異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
クワ・トイネ公国首相カナタとトラック諸島代表『大和』の会談から二日後。
中央歴1637年 11月29日 クワ・トイネ公国 マイハーク
マイハークの港では、トラック諸島を視察する為に外務局や軍務局より派遣された視察団が集まっていた。
彼らはトラック諸島に帰還する『武蔵』達に同乗する形で彼らの技術を視察する為に向かう。その視察団の報告次第で条約や、果ては同盟等の決め事を細かく決める予定である。
こういうのは最初に決めるべきなのだが、色々とゴタゴタとしていたというのもあり、何よりクワ・トイネ公国からして彼らが同盟を結ぶのに足りるかという確認もあった。
まぁワイバーンが追いつけない速度で飛ぶ巨大な未確認騎や300mオーバーの鉄の船を建造出来る技術がある以上、技術力はあるというのは分かる。しかし転移したのが諸島であって、国ではない。
その為、本当にトラック諸島と国交に近い条約を結んで、こちらに利があるかを確認する為に、視察団を送るのだ。
本来なら視察団の編成から予定を組むのに一週間近く掛かるものだが、クワ・トイネ公国はわずか二日で成し遂げた。
これだけの超短期間で視察団を編成しただけでも、クワ・トイネ公国の本気具合が分かる。
各々が様々な感情や考えを秘めている中、それは見えた。
『……』
外務局より派遣されたヤゴウを含む使節団は、目の前に広がる光景に口をあんぐりとあけて呆然と立ち尽くしていた。
なぜなら港から離れた沖に、彼らの常識を上回る巨大な船舶が停泊していた。
最初にクワ・トイネ公国海軍と接触を果たした空母『武蔵』と、その後使節団護衛の為に『紀伊』が率いる艦隊から『武蔵』と合流した三隻の重巡洋艦と四隻の駆逐艦の計八隻が停泊している。
護衛に派遣されたのは重巡『摩耶』と重巡『伊吹』、 防空巡洋艦『鞍馬』、防空駆逐艦『冬月』と防空駆逐艦『名月』、駆逐艦『宵月』と駆逐艦『新月』である。どれも対空戦闘能力が高い艦であり、『宵月』と『新月』が対潜警戒に就いている。
一応彼らも未確認船が停泊しているのは知っていて、何人かは遠目から見ていたが、こうしてじっくりと見たのは初めてであった。
『武蔵』が巨大なのは分かるが、その傍に停泊している一番小さい船であっても、自分達のどの軍船よりも大きかった。
その上全ての船が木造なんかじゃなく、鉄で出来ていると聞かされた時、誰もが信じられないで居た。
ちなみにこれらの艦隊が港外の沖の方に停泊しているかと言うと、当然ながら港の湾内の深度が浅く、港の入り口が狭いとあって入港できないのだ。一応駆逐艦までなら港に入れなくは無いが、万が一を考えて沖の方に停泊している。
「なんて大きさだ……」
使節団の一員として軍務局より派遣されたハンキ将軍が誰もが思っているであろう事を口にする。
(もし彼らが最初から侵略する気で居たなら、我々は勝てない……!)
そして同時にハンキは全てを悟る。恐らくこの場に居る八隻だけでも、海軍が総力を挙げても勝てない、と。
そう考えると、穏便な対応をする様に指示を出したノウカ司令の判断は、まさに英断とも言える。
すると『伊吹』と『鞍馬』より内火艇が下ろされ、こちらに向かってくる
「あんな小さな船でも、あの速さなのか」
軍務局より派遣された職員の一人が内火艇のその速さに思わず呟いていると、二隻の内火艇が港の埠頭に横付けされ、一人の少年と一人の少女が二頭身の生物と共に下りて来る。
「使節団の皆様、お待たせしました。自分が『武蔵』へご案内を任されました、『鞍馬』と申します」
「同じく『武蔵』への案内を任された『伊吹』と申します」
姿勢を正して敬礼する少年少女に、使節団の面々は驚きを隠せなかった。
(こんな子供が軍に居るのか。それだけ人手不足なのか?)
ハンキは『鞍馬』と『伊吹』を見て、内心そう呟く。
クワ・トイネ公国では成人にならないと軍に徴兵される事が無いので、こんな子供が軍に居る事に誰もが困惑していた。
『鞍馬』という少年はまだ大人になりかけぐらいの年齢の少年といった外観で、青い髪を短く切り揃え、青い瞳を持ち、その頭からは短く生えた数本の竜の角に、尻付近に鱗に覆われ鰭の付いた尻尾が生えている。
服装は水兵らしい紺色に白いスカーフのセーラー服に同色の長ズボンを穿き、菊花紋章が付けられた水兵帽を被っており、腰には鞘に収められている刀が提げられている。
まぁ、確かに彼らからすれば、『鞍馬』は亜人の子供にしか見えない。
だが、当然ではあるが、『鞍馬』は人間ではない。ましても亜人の少年でもない。
彼は『伊吹型防空巡洋艦』の二番艦であり、彼もまたトラック諸島に居る数少ない男性型KAN-SENの一人である。
伊吹型防空巡洋艦とは、最上型重巡洋艦の改良型である鈴谷型重巡洋艦の設計を元に建造された重巡洋艦だが、最大の特徴は対空戦闘に特化させた武装配置であろう。
主砲は一基撤去して噴進砲を搭載し、雷装も思い切って撤去して高角砲と機銃を増設し、電探も新鋭の物が搭載されている。これにより対空戦闘能力が他の重巡と比べて抜きん出ている。
伊吹型防空巡洋艦は紀伊型戦艦の弱点を補う為に『冬月型防空駆逐艦』と共に建造された経緯がある。
『伊吹』という少女の方は身体のラインが割りとハッキリと出ている、白を基調としたボディコンっぽい服に白い振袖みたいなジャケットを羽織っている。『鞍馬』と同色の青いストレートのロングヘアーをして、瞳の色が『鞍馬』と違って右が青、左が赤のオッドアイをしている。頭には『鞍馬』と似た短い角が生えている。『鞍馬』と違い尻尾は生えていないが。
腰には鞘に納められた刀が提げられている。
『伊吹』は鞍馬とは違う伊吹型重巡洋艦の一番艦であり、KAN-SENの中では『架空存在』と呼ばれる特殊なKAN-SENである。
『鞍馬』とは姉妹艦では無いが、実の姉弟に見える似通った容姿に、非常にややこしい事情も相まって、二人は本当の姉弟のように互いを慕っている。
ちなみに彼女のスタイルが良くそのラインがハッキリと出ている多少露出の多い服装とあって、視察団の面々は『伊吹』に対して視線が左右に動いている。
「それでは、内火艇にお乗りください。結構揺れますので、お気をつけてください」
『伊吹』と『鞍馬』は使節団を内火艇に案内して、一人ずつ乗せていく。
「『伊吹』さんと『鞍馬』さんが視察団を乗せてそちらに向かいました」
使節団を乗せた内火艇が『武蔵』へと向かうのを、双眼鏡を覗いて確認した一人の少年が『大和』へ無線で連絡する。
『分かった。引き続き『冬月』達は対空対潜警戒を厳にせよ』
「了解!」
『分かった、「大和」』
『はい』
『分かりました』
『了解であります』
『大和』より指示を出されて『鞍馬』と『伊吹』以外のKAN-SEN達が返事をする。
「……」
双眼鏡より目を離した少年は安堵したように息を吐き、壁に背中当ててもたれかかる。
まだ幼い年齢の少年で、赤い瞳に短く切り揃えた灰色の髪をして、狼の耳のような獣耳が頭に生えており、尻辺りに灰色のフサフサした毛で覆われた尻尾が生えている。
灰色に白いスカーフをしたセーラー服に灰色の半ズボンを身に纏い、頭に生えている耳の間に載せるように錨が描かれた略帽を被っている。そして腰には鞘に収められている短めの刀が提げられている。
『冬月型防空駆逐艦』その一番艦の『冬月』それが彼の名前であり、数少ない男性型KAN-SENである。
冬月型防空駆逐艦とは、秋月型駆逐艦の武装を一部変更した駆逐艦だ。主砲を一基撤去して、その撤去箇所に噴進砲を搭載し、雷装も思い切って撤去されて機銃を増設しているなど、対空戦闘に特化させた駆逐艦である。
対空戦闘能力は高くなったが、その代わり火力が著しく低下してしまっているのが、偶に瑕だろう。
先にも説明したが、本型も伊吹型防空巡洋艦同様に紀伊型戦艦の弱点を補う目的で建造されている。
ちなみに彼には弟の男性型KAN-SENが居り、艦隊に居る『名月』も彼の弟である。
『「冬月」。「大和」は対空対潜警戒を厳にせよと言ったぞ。気を緩めるな』
「は、はい!」
と、少し苛立ったような喋り方でKAN-SEN『摩耶』が『冬月』に警告すると、彼は慌てて背筋を伸ばす。
『僕達が防空の要なんだ。お前がそれでは敵機の侵入を許す事になるんだぞ』
「ご、ごめんなさい、『摩耶』さん!」
『以後は気をつけろ』
『摩耶』は呆れるように愚痴る。
「……」
『だ、大丈夫だよ、「冬月」君』
『そうね、「冬月」』
と、気を落としている『冬月』に、『新月』と『宵月』が無線越しに声を掛ける。
『誰にだって、気を抜いてしまう時はあるから、ね?』
『みすをしたのなら、それを取り戻せばいい。私達があなたを補助するから』
「『新月』、『宵月』……」
『冬月』は二人から励まされて、落ち込んでいた気持ちを振り払い、気を引き締める。
『そうだぜ、兄ちゃん』
と、今度は弟の『名月』から無線越しに声を掛けられる。
『油断できないのは確かだけど、あの時みたいだと思えば嫌でも気を使うだろ?』
「あの時みたいに、ねぇ……」
『名月』の言葉に『冬月』は思わず声を漏らす。
彼の脳裏に浮かぶのは、空を覆い尽くさんばかりの多くの航空機が群がって攻撃を行い、『紀伊』と『尾張』の弱点を敵機から守り、戦いの中で次々と仲間たちが沈んでいく、まさに地獄とも言える、戦いの日々であった。
少しして視察団は『武蔵』へと乗艦し終えて、飛行甲板に上がる。
「おぉ……」
「これは……なんという広大さ」
『武蔵』のあまりにも広い飛行甲板に、視察団の面々は誰もがその広大さに驚き、各々を口にする。
「ミドリ船長の報告は誇張されていなかったのだな」
ハンキがそう呟いていると、『武蔵』が彼らの元へやって来て、艦内へと案内された。
軍機に当たる部分を除いて艦内を案内した後、『武蔵』達は『紀伊』達との合流を目指して出発した。
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ちなみにその航行中を記したヤゴウの手記にはこう書かれていた。
中央歴1637年 11月28日 出発前の自室にて
『軍船でトラック諸島へと出発すると聞かされた時は苦痛な船旅になるんだろうなと思っていた。船旅と言うのは船は波に揺らされ、食事も決して良いとは言い難い。その上軍船は居住性が良く無いというのはよく言われていたから、この船旅は最悪なものになりそうだ』
中央歴1637年 11月29日 ムサシ乗艦後にて
『しかし、いざ彼らの軍船に乗船してみた所、とても船の上に居るとは思えないぐらいに安定しており、気を抜けば地上に居ると錯覚しそうだった。それに加えて寝床もハンモックではなく、ふかふかのベッドだ。本当に気を抜けば値の張る宿に泊まっているような感覚に陥りそうだった。その上食事も一流の料理人が作ったようなおいしさであり、今までの船旅が何だったんだと思えてくる。
ちなみに軍船での船旅を嫌々と愚痴っていたハンキ殿であったが、いざ船旅が始まると、快適な船内にうまい料理を堪能して、とても快適そうに過ごしていた
それと艦内にいる小さな生物は可愛らしい見た目だが、なんだか不思議な存在感を放つ生物だった』
中央歴1637年 11月30日 艦隊合流に際して
『道中彼らの味方の艦隊と合流したが、その旗艦がこのムサシと呼ばれる軍船並に大きいとあって、私は頭痛が起きそうだった。ただでさえ他の軍船の大きさに驚いているのに、その旗艦の大きさに思考が停止しそうだった。
その上、彼らの正体を聞かされて、頭の中が真っ白になった。
彼らはKAN-SENと呼ばれる人の形をした艦船であり、今自分達が乗艦している軍船も、武蔵と呼ばれる艦長と名乗った男性のもう一つの姿であると言われた。
とても信じられなかった。いや、実際信じなかった。あまりにも現実から離れた内容で、自分も含めて、視察団のメンバーは信じなかった。
しかしその後ヤマト殿は証拠として共に航行している軍船でデモンストレーションを行い、我々が見ている中、ムサシの隣を航行しているズイカクと呼ばれる軍船が突然光り輝くと、船体がキューブ状に分解されていって、最後には一人の女性が中から姿を現して、海の上を滑るように走っていた。その他にもクラマ、イブキ、フユヅキと呼ばれる三隻の軍船も同じように船体がキューブ状に分解されていって、中から二人の少年少女が姿を現し、同じように海の上を滑るようにして走っていた。よく見ればイブキとクラマより現れた少年少女は我々視察団をムサシへと送り届けた少年少女であった。
軍船が分解されて現れたKAN-SENは共通して艤装と呼ばれる鎧を身に纏っているようだ。しかしどうやって水の上に浮かんで走っているのだ?
そんな非現実的な光景を目の当たりにして、ようやく自分を含めた視察団のメンバーは彼らKAN-SENの事を信じるしかなかった。
これから向かうトラック諸島がどんな所なのか、今更になって不安になってきた』
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竜の伝説編はやっておくべき?
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