異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第五十九話 列強国の襲撃

 

 

「凄いな、あれは……」

「一体どこの船なんだ!」

「ロデニウスっていう、新興国家の船らしいぞ!」

「噂に聞いたことがあったが、あれがそうなのか!」

「ロデニウスの船を前にしたら、パーパルディア皇国でも手も足も出ないだろうな!」

 

 港では、ロデニウス連邦共和国の軍艦の砲撃を見たフェン王国や他国の武官等の軍関係者が『長門』『陸奥』を見ながら言葉を交し合っている。

 

 まぁ8km以上離れたところから廃船目掛けて砲撃し、残った全ての廃船を跡形もなく沈めたのだから、誰だって驚きを隠せないものだ。この二隻の戦艦を前にしたら、あのパーパルディア皇国が誇る戦列艦が子供にしか見えないレベルになる。

 どう考えても、パーパルディア皇国の戦列艦に勝ち目はない。

 

 だからこそ、誰もがその力に恐怖するも、同時に希望を見出している。

 

 

 

「相変わらず、砲撃の技術は凄いな」

 

 港から『長門』と『陸奥』の二隻の戦艦の砲撃を見ていた『大和』はボソッと呟く。

 

「えぇ。電探連動射撃とはいえど、初弾であそこまで至近で当てられるのも、お二人の実力あってこそですね」

「まぁ、あの二人は『紀伊』譲りの実力があるしな」

 

 二人は『長門』と『陸奥』を見ながら言葉を交わしながらも、周囲に耳を傾けている。

 

 周囲の反応はどれもロデニウス関連であり、誰もが驚きに満ちている。

 

(ここまでは、カナタ大統領の思惑通りだな)

 

 『大和』はカナタの思惑通り、他国の軍関係者はロデニウス連邦共和国に大いに興味を抱いている。この情報を本国に持ち帰れば、政府は連邦共和国との国交を考えるようになるだろう。

 まぁ、これからうまくいくかはどうかは、向こうの政府の考え方次第だ。

 

(何も無ければ良いが……)

 

 この後何もなく国交開設が行なえるかどうか不安を覚えつつ内心呟いていると、通信が入って耳に手を当てる。

 

「こちら『大和』」

『「長門」じゃ、総旗艦』

「『長門』? 一体どうした?」

 

 相手は『長門』であって、『大和』は怪訝な表情を浮かべる。彼はすぐに通信をオープンにして『土佐』にも伝える。しかし『天城』は艤装を持っていないので、通信の内容を伝えられない。

 

『先ほど余の電探室より報告が入った。西から時速350kmの速度でこちらに向かってくる機影を補足した。数は20』

「西からだと?」

 

 『長門』より報告を受けて、『大和』は目を細める。

 

(西にはパーパルディア皇国しか無いはず。となると、その速度で接近してきているのは皇国のワイバーン? だが速度が速い事を考えれば、噂に聞く改良種か。いや、それ以前に、パーパルディア皇国がこの軍祭に参加するなんて聞いていないぞ)

 

 西には実質的にパーパルディア皇国しかいないので、必然的にこちらに向かっているのは皇国所属のワイバーンであるのは明白だ。しかしフェン王国側からパーパルディア皇国が参加する話は聞いていない。

 

 そもそもパーパルディア皇国が文明圏外の国の祭に参加するはずが無い。大人が子供だけの試合の場でわざわざ力自慢をするようなみみっちい真似を皇国がするとは考えづらい。

 

『どうする、総旗艦』

「……」

 

 『長門』は問い掛けると、『大和』は一考して指示を出す。

 

「全艦に達する。対空戦闘用意。いつでも迎撃が出来るように準備しろ」

「総旗艦様?」

『分かった。他の者には余から伝えておく』

 

 『天城』が怪訝な表情を浮かべる中、『大和』はそう指示を出す。

 

「西側からこちらに向かってくる飛行物体を『長門』が電探で探知した。恐らくパーパルディア皇国のワイバーンの改良種だろう」

「パーパルディア皇国の?」

「だが、連中が参加するのは、フェン王国から聞いていないぞ」

「あぁ。だからこそ、おかしいんだ」

 

 『大和』は二人にそう言うと、『土佐』に指示を出す。

 

「『土佐』 いざという時に備えて、身構えていろ」

「分かった」

「『天城』 俺の傍から離れるな」

「分かりましたわ」 

 

 『土佐』は腰に佩いている刀に手を置き、『天城』は『大和』の傍に寄る。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 パーパルディア皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を行うために、首都アマノキ上空に来ていた。

 

 軍祭には文明圏外の各国の武官が来ている。彼らの眼前で、皇国に逆らった愚かな国がどうなるかを知らしめる為、あえてこの軍祭に合わせて攻撃の日が決定されていた。

 

 これで文明圏外各国家は、皇国の力と恐ろしさを再認識することだろう。そして服従しない国に関わるだけでも攻撃対象にされると自覚させ、孤立状態を作るのだ。

 

 しかし、そんなパーパルディア皇国のワイバーンロード部隊でも、どうにもならない存在がある。

 

「チッ。ガハラの風竜が居やがるな」

 

 部隊長の竜騎士は首都アマノキ上空を旋回するガハラ神国の風竜の姿を見て、舌打ちする。

 

 風竜はワイバーンロードでも、遥か上の存在とあって、タイマンではまず勝ち目はない。その証拠に、竜騎士が乗っているワイバーンロードは風竜の姿を見て更に睨まれると、怯えた声を漏らして視線を逸らす。

 

 部隊長の竜騎士は苦々しく思いながらも、他の竜騎士に魔力通信で指示を出す。

 

「ガハラの民に構うな!! レクマイアの部隊はフェン王城と城下町を狙え! 我が部隊は―――」

 

 部隊長の竜騎士は自分の部隊の攻撃目標を探していると、湾外にある一際目立つ存在が彼の視界に入り、驚愕する。

 

「な、なんだあれは!?」

 

 それはロデニウスの『長門』と『陸奥』の二隻であり、彼はその二隻を見て驚愕する。

 

 明らかに文明国が作ったであろう巨大な船。本来なら避けるべき相手なのだが、彼は典型的なパーパルディア皇国の人間だ。巨大船が掲げている旗が見覚えのないものであって、文明圏外で建国されたばかりの新興国家であると認識する。

 それ故に、巨大船を文明圏外の国が見掛け倒しで作ったハリボテだと勝手に解釈してしまう。まぁそうでなくても、文明圏外の国があれほどの巨大な船を作れるはずが無いという決めつけもあるのだが。

 

「……我が部隊はあの巨大船を狙う! 全騎、突入!!」

 

 そしてワイバーンロード部隊は二手に分かれ、それぞれの攻撃目標に向かって急降下する。

 

「あれは……」

 

 『大和』と『土佐』は身構えていると、10騎のワイバーンロードが口に形成した火球を放ち、王城の天守に着弾し、木造の王城が炎上する。

 

 王城に火球が直撃して炎上した光景に、ようやくフェン王国の民間人と、各国の軍関係者は事態を飲み込み、逃げ戸惑う。

 

 

「城が!」

「まずい! 『長門』達に向かっているのも!」

 

 炎上する王城を見て、『大和』はとっさに『長門』達に指示を出す。

 

「向かってくるワイバーンは敵だ! 全艦、対空戦闘始め!!」

 

 指示と共に、『春月』『宵月』『冬月』『北風』が長10cm連装高角砲と零式機銃、九九式四十ミリ機関砲を高射装置と共にワイバーンロードに向け、一斉に射撃を開始する。

 遅れて『長門』と『陸奥』も長10cm連装高角砲と零式機銃、九九式四十ミリ機関砲による一斉射撃を開始する。

 

「な、なん―――」

 

 部隊長の竜騎士は突然の事に最後まで言うまでもなく、その猛烈な弾幕の餌食になる。

 

 隙間が無く、統制された弾幕がワイバーンロード10騎を襲い、長10cm連装高角砲より放たれた榴弾、九九式四十ミリ機関砲より放たれた弾が内蔵された近接電波信管によって目標の近くで炸裂し、破片がワイバーンロードと竜騎士を切り裂き、零式機銃より放たれたHE(M)(薄殻榴弾)がワイバーンロードに直撃して竜騎士諸共粉々に粉砕される。

 

 それにより、あっという間にワイバーンロード10騎は肉片となり、海に落ちて魚の餌と化した。

 

 

「……」

 

 『長門』と『陸奥』に向かっていたワイバーンロード10騎を全て撃ち落とし、『大和』は安堵する。

 

「『土佐』 艤装を展開して戦闘―――」

「っ! 総旗艦! 『天城』さん!」

 

 と、『土佐』が顔を上げて叫び、二人が後ろを振り向くと、逃げ戸惑う人々に向けて火を放射するワイバーンロードの姿がある。するとそのワイバーンロードの上からもう一騎のワイバーンロードの口に火球が形成される。

 明らかに『大和』達に狙いを定めている。

 

「『天城』!!」

 

 『大和』はとっさに『天城』を引き寄せると、直後にワイバーンロードが火球を吐き出し、『大和』達の近くに着弾して炎が広がる。

 

「総旗艦!!」

 

 その光景を見た『長門』は窓際まで走り寄って叫ぶ。

 

 

「へっ! 蛮族はよく燃えるぜ!」

 

 炎に包まれた港の埠頭を一瞥した竜騎士はそう言うと、再度火球による攻撃を行おうと、ワイバーンロードを旋回させて再び向かっていく。

 

 すると、突然炎が爆ぜて数発の何かが飛んでくる。

 

「何―――」

 

 竜騎士は首を傾げた瞬間、ワイバーンロードの目の前で六つのそれは突然炸裂し、中から無数のベアリング弾が拡散してワイバーンロードと竜騎士はベアリング弾によってズタズタに引き裂かれ、状況を理解するまでもなく一瞬にして絶命し、港で燃えている炎の中に突っ込む。

 

 港の埠頭で燃え上っていた炎が晴れると、そこには艤装を纏った『土佐』の姿があり、左側にある三基の連装主砲の咆哮より硝煙が漏れている。

 

 先ほど放ったのは、二式対空破片調整弾こと通称SA2であり、六発の二式対空破片調整弾は内蔵された近接電波信管でワイバーンロードと竜騎士の目の前で炸裂し、放たれた無数のベアリング弾で粉砕したのだ。

 

「なんだ?!」

 

 突然の出来事に他の竜騎士が驚愕の表情を浮かべていると、更に野太い銃声と共に炎が爆ぜ、次の瞬間烈風改が三機出現し、零式機銃を放つ。

 

 竜騎士は状況を飲み込む前に、一瞬にして烈風改三機の零式機銃から放たれるHE(M)(薄殻榴弾)によってワイバーンロード諸共粉々に粉砕される。烈風改三機は続けて針路上に居るワイバーンロード二騎に零式機銃を放ち、撃ち落とす。

 

「なんだ!? 何が起きているんだ!?」

 

 あっという間にワイバーンロードが四騎も撃ち落とされ、上空を飛行する烈風改に驚きを隠せず、目を見開く。

 

(あれは、まさかムーの飛行機械!? なぜこんな文明圏外に飛行機械が!? いや、それよりも一体どこから現れたんだ!?)

 

 竜騎士はムーにあるような飛行機械に驚くを隠せなかったが、すぐに港の埠頭を見る。

 

 

 『土佐』の近くでは、自身の装甲が施された飛行甲板を模したユニットで『天城』を覆い隠し、右手には水平連装式散弾銃に飛行甲板を張り付けたような形状をした艤装を持つ、艤装を身に纏って炎の中に立つ『大和』の姿があった。

 火球の直撃を受けたのか、艤装の左側のアームに接続されている飛行甲板の表面には、焼け焦げた跡があるものも、それ以上の被害は無く、飛行甲板に覆い隠されている『天城』にも怪我は無い。

 

 ただでさえワイバーンロードが撃ち落とされた事実に驚愕しているのに、それを撃ち落としたのが奇妙な物を背負っている人間と亜人という事実は、パーパルディア皇国の竜騎士達に衝撃を齎した。

 

「『天城』 大丈夫か?」

「は、はい。私は平気です」

 

 『大和』は右手に持っている水平連装式散弾銃型の艤装のロックを外して中折れにし、空のショットシェルを排出して次のショットシェルを装填しながら飛行甲板で守っている『天城』に問い掛けると、炎の温度に咽ながらも彼女は無事であるのを伝える。

 

 『天城』が無事であるのを確認して安堵の表情を見せた直後、『大和』の表情を険しくなって上空に居るワイバーンロードを睨み付け、弾を入れ終えて中折れ状態の水平連装式散弾銃型の艤装を元に戻してロックを掛けると、上空に向けて引金を引く。

 

 銃声と共に弾丸が放たれると、その弾丸が変化して、疾風(しっぷう)改三機へ変化する。

 

 また航空機が突然現れて竜騎士は目を見開くが、その間に疾風(しっぷう)改が零式機銃を放って、竜騎士諸共ワイバーンロードを撃ち落とす。

 

 そして烈風改も加わり、首都アマノキの上空を飛行していたパーパルディア皇国のワイバーンロードは、あっという間に駆逐された。

 

 

「……」

 

 『大和』と『土佐』は燃え盛る港の埠頭から下りて海の上に浮かび、上空を旋回している烈風改と疾風(しっぷう)改を見ながら『長門』に向かっている。

 『天城』は『大和』に抱えられている。

 

「これで敵騎は全てか」

 

 『大和』は上空を見回して警戒する。

 

「だが、なぜ皇国のワイバーンロードがここに来たんだ……」

「分からん。連中が宣戦布告もしないで戦闘を仕掛けるような野蛮人なら納得できなくもないが……」

「無いが?」

 

 『大和』の気になる言い方に、『土佐』が怪訝な表情を浮かべる。

 

「偶然にしては、連中が来るタイミングが良すぎる」

「……」

「……皇国が襲撃してきたのは、必然だったと?」

 

 『大和』の上『天城』がそう言うと、「あぁ」と彼は短く答える。

 

「……まさか」

 

 と、『大和』はある憶測が脳裏に浮かび、ハッとする。

 

 

 すると港で上がる煙が弾けると、中からワイバーンロードが飛び出てくる。

 

『っ!?』

 

 『大和』達の上を通り過ぎて、『長門』に向かっていく。

 

「っ! まだ残っていたのか!」

 

 『土佐』はとっさに砲撃をしようとするも、ちょうど『春月』が射線に被ってしまい、射撃ができないでいた。

 

「おのれぇぇぇ!!」

 

 ワイバーンロードに跨るレクマイアは怒りの籠った眼で『長門』を睨みつける。

 

 首都アマノキの城下町を低空で攻撃していた彼は、軍艦の対空射撃と『大和』の艦載機からの攻撃を逃れていた。

 

 しかし部隊は瞬く間に壊滅し、残っているのはもう彼だけとなり、レクマイアは半ば自棄になって突っ込んでいる。

 

「貴様、貴様だけはぁっ!!」

 

 彼は相棒のワイバーンロードに火球を放たせようと指示を出し、ワイバーンロードの口が開いて火球が形成される。

 

 『長門』達は低空で侵入してくるワイバーンロードを迎撃しようと対空射撃を開始するが、長10cm連装高角砲と九九式四十ミリ機関砲より放たれた砲弾と弾丸は内蔵された近接電波信管が海面に反射して反応してしまい、見当違いのところで炸裂してレクマイアとワイバーンロードを墜とせないでいる。他の零式機銃も中々命中しない。

 

「食らえっ!!」

 

 そしてレクマイアはワイバーンロードに火球を吐き出させると、直後に『陸奥』の長10cm連装高角砲より放たれた砲弾が信管不良で炸裂することなく、ワイバーンロードに直撃して粉々に粉砕する。跨っていたレクマイアはワイバーンロードの肉片越しに海面に叩き付けられる。

 

「『長門』!!」

 

 火球は一直線に『長門』に向かっていき、『大和』が声を上げる。

 

 

『やらせない!』

 

 すると、事前に察知して動いていた『冬月』が『長門』の前に出てくる。

 

「っ!」

『「冬月」!』

 

 ちょうど『長門』と火球の間に入り込んだ『冬月』は、身を挺してワイバーンロードより放たれた火球を『長門』から守ったが、火球が艦橋に直撃してしまう。

 

「『冬月』!」

「大丈夫か!」

 

 艦橋から黒煙を上げる『冬月』に、『大和』達は不安になる。

 

『「冬月」! 「冬月」!! お願いだから、返事をしてよ!!』

 

 特に『長門』はいつもの口調が崩れるほどの、見るからに狼狽した様子で『冬月』を呼びかける。

 

『―――ら』

 

 すると雑音交じりで通信が入る。

 

『「冬月」! 大丈夫なのか!?』

「『冬月』! 返事をしろ!」

 

 

『―――ちら、「冬月」 僕は大丈夫です』

 

 と、何度も声をかけると、『冬月』より返信が入る。

 

「『冬月』 大丈夫か?」

『は、はい。僕は何とか。でも艦橋の窓が割れてその破片や炎で艦橋要員の妖精たち数名が負傷。および電探に異常発生。炎で損傷したとみられます』

「そうか……」

『よ、良かった……』

 

 『冬月』が無事であるのを確認して『大和』は安堵の息を吐くと、『長門』も安心したように声を漏らす。

 

「あらあら……」

 

 と、『天城』は『長門』の様子から何かを察したようで、笑みを浮かべている。

 

「どうした、『天城』?」

「いえ、なんでもありませんわ」

「?」

 

 そんな様子の彼女に『大和』は問いかけるも、笑みを浮かべたままそう答えて彼は首を傾げる。

 

 

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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  • 別にやらなくても良いんじゃね?
  • オリジナル要素を加えてやるべき
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