異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第六十一話 ロデニウス、怒りの攻撃

 

 

 

 所変わり、パーパルディア皇国監査軍東洋艦隊

 

 

 

 フェン王国への懲罰的攻撃を行う為、第三外務局の局長カイオスの命により、当艦隊が皇国から派遣された。

 

 

 先ほどフェン王国の水軍の軍船と戦闘を行った際、向こうも魔導砲を有していたことで、砲撃戦を繰り広げた。しかし皇国側の魔導砲と比べて型落ち品の代物であったので、性能の差が開いていた。その為パーパルディア皇国の艦隊が圧倒して、味方の損傷皆無でフェン王国の水軍を殲滅し、艦隊はフェン王国を目指して航行している。

 

 

 

「……」

 

 監査軍東洋艦隊の提督であるポクトアールは、どこか不安のある表情を浮かべている。

 

「しかし、拍子抜けにもほどがありましたね。ワイバーンロード部隊が通信途絶をしたからてっきりフェン王国が我々の想像できない秘密兵器でも持っているものかと思いましたが、旧式のオンボロ魔導砲しかないとは。所詮魔法を知らない蛮族でしたね」

 

 その隣で戦列艦の艦長が馬鹿にした様子でため息をつく。

 

「いや、もしかしたら地上に何かがあるのかもしれない。現にワイバーンロード部隊の連絡が途絶えたのは、奴らの首都を攻撃した後だ。状況が分かるまで、気を抜いてはならん」

「は、ハッ。申し訳ありません」

 

 ポクトアールがそう言うと、艦長は頭を下げる。

 

 彼は経験豊富な軍人であり、的確な指示を出すとあって、この艦隊では人望の厚い人物だ。それ故に、多くの者が彼を信頼しており、その言葉を正直に受け止めている。

 

(確かに彼らは我々からすれば旧式の魔導砲を持っていた。だが、それだけでワイバーンロード部隊が全滅した説明にはならない。やはりフェン王国に何かしらの兵器があるというのか。ワイバーンロードを墜とすほどの何かが)

 

 いくら列強国のパーパルディア皇国とはいえど、ワイバーンロード以外でワイバーンロードを撃ち落とすのは困難を極める。その為、彼はワイバーンロード部隊が全滅した現状に不安を抱いている。

 

(我が艦隊には30門を誇る戦列艦が数十隻あるが、それでも竜母があれば安心できたのだがな)

 

 ポクトアールは無い物を強請ってしまうが、すぐに考えを改める。まぁ、竜母は正規軍に優先的に配備されている代物なので、文明圏外の国に懲罰的攻撃を行うだけの監査軍には配備数が少ない。

 その上、今回の攻撃目標であるフェン王国はワイバーンを持たない国とあって、上空援護は必要ないとされたのだ。まぁ別にワイバーンロード部隊が派遣されたのは言うなれば保険みたいなものだが。

 

(まぁいい。我々は与えられた任務をこなすだけだ)

 

 彼は不安を抱きながらも、任務を完遂する為に気を引き締める。

 

 

 

「……?」

 

 すると何やら変な音がして、ポクトアールが顔を上げる。

 

「何でしょうか、この音は?」

 

 船長も気づいて、船員達と共に周囲を見渡す。

 

 それは「ゴー」という、聞き覚えのないものだ。

 

「……」

 

 と、ポクトアールが何かに気づき、首に提げている双眼鏡を手にして覗き込む。

 

 その双眼鏡の先には、何やら黒い点がいくつか見えている。

 

(あれは……一体―――)

 

 

 そしてその黒い点をよく見た瞬間、ポクトアールは目を見開く。

 

「なんだ、あれは!?」

「提督?」

 

 驚愕するポクトアールに艦長は首を傾げる。

 

「艦長! すぐに戦闘準備だ! 敵騎が来るぞ!」

「て、敵騎ですか!?」

「恐らくそうだ! 早くしろ!」

「は、ハッ!」

 

 艦長はすぐに船員に指示を出す。

 

「提督! もう敵騎が!」

「っ!」

 

 すると船員の一人が叫んでポクトアールは前を見ると、空に小さな黒い点が徐々に大きくなっている。

 

「あれは、まさか!」

 

 そしてポクトアールはその黒い点の正体を確認して、驚愕の表情を浮かべる。

 

 

 それは『大和』より発艦した景雲三型改20機であり、両翼下の懸架装置に更なる改良が加えられて弾道性が向上した『一〇〇式ロケット弾改二』をこれでもかと言わんばかりに両翼合わせて12発を積み込んでいる。

 

 

(ひ、飛行機械だと!? なぜこんな文明圏外に飛行機械があるんだ!?)

 

 ポクトアールは景雲三型改を見て、第二文明圏にある飛行機械と思い目を見開いている。

 

 そして艦隊に接近した景雲三型改は一〇〇式ロケット弾改二を一斉に放つ。放たれた一〇〇式ロケット弾改二は真っすぐに飛翔し、戦列艦数隻に直撃して炸裂し、積み込んでいる魔石が誘爆して戦列艦が大爆発を起こす。

 

「戦列艦『パオス』『ガリアス』『マミズ』『ベール』……ご、轟沈!!」 

「な、何という威力だ……!」

 

 一度に四隻の戦列艦が轟沈し、ポクトアールは茫然とし、旋回する景雲三型改を見上げる。

 

 よく見ればムーの飛行機械であるマリンと違い、先端に風車の羽が無く、代わりに機体後方に穴が開いている。

 

(あれは、まさかミリシアル帝国の天の浮舟!? なぜ、こんな文明圏外に、第一列強国の飛行機械が……)

 

 彼は列強国の神聖ミリシアル帝国の天の浮舟を見たことがあるので、似たような構造をしている景雲三型改をその天の浮舟だと思ってしまう。

 

(まさか、ワイバーンロード部隊が全滅したのは、ミリシアル帝国の天の浮舟と交戦したからなのか!?)

 

 やがて彼は先行したワイバーンロード部隊が全滅した原因が天の浮舟であると予想し、身体の震えが止まらなくなる。下手をすれば、第一文明圏の列強国に戦争を仕掛けてしまったかもしれないからだ。そうなれば、パーパルディア皇国といえど、勝ち目など無い。

 まぁ実際は全然違うのだが、判断材料がない以上、彼らが予想できるのはこの程度である。

 

 旋回し終えた景雲三型改は機首を戦列艦に向けて、翼の根元にある零式機銃を放つ。零式機銃より放たれたHE(M)(薄殻榴弾)が戦列艦を襲い、甲板に着弾した弾丸が半ば貫通して炸裂し、木片を飛ばして甲板に大きな孔を開けると共に火の手を上げる。その際に機銃掃射に巻き込まれた船員達が木っ端微塵に粉砕される。

 他にマストにも直撃して半分近くが弾け飛ぶと、重さに耐えかねてマストが折れる。

 

「戦列艦『クマシロ』『アイダ』『ミネダ』『リクト』被弾! 『クマシロ』と『リクト』のマストが倒壊しました!」

「更に『ミネダ』と『アイダ』にて火災発生! このままでは積載している魔石に引火する可能性が!」

「……」

 

 次々と入る報告に、ポクトアールは呆然と立ち尽くす。

 

(こ、このままでは、全滅するのを待つだけだ。やむを得ないか……)

 

 彼はこれ以上の作戦遂行が不可能であると考え、すぐに転進を命じようとする。

 

 

 その瞬間、彼が乗艦している戦列艦の隣を航行していた戦列艦二隻が、巨大な水柱に包まれる。

 

『っ!?』

 

 突然のことに誰もが目を見開いて驚き、水柱を見る。

 

 水柱が収まると、そこには戦列艦の姿はなく、代わりに残骸と思われる木材や人であった肉片が浮かんでいる。

 

「せ、戦列艦『アイダ』『セイト』……消滅」

 

 見張り員は震える声で、報告をする。轟沈ではなく、消滅。あまりにも現実離れした光景に、誰もが呆然と立ち尽くす。

 

「っ! 前方に艦影と思われる巨大な物体を確認! 数は2!」

 

 するとマストにある見張り台から報告が入り、誰もが前方を見る。

 

『っ……』

 

 そして誰もが、それを見た瞬間絶句する。

 

 なぜなら、それはあまりにも巨大であったからだ。艦隊から何kmも離れているにもかかわらず、肉眼でも確認できるぐらいに大きな艦影であった。しかもそれが二つである。

 

 

 監査軍艦隊を絶句させた巨大な影の正体は、フェン王国より出発した『長門』と『陸奥』の二隻であり、先ほどの『大和』の艦載機である景雲三型改の攻撃の際に艦隊の位置を知り、光学照準器と射撃用電探を連動させ、諸元に従って第一、第二砲塔の照準を合わせて、砲撃したのだ。

 その為、偶然もあるだろうが、初弾で命中弾を出したのだ。

 

 

「さ、先ほどの攻撃は……まさかあの船からなのか」

 

 ポクトアールは震える声を絞り出すようにして口にすると、望遠鏡を覗く。

 

 望遠鏡の先には、戦列艦よりも巨大な船が二隻航行しており、その甲板には巨大な砲が鎮座している。しかもそれが四門もあるのだ。

 

(馬鹿な。あの大砲は……まるでムーの戦艦『ラ・カサミ』みたいじゃないか! いや、明らかにそれよりも大きい!)

 

 そしてその姿形から、第二文明圏の列強国であるムーの戦艦『ラ・カサミ』と同じ物であるのを理解する。更にそれよりも大きい船であるというのも、同時に理解する。

 

 どう考えても、勝ち目など無いのは明白だ。

 

 すると軍艦は巨大な大砲を艦隊に向けている。その事実を認識した瞬間、彼は反射的に行動する。

 

「て、撤退だ! 撤退しろ!! すぐ転進してここから逃げるんだ!!」

「て、提督!? ですがそれではカイオス局長からの命令を背くことになります! 栄えある皇国が蛮族に背を向けて逃げるなんて――――」

「命令がなんだ! あれと戦って勝てるというのか! だったらその案を聞いてやる! 言ってみろ!!」

 

 ポクトアールは怒りの形相で異を唱えた艦長に問い掛けるが、当然艦長は答えられない。

 

 どう考えても、あの巨大な船と戦って、こちらに勝ち目なんて何一つ無い。アウトレンジから一方的に撃たれて殲滅されるのがオチである。

 

 経験豊富な彼だからこそすぐにそれを理解したが、皇国の力に酔い痴れている若い者達はそれに理解するのに時間が掛かってしまった。

 

 

 そしてその一瞬が、命取りになってしまった。

 

 

「すぐに転進だ! 他の船にも伝えろ! 早く―――」

 

 彼はすぐに他の船にも撤退命令を伝達させるために指示を出すが、その直後、彼の乗艦の戦列艦の至近距離で、巨大な水柱が上がる。

 

 水柱に呷られて、戦列艦はアッという間に横転し、そのまま転覆する。

 

 その横転時の勢いで、甲板に居た者達は一斉に海へと投げ出される。中には甲板にある荷物の直撃を受けて絶命する者もいたが。

 

「っ!」

 

 投げ飛ばされたポクトアールはとっさに海面に出ると、周囲を見る。

 

 残った戦列艦は『長門』と『陸奥』の二隻による艦砲射撃に晒され、瞬く間に次々と沈んでいく。

 

 水柱に呷られて転覆する船や、直撃を受けて文字通り粉々に粉砕されて轟沈するか、至近弾の衝撃で船体が破壊されて沈められるか、戦列艦はそのどれかの運命を辿っていく。

 

 その上、命令を伝達する前に旗艦が撃沈されたので、残った戦列艦はどうするべきか判断が付かず、転身しようともしない。

 

「……悪夢だ」

 

 やがて近くにあった樽にしがみついたポクトアールは、目の前で起きている現実にただただ声を漏らすしかなかった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「敵艦隊はほぼ壊滅したか」

 

 『長門』艦橋の防空指揮所にて、艦載機越しにパーパルディア皇国の艦隊の状況を確認している『大和』は、素っ気ない様子で呟く。

 

 直後に『長門』の第一砲塔と二番砲塔の二番砲が咆え、遅れて三番砲塔と四番砲塔の二番砲が咆える。続いて『陸奥』の主砲も第一砲塔から順に轟音と共に咆える。

 

 それから数十秒後、混乱した様子の艦隊に巨大な水柱が八本発生し、その内四本の中で爆発が起こる。恐らく直撃を受けた戦列艦に積載されていた魔石が爆発したのだろう。

 

 そしてそれが生き残った最後の戦列艦であり、今海の上に浮かんでいる戦列艦の姿は無い。強いて言うなら転覆している戦列艦の姿しかない。

 

「すまないな、総旗艦。余の我が儘に付き合ってくれて」

 

 『大和』の隣に立つ『長門』がそう言うと、頭を下げる。

 

「構わんさ」と彼は短く返す。

 

(だが、これでパーパルディア皇国から完全に目を付けられてしまったな。まぁ遅かれ早かれ、あの国と相対することになるのは分かっていたが……)

 

 『大和』は内心呟きながら浅くため息をつく。

 

 

 ちなみに彼らが知る由もないが、実を言うと監査軍東洋艦隊は景雲三型改と『長門』『陸奥』の衝撃の大きさのあまり通信を行う暇がなく、皇国に艦隊が攻撃を受けた報告が送られなかった。

 その為、皇国がこの事実に気づくのに、もうしばらく掛かる事になる。

 

 

「『大和』より、『ヤクモ』へ」

『こちら「ヤクモ」 どうされましたか?』

 

 『大和』は『長門』と『陸奥』に同行している『ヤクモ』に通信を入れ、『ヤクモ』艦長のブルーアイが通信に出る。

 

「生存者の救出をお願いします。あの中でも恐らく生き残っている者がいると思いますので」

『分かりました。「ウネビ」及び「イズミ」と共に、生存者の救出に向かいます』

 

 ブルーアイは通信を切り、すぐに『ウネビ』と『イズミ』に指示を伝えると、三隻の巡洋艦は速度を上げて『長門』と『陸奥』を追い越して艦隊が居た海域へと向かう。

 

 この世界での捕虜の扱いはどうなのかは分からないが、こちらはこちらのルールに則って漂流者の回収を行う。

 

「総旗艦。件の国は、どう出ると思う?」

「さぁ、そこまでは何とも言えんな。だが、これだけは言える」

 

 『長門』の質問に、『大和』はパーパルディア皇国があるであろう方向を見ながら、先を続ける。

 

「ロデニウス連邦共和国は、そう遠くない内にパーパルディア皇国と刃を交えることになるな。旧ロウリア王国との戦争よりも、大きな戦争にな」

「……そうか」

 

 『長門』は声を漏らすと、空を見上げる。

 

「また、争いが起きるのだな」

「……」

 

 彼女の言葉に、『大和』は何も言えず、ただただ空を見つめ続けることしかできなかった。

 

 

 

 ロデニウス連邦共和国とパーパルディア皇国の初の艦隊戦は、ロデニウス側のワンサイドゲームという名の圧勝で終わった。

 

 後に『フェン沖海戦』と呼ばれることになるこの戦いが、連邦共和国と皇国との戦争の始まりであると、後の専門家は分析している。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、フェン王国の首都アマノキ

 

 

 時系列は少し遡る。

 

 

 パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊を軽々と片付けた、ロデニウス連邦共和国の軍艦。その活躍を見て、軍祭に参加していた文明圏外の各国の武官は、放心状態にあったが、すぐに歓喜に沸く。

 

「な、なんだ! あの凄まじい魔導船は!?」

「あの列強のワイバーンロードをあっさりと叩き落したぞ!! 一体何なのだ、あの船達は!?」

「ロデニウス連邦共和国という新興国家らしいぞ」

「おぉ、あれが例の新興国家か!」

「あれだけの力を持っているとは……。まさか、古の魔法帝国の流れを組む者達では!?」

 

 自分達の常識とかけ離れた力を持つ、暗い軍艦色の巨大船の数々に恐怖を覚えると共に、どうにか味方に引き入れる事は出来ないかと皮算用を始める。

 

 もしかしたら、パーパルディア皇国を遥かに超える力を、あの船の国は持っているかもしれない。その上、フェン王国の軍祭に来たのであれば、件の国はフェン王国と友好関係にあるということだ。しかも自分達と同様に、文明圏外国家の可能性が高い。

 

 フェン王国と良好な関係を築き、あの国……ロデニウス連邦共和国とも良好な関係を築けば、パーパルディア皇国の属国化を防げるかもしれない。

 

 

 フェン王国がパーパルディア皇国の領土租借案を蹴ったと聞いた時は、フェン王国が焼き尽くされるのではないかと誰しもが思った。しかしあの船の国と友好関係にあるのであれば、フェン王国が強気に出るのも理解できた。

 

 

 そして軍祭に参加している文明圏外の国家の武官達は早速本国へと戻り、ありのままのことを報告し、ロデニウス連邦共和国との国交開設と共に、安全保障や貿易協定を結ぶべきだと、強く進言したという。

 

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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