異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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今回からパーパルディア皇国編に入ります。


第四章 パーパルディア皇国編 上 列強国の脅威
第五十四話 海賊との闘い


 

 

 

 

 中央歴1639年 8月30日

 

 

 

 ここ最近の文明圏外の海では、海賊による被害が増えつつあった。

 

 

 その原因として、第三文明圏の海から海賊が流れ込み、更に文明圏外の海の海賊と結託して被害が拡大したと思われるが、よく海賊が結託したものだと不思議に思うところはある。

 

 その上、海賊は文明国から横流しされたと思われる武器兵器で武装しており、文明圏外の国々からすれば先進的な武装を持つ海賊に対抗できず、商船は沈められるか、海賊の威嚇攻撃で降伏するしかなかった。

 

 それ故に、多くの国の商人は多額の金を払って文明国に護衛の戦力を派遣してもらっている。特に護衛に頼まれるのは、パーパルディア皇国であった。

 

 しかし皇国は法外な額の金や物資を要求しており、しかも消費した魔石の分やワイバーンロードの餌代、更に人件費までも要求してくる。なのに彼らは必要以上に戦力を投入し、確実に守っているが、無駄な動きが多いと来た。とてもじゃないが商売で利益を得ても、その殆どを皇国に支払わなければならない、ぼったくりもいい所であった。

 

 だが、海賊の装備が豊富になっていたり、質が良くなっていたりと、自分達では手に負えなくなっているので、彼らは泣く泣くパーパルディア皇国に頼むしかないのだ。

 

 一方海賊は文明圏外とはいえど、金目の物であれば高く売れるので、文明圏外の、しかもパーパルディア皇国に護衛を頼めないほどの貧困な国の船団を狙うのだ。

 

 

 そして海賊は今日も、文明圏外の国の船団を狙い、金目の物や、女子供を狙う。

 

 

 

 だが、ある日を境に、彼らは狩る側から、狩られる側に変わろうとしていた……

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「キャプテンッ!! 前方に船団発見!!」

 

 マストに備えられた見張り台に居る船員が、大声を上げて海賊船の船長に報告する。

 

「どこの船で、数は!」

「シオス王国の船団で、中央に四隻、その周りを三隻が囲っていやす!!」

「シオス王国か。周りの船もそうだな!」

「へい! 間違いありません!」

「なら、たっぷりと荷物を運んでるだろうな」

 

 見張りから報告を聞き、船長は獰猛な笑みを浮かべて右掌に左手の拳を叩きつける。

 

「野郎共!! 戦闘準備だ!!」

『オォッ!!』

 

 船長の号令と共に、周りの船員達が各々の役目を果たすべく動く。

 

「周りの船に伝えろ!! 一気に接近して攻撃すると!」

「アイアイキャプテン!」

 

 船長の命令で船員の一人がマストの根元にある装置に駆け寄り、ボタンを操作して穴に向かって喋る。

 

 それは魔力通信機であり、周りを航行している味方の海賊船に連絡を取っている。よく見れば、両舷には大砲と思われる物が並べられている。

 

 とても海賊とは思えないほどに、装備が充実している。

 

「キャプテン! 今日も大量になりそうですな!」

「だろうな! こっちには大金を払って手に入れた魔導砲があるんだからな。負ける気がしねぇぜ!」

 

 船長は気を良くして船員達が準備している魔導砲を見る。

 

 そして周りを航行している三隻の海賊船にも、魔導砲が備えられており、船員達が発射準備に取り掛かっている。

 

 

 やがて海賊船四隻は帆をいっぱい張って風を受け、全速力でシオス王国の船団に向かっていく。

 

 するとシオス王国側も、周りに展開していた三隻が四隻から離れて海賊船四隻に向かっていく。

 

「キャプテン! 周りにいた三隻がこっちに向かっていやすで!」

「護衛が来たか。意外と気付くのが早かったな。だったら、木っ端微塵にしてやる! 先にやつらをやるぞ!」

 

 船長の指示に船員達は大きな声で返事をして、魔導砲に着く。

 

(馬鹿なやつらだ。こっちには魔導砲があるんだ。向こうの射程外から一方的に撃てて何でも破壊できる。そして商船は俺達に恐怖して降伏する。こんな楽な事は無いぜ)

 

 船長は腕を組み、獰猛な笑みを浮かべながら、内心呟く。

 

 文明圏外では長距離を撃てる武器は良くてもバリスタ程度であり、威力はあっても船を大きく破壊出来るほどではない。その上設備の都合上多く搭載できない。一方魔導砲は射程が長く、破壊力もある。その上魔導砲単体で運用が可能であり、場所を取らないのでいくつも載せられる。

 勝負にならないのは明白だ。

 

 

 やがて海賊船は護衛の船に近づいて行き、魔導砲の射程に入ろうとしている。

 

「砲撃用意!!」

 

 船長の命令で魔導砲に着く船員達は護衛の船に狙いを定める。

 

「……」

 

 そしていつでも砲撃開始の命令を下せるようにした、その瞬間……

 

 

 

 突然背後で何かが弾ける音がした。

 

「っ?」

 

 船長は思わず後ろを振り向くと、マストの一部が弾けていた。

 

「なん―――」

 

 

「ギャァァァァァっ!!」

 

 

 すると突然船上に悲痛な叫びが上がって誰もが声がした方を見る。

 

「う、腕が、俺の腕がぁぁぁぁぁっ!?」

 

 そこには床に倒れ、片腕が千切れて血を流している船員の姿があり、その傍に千切れ飛んだ腕が落ちている。

 

「お、おい、何があっ――――」

 

 近くに居た船員が近寄ろうとした瞬間、その船員の頭が弾け飛び、床に血肉と骨をまき散らす。

 

「はっ?」

 

 突然の光景に誰もが呆然となり、頭を失った船員はゆっくりと前のめりに倒れる。

 

「ギャッ!?」

「ぐわっ!?」

「ぐぇっ!?」

 

 すると次々と船員達が身体のどこかを失うか、身体に大きな孔を開けられて倒れていく。

 

「な、なんだ!? どうなっている!?」

 

 船長は今の状況が理解できず、慌てふためく。まぁ船員たちが突然死亡すれば、誰だった慌てる。

 

「キャプテン!! シオス王国の護衛の船から何かが飛んできてる!! 他の船も襲われている!」

「っ!」

 

 樽の陰に隠れている船員が悲鳴のようにそう報告すると、直後に樽が貫通した何かによって身体に大きな穴を開けて倒れる。

 

 船長は船の端に向かい、シオス王国の護衛の船を見る。

 

 すると護衛の船から何か小さな物が放たれており、味方の船がその放たれた小さな物に襲われている。しかも短い間隔で放たれている為、一本の線のようにも見える。そしてその小さな物が放たれる度に小さく破裂音が響く。

 

「な、なんだ、何が起きているんだ?」

 

 船長は目の前で起きている現実を理解できず、呆然と立ち尽くす。

 

 その直後、彼は身体に衝撃を受けて後ろに吹き飛ばされ、最期に見たのは、上半身の無い自身の下半身であった……

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一方、シオス王国の護衛の船では……

 

 

「撃てっ!! 海賊は一人たりとも逃がすな!!」

 

 船長の言葉に答えるように、左舷に集まっている船員達は銃撃を続ける。

 

 護衛の船には、なぜか文明圏外に無いはずの機関銃の存在があり、重厚な音共に、弾丸が連続して放たれている。

 

 それも、この機関銃というのが、史上最高の傑作機関銃こと『ブローニングM2重機関銃』である。

 

 その上、船首側には『ボフォース40mm機関砲』もあり、発射速度こそブローニングM2重機関銃より遅いが、それでも大きな発砲音と共に40mmの弾丸が放たれて海賊船の船体を破壊していく。

 

 

 

 というのも、この三隻の護衛の船は、そもそもシオス王国の船ではない。マストには良く見るとシオス王国の国旗以外に、別の国の国旗が掲げられている。この護衛の船の所属は、『ロデニウス連邦共和国』である。

 

 最近増えた海賊被害に、ロデニウス連邦共和国は領海内の治安維持を行う目的で『海上警備隊』を設立した。と言っても、実質的にこの組織は海軍の沿岸警備隊を独自の組織として切り離し、拡張したものであるが。

 

 海上警備隊の主な活動は、領海内、および外海での治安維持を目的としており、領海に侵入した不審船の取り締まりから、武装勢力の鎮圧を行う。

 

 そして現在では国交を結んでいる国の海賊被害を受けて、海上警備隊が各国より依頼を受けて、護衛を請け負っている。

 

 海上警備隊の戦力はマツ級駆逐艦を改装した『第100番級警備艦』や乙型哨戒艇、更に改造帆船がある。

 

 この改造帆船はかつて旧クワ・トイネ公国海軍にて訓練で用いられた船であり、帆船に動力化改装を行い、機関銃等の武装が搭載されたものだ。

 初期の頃の旧クワ・トイネ公国海軍を支えた船だが、マツ級駆逐艦や乙型哨戒艇が導入されると次々と除籍され、旧クイラ王国海軍に譲渡された。

 

 しかしロデニウス大陸の三ヶ国が統一してロデニウス連邦共和国が建国されると、三ヶ国の海軍は統一され、運用兵器もまた統一された。

 

 それによって改造帆船は役割を終えて、順次解体されていった。しかしそのまま解体するには些か勿体無いところがあるし、その上数だってあるのだ。うまく活用できないかどうか考えていたところ、海上警備隊で運用することになった。

 

 だが、海上警備隊でも警備艦や哨戒艇があるのに、わざわざ使いづらい旧式の帆船を改造した船を使う必要があるのか?

 

 そこに入ったのが、海外の国での海賊被害の拡大だ。

 

 この海賊被害の対策として、海上警備隊が船団護衛を担うものだ。現在ではシオス王国や、その他に数ヶ国がロデニウス連邦共和国に護衛を依頼している。

 

 しかしここである問題がある。それは警備艦や哨戒艇を用いて護衛を行うと、海賊が現れなくなることだ。いくら装備が整いつつある海賊とは言えど、相手の実力が分からないほど馬鹿ではない。見た目からやばいと感じれば襲うことはしない。

 そうなると海賊の数は減らず、被害は減っても他へ被害が広まる可能性が懸念された。

 

 そこで一躍買ったのが、この改造帆船である。

 

 海上警備隊では、この改造帆船に更に改造を行っており、搭載しているブローニングM2重機関銃やボフォース40mm機関砲を甲板内や物陰、物資に扮して隠せるように改造されており、偽装を施せばただの帆船にしか見えないようになっている。

 ちなみに搭載しているディーゼルエンジンも改良が加えられており、燃費が良くなっているので、航続距離が伸びている。

 

 この事から、この改造帆船を『仮装帆船』と名付けて、船団護衛に就かせている。

 

 この仮装帆船は本当に戦闘時以外の見た目はただの帆船にしか見えず、弱い者にしか強気に出れない海賊からすればまさに格好の獲物だ。それが装備の整えられた海賊なら尚更だ。

 まさに『海賊ホイホイ』だ。

 

 故に、海賊はこの仮装帆船に狙いを定めて襲撃し、正体を現した仮装帆船にものの見事に返り討ちになって、殲滅されるか検挙されている。

 

 

 このお陰で多くの海賊が捕らえられ、他の海賊被害が徐々に少なくなっているという。

 

 ちなみに仮装帆船には、護衛を依頼した国の国旗が掲揚されているが、これは敵の目を欺く為に依頼国から許可を得て旗を掲げている。もちろん戦闘時にはロデニウス連邦共和国の国旗が掲げられる決まりになっている。

 まぁこの世界では条約なんてものはないので、そんな事を気にする必要は無いのだが、これを繰り返せば必ず真似をする輩が出てくるので、そうならないように率先して行っているという。

 

 

 

 三隻の仮装帆船は海賊船に向けてブローニングM2重機関銃とボフォース40mm機関砲を放ち、海賊船の船体を破壊していく。

 

 ブローニングM2重機関銃は徹甲焼夷弾と呼ばれる弾薬を使用しており、貫通力の高い徹甲弾に焼夷弾の機能を追加した弾で、木造船に極めて効果的な威力を持つ。その為、木造の海賊船は徹甲焼夷弾が命中した箇所から火の手が上がって火災が発生している。

 

 遂には海賊船の一隻が船内に貯蓄している魔導砲に用いる魔石に徹甲焼夷弾が命中して引火し、海賊船が大爆発を起こして、木っ端微塵になった船体は船員達と共に沈んでいく。

 

 他にボフォース40mm機関砲より放たれた弾の直撃で船体に大きな穴が開いて、浸水を起こして船体が傾き始めている海賊船の姿もある。

 

「船長! まもなく鎮圧部隊が海賊船に接近します!」

「よしっ。攻撃止め! 様子を見る」

 

 船長の号令と共にブローニングM2重機関銃とボフォース40mm機関砲の射撃が止む。

 

 

 

「っ! 敵の攻撃が止んだ!」

 

 生き残った二隻の内、一隻の海賊船の船員が手摺に掴まりながら声を上げる。

 

「なぜ急に攻撃を止めたんだ?」

「きっと、弾が切れたんすよ!」

「いや、罠だ! 俺達が逃げようとした瞬間攻撃を再開するに決まってる!」

 

 船員達は敵が攻撃をやめた事にそれぞれの意見を口にする。

 

「船長! どうしますか!?」

「……」

 

 船員の一人が険しい表情を浮かべる船長に指示を請う。

 

「……逃げるぞ」

「えっ?」

「逃げるに決まっているだろ! こんな話は聞いてねぇよ! こんなんじゃ割りに合わねぇ!!」

 

 船長は怒りを露わにしながら文句を垂れる。彼は他の海賊の話に乗って、横流しされた魔導砲を大金を積んで購入し、共同で襲撃を行う計画だったが、まさか一方的にやられるとは思わなかった。

 

「取り舵いっぱい! 魔導砲は無駄になってもいい! 牽制して撃て!」

「他の船はどうしやす!?」

「放っておけ! 今は自分の事を考えろ!」

 

 船員に怒鳴るように船長はそういうと、踵を返す。 

 

「せ、船長!!」

「今度は何だ!」

 

 すると悲鳴のように船員が声を上げて、船長は怒鳴るように叫ぶ。

 

「う、海を!!」

「海? 海を見てなんだっていう―――」

 

 船員に言われて、今更海を見てなんだと船長は苛立ちながら海を見ると、彼の言葉は途切れ、みるみる内に彼の表情が驚愕の色に染まっていく。

 

 なぜなら、海の上を少女が走っているのだ。詳しく言うと、アイススケートのように海上を滑っているだろう。

 

 そんな海を滑っている少女が何人も居て、こっちに向かって来ているのだ。何も知らない人間からすれば驚愕の光景だろう。

 

 

 その少女の正体は、KAN-SENである。

 

 

 海上警備隊には数人のKAN-SENが所属しており、主に駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦、少数だが戦艦と空母のKAN-SENが所属している。シオス王国の護衛にKAN-SENが率いる第一警備隊が就いているのだ。

 

 そしてKAN-SENはその能力を最大限生かすために、緊急時以外軍艦形態は用いず、本来の姿ともいえる人型形態で活動し、その姿で直接不審船に乗り込んで犯罪者を鎮圧するのだ。

 

 

「な、なんだあれは!?」

「こ、子供の女が海を滑っているのか!?」

「どうなっているんだ!?」

 

 KAN-SENの海を滑る姿を見て、誰もが驚き、慌てふためく。

 

「な、何してる野郎共!! さっさと魔導砲を撃て!! やつらを絶対に近づけるな!」

 

 そんな中で、船長は慌てた様子で指示を出し、船員達は魔導砲を近づいてくるKAN-SENに向ける。

 

「撃てぇっ!!」

 

 そして船長の号令と共に魔導砲が次々と放たれる。

 

 魔導砲が砲撃したのを確認してか、KAN-SEN達は散開して砲弾を回避する。

 

「怯むなぁっ! 撃って撃って、撃ちまくれ!!」

 

 船長はやけくそ気味に指示を出すが、船員達は誰も責めることもなく、魔導砲に魔石と砲丸を詰め込む。

 

 装填を終えた砲から順次砲撃が行われ、砲丸がKAN-SENへと向かっていくが、あまりにも遅い速度で飛翔する砲丸をかわすのは彼女達には簡単であり、掠るどころか、着弾時の水柱にも接触しない。

 

 すると、KAN-SENの一人……『時雨』が艤装の主砲を海賊船に向けて放ち、放たれた砲弾が舷側にある魔導砲に命中し、爆発を起こす。近くに居た船員はモロに至近距離から爆風を受けて身体中に破片が突き刺さりながら吹き飛ばされる。

 

「っ!」

 

 爆風で船長は思わず腕で顔を覆う。

 

 すると二人のKAN-SENが速度を上げて一気に海賊船に近づき、強く海面を蹴って飛び上がる。

 

 船員の誰もがその非常識な光景に目を奪われる中、二人のKAN-SENは海賊船の船上へと着地する。

 

「……」

「……」

 

 二人のKAN-SENこと、『綾波』と『江風』の二人は、背中合わせのようにして立ち、それぞれ手には得物の刀を持っている。

 ちなみに『江風』は本来『長門』の護衛の為に傍を離れるわけには行かないのだが、今は人手不足とあって、『長門』の身の安全を確保することを条件に、今回第一警備隊のシオス王国の船団護衛任務に同行している。

 

「な、なんだこいつら……」

 

 二人の周りには船員達がそれぞれの得物を手にして、KAN-SENの異様な姿に警戒している。

 

 見た目は亜人の少女にしか見えないが、背中には何やら金属製の物体を背負っている。それを除けばただの亜人の少女なのだ。にも関わらず、海賊としての警戒心か、悪党としての勘か、二人の少女からただならぬ気配を感じ取っている。

 

「降伏しろ。既に勝敗は決している」

 

 『江風』は表情を変えることなく、海賊達に降伏勧告を行う。

 

「大人しく降伏すれば、命は保障する」

 

 続けて『綾波』が説明をするも、むしろそれが海賊達の怒りを買うことになる。

 

「命だと? ふざけるなっ!! どうせ捕まっても俺達は縛り首だろうが!!」

「そうだ! やっちまえっ!!」

 

 そして海賊達は雄たけびを上げて、得物を手に二人へと向かっていく。

 

「警告はしたぞ。あとは知らん」

 

 と、『江風』は静かにそう告げると、手にしている刀を構えて、床を力強く蹴り、海賊に向かって跳んで行く。

 

 まさか向かってくるとは思っていなかったのか、海賊達は思わず立ち止まってしまい、『江風』はその隙に刀を振るい、海賊を二人まとめてマスト目掛けて吹き飛ばす。

 

 彼女の背後から大柄の船員が棍棒を振り下ろすも、『江風』は刀を振るった勢いのまま左脚を振るい、棍棒を蹴り飛ばす。唖然とする船員を尻目に彼女はその勢いのまま更に右脚で海賊を蹴り飛ばして、床に着地する。

 

「ひぃ!?」

 

 一瞬にして三人がやられて船員の一人が短く悲鳴を上げるが、彼女はお構いなしに床を蹴って跳び出し、刀を振るって船員を殴り飛ばす。

 

「安心しろ。峰打ちだ」

 

 彼女はそう言うものも、本気ではないにしても艤装を纏ったKAN-SENがやっているので、峰打ちでも人間には十分威力があるようだ。刀の峰で殴り飛ばされた船員達はぐったりとしている。

 恐らく骨の一本や二本折れているはず。

 

 『江風』は他の船員に目をやると、刀を振るい、走って接近する。

 

 

 そして『綾波』もその素早い動きで海賊達を翻弄し、手にしている刀の峰で殴って、行動不能にしている。

 

「くそっ! くそっ!! 何なんだ、一体何なんだよ、お前達は!!」

 

 船員の一人が涙目で叫びながらナイフを振るうも、『綾波』は太刀筋を読んで僅かな動きでかわし、隙を見て刀を振るって、峰で打ちつけて殴り飛ばす。

 

「……」

 

 そしていつの間にか、『綾波』と『江風』の二人は、海賊船の船員の殆どを鎮圧し終えており、床には峰打ちで殴られて気を失い、倒れている船員達の姿がある。

 

「くそっ!! くそっ!! 化け物共め!!」

 

 最後の一人になってしまった船長は悪態を付きながら、『綾波』と『江風』の二人を見る。

 

 たった二人の少女によって、大の大人が数分足らずで鎮圧されたのだ。こんな現実味の無い光景に悪態を付くのも仕方ないことだろう。

 

「まだ、続けるの?」

 

 『綾波』は目を細めて船長に問い掛ける。

 

「ふざけるな、ふざけるなぁっ!! こんな馬鹿な現実があってたまるかぁ、クソ餓鬼がぁっ!!」

 

 と、船長は罵倒しながら懐からフリントロックピストルのような拳銃を取り出し、『綾波』に向けて引き金を引き、発砲する。

 

 

 カンッ……

 

 

「はぁ……?」

 

 しかし拳銃から放たれた弾丸は『綾波』の顔に直撃するが、弾丸はまるで金属に当たって弾かれたような音を立てて弾かれた。弾丸が当たった『綾波』は当たった衝撃で頭が若干揺れた程度で、掠り傷も無く、痛みを感じている様子も無い。

 あまりにも現実離れした光景に、船長は思わず声を漏らす。

 

 艤装を纏ったKAN-SENは軍艦のスペックを火力以外はほぼそのまま発揮出来る。いくら装甲が薄い駆逐艦とあっても、拳銃程度の豆鉄砲で貫通できるわけが無い。

 

 『綾波』は床を蹴って跳び出すと、一瞬で船長の懐に潜り込んで刀の峰で殴りつけ、勢いよく投げ飛ばす。

 

 投げ飛ばされた船長は部屋の扉に背中を打ち付けてぶち破り、部屋の中へと入る。船長は刀の峰を打ちつけた衝撃と扉をぶち破った衝撃で気を失う。

 

「終わったか」

「うん……」

 

 『江風』が刀を腰に佩いている鞘に収めながら問い掛けると、『綾波』は短く返す。

 

『こちら「高雄」 海賊船の制圧を完了。そっちはどうだ?』

 

 と、二人の通信機に別の海賊船を担当した『高雄』からの通信が入る。

 

「うん。こっちも終わった」

「少なくとも死傷者は居ないだろう。全て峰打ちで済ませたからな」

『いや、結構本気で殴ってたよな?』

 

 二人がそう報告すると、『時雨』が呆れた様子でそう言う。

 

 

 シオス王国の船団を襲撃しようとした海賊は、ロデニウス連邦共和国の海上警備隊と、所属するKAN-SENによって鎮圧された。

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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