異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第五十七話 国交開設と違和感

 

 

 

 その頃、フェン王国の首都アマノキでは……

 

 

 

「この雰囲気、重桜を思い出すな」

 

 ロデニウス連邦共和国の外交官として派遣された『大和』は一同の先頭にて、街の雰囲気を見てそう呟く。

 

「そうですわね。とても重桜に似通っていますわ、総旗艦様」

 

 彼の隣に立つ『赤城』がその言葉を肯定する。今回彼の補佐を行う役目を、ようやく彼女が獲得したのである。

 

 国中の空気が張り詰めているような、厳格な雰囲気が漂っている。生活水準は低く、国民は裕福とは言えない。しかし精神性の発達は高く、誰もが礼儀正しい。

 外交官一行を見ると、誰もが頭を下げて、道を開ける。尤も、中には『赤城』の姿を見て驚きを隠せない者が多かったが。

 

「しかし、お前が来るとはな。別にそうまでして付いて来る必要は無いんだがな」

「『赤城』がそうしたいので、総旗艦様が気にする必要はありませんわ」

「……」

「それに……」

 

 と、『赤城』は微笑みを浮かべて、『大和』を見る。

 

「これまで『赤城』を連れて行かなかったのは、『赤城』を守る為ですわよね」

「さて、何のことやら」

 

 『大和』は『赤城』の問いに、わざとらしく答える。

 

 これまでの彼女であれば、艤装が改装中で一時的に切り離されていたので、KAN-SENとしての力を発揮できない状態であった。その為、『赤城』は万が一の事態で自分の身を守れないでいた。

 この異世界では何が起こるか分からない以上、『大和』は彼女を外交官の補佐として連れて行くわけにはいかなかったのだ。

 

 普段から何だかんだと言っているが、『赤城』の事を愛しているからこその、彼なりの優しさなのだ。

 

「ですが、ご心配なく。『赤城』はもう自分の身は自分で守れるようになりましたので」

 

 と、『赤城』は自分の姿を見せ付けるように歩きながら両腕を広げる。

 

 改装を終えた艤装を受け取った彼女は、以前と比べて服装や容姿に若干の変化が見られた。といっても、服の装飾が若干変わっていたり、髪がほんの少し長くなったり、尻尾の毛のボリュームが少し増えた程度と、目を凝らさないと分からない位の変化であるが。

 

「それに、『天城』姉様からのお願いもありますから。『赤城』が総旗艦様の事を守って差し上げないと」

「……」

 

 笑みを浮かべる彼女はそう告げる。『大和』は出来れば『天城』を連れて行きたいと思っているが、やはり身体の弱い彼女に長旅は負担が大きい為、連れて行くことが出来ないでいる。もし旅の途中で彼女が体調を崩したら、どうしようもないからだ。

 

「えぇそうです。この『赤城』さえ居れば、総旗艦様をお守り出来ますもの。他に必要はありませんわ」

「貴様一人では不安だから、『天城』さんは私にも頼んだのだろうが」

 

 と、やけに彼女は自分の事を強調して言っていると、不機嫌そうな声が『大和』の後ろでする。

 

 『大和』の後ろを歩いて警護しているのは、『土佐』である。彼女は『大和』や外交官一行の護衛の為に同行している。

 

「あら、何か言いましたか、妹さん?」

 

 と、笑みを浮かべたまま威圧感を醸し出す『赤城』は『土佐』を見る。

 

「貴様一人では力不足だと言ったんだ」

「それはあなたと同じでなくて? たかが戦艦一隻で何が出来ると?」

「戦艦を甘く見ていると痛い目を見るぞ、腰巾着」

 

 そして二人の間に火花が散る。

 

(やっぱり無理してでも他のやつを連れてくるべきだったな)

 

 言い争いを始める二人に、『大和』はげんなりとした様子で、内心ため息をつく。

 

 

 『赤城』と『土佐』はどういうわけか仲が悪い。それぞれの姉同士なら仲は悪くないのに、妹同士ではこれである。

 

 事あるごとに二人は衝突し、言い争っている。主に『大和』関連だが……

 

 まぁこれに関しては、『大和』に近づくKAN-SENを近づけまいという『赤城』の思惑が関わっているのは確かなようで、姉の『天城』や妹分の『加賀』は良くても、『土佐』までは許していないようだ。

 

 『土佐』自身『大和』の事をどう思っているのかと言うと、彼女はトラック泊地では『天城』や『ビスマルク』に次ぐ古参勢に入る古株で、『大和』とも付き合いは長い。というか、彼女もまた『大和』と結ばれた関係にある。

 まぁ約一名この関係を認めていない者が居るが……

 

 

 そもそもこうなるのが分かっていながら、なぜ二人を連れて来てしまったのか……

 

 まぁ簡単な話、この二人以外は仕事や用事があって『大和』に同行できなかったというわけだ。

 

 『加賀』や『アークロイヤル』はまだパイロットの教導が残っているし、『グラーフ・ツェッペリン』はとある兵器の試験運用を行う予定があり、『出雲』は陸軍の歩兵の訓練を行っている。他のKAN-SEN達も何かしらの仕事があったのだ。そんな中で、偶々何も無かったのが、『赤城』と『土佐』なわけである。

 

 

「その辺にしろ、二人共」

 

 と、ヒートアップする二人に『大和』が止めに入る。

 

「俺達は国の代表で来ているんだ。みっともない姿を晒すのだけはやめてくれ」

「総旗艦様」

「総旗艦」

 

 彼が止めると、言い争っていた二人は、睨むように一瞥して言い争いを止める。

 

(せめて国交開設時の会談の際に問題を起こさなければいいんだがな……)

 

 一応客前では弁える二人だが、二人が同じ場で居るとなると何をしでかすか分からない。

 

 内心一抹の不安を覚えながらも、外交官一行は城を目指す。

 

(しかし、本当に重桜に来た時を思い出すな)

 

 そんな中、『大和』は城を見ながらその時のことを思い出す。

 

 

 まだ彼らが旧世界に居た頃、『大和』達トラック諸島の面々は重桜と接触し、そこで会談を行った。

 

 その際に、『大和』は摩訶不思議な出会いを果たした。

 

 それは、重桜の連合艦隊の旗艦である……『大和』だ。もちろん、大和型航空母艦の方ではなく、大和型戦艦の『大和』である。

 

 本来の姿とも言える戦艦『大和』と、運命の歯車が狂って異なる姿となった空母『大和』 同じようで異なる二つの『大和』が邂逅した瞬間だった。

 まぁ、特に何かあったわけではないが……

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 外交官一行は王城に着くと、一室に案内される。道中『赤城』と『土佐』の姿を見た者達は一様に驚いていた。まぁ主に九本ある尻尾にだが……

 

「剣王が入られます」

 

 と、側近が声を上げ、襖を開いた。『大和』達一行は立ち上がって礼をする。

 

「そなた達がロデニウス連邦共和国の使者か」

 

 声は低いが良く通る声で、どこか懐の大きさを感じさせる。

 

 その雰囲気から『大和』は剣王がかなりの実力者であるのを感じ取り、後ろに居る『土佐』もまた剣王がその道の達人の域を大きく超えているのを感じ取る。

 

「はい。我が国は貴国と国交を締結したく、参りました。ご挨拶として、我が国からの贈り物をご覧ください」

 

 と、『大和』は外交官らに目配りをして、彼らは手にしている鞄や箱より贈り物を取り出し、剣王と側近達の前に並べられる。

 

 着物や真珠のネックレス、扇、運動靴、そして重桜の刀である。

 

 シハンは迷うこと無く、重桜の刀を手にすると、鞘から刀を抜いた。

 

「おぉ、これは……なんと見事な」

 

 彼は手にした刀の刀身に浮かぶ波紋の美しさに見惚れ、感嘆の声を漏らす。妖精達が丹精込めて打った刀は、彼の心を射止めたようだ。

 

 刀のような刃物類を贈り物に選ぶのは、国によってはタブーなのだが、どうやらフェン王国ではその類に当てはまらない様だ。むしろ武士の国だからこそ、刀は喜ばれるのだろう。尤も、刀の質が良いと言う前提の話だろうが。

 

 側近達も贈り物をそれぞれ手にして、思い思いに検分している。

 

 そしてそれらの品々から、ただの新興国家ではないことを薄々感じ取る。

 

「貴国にもとても優秀な刀鍛冶がおられるようですな。そして実力を伴った剣士も」

 

 気を良くしたシハンは重桜の刀を鞘に戻しながら『土佐』を一瞥する。彼もまた彼女の実力を感じ取ったようだ。

 

 彼は大陸共通語で書かれた文書を確認し、ロデニウス連邦共和国からの通商条約締結における提示条件と、書類に間違いが無いか、口頭でも確認した。

 

 

 そして書類内容の確認が終わると、シハンは語気を緩めて彼らに問い掛ける。

 

「失礼ながら、私はあなた方の国、ロデニウスをよく知らない」

(ん?)

 

 『大和』はシハンの口調に違和感を覚えながらも、黙って彼の言葉に耳を傾ける。

 

「ロデニウスからの提案、これはあなた方の言うことが本当ならば、凄まじい国力を持つ国と対等な関係が築けるし、夢としか思えない技術も手に入る。我が国としては申し分ない」

「それでは―――」

 

 外交官らの顔が明るくなる。これで国交開設がうまくいく、と。

 

 だが、それを遮って剣王はあくまで穏やかに話を続けた。

 

「しかし、ロデニウス大陸があるのは文明圏外。海に浮かぶ鉄船や飛行機械の技術は、とても信じられない気分だ」

「それは……」

 

 シハンの言葉に、外交官の一人が言葉を詰まらせる。

 

 本来であれば、文明圏外にある国々の技術力は高が知れており、それが常識なこの世界では、フェン王国の言い分も納得の行くものだ。

 ロデニウス連邦共和国がこれだけの技術力を得られたのも、異世界から転移したトラック諸島というイレギュラーな存在があってこそである。

 

「……我が国に使者を派遣していただければ、我が国はすぐに受け入れる準備が」

「いや、我が目で見て確かめたい」

 

 『大和』が使者の派遣を提案するも、シハンは言葉を遮ってそう言う。

 

「と、申しますと?」

「近い内に我が国で5年に一度軍祭と呼ばれる祭が開催される。これは各国を招待して、それぞれ武力を見せる祭でしてな」

「な、なるほど(公開演習みたいなものか?)」

 

 シハンの口から出た軍祭のことについて予想するも、口に出さず内心に留めて、続きに耳を傾ける。

 

「貴国には水軍があるようですな」

「確かに我が国には海軍がありますが……」

「その海軍より、何隻かの軍艦を派遣してもらえないだろうか? 今年は我が国の水軍から廃船が8隻出る。それを敵に見立てて攻撃してみて欲しい。要は、貴国の力を見たいのだ」

 

 シハンの言葉に、『大和』達は面食らう。

 

 他国が国交も無い国に軍を派兵するというのは、威嚇行動でしかない。砲艦外交というのは普通嫌がられるものだが、彼らは力を見せろと言ってきた。しかも首都アマノキの沖に持って来いと。

 下手すれば真っ先に首都を狙われるような行為だ。

 

「……私の一存では決めれませんので、この一件は一旦本国に持ち帰って検討いたします」

「構わぬ。良き返答を期待している」

 

 答えが望みどおりだったのか、シハンは笑みを浮かべて頷く。

 

 その笑みに何か含みがあるような……『大和』はそんな違和感を覚えながらも、一礼してから部屋を後にする。 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『――――と、向こうは申されました』

「そうですか」

 

 大統領府にて、カナタはテレビ電話で『大和』より報告を受けて、息を吐く。

 

(武力を見て信用に値するかを判断する。あの国らしいといえば、らしいですね)

 

 カナタはフェン王国より要請された軍祭への軍艦の参加要請に内心呟く。

 

 武士の国とあって、信用に当たる要素は武が主であるようだ。

 

『どうしますか?』

 

 カナタは『大和』に問われて一考すると、しばらくして口を開く。

 

「ここでフェン王国の心象を悪くするわけにはいきませんので、彼らの言うとおり軍祭への参加要請を受けましょう」

『そうですか』

「この際ですから、こちらも利用させていただきますよ」

『と、言いますと?』

 

 『大和』は怪訝な表情を浮かべる。

 

「軍祭にはフェン王国以外にも、多くの国が参加します。となれば、必然的に他の国々は我が国の力を目の当たりにしますからね」

『……軍祭を我が国の宣伝の場にすると?』

 

 『大和』はカナタの考えを察する。

 

「我が国の力を他国に示せば、我が国の力を知ってもらえるので、不要な衝突を避けられますし、何より我が国に国交を結びたい国が多く現れることでしょう」

『なるほど』

 

 彼は頷き、カナタの考えを理解する。

 

 ロデニウス連邦共和国がどれほど技術力があるといっても、文明圏外にある以上、それによる偏見が国交開設時に大きな障害になるだろう。

 

 今回の軍祭ではそれなりに多くの国が参加するのなら、その国々との国交開設はスムーズに進めるだろうし、何より国交開設を行いたくこちらにやって来るだろうという、淡い期待を寄せている。

 ぶっちゃけた話、国交開設の為に他国へ向かうのは色々と苦労が掛かる。

 

「『大和』殿外交官一行は一旦本国へ帰国してください。軍祭の時には再度派遣ということで」

『分かりました。剣王シハン殿に軍祭参加の意向を伝えた後、帰国します』

 

 と、『大和』は一間置いて口を開く。

 

『では、後日大統領府にて』

 

 そして『大和』はテレビ電話を切り、パソコンの画面から消える。

 

「……」

 

 カナタは息を吐き、椅子の背もたれにもたれかかる。

 

(これが我が国の国際発展の足がかりになれば良いのですが……)

 

 彼はロデニウス連邦共和国の国際的な発展を大いに期待すると同時に、大きな不安を抱く。

 

(問題は、パーパルディア皇国か)

 

 その一番の不安とは、パーパルディア皇国だ。今後国交開設を行っていくなら、この国が一番の障害となる。

 

 と言っても、ロデニウスはパーパルディア皇国と接触を図らないことを決めているので、少なくとも障害になりえないはず。

 

 しかし、パーパルディア皇国が既にロデニウス大陸に手を伸ばし始めているのは事実。先の戦争も実質的にパーパルディア皇国が間接的に起こしたようなものである。

 

(どう足掻いても、かの国と衝突するのは避けられない。平和的な外交を行いたいが、あの国にそれを求めるのは無理な話か)

 

 パーパルディア皇国の数々の暴君な話を知っているからこそ、カナタは最初から平和的な外交を行うはずが無い。ましてもそれが文明圏外に属しているロデニウスなら、尚更だ。

 

(だからこそ今は準備をしている。いずれ来るであろう争いに向けて、我が国が平和で居られるようにな)

 

 カナタは改めてこの国を守る決意を胸に秘める。

 

 まぁ、その度に最前線に立つのは、『大和』達KAN-SEN達だ。本来ならこの世界の者である自分達がやるべき事だが、それでも彼らは戦うだろう。

 例え異世界の者であっても、今はこの世界の一員だ。

 

 そして彼らもまた、同じように平和を望んでいる。

 

「平和を望むのならば、戦いに備えよ、か」

 

 カナタは『大和』が口にした言葉を思い出し、声を漏らす。

 

 本当に平和を望むのなら、いつか起こるであろう戦争に備えて武力を有さなければならない。完全平和なんて机上の空論だ。本当に信じているやつは余程頭がお花畑の理想主義者だ。

 武力を否定した国は、真っ先に他国から食い物にされるだけなのだから。

 

「……」

 

 カナタは気持ちを切り替えて、執務の続きを行う。

 

 

 




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