異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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今日でこの作品を投稿して無事に一年を迎えました!

感想や評価、毎回誤字報告をしてくださる方々には、本当に感謝しています。今後原作を含め、色々とどうなるか分かりませんが、これからも本作をよろしくお願いします!

そして一周年を記念して、来週の火曜日まで連日投稿します。


第五十三話 陰で進行する動き

 

 

 

 第三文明圏の列強国であるパーパルディア皇国。

 

 

 その国土はフィルアデス大陸の大半を占めるものであるが、その領土の多くは他国を侵略して手に入れたものであり、多くの属領を有する。

 

 属領では国民全てが奴隷そのものであり、皇国の為に過酷な労働を強いられている。

 

 その属領を支配しているのは、『臣民統治機構』と呼ばれる組織であり、それぞれ属領の名前を冠した統治機構が配置されている。

 

 しかし統治機構と聞こえは良いが、とても統治しているとは言えないレベルで、統治機構の職員による私利私欲の行いが横行している。

 金目の物を何かしらの理由をつけて徴収という名の略奪を行うのはもちろんのこと、玩ぶ為に女性を権力にものを言わせて何かしらの理由で強制的に連行したり、気に入らないという私情な理由で無実の罪を被せて刑を執行させたりと、職権を乱用しまくるやりたい放題である。

 

 

 その数ある属領の中に、クーズと呼ばれる属領がある。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 パーパルディア皇国 属領クーズ

 

 

 かつてクーズ王国と呼ばれ、中規模の魔石の鉱山を有して大規模な軍事力を備えた、豊かと繁栄の象徴とまで言われた文明国だった。

 

 しかし20年前にパーパルディア皇国の侵攻を受けて、クーズ王国は抵抗空しく陥落し、以後パーパルディア皇国の属領として支配されている。

 

 

 そして、クーズ統治機構による蛮行も、所々で行われている。

 

 

 

「っ! パーパルディア皇国のクソ野郎共め!!」

 

 建物の路地裏にて、一人の男が悪態を付き、壁に拳を叩きつける。 

 

「荒れているな、ハキ」

「イキアか」

 

 息を荒くしている男性こと『ハキ』が振り返ると、曲がり角の陰にもたれかかっている男性こと『イキア』の姿があった。

 

「何があったんだ、って言っても、俺も見ていたが……」

 

 イキアは街の表の方を見るように視線を横に向けながら、ハキに問い掛ける。

 

「統治機構のやつら、また一人の娘を連れて行きやがった。反乱を企てているという罪でとな」

「チッ。また連中のお得意の冤罪か」

 

 イキアは苛立ちのあまり、無意識に舌打ちを打つ。

 

「止めようとした母親が身代わりになると言ったら、『ババァに用は無い!!』と言って他の職員達に命じて暴行を加えたやがった。暴行を受けた母親は身動きが取れなくなっていた」

「その上、母親が調子に乗ったからだと、娘の罪を重くして、自身の不幸は母親を恨めと言いやがって。胸糞が悪い」

 

 二人は不満を口にしながら、路地裏を進む。

 

 

「クソっ。統治機構のやつら、日に日に蛮行が酷くなっていくばかりだ」

「昨日一昨日も同じように若い娘が攫われ、何もしていないのに同僚が罪を被せられて連行された。そして帰ってきた娘達は必ず傷を負って、孕まされている」

「かといって歯向かえば、何かしらの理由をつけて罪を被せやがる」

「パーパルディア皇国の人間だからといって、好き放題しやがって、クソ野郎共め」

 

 しばらく進んだところで、二人は壁にもたれかかる。

 

「一体いつまで待てばいいんだ。このままじゃ、この国は滅びてしまうぞ」

「俺に文句言ったってしょうが無いだろ。だが、『d.s』殿はまだその時じゃないと言っているんだ」

「『d.s』……やつか」

 

 ハキは腕を組み、眉間に皺を寄せてその名前を口にする。

 

 

 

 今から数ヶ月前に、彼らの前に一人の男性が現れた。男性は名前を『d.s』と名乗った。

 

 その正体は不明で、彼らはそんな正体の分からない男性に警戒心を抱いたが、d.sはこう言った。

 

『戦う力が欲しくないか?』と。

 

 イキアやハキはその言葉に驚くも、突拍子の無い提案にとても信じられず声を荒げたが、d.sはある物を取り出し、二人を驚かせた。

 

 それはパーパルディア皇国の兵士が持つ銃と呼ばれる武器であったのだ。いや、厳密には別の銃だったのだ。銃は皇国の無駄な装飾が多い物と違い、地味な見た目だが、明らかに先進的な設計をしている代物だった。

 

 d.sはこの銃を提供すると申し出たのだ。更に反乱軍を組織すれば、全員分の銃に加え、兵器も仕入れてくると言った。もちろん銃や兵器を扱う為に教官を派遣して訓練を施すという。

 

 彼らからすればとても信じ難い申し出であったが、d.sが嘘を言っているようにも見えなかった。彼らは一先ずd.sが提供した銃と弾薬を受け取り、クーズ統治機構にばれないように密かに志を同じくする者達を集めに奔走した。

 

 その結果、一週間で400人以上が集まり、その頃には再びd.sが二人の前に現れており、この時は部下を引き連れて銃や弾薬を大量に持って来ていた。

 

 どうやって持ってきたかの詳細は話さなかったが、少なくともクーズ統治機構の目を欺くような身分で荷物を密かに運び込んだそうだ。

 

 そして反乱軍は密かに魔石が取れなくなって放棄された廃坑を射撃場にして、銃の扱いを学び始めた。

 

 

 ちなみにd.sと名乗った男性は、部下と共に他の属領でも、地下組織へ武器の提供を行っているという。

 

 

 

 今日までに800人前後の同志が集まっており、少しずつ増え続けている。そしてd.sは銃と弾薬を一週間ごとに反乱軍へと卸している。

 

 今のところクーズ統治機構に活動が気付かれている様子は無いが、このまま気づかれないという保証はない。いつ気付かれるか分からないので、今後も密かに活動を続けるつもりだ。

 

「……正直な所、やつのことは信じ切れない。確かにやつには支援をしてもらっているが……」

「それは俺も思う所はあるが、彼のお陰で俺達はクソ野郎共と戦える力を授かっているんだ。まだ他の仲間たちは戦える状態じゃないが」

「だからっていって、何も知らない余所者にとやかく国の今後を左右する指示を出される筋合いは無いだろ」

「それは分かるが、今の状態じゃ属領統治軍にも戦えるかどうかも怪しいんだぞ」

「……」

「それに、d.s殿はもちろんの事、『s.d』殿、『v.s』殿の訓練は着々と進んでいるじゃないか」

「……」

 

 するとイキアの言葉に、ハキは苦虫を噛んだような顔を顰める。

 

 

 なぜハキの反応が微妙なものなのかというと、反乱軍の訓練にd.sはもちろんのこと、二頭身の生物や、s.d、v.sも訓練を施しているのだが、s.d、v.sの二人は少女であり、なぜか露出度の多い服装をしていた。

 この際二頭身の生物から訓練を受けるのはいい、少女達の露出度の多い服装はどうでもいいが、まだ大人にもなっていない少女二人から訓練を受けるのは抵抗感があったのだ。それは他の者達も同じであり、疑問を抱く者や反抗する者が多かった。

 

 そこでd.sは反乱軍の訓練がてら、s.d、v.sの二人の実力を知ってもらうために、組み手を行うことにした。

 

 結論から言えば、誰一人s.d、v.sの二人に勝つことが出来なかった。もちろんd.sもに勝てなかったし、二頭身の生物にも勝てなかった。

 

 荒療治であったものも、これで誰もが彼らの実力を実感し、訓練に励んでいるという。尤も、大半が自分よりも年下の少女に負けたという現実に半ばプライドを折られかけていたが。

 

 

「それに、仮に統治機構の連中を倒せたとしても、すぐに正規軍がやって来て、俺達どころか、この国は滅ぼされるだけだ。俺達の勝手で国が滅びたら、元も子もない」

「……」

「兎に角、今は耐える時だ。この国を解放する日が来るまでな」

「……あぁ」

 

 ハキは渋々であったが、イキアの言葉に頷く。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、パーパルディア皇国

 

 

 

「ロデニウス連邦共和国……」

 

 皇国の皇都エストシラントに、大きな屋敷がある。その一室にて、壮年の男性が声を漏らす。

 

 彼の名は『カイオス』。パーパルディア皇国の第三外務局 局長の肩書きを持つ男性だ。

 

(文明圏外にあるロデニウス大陸で新たに建国された新興国家。どうやら多くの国が貿易を行っているようだな)

 

 カイオスはお抱えの密偵が調べた報告を思い出し、静かに唸る。

 

 彼は最近噂になっている新興国家について密偵に調べさせていた。これにより、ロデニウス連邦共和国の存在を知る事になった。

 

(文明圏外にある国だが、その技術力は大きく進んでいる。俄かに信じ難いが……)

 

 その報告の中には、密偵がカイオスと繋がりがあるロデニウス連邦共和国と貿易を行っている商人達から聞き出した証言があり、ロデニウス連邦共和国の技術力は第三文明圏を超えるというものがある。

 

 カイオスは典型的なパーパルディア皇国の人間だが、他と比べれば常識的であって、理解ある人間だ。しかしそれでも彼らの常識からすれば信じ難い内容だ。

 

 だが、商人の家の出である彼は、証言した商人が嘘を付いているとは考えにくかった。商人にとって信頼は金よりも大事なものだ。信頼無くして商売は出来ないのだから。

 そして何より、相手がパーパルディア皇国の人間であるなら、尚更信頼を損なう様なことをしないはずだ。

 

「……」

 

 カイオスは顎に手を当てて、一考する。

 

「そういえば、国家戦略局が独断で軍事援助を行っていたロウリア王国とやらは、ロデニウス大陸にあったな」

 

 ふと、彼はあることを思い出して、声を漏らす。

 

 

 旧ロウリア王国へ独断で軍事援助を行ったパーパルディア皇国 国家戦略局は自身の保身に奔走して、様々な方面で隠蔽を行っていた。その中には精神異常を起こしたとして精神病院に押し込まれた職員の口封じも含まれている。

 

 しかし小国の国家予算並の金と大量の物資が動いている以上、完全な隠蔽など不可能だ。彼らの目の見えないところで記録が残ってしまっていた。

 

 これにより上層部に国家戦略局の独断が発覚し、彼らは全員尋問を受けることになった。といっても、尋問とは言うものも、実質拷問であって、彼らは心が折れて全てを白状した。

 

 身勝手な行為に加え、無駄に金と物資を浪費したとして、国家戦略局の職員は処刑が予定されていたが、皇帝の慈悲によって全員一年の減給処分に加え最果ての地へ左遷され、人員も全てが一新された。

 

 しかし皇国は浪費した金の回収は行わないことにした。

 

 

(まぁ、いずれフィルアデス大陸を統一すれば、ロデニウス大陸にも手を伸ばすのだろう。だから今回何もしないというところか)

 

 カイオスは今回の上層部の判断をそう推測し、椅子の背もたれにもたれかかる。

 

 パーパルディア皇国はいずれフィルアデス大陸を統一するつもりでいる。そして更に力をつけて、第三文明圏を越して、世界を支配するのを目標としている。

 その一環として、文明圏外の国々も支配する。その中に、ロデニウス大陸も含まれているのだろう。

 

 まぁ、それ以前にそこまで支配するほど、国力が合っているかどうかが怪しいのだが。

 

「……ロデニウス連邦共和国か」

 

 カイオスは再度密偵の報告書を思い出し、声を漏らす。

 

(もう少し、詳しく調べた方が良さそうだな)

 

 カイオスは典型的なパーパルディア皇国の人間だが、他と違って多少皇国の力に酔っている感はあるが、用心深い男である。その為、密偵によく様々な事を調べさせている。

 彼は商人の家の出身とあって、とても顔が広く、情報収集能力に関しては一部のみ皇国の諜報部より高い。

 

 故に、詳しくロデニウス連邦共和国に関して調べてみる必要があると考えたのだ。

 

(まぁでも、そこまで急ぐ必要は無いか)

 

 文明圏外にて調査を行っている密偵を魔信を使って呼び戻そうとするも、別にそこまで急ぐ必要は無いと考え、次に戻ってくる時に頼めばいいと決める。

 

 彼は椅子から立ち上がり、部屋を後にする。

 

 

 

 

 しかし、この時彼は知る良しが無かった。

 

 

 

 この僅かな差が、全て(・・)を決めてしまっていたのを……

 

 

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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