼女もまた、祖国発展と言う目標を抱き、上空を飛行するジェット機を見上げる。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、トラック諸島 夏島

 

 

 ここには、軍艦を建造したり、入渠させる為の大小様々なドックがあり、ウネビ級軽巡洋艦やヤクモ級重巡洋艦が建造されている中、他のドックでは『摩耶』と『伊吹』の軍艦形態の艤装が入渠しており、全ての砲塔や機銃などの武装が下ろされており、大規模な改装が施されている。

 

「……」

 

 その光景を『鞍馬』が見つめながら、浅く息を吐く。

 

「『鞍馬』!」

 

 と、彼を呼ぶ声がしてその方向を見ると、一人の女性が『鞍馬』の元へ向かっている。

 

 腰まで伸びた銀色のロングヘアーを根元で結んだ若干サイドテールの位置寄りのポニーテールにした金色の瞳を持つ女性で、赤と白の服に黒のコルセットを身に着け、その上に袖が独立した黒いコートを纏い、太ももまである黒いブーツを履いている。

 左腰にはサーベルが収められた鞘を差し、一丁のピストルが提げられている。

 

 彼女の名前は『ドレイク』 『架空存在』と呼ばれる特殊なKAN-SENである。

 

「『ドレイク』 どうしたんだ?」

「あなたを見かけたから声を掛けただけよ」

 

 彼女はそう言うと、『鞍馬』の隣に立って、ドックを見る。

 

「改装作業は、だいぶ進んでいるようね」

「うん。『摩耶』さんと姉さんに搭載予定の新武装も量産が進んでいるから、改装にそう時間は掛からないそうだよ」

「ふーん」

 

 『鞍馬』から話を聞いて『ドレイク』は声を漏らすと、砲塔が下ろされた二隻の軍艦形態の艤装を見る。

 

 二隻に施されている改装作業はかなりの大規模なもので、主砲のターレットリングにもかなり手が加えられており、その範囲は艦内にまで及んでいる。その他にも電探や艦内の電子機器類も多くが交換されている。

 

「この改装って、対空戦闘能力を高めるって聞いたけど?」

「大体はね。正確にいうと、次世代の試作兵器の運用を行う為の近代化改修が目的なんだ」

「次世代ねぇ。そういえば、総旗艦の武装もその試作品を搭載したわね」

 

「うん」と彼が頷くと、『摩耶』と『伊吹』に施されている改装箇所を見る。

 

「ねぇ、『鞍馬』」

「何?」

「『摩耶』ってさ、もうだいぶ艤装弄ってあるのよね」

「うん。そうだけど……」

「それなのに、更に弄る気で居るの?」

「……」

 

 彼女の言葉に、『鞍馬』は何も言えなかった。

 

 

 『摩耶』は度重なる改造を受けて、非常に高い対空戦闘能力を得ているが、初期の手探りな状態での改造を受けたせいで、彼女に掛かる負担はかなり大きなものになった。

 その後改良を重ねたことでその負担は小さくなっているが、それでも彼女への負担はある状態で、本人は隠しているつもりだろうが、その負担による影響で左目の視力が低下しているのだ。

 

 今回の改装で、『摩耶』は更なる対空戦闘能力を得ることになっており、空母機動艦隊の空を守る防人となるのだ。まぁ『摩耶』に関してはKAN-SEN本人にも施さないといけないレベルであるが。

 

 ちなみに『伊吹』は『摩耶』で蓄積したデータと経験によって、KAN-SEN本体に負担が掛かる事無く改造を受けることが出来た。これを思えば、『摩耶』の無茶も報われるものである。

 

 

「『摩耶』さんは、総旗艦の役に立ちたい一心みたいなんだ。それには彼女の『カンレキ』が関わっているらしいけど」

「『カンレキ』、か」

 

 と、『ドレイク』はどことなく寂しげな雰囲気を醸し出して、後ろで両手を組む。

 

「羨ましいなぁ。あたしには、そういうの無いから」

「『ドレイク』……」

 

 そんな様子で呟く彼女に、『鞍馬』は目を細める。

 

 

 『架空存在』と呼ばれるKAN-SENは、別世界では建造されず、計画のみで終わった軍艦をKAN-SENとして誕生させた存在だ。故に、彼女達には『カンレキ』が存在しない。

 当然『ドレイク』にも、『カンレキ』が存在しない。あるのは建造されてからの記憶だけだ。

 

 このことを考えれば、本来『大戦』に存在しない『大和』と『紀伊』もある意味『架空存在』に近い存在だが、彼らの場合は更に別の世界線の『大戦』で建造された特殊な例であるので、『カンレキ』が存在する。

 まぁ彼らの場合かなりイレギュラーな存在なので、常識どおりに考えられないが。

 

 

「あっ、そうだ!」

 

 と、『ドレイク』は両手を叩いて声を上げる。

 

「『鞍馬』 さっき新しい部隊の設立が決まったのよ!」

「新しい部隊? それって最近の海賊被害を受けて、例の領海内や外海の治安維持目的の為の?」

「そうそれ。今のところ少ないんだけど、今後増やしていく予定なんだって。で、その部隊をあたしと『ジャン・バール』で率いることになったわけ」

「『ジャン・バール』さんとか。なるほどね」

 

 『ドレイク』の話を聞いて、『鞍馬』は新たに設立予定の部隊の話を思い出す。

 

 

 

 ここ最近海では海賊による被害が増えており、海外での被害をもちろんのこと、ロデニウス連邦共和国の領海内でも海賊による被害が発生している。

 

 漁をしている最中の漁船が海賊の襲撃を受けるも、漁船はエンジン付きの船であったので、海賊から逃げ切ることが出来たが、海賊が放った矢による被害が生じている。

 

 ついこの間では、貨物船が海賊の襲撃を受けており、外装に攻撃を受けるなどの被害を受けたが、航行に影響は無かった。海賊は貨物船に常駐していた護衛部隊が応戦したことで、何とか撃退出来ている。

 

 他にも同じように貨物船が襲撃を受けたが、護衛の船が同行していたとあって、威嚇射撃で撃退出来ている。

 

 カナタ大統領はこれに加え、国交を結んでいる国々からの海賊被害の情報を受けて、治安維持を目的にした組織の立ち上げを提案した。

 そして協議の結果、海上の治安維持を目的にした組織の新設が決定したのだ。

 

 その組織は、基本的には海軍から沿岸警備隊を切り離して、組織の規模を拡大化したようなものなので、人事異動は殆どなく、仕事も規模が大きくなること以外はこれまで通りのものになる。

 

 

 

 ちなみにその部隊を率いることになった『ジャン・バール』と『ドレイク』 海賊の名前を冠したこの二人が部隊に配属されたのは、単なる偶然ではない……はず

 

 

 

「そうなると、海の治安もだいぶ良くなるといいね」

「良くさせるわよ。人の海で勝手気ままに暴れられるのは気分のいいものじゃないしね」

 

 彼女はそう言うと、腕を組む。海が好きだからこそ、好き勝手やる海賊が許せないのだろう。

 

「だから、期待してね」

 

 と、『ドレイク』は『鞍馬』に向けてウインクする。 

 

 ウインクを受けて、彼は少し恥ずかしそうに頬を掻く。

 

 

 と、まぁ、海の情勢も少しずつ変化を見せ始めている。これが果たして世界にどれほどの影響を与えるのか……

 

 

 

 それは神のみぞ知る……

 

 

 

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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