異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
中央歴1639年 11月5日 アルタラス王国 王都ル・ブリアス アテノール城
ロデニウス連邦共和国との貿易を始めてから、この国の発展具合は凄まじかった。さすがにまだ数か月程度しか経っていないので、街中で多くの自動車とかが行き交うほどではないが、それでもロデニウスから輸入された自転車やゴムタイヤサスペンション付きの馬車が行き交っている。そしてごく少数ながら自動車も走っている。
そして民間でのガス、電気、水道等の生活インフラも普及し始めて、市民たちの生活は豊かになっている。
しかし、王都の賑やかさとは裏腹に、王城の一室で国王ターラ14世は深刻そうな雰囲気を醸し出して頭を抱えていた。
「皇国め。遂に本性を現したか」
苦渋に満ちた表情で、手元にある文書を眺めて忌々しく声を漏らす。それはパーパルディア皇国から送られてきた要請文だ。
毎年皇国から送られてくるものだが、要請とは名ばかりの実質命令書だ。
内容が過激且つ横暴なものなのは毎年のことだが、今年ばかりは目を疑いたくなるような内容だった。
・アルタラス王国は、魔石採掘場『シルウトラス鉱山』をパーパルディア皇国に献上せよ。
・アルタラス王国王女ルミエスを、奴隷としてパーパルディア皇国へ差し出せ。
以上の二点を二週間以内に実行することを要請する。
そして最後に記載された一文が―――
『出来れば武力を使用したくないものだ』
「ありえないな」
最後の一文を見て、ターラ14世は要請書を握り潰して吐き捨てるように口にする。
パーパルディア皇国は前皇帝が崩御した後、現皇帝ルディアスが即位した。皇帝ルディアスは国土の拡大、国力増強を掲げ、各国に領土の割譲を迫っている。しかし、通常の場合は割譲地は無難な場所であったり、条件的に双方に一応ながら利があったりと、ある程度穏当な場合が多い。
(だが、今回はどうだ! どう考えても我が国に全く利が無いではないか!!)
彼は内心怒りに満ちて、握り潰した要請書を投げ捨てる。
シルウトラス鉱山はアルタラス王国最大の魔石採掘場であり、国の経済を支える中核だ。その埋蔵地は、世界でも五本の指に入るほどであると同時に、採掘される魔石の質が高い事でも有名だ。その為、第一、第二文明圏の国々に片手で数えられる程度の少数だが顧客が居る。
当然この鉱山を失えば、アルタラス王国の国力は大きく落ちることになるのは明白。そして国の経済が崩壊する可能性がある。
そして王女の奴隷化など、皇国に何のメリットなど無いはず。これは明らかにアルタラス王国に怒りを抱かせる為だけに記載されているとしか思えない。
つまり、皇国は初めから王国と戦争に持ち込もうとしているにしか見えなかった。
「皇国め! もはや見境無しになってきたのか!」
そしてターラ14世は怒号を上げて、テーブルに拳を叩き付ける。
「……」
テーブルに拳を叩き付けて、ターラ14世は荒れた呼吸を整えて冷静さを取り戻す。しかし興奮したせいか、彼は苦しげにくぐもった声を漏らし、左胸を押さえる。
しばらく荒く呼吸を繰り返して、やがて落ち着いたのか大きく息を吐く。
「……正直行きたくないが、一応確かめばならんな。既に答えは分かっているようなものだが」
ターラ14世は嫌悪感溢れる表情を浮かべながらも、真相を確かめるべく、準備を整えてパーパルディア皇国第3外務局の管轄、アルタラス出張所へと出向くことにした。
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アルタラス出張所は言うなればパーパルディア皇国の大使館といえる場所であり、皇国の国力を表すかのように豪華絢爛な見た目で、アルタラス王国の他の建物とは異なる雰囲気を出している。
ちなみにロデニウス連邦共和国の大使館職員曰く『趣味の悪いデザイン』らしい。
ターラ14世は外交官と側近の二人を供に連れて、職員に案内されて館内を歩いていく。
アルタラス王国の国王が直接来たというのに、館内は特に大きな混乱も見られなかった。誰もが視線を合わせず、背中を向けている。
(最初から来ることは分かっていた、か)
彼は内心呟きながら、周囲の様子を窺い、扉の前へとやって来る。
「待っていたぞ、ターラ14世!」
大使室の扉が開かれると、パーパルディア皇国第3外務局所属、アルタラス担当大使カストが、背もたれの上に腕を置いて大仰に椅子に座り、足を組んだまま一国の王を呼びつける。
一方の王は立ったままであり、大使室には大使が座る椅子の他にはソファーの一つも無い。いや、あったはずだが、どうやら事前に撤去したようで、床の一部が変色しているのが見える。
(なんと無礼な)
アルタラス王国の外交官は、カストのあまりにも無礼極まりない対応に内心憤る。ロデニウス連邦共和国の大使が礼儀正しかっただけに、彼の態度が際立っている。
無礼に無礼で返す為、挨拶抜きに話を始める。
「あの文書の真意を伺いに参りました」
「内容通りだが?」
大使カストは他にどんな意味があるのかと、わざとらしく両手を上げて挑発する。
「シルウトラス鉱山は我が国最大の鉱山です」
「それが何か? 鉱山は他にもあるだろう。それとも何か? えぇ? ルディアス様の意思に逆らうというのか?」
品の無い表情を見せるカストに、ターラ14世も顔をしかめる。ここまで来るとただのチンピラとのやり取りでしかない。ターラ14世の側近に至ってはあからさまに嫌悪感を醸し出している。
「とんでもございません、皇国に逆らうなど……。しかし、何とかなりませんか?」
「ならん!」
カストが声を荒げ、これまで黙っていたターラ14世が外交官を下がらせ、カストの前に進み出る。
「では我が娘、ルミエスのことですが、なぜこのようなことを?」
「あぁ、あれか。あの娘は中々の上玉ではないか。だから俺が味見をする為に奴隷として差し出せ」
「「「は?」」」
あまりにも身勝手極まりない、信じられない回答に、ターラ14世も外交官も、揃って抜けた声を漏らす。
一国の大使が、王家に対して最大級の侮辱を働いているのだ。
「俺が味を見てやろうというのだ。まぁ飽きれば職員たちの慰み者として残してやるから、安心しろ。それでも飽きれば娼婦館に売り払うがな」
よくもまぁこんな事を人前で言えるものだ。ターラ14世は怒りがこみ上げて、拳を握り締める。
もはやこれは国同士のやり取りではない。蛮族とのやり取りでしかない。
「……それも、皇帝ルディアス様のご意思なのですか?」
「あぁ!? なんだその反抗的な態度は!! 皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だぞ!! 蛮族風情が、誰に向かって口を利いていると思っているのだ!」
「品の無い人間に対してだ! 野蛮人!」
「なにっ!?」
ターラ14世は外交官より書類を受け取りながら、啖呵を切る。
「この俺を野蛮人だ――――ぶっ!?」
野蛮人呼ばわりされたカストは額に青筋を浮かべて怒りを露にするが、最後まで言い終える前にターラ14世に書類の束を顔にぶつけられる。束ねられた書類は何も留められていないので、当然書類はバラバラに散らばる。
「貴様らの国外退去と皇国との国交断絶、そして全ての皇国の資産凍結に関する書類だ!! それを持ってさっさと国に帰れ! 野蛮人共!」
ターラ14世は外交官を連れて、後ろからカストの罵詈雑言が飛んでくるが全て無視して出張所を後にする。
「何が列強国だ! 我々を蛮族と罵っている奴らの方がよっぽど蛮族では無いか!!」
「全くその通りですな」
「よくもまぁ、あんなことを人前で言えたものです」
馬車に乗って王城へと向かっている道中、ターラ14世は怒りが収まらず怒号を上げ、側近と外交官も激しく同意する。
「……これで、皇国との戦争は避けられなくなってしまったな」
「えぇ」
「軍への連絡は?」
「既に入れてあります」
「そうか」とターラ14世は声を漏らし、次に外交官を見る。
「それで、ロデニウス大使館への連絡は?」
「こちらも既に連絡を入れています。安全保障条約に基づき、連邦共和国へ
「良し」
外交官より話を聞き、ターラ14世は頷き、馬車の窓から外を見る。
ロデニウス連邦共和国より技術を輸入し、インフラが発達して豊かになりつつある街並みが広がっている。その街に行き交う市民たちの表情は活気に溢れている。
(本来なら我々が国を守るべきなのだが、国の存亡が掛かっている中で、手段は選べん。パーパルディア皇国に勝てるのは、この第三文明圏ではロデニウスに他はいない)
ターラ14世は内心呟きつつ、ロデニウス連邦共和国の力を思い出す。
第三文明圏の列強国であるパーパルディア皇国に対抗できる国は、この第三文明圏ではロデニウス連邦共和国以外居ない。いや、それどころかロデニウスが本気を出せば、皇国に勝つことも可能だろう。
「っ!」
するとターラ14世は一瞬苦しそうに顔をしかめ、左胸を押さえる。幸い側近と外交官は外を見ていたようで、彼の様子に気づいていない。
(まだだ。まだ、倒れるわけにはいかぬ。この国の未来の為にも)
ターラ14世は痛みに耐えながら、決意を胸に秘める。
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中央歴1639年 11月12日 パーパルディア皇国
所変わり、第三文明圏の列強国、パーパルディア皇国 皇都エストシラント
皇国で最も栄えた場所であり、そしてこの第三文明圏で最も繁栄した都市だろう。
国力を示すかのように建物はどれも文明圏外の国々ではあまり見られない石造りをしており、住まう区画は階級の高い人間ほど豪華さに差がある。
それ故に、この国では貧富の差が非常に目立ち、華やかで明るい、豊かな区間があれば、寂れて薄暗い、スラムのような貧しい区間も存在している。
その中で一番目立つのが、皇都エストシラントにある皇帝ルディアスが住まう皇宮パラディス城。権力を表すかのように、城は大きく、豪華絢爛な作りになっている。
そのパラディス城の玉座の間において、一人の男性が跪いている。
「面を上げよ」
その男性こと第三外務局局長カイオスは、冷や汗を流しながら顔を上げる。
彼の視線の先には、このパーパルディア皇国の若き皇帝ルディアスが玉座に座っている姿がある。
「フェン王国への懲罰の監査軍の件、余への報告はどうした?」
「ハッ。監査軍の派遣を報告せず、誠に申し訳ござい――――」
「たわけっ!!」
「っ!」
カイオスの論点をずらす謝罪に、ルディアスは一喝する。
「監査軍の派遣を報告しなかったことはどうでも良い。それは余が認めた第3外務局の権限だからな。蛮国への侵攻報告なぞいちいち聞いていたら、一日が終わってしまう。問題は……その監査軍が敗北したことだ」
「……」
カイオスはルディアスの指摘に息を呑む。
情報の出所は、恐らく第1外務局だろう。こういう時だけ諜報能力は高いのは、相変わらずのようだと、彼はそう感じた。この国ではプライドの高い者は常に他者のミスの揚げ足を取って見下す。そうやって自分の地位を保っているのだ。
そのせいでかつて第1外務局に勤務していた彼は、こうして第3外務局に堕ちてしまったのだから。
「それで、何処にやられた? まさかフェン王国か?」
「目下全力で対象国の割り出しを行って、つい先日件の国が判明致しました」
「ほう。どこだ?」
「ロデニウス連邦共和国と呼ばれる、文明圏外にある国であります」
「ロデニウス。そういえば先日の国家戦略局の件は同じ名前の大陸が関係していたな」
ルディアスは顎に手を当てて、その時の報告を思い出す。
「しかし、その国の名は聞かんな。新興国家か?」
「はい。恐らく先日の大陸内での戦争終結後、大陸にある三ヵ国が統一して誕生した国かと」
「文明圏外の新興国家が、生意気にも皇国に歯向かい、泥を塗ったか」
カイオスの言い分に、皇帝の顔が怒りに満ちる。カイオスは自身にその怒りが向けられていないとは言えど、息を呑む。
「竜母が居らず、少数のワイバーンロードと旧式艦の寄せ集めとはいえ、我らに土をつける国が文明圏外にいるとは驚きだな。戦闘結果だけを見た各国は、皇国がフェン王国如きに敗れたと見るだろう。その国には必ず責任を取らせよ」
「承知しました。既に第三国を経由してその国へ出頭命令を下したところです」
「そうか。では、身の程を知らない蛮族に、きっちりと教育してやれ。皇国に逆らえば、どうなるかをな」
「はっ!」とカイオスは深く頭を下げる。
皇国としては、その高いプライドから格下に負けたという事実を認めたくないというのもあるが、下手すればその格下に負けたという事実が属国や周辺国に何かしらの影響を与えかねない懸念がある。それ故に、皇国は常に強くなければならない。
それが自分の首を絞めているとも知らずに。
「皇帝陛下、もう一つ報告したい事がございます」
「何だ?」
「アルタラス王国の件ですが、想定通りシルウトラス鉱山の献上を断ってきました。大使がうまくやったようです」
「ふむ。それは重畳だな」
怒りに満ちていたルディアスの顔は、残忍さを隠そうともしない笑みに変化する。
まぁカストの独断且つ欲望に満ちた内容がある意味彼らからすれば功を奏したようなものだが、その内容は伝えられていないようだ。
「更に、アルタラス王国内での皇国の資産凍結と、国交断絶を伝えてきております。いかがしますか?」
「ほう。ここまであからさまに反逆の意思を見せるとは。予定通りではあるが、いささか頭に来るな。なめられたものよ」
頭にくると言いつつむしろ楽しそうに語るルディアス。彼の戦略の中では、アルタラス王国を皇国の領土に収めることは既に決まっているようである。
「これは徹底的にやって、仕置きを下す必要があるな。アルタラス王国には正規軍を派遣せよ。皇軍の準備は出来ているな?」
ルディアスは、傍らに立つ軍の礼服を身に纏った男性に問い掛ける。
彼は皇軍の伝令係だ。ルディアスの命令は彼を経て、即座に皇軍の将軍達に伝えられる。
「陛下の命があれば、皇軍はいつでも出撃出来ます。アルタラス王国を滅し、全ての魔石鉱山を皇帝陛下に献上いたしましょう」
「そうか、では任せた。だが、王族は皆殺しで構わんが、民間人は無駄に殺すな。貴重な労働力だ。カイオス、貴様はアルタラス王国へ書簡を送っておけ。内容は任せる」
「「はっ!」」
カイオスと伝令係は返事をして、玉座の間を後にする。
しかし、玉座の間を去ろうとしたカイオスの口角が、僅かに吊り上がったのを、誰も気づかなかった。
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中央歴1639年 11月7日 ロデニウス連邦共和国。
時系列は少し遡り、場所はロデニウス連邦共和国 トラック泊地
「やはり皇国はアルタラス王国に対して戦争を仕掛けてきたか」
「予想していたとは言えど、ホント悪い予想だけはよく当たっちまうな」
『大和』と『紀伊』が執務室にて呆れた様子で話していた。
「それで、大統領は何と?」
「閣議の結果、政府は安全保障条約に基づき、アルタラス王国に
「そうか。これから忙しくなるな」
『紀伊』は『大和』にそう伝えると、彼は頷く。
アルタラス王国から
そして昨日の閣議の結果、政府はアルタラス王国と結んだ安全保障条約に基づき、
ちなみにさっきから
そして王国へ武器兵器の提供という名の援軍として送り込むのは……KAN-SENである。
人の姿をしているKAN-SENだが、その本質は兵器である。故にあくまでもKAN-SENの派遣は
まぁ指揮権が移るといっても、向こうの指示次第では殆ど自らの判断で動くことになるが。
その上、KAN-SENは大抵数日は掛かるであろう軍の準備期間が早くて半日で済む。この即応性がKAN-SENの強みともいえる。
「それで、援軍で送る戦力はどうする?」
「あぁ。一応『尾張』を筆頭に、空母と巡洋艦、駆逐艦を数隻程度と、潜水艦を送る予定だ」
「そうか……」
『紀伊』より提供として送る戦力を聞き、『大和』は腕を組む。
「何か気になる事でもあるのか?」
「いや、援軍として送る戦力だが……」
『大和』は一旦間を置いて、言葉を続ける。
「戦闘自体はあの二人に任せて、他はいざという時のバックアップで送ろうと俺は考えているんだが……」
「あの二人……まさか『まほろば』と『筑後』か?」
あの二人のことに気づいた『紀伊』が問い掛けると、『大和』は「あぁ」と短く答える。
「あの二人にも、そろそろ実戦を経験させようと考えていた。まぁ皇国程度では経験にならないかもしれないが、実戦の空気を感じ取る事は出来る」
「そりゃそうかもしれないが……良いのか?」
「いつまでも隠しているわけにはいかないからな。あの二人もKAN-SENだ。いつかは戦場に出なければならない時が来る」
「……」
『紀伊』は腕を組み、静かに唸る。
「なら、『蒼鶴』と『飛鶴』も出すか?」
「いや、あの二人はまだKAN-SENとして完成したばかりだ。練度が全然足りないから、あまり戦力としては役に立たない。もちろん『葛城』もだ」
「そうか。なら、あの二人も提供する戦力に加えておく。話は俺がしておく」
「あぁ。頼む。あともう一つ、加える戦力に……彼女も頼む」
「彼女? もしかして最近建造した、あいつか?」
「あぁ」
『大和』よりもう一つの要望を聞き、『紀伊』はどこか納得しがたいような表情を浮かべる。
「いきなり実戦に出すのは難しいんじゃないか? あの妖精達ですらキワモノだと言われているシステムだって完全に解析が終わってないんだぞ」
「だが、テストだけでは十分な能力は把握出来ていない。実戦での運用データが必要だ」
「そりゃそうだが……」
『大和』の言い分も理解できるが、それでも『紀伊』は渋る。
最近彼らは戦力増強を行うと共に、疑似メンタルキューブを用いたデータ取得の為、新たなKAN-SENを建造した。
その建造された数隻のKAN-SENの中に、一隻の潜水艦のKAN-SENが建造された。
しかも『カンレキ』が異なり、尚且つ史実に存在しないKAN-SENである。正確に言うとその潜水艦自体は存在しているが、その潜水艦とは異なる姿な上に、特殊なシステムを搭載している。
その潜水艦のKAN-SENのテストで、その特殊システムが何なのかは大体把握することが出来た。と同時に、量産が出来ない上に致命的な欠陥があることが発覚し、他のKAN-SENでは使うのが危険すぎるのが判明している。
そんな不確定な状態のKAN-SENの実戦投入なんて、何が起きるか分かったものではない。
「他のKAN-SENのサポートがあれば、不測の事態に対応できるはずだ。それに、不確定だからこそ、今の内に把握しておく必要があるんだ」
「……分かったよ。彼女も、戦力に加えておくよ」
「すまない」
『紀伊』は渋々とだったが頷き、執務室を出る。
「……」
すると『大和』の表情は暗くなり、深くため息を付き、両肘を机に置いて両手を組み、そこに額を付ける。
少しして扉がノックされる。
『入って良いか、総旗艦』
「『加賀』か。あぁ、構わんぞ」
『大和』が入室を許可すると、扉が開かれて『加賀』が入って来る。
「帰っていたのか『加賀』」
「艤装の調整の為に戻ってきたんだ。最近は周辺国の情勢が不穏のようだから、いつでも出撃が出来るように」
「確かにな」と『大和』は答える。
「……」
「? どうした、総旗艦?」
と、少し気落ちした様子の『大和』に、『加賀』が問い掛ける。
「いや……ちょっと、不安でな」
「お前が不安を口にするとはな。何かあったのか?」
「……実はな――――」
『大和』は『加賀』に先ほどの話を伝える。
「『まほろば』と『筑後』の実戦投入。あの二人も遂に初陣か」
『加賀』は腕を組んでどこか感慨深そうに呟く。
「……自分で決めておきながら、急に心配になってな」
「……」
「『筑後』は……うまく出来るだろうか。下手すれば怪我をするんじゃないかって……」
『大和』はそう言うと、顔を俯かせる。KAN-SENではあるが、彼も子を持つ親なのだ。
「我が子を戦場に送り出す親の気持ちが、こんなに重いとはな……」
「……」
そんな彼の暗い様子を見かねてか、『加賀』は彼の傍に歩み寄り、『大和』の頭を自身の胸に抱き寄せる。
「『加賀』?」
「そう心配することはあまり無いだろう」
少し驚いた様子の『大和』に、『加賀』は彼の頭を撫でながら語りかける。
「お前と『天城』さんの娘だ。うまくやれる。もちろん『まほろば』だってそうだ。親ならば、子を信じてやれ。と言っても、今の私には言える立場じゃないが」
「……」
「それに、そうならない為のバックアップだ。『尾張』達が付いているなら、心配はないだろう」
「……そうだな」
『加賀』の言葉に多少なりとも不安が払拭されたのか、『大和』は顔を上げる。
「信じてあげないとな。自分の子供を」
「あぁ。そうだな」
彼がそう言うと、『加賀』は微笑みを浮かべる。
「そういえば姉様から『いつ総旗艦様と子供を作るのかしら?』って聞かれたんだが、どうしたらいい?」
「さっきまでの雰囲気が台無しだよ、おい」
感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。
竜の伝説編はやっておくべき?
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やっておいた方が良い
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別にやらなくても良いんじゃね?
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オリジナル要素を加えてやるべき