異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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今年最後の投稿になります。
来年も本作品をよろしくお願いします。


第六十三話 各国の変化

 

 

 

 

 フェン王国の軍祭の後、ロデニウス連邦共和国にやって来る船舶が増えてきた。そのどれもが軍祭に参加していた国々であった。

 国交締結を求めて、文明圏に属さない国の大使を乗せて、遠路遥々ロデニウス連邦共和国まで来訪してきたのだ。

 

 どうやらカナタ大統領の思惑通り、軍祭でロデニウス連邦共和国の力を目の当たりにして多くの国が興味を抱いてくれたが、何よりパーパルディア皇国のワイバーンロード20騎を一瞬で撃ち落とし、戦列艦を瞬く間に沈めたこともあって、予想以上の宣伝効果を齎したようで、中には軍祭の参加国から話を聞いて国交締結を決めた国もいるそうである。

 

 しかしその数が多く、領海にて警備に当たっている海上警備隊は、海軍より哨戒艇と駆逐艦の増援を加えても、二ヵ月近く日夜問わずに巡回する羽目になった。

 

 あまりにも国交締結を求める国の多さに、外務省はパンク寸前であった。

 

 そんな中で、救いの手を差し伸べる者がいた。それは件の首謀者であるフェン王国だった。

 

 どうやらこの状況を知った王国が、手助けとして国交締結の仲介役を買って出てくれたのだ。まぁこの間の一件の贖罪の意味も込められているだろうが。

 

 しかし『大和』からすればこの申し出を気に食わなかったものの、フェン王国は誠意ある謝罪をして、政府も謝罪と仲介役を買って出てくれたことで、とりあえず政府が納得したとあって『大和』も渋々と受け入れたという。

 

 とまぁ、フェン王国の手助けもあって、ロデニウス連邦共和国は多くの国と国交締結を行い、やがて多くの国々と大規模な貿易を行うことになった。

 

 それ故に、各国でロデニウス連邦共和国製の品々が大流行することになった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 中央暦1639年10月18日 パーパルディア皇国 第三外務局 応接室

 

 

「何だと!? 来年から奴隷の献上はしない上に、船団護衛の契約を破棄するだと!?」

 

 外務局の職員が、トーパ王国大使を怒鳴りつける。

 

 トーパ王国とは、第三文明圏北部に存在する文明圏外国家である。普段は気温27度ほどあるのだが、冬になれば気温がマイナスに突入する厳寒地だ。

 

 非常に強力な魔物が闊歩するグラメウス大陸と第三文明圏を繋ぐ、人間の定住地としては重要な拠点となっている。もちろん、そのことはパーパルディア皇国の外務局員も承知しているが、そんなことはおくびにも出さず、大使に強硬な姿勢を見せている。

 

「はい。我が国はこれ以上民を、奴隷として貴国に差し出すのはもうやめとうございます。そして船団護衛の契約も破棄しますので、現地に駐留している艦隊には退去してもらいたい」

 

 大使は外務局員の強硬姿勢に冷や汗を一筋流しながらも、断固とした口調で答える。

 

「ふん! では各種技術の提供も、トーパ王国だけ停止させるぞ!」

 

 外務局員は不機嫌そうに鼻を鳴らし、脅しを掛ける。

 

 皇国は、各種技術供与も外交手段の一つとして利用していた。

 

 かの国が研究開発した技術は、属国である周辺諸国や文明圏外の国へと提供している。もちろん皇国での最新技術は徹底的に秘匿し、古くなった技術だけを徐々に開示する。

 その見返りに、属国や周辺諸国は皇国に様々な献上品を送る。

 

 皇国は属国からの献上品で潤い、属国も生活水準が向上していく。

 

 一見すれば相互関係に見えるが、属国は常に後追いの立場であって、皇国との差が縮まることは無い。

 

 つまり、皇国が裕福な生活を送り続けて、属国が苦しい思いをし続けることに、変わることは無いのだ。

 

 当然一国だけ技術供与が停止されると、他国との発達速度に差が出る。先を越されれば、国力は衰退する。

 

 そして最近は力を着けた海賊による被害が拡大しているとあって、海からの物流が滞ってしまう事態が各国で起きている。その為、各国はパーパルディア皇国に船団護衛の契約を結んでいる。いや、厳密にいえば皇国から契約を迫ったと言えば正しいかもしれない。

 契約を結べば皇国は艦隊を派遣して船団護衛を行う。その上船団が被害を受けた場合、その保証金を出し、その月だけ支払いの必要は無い。無論無事に航海を終えれば金を支払う。パッと見は悪くないようにも見える。しかし実際は悪いどころの話ではない、詐欺紛いな実態がある。

 

 契約金から艦隊の維持費、その他諸々の金が掛かる上に、艦隊の規模がデカいとあって、無駄に金が掛かる。その上船団護衛は皇国側に指揮権を譲らなければならず、クライアント側に意見具申を行わせる権利も無い、横暴極まりない内容だ。しかも先ほど述べた被害を受けた場合保証金が出るとあったが、そもそも海賊がパーパルディア皇国の艦隊が護衛に付いた途端、なぜか(・・・)船団に襲い掛からないという事態が続いているとあって、保証金が出ることはなく、高い金額を毎回支払う羽目になっている。

 当然儲けなんて無いどころか、毎回赤字続きだ。

 

 しかし列強国の護衛が無ければ力を付けた海賊に襲われて、物資はもちろん、人材や船も失うことになる。物流が滞れば、それこそ国力が衰退する。当然相手が相手とあって、文句の一つも言えない。その文句一つで難癖を付けられて、何をしてくるか分からない。その為、属国と文明圏外の国々は泣き寝入りするしかない。

 

 属国が言うことを聞かなければ、工具や、釘などの部品の輸出まで停止し、物流も海賊による被害を受けて、滞ってしまう。皇国の恐怖外交はこうして徹底されている。

 

 本来ならばこれで完全に国が立ち行かなくなるのだが……トーパ王国の大使は「それがなんだ?」と言わんばかりにドヤ顔と共にいやらしい薄ら笑みを浮かべる。

 

「技術ですか。たかが技術程度で、人民の幸福には代えられません。我々は奴隷を差し出さない、皇国は我が国への技術供与を停止する。それで結構でしょう」

 

 今までのトーパ王国からは考えられない、強気な態度だ。

 

「ほう。ならば今後は武具、生活品、ありとあらゆる物は自分達で調達するんだな。海賊が闊歩している海を使ってな。あとで泣きついても知らんぞ」

 

 外務局の突き放す言い方に、大使は臆することなく言い返す。

 

「泣きつく? それはありえませんな。なぜなら、我々はあの『ロデニウス連邦共和国』と国交と貿易協定を結びましたからな」

「ロデニウス? そんな国聞いたことが無いな。どうせ出来たばかりの文明圏外の新興国家だろうな。そんな出来たばかりの国と結んで何になる」

「何とでもなりますとも。そのおかげで、我が国は貴国から技術供与を受けていた時とは比べ物にならないぐらいに、豊かになりましたからな」

 

 フッと笑うと、大使は右袖を捲る。

 

「おぉっと! もうこんな時間か。では、失礼させていただきます。この後シオス王国の方々との会談がありましてな」

 

 彼は外務局員に見せつけるように、右手首にしている精巧な作りをしている腕時計を見せる。それはロデニウス連邦共和国にて購入した腕時計であり、職人が丹精込めて作り上げた頑丈且つ高級な品だ。

 誰が見ても高い技術力が使われているという代物だと分かるレベルだ。

 

「……あ、あぁ。もう用は無いから、帰って良いぞ」

 

 外務局員はその腕時計を見せられて、呆然としていたが、すぐに気を取り直して用が無いのを告げる。

 

 トーパ王国の大使は頭を下げて、応接室を後にする。

 

「……」

 

 残された外務局員は、怒りによるものなのか、それとも悔しさからなのか分からないが、身体を震わせて歯噛みし、両手を握りしめる。

 

 

 トーパ王国の大使がしていた腕時計。それがどれだけの物かは彼は見ただけでも分かった。

 

 第二文明圏の列強国であるムーに似たような物があるのは知っていたが、それとは明らかに大きさが違っていたし、何より作りが全然違う。そしてその時計の価格は皇国内では高く、その上メンテナンス費用も嵩むため、貴族か裕福な層でなければ購入は難しい。

 少なくとも彼の月収では、買うのが難しい品なのだ。

 

 それを、ムーの時計よりも洗練されて小型の時計を、自分達よりも格下の文明圏外の人間が持っている。

 

 その事実は、彼のプライドをズタズタにするのに、十分過ぎた。

 

 

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 外務局 食堂

 

 

 仕事の休憩時間とあって、食堂には多くの職員が居たが、疲れ切った表情の職員が多い。彼らは食事をしながら雑談をしている。

 

「最近、蛮国がやけに反抗的だと思わないか?」

「確かにな。ここ一か月くらいは顕著にそれを感じる」

 

 職員の一人がそう聞くと、向かい側に座っている職員が答える。

 

「あぁ。以前なら全ての要求を呑んでいたのに、昨日は『我々は、あのロデニウス連邦共和国と国交を結んでいる!!』と強気に言われたぞ。たかがシオス王国ごときに」

「っ! 俺もトーパ王国大使から、似たようなことを言われた。『技術なんぞいらん』とまで言っていた。理由が『ロデニウスと国交があるから』と。ロデニウスって知っているか?」

「いや、知らんな」

「俺も」

「私も知らない」

「似たような名前の大陸が文明圏外にあったような気がするが、そんな国の名前はなかったな」

 

 誰もがロデニウス連邦共和国のことを知らず、結局多くの国々が国交を結んだと豪語するロデニウス連邦共和国について、分からずじまいだった。

 

「それに、多くの国が船団護衛の契約を打ち切って、ロデニウスと契約したとも言っていたな」

「俺の所もそうだ。すぐにでも艦隊を退去させて欲しいと生意気にも要請してきた。蛮族のくせに」

「だが、そんなことをすれば、海賊共の餌食になるのは目に見えているな」

「あぁ。ロデニウスとやらがどんな国かは知らんが、所詮文明圏外で新たに誕生した蛮族だ。どうせ海賊共に蹂躙されるのが落ちだな」

「まったくだな。まぁしばらくすれば蛮族共は頭を下げてくるに違いない。そうなればいつも通り金はこちらに入って来る」

 

 そう会話を交わしてから、彼らは食事に集中する。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、ロデニウス連邦共和国

 

 

 以前の質素な家が立ち並んでいた住宅街は、今では近代的な一軒家にアパート、マンションが立ち並んでおり、著しく生活水準が向上しているのは誰が見ても明らかだった。

 

 そんな住宅街の、とある一棟のマンション。

 

 

「マリンの強化は……どう足掻いてもエンジンと火力を少し上げるのが限界か。それ以上となるともはや機体構造を根本から見直す必要がある、か。そうなったら一から設計した方が手っ取り早いな」

 

 マンションの一部屋にて、マイラスがパソコンの画面に向き合い、あぁでもない、こうでもないと呟いている。

 

 パソコンの画面には、彼が描いたマリンの設計図が表示されており、手元にはいくつもの案を書いたメモ帳が何枚も散乱している。彼はマリンの強化案を考えているものの、どう足掻いても設計を一から見直さない限り、大幅な性能アップは出来ないものであった。

 

 

 トラック泊地の視察の後、ムーの使節団は本国への帰路に付き、政府に報告書を提出した。その報告書の内容は政府や軍上層部を驚愕させるのに十分な威力を持っていたそうな。

 

 しかしこの時既にムー政府はロデニウス連邦共和国に技術を学ばせる留学生の派遣を決定しており、その中にマイラス達も含まれていた。

 

 その為、三人は報告書を提出後、荷造りをして留学生たちと共にロデニウス連邦共和国を目指した。

 

 マイラスが居るのは、そのムーからの留学生が暮らす為に宛がわれたマンションである。

 

 

 彼は他の技術者達と共に技術を学んでおり、それと同時に軍の上層部より様々な要求を受けて現地で作業を行っている。軍の主力機として採用されているマリンの強化案も、その一つだ。

 

 だが、それらの要求の中には、問題しかない要求が多かった。

 

(全く。上層部は何を考えているんだ。グラ・バルカス帝国の脅威があるというのは分かるが、いくらなんでもマリンを超える国産戦闘機の設計なんて、すぐに出来るわけないだろ。プラモデルを作るんじゃあるまいし!)

 

 理不尽に近い上層部の要求に、彼は内心文句を呟きながらメモ帳をくしゃくしゃに握り締めて放り投げる。

 

 マイラスは軍の上層部よりマリンを上回る新型戦闘機の設計を行うようにと、指示を受けていた。上層部は直でロデニウスを見てきたマイラスだからこそ設計を任せたのだろうが、どう考えても無謀な指示であるのは明白だ。

 いくら直で技術を見て学んできたとはいえど、航空機の設計なんて一朝一夕で出来るようなことではない。

 

(だが、グラ・バルカス帝国の脅威が迫っているのは確かだ。奴らに対抗できる兵器を上層部が欲しがるのは分かるが……)

 

 彼は政府と軍の上層部がグラ・バルカス帝国を脅威に捉えているのは分かっている。だが、無理難題を押し付けられてもどうしようもない事実に変わりはない。

 

(……上層部は納得しないだろうが、ここはロデニウスから武器兵器を輸入する方が早いよな。実際研究用にいくつか輸入しているし)

 

 マイラスは内心呟き、腕を組む。

 

 実際、ムーは技術獲得を目的として研究用に『九六式艦上戦闘機』や『M4シャーマン』を設計図と実機を共に輸入した。どちらも妖精達が特別に生産した物だ。

 

 これらをムーは解析し、その内コピーする予定である。

 

 だが、この程度ではグラ・バルカス帝国と戦うには、明らかに不足しているだろう。向こうも軍拡を行っているだろうから。

 

 一応彼は国産戦闘機の開発は行うと共に、上層部にロデニウス連邦共和国から武器兵器の輸入を検討して欲しいと申告している。軍の上層部も国産戦闘機の開発がすぐに出来ないのは分かっているとあって、真面目に検討しているようだ。

 近いうちに、ムーの上層部は腹の内を決めるだろう。

 

「まぁ、今の俺に出来るのは、ロデニウスから技術を学んで、これらをものにすることだけだ」

 

 マイラスは技術屋である自分に出来るのは、ロデニウスより様々な技術を学び、それをものにしてムーに貢献するだけだ。

 

 それらの学んだ技術は、将来国を発展させ、豊かにするだろう。そしてグラ・バルカス帝国の脅威に真っ向から立ち向かえるはずである。

 

 彼は改めて気を引き締めて、マリンの強化案の設計と共にいくつものアイディアを考案するべく、更に考え込むのだった。

 

 

 




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