異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第五十八話 軍祭

 

 

 

 中央暦1639年9月25日 フェン王国首都アマノキ

 

 

 

 軍祭が開催されているとあって、首都アマノキは賑わいを見せている。

 

 特に港では多くの国の軍船が集まっており、港では多くの関係者が自分達の軍船を自慢している。離れた場所では弓矢の射的や様々な武道を披露している。

 こうして各国は軍事力の高さを見せつけることで、他国を牽制する意味合いもある。

 

 文明国も招待したかったが、その殆どが「蛮国の祭には興味が無い」とのことだが、本音は「力の差を見せるまでも無い」と考えているようである。

 

 

 

 その上空では、ガハラ神国の風竜が飛行している。

 

「凄いな。あれがロデニウスの軍船なのか。まるで海に浮かぶ城だな」

 

 風竜の上に乗る神風風竜隊隊長スサノウは、下の光景を見て、声を漏らす。

 

 首都アマノキの港の湾内には多くの他国の軍船が停泊しているが、湾外に一際目立つ存在が停泊している。

 

 木造船の軍船が殆どの中、それは鋼鉄の船体を持ち、多くの大砲や銃火器を搭載している。その上一番小さい船であっても、他の国の軍船よりも大きく、一番大きなものに至っては、まるで海に浮かぶ城のようであった。

 

 それらこそが、ロデニウス連邦共和国より派遣された臨時編成の艦隊である。

 

 

 派遣された軍艦は以下の通りである。

 

 

 戦艦:『長門』

    『陸奥』

 

 重巡:『ヤクモ』

 

 軽巡:『ウネビ』

    『イズミ』

 

 駆逐艦:『春月』

     『宵月』

     『冬月』

     『北風』

 

 

 今回この編成は日ごろの訓練の成果を発揮する目的で、連邦共和国海軍より三隻の巡洋艦が派遣艦隊に組み込まれた。

 ちなみにこの編成以外に、『大和』を含むKAN-SENが数名同行している。

 

 当然『長門』や『陸奥』はその巨体ゆえに目立っており、港ではフェン王国はもちろん、他国の軍関係者が注目している。

 

『眩しいな』

 

 と、スサノオの相棒の風竜が呟く。

 

「ん? そうか? 確かに今日はとても晴れているが、そこまで太陽が強いわけじゃ」

 

 スサノオは上を見上げて天気を確認する。

 

『いや、違う。太陽の光ではない。あの巨大な船から、線状の光が様々な方向に高速で照射されているのだ』

「あの船からだって? だが、何も見えないぞ?」

 

 相棒の風竜に言われて彼は『長門』を見るが、光らしいものは見受けられない。

 

『ふっ……人間には見えまい。我々が遠く離れた同胞との会話に使用する光、人間にとっては不可視の光だ。その光を飛ばして反射させることで、何が飛んでいるかを確認できる。あの船から発しているのは、その光に似ている』

「凄いな。風竜だから判るのか……。その光はどのくらい遠くまで届くんだ?」

『その範囲は個体差で変わる。ワシは120kmくらい先まで分かる。あの船の出している光は、ワシのそれよりも強く、そして光が収束している』

「……まさかあの船は、遠くの船と魔力通信以外の方法で通信できたり、見えない場所を飛んでいる竜を見ることが出来るのか?」

『あそこに居る九隻全てがそのようだな』

「ロデニウスか……思っていたより凄い国じゃないか」

『あぁ。全くだ』

 

 『長門』や周囲の軍艦を見ながら会話を交わすと、スサノオがあることを思い出す。

 

「そういえば、お前の同胞がロデニウスの諸島に移り住んでいたんだったよな」

『あぁそうだ。魔獣の奇襲を受けて瀕死だった所を、ロデニウスの島々……たしかトラック諸島と言っていたな。そこに流れ着いたそうだ。そこで、手厚く手当てを受けたそうだ』

「そうか。しかしよく風竜と意思疎通が出来たな。神通力が使える者がいたのか。それとも竜人でもいたのか」

『その両方でも無いが、そうとも言えないらしい』

「と、言うと?」

 

 スサノオは首を傾げる。

 

『お前達ガハラの民のような神通力に近いものがあり、同時に竜人のような特徴を持った者のようでな。同胞を助けた者以外にも、それらの能力を持っている者が多かったようだ』

「そりゃ凄いな」

『それで、同胞は一旦は戻って来たが、その助けた者に恩を返すべくと言ってな、仲間を引き連れてトラック諸島に移り住んだのだ』

「余程恩義を感じていたんだな」

『そのようだな。今日まで帰って来ないことを考えれば、とても住みやすい環境なのだろう』

 

 風竜は顔を上げて、遠くの地に暮らす同胞の事を考える。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「俄かに信じがたかったが、実際に体感すると信じざるを得ないな」

 

 『長門』は自身の艦体の艦橋にて、電探室より齎された報告に腕を組んで呟く。

 

 風竜の生態は風竜自身より聞いていたのだが、本当に電探の電波と同じものを生物が放つとは信じ難い話だ。だが、実際に電探室でレーダー波のような電波が照射されている報告が入ったのだ。

 

(やはり、余達の常識が通じんな)

 

 彼女はそう思いながら、顔を上げて空を見つめる。

 

『ねぇねぇ、『長門』姉! 今日は好きに撃っちゃっていいの!?』

 

 と、後方に停泊している『陸奥』から元気な声が『長門』の元に届く。

 

「好きに撃っていい訳ではないぞ」

『えー、なんで?』

 

 『陸奥』は疑問の声を漏らし、『長門』に問い掛ける。

 

「余達の力を見せる為の場だ。無駄弾を撃っては逆に示しがつかないであろうが」

『むー。好き放題撃てると思ったのに』

「無駄に撃つよりも、少ない数で目標に当てられれば、その方が示しがつく」

『そうかな? 少ない数で当てたら、「冬月」喜ぶかな?』

「そ、それは……まぁ喜ぶんじゃないか?(そ、そうか。『冬月』も見ているんだったな)」

 

 なぜか『長門』は『冬月』の名前に戸惑いを見せる。

 

『そっか! じゃぁ、一発で当ててみるよ!』

「一発は難しいだろう」

 

 逆に難しい事を言う妹に、『長門』は思わずツッコむも、まぁこの二人にはそれも可能になる『電探連動射撃』を行う為の装備が施されている上に、実力もある。

 

 

 

「それにしても、『長門』が自ら率先して参加したいとは、意外だったな。あいつ、あまり争い事は好まないはずなんだがな」

「そうですわね。でも、『長門』様もたまには羽目を外したいのでは?」

「そういうもんかね。まぁ予想外だったのは『陸奥』まで付いて来た事だな。本来戦艦は一隻だけだったのに」

「ですが、他国へ与える衝撃は強いかと」

「……」

 

 その頃、港の埠頭では『大和』と『天城』が港の湾内で停泊している軍艦を見つめる。

 

 今回の派遣艦隊の編成はいろいろと考えられており、当初は紀伊型戦艦の二番艦『尾張』を編入する予定だったが、『長門』が参加を希望したことで、彼女を編成に組み込んだ。だが、それに続くように彼女の妹の『陸奥』も参加を希望した為、悩んだ末に『陸奥』も編成に組み込んだのだ。

 戦艦二隻は過剰戦力な気がするが、少なくとも抑止力としては効果的だろう。

 

「『天城』 身体の調子はどうだ?」

「問題ありませんわ。今日の為に『ヴェスタル』さんと『明石』さんがちゃんと体調を整えてくれましたので」

「だが、それでも『天城』さんはまだ全快じゃないんだ。無理はしないでくれ」

 

 『大和』が『天城』の体調を心配するも、彼女は微笑みを浮かべて大丈夫であるのを伝える。後ろにいる『土佐』も彼女を心配する。

 

 『天城』はKAN-SENの中でも病弱なことで知られるが、トラック泊地の彼女の場合、とある事情があって更に病弱な身体になっており、現状KAN-SENとしての力を失っている。

 妖精達が必死に『天城』の『リュウコツ』を含めた身体の治療を行っているが、まだ完治できていない。

 

 その為、今の『天城』はKAN-SENの身体能力も病弱ゆえに無いので、人間の成人男性程度しかない。なので、襲われた場合成す術が無い。

 

「まぁ、俺と『土佐』が居るんだ。いざって時には、必ず守ってみせる」

「総旗艦様……」

 

 『大和』は笑みを浮かべて『天城』の頭に手を置いて優しく撫でると、彼女は和傘で顔を隠すように俯く。その様子を『土佐』は羨ましそうに見つめる。

 

(しかし……)

 

 と、『大和』は顔を上げて後ろを向き、天ノ樹城を見る。

 

(あの剣王の顔……妙に引っかかるな)

 

 彼は最初に国交開設時の時の剣王シハンが最後に見せた表情に、違和感を覚えた。

 

(……嫌な予感がする)

 

 それ故、この一件にどこか裏があるような、そんな予感を覚えている。

 

 そして何より『大和』はこの予感に不安を抱く。

 

 

 それは 『嫌な予感の時は良く当たる』……というものがあるのだから

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「それにしても、圧巻だな」

 

 その頃、重巡『ヤクモ』の艦橋で、ブルーアイが周囲を見渡しながら呟くと、離れたところで停泊している『長門』と『陸奥』を見る。

 

 『シキシマ』と『サガミ』と比べれば一回りほど小さいが、それでも戦艦としての迫力に劣ることは無し。

 

 ブルーアイは戦艦と空母の配備と共に人事異動が行われ、彼は『イズミ』からミドリの後任として『ヤクモ』の艦長に就任した。

 

(いつかは、戦艦の艦長になりたいものだな)

 

 ブルーアイは『長門』と『陸奥』を見ながら、戦艦の艦長になる夢を抱く。

 

 彼もまた船乗り。海の王者とも言える戦艦に憧れるものである。

 

 とは言えど、『ヤクモ』も十分立派な艦であることに変わりは無い。それに、以前より乗員の技量が高まったことで、未搭載だった魚雷発射管が追加されている。つまり教官から実力が身に着いているのを認められたという証である。まぁ重桜系のKAN-SENからすればまだまだなのだろうが。

 

「それにしても、遂に我々の訓練の成果を見せる時ですね!」

「あぁ、そうだな」

 

 副長が興奮気味に言うと、ブルーアイが制帽の位置を整えて答える。

 

 『ヤクモ』『ウネビ』『イズミ』の三隻は連邦共和国海軍より代表として派遣された。

 

 彼らは今日まで猛訓練を行ってきたのだ。その訓練の成果を多くの国に見せるとあって、晴れ舞台にはもってこいだ。

 

 まぁそれ故に、ブルーアイは緊張気味である。

 

「……総員に告ぐ!」

 

 彼は電話の受話器を取り、艦内のスピーカーに繋げて放送を行う。

 

「我々は海軍の代表として軍祭へ派遣された。それを胸に秘め、これまでの訓練の成果を他の国に見せろ! 失敗は国家の恥じだと思え!」

 

 自分に言い聞かせるように放送で乗員たちに告げると、受話器を戻す。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「あれがロデニウスの戦船か。まるで城だな」

 

 その頃、王城よりシハンは、軍祭の海上を見下ろして呟く。

 

 その視線の先には、ロデニウス連邦共和国海軍の軍艦らが湾外に停泊している。そして何より彼の目を引いているのは、『長門』と『陸奥』である。

 

 シハンの感想に、傍に控える武将マグレブが頷く。

 

「いやはや……ガハラ神国から事前情報として聞いていましたが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは……」

 

 マグレブは鉄で出来たロデニウス連邦共和国の軍艦に、彼は信じられないような目で見ている。

 

 まぁ、木材の浮力に頼って船を作っている側からすれば、重い鉄で出来た船が浮かんでいるのが信じ難いものである。

 

「私も数回、パーパルディア皇国に行った事がありますが、あんな大きさの船自体、見たことがありません。ましても金属製なんて初めてです」

「そうだな。少なくとも、これほどの船を有する国は、この第三文明圏には存在しない」

 

 二人が会話を交わしていると、沖合いにて八隻のフェン王国の廃船が展開する。

 

「剣王様、そろそろ我が国の廃船に対して、ロデニウスの船から攻撃を始めてもらいます」

「うむ。いよいよだな」

 

 シハンはロデニウスに頼んだ『力を見せて欲しい』という依頼。その回答が今、示される。

 

 

 すると『ヤクモ』を先頭に『ウネビ』『イズミ』の三隻が動き出し、廃船に向かっていく。

 

「先に中型の船が動き出したか」

 

 望遠鏡でその様子を見ているシハンが呟くと、三隻はそれぞれの主砲塔を左へ旋回させる。

 

 そして廃船から4kmの距離になった瞬間、『ヤクモ』の一番から三番砲塔の20cm連装主砲が咆える。

 

 放たれた砲弾は一直線に廃船から少し離れた所に着弾し、数本の水柱を上げる。

 

「なっ!? あの距離から撃って届くのか!?」

 

 シハンは廃船から遠く離れて砲撃したにもかかわらず、廃船に届いたのに驚く。

 

 フェン王国の水軍最強の軍船『剣神』ではまだ攻撃が届かないからだ。

 

 すると少しして『ウネビ』と『イズミ』も砲撃を行う。放たれた砲弾は廃船の周囲に着弾し、数本の水柱を上げる。

 

 続けて『ヤクモ』が砲撃を行い、廃船一隻に直撃し、粉々に粉砕する。

 

「な、何と言う威力。あんな遠くから撃って、その上であの威力……」

 

 望遠鏡で見ていたマグレブが驚愕して震える声を漏らす。

 

 廃船とは言えど、まだ強度が残っているはずなのに、いとも容易く粉々に粉砕された。しかもこちらの戦船では届かない距離から撃っていながらだ。

 

 そして最終的に三隻が砲撃を続け、四隻の廃船が沈められた。その内訳は『ヤクモ』が二隻、『ウネビ』と『イズミ』が一隻ずつである。

 

 ちなみに本来なら雷撃も行う予定だったが、まだ命中率が悪いという水雷戦担当の教官の判断で、今回は砲撃のみのお披露目となっている。

 まぁ、教官の判断基準が高すぎると言うのもあるが。

 

「凄い。あの距離から撃って、命中させるとは」

「その上、威力もありますな。もし彼らと相対したら、我々の戦船は何も出来ずに一方的にやられるでしょう」

「……」

 

 シハンとマグレブが三隻の巡洋艦に驚く。それは港に居る他国の軍関係者も同じで、誰もが驚愕の表情を浮かべている。

 

 そんな中、『長門』と『陸奥』が動き出す。しかし三隻の巡洋艦と違って、二隻の戦艦はその場から動かずに、主砲と測距儀だけ旋回させて廃船に狙いを定めている。

 

「ま、まさか、あそこから撃つと言うのか!?」

「そんな馬鹿な。あそこからは8km以上は離れていますぞ」

 

 先ほど廃船に接近した巡洋艦よりも明らかに倍近い距離があるというのに、二隻の戦艦は撃とうとしている。二人が驚愕している中、『長門』と『陸奥』の二隻の戦艦は、電探と連動した主砲を四隻の廃船に狙いを定める。

 

 

 ―ッ!!

 

 

 そして次の瞬間、四基八門ある長門型戦艦二隻の一番砲が、轟音と共に砲撃を行う。

 

「ぬぉっ!?」

 

 40cmもある主砲の砲撃の余波は王城にまで届き、その轟音にシハンは思わず後ずさる。

 

 放たれた砲弾は少しして廃船の近くに着弾し、先ほどとは比べ物にならない巨大な水柱を八本上げる。

 

「……」

「な、何と言う威力だ。先ほどとは、桁違いだ」

 

 シハンが驚愕のあまり言葉を失い、マグレブが声を漏らしていると、水柱が収まり、そこには沈んではいないが、横転して沈みかけている四隻の廃船の姿がある。

 

「直撃していないにも関わらず、あんな状態になるとは」

「もはや、次元が違います」

 

 二人が呆然としている中、『長門』と『陸奥』は一番砲の砲口より圧縮空気で砲身内の硝煙とガスを排出し、水平に戻す中、修正値通りに狙いを定めた二番砲が直後に轟音と共に炎を吐く。

 

 そして放たれた砲弾は、今度は横転した廃船に直撃し、廃船は粉々に粉砕された。

 

『……』

 

 一部を除き、港に居る者達がその光景に呆然と立ち尽くしている中、水柱が納まると、粉砕された廃船の残骸が海に落ちていく。当然海には八隻居た廃船の姿は無い。

 

「ロデニウス……これほどのものとは」

 

 シハンは驚愕の表情を浮かべるも、すぐに気を取り直して口角を上げる。

 

「すぐにロデニウスと国交を開設する準備に取り掛かろう。不可侵条約はもちろん、出来れば安全保障条約を取り付けたいな!」

 

 そしてロデニウス連邦共和国の力を認め、満面の笑みで方針を口にする。

 

 これで我が国は救われると、彼は確固たる確信を得た。

 

 

 しかし、事態は動き出そうとしていた。

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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