異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
評価して頂きありがとうございます。
題名と同じゲーム、好きだったなぁ。もう続編が出る事は無いんだろうけど……
所変わり、アルタラス島を目指すパーパルディア皇国の大艦隊。
艦隊は特に問題なく、順調にアルタラス島に向かって進んでいる。
「……」
将軍シウスは、腕を組んだまま静かに、空を見つめる。その表情はどことなく落ち着きがない。
「おい。魔振感知器に反応は無いか?」
「いえ、今の所感知器に反応はありません」
参謀の一人が感知器に就いている水兵に問い掛けるが、感知器には何も反応が無いので、水兵は異常が無いのと報告する。
「おかしい。ここまで来ればアルタラス王国のワイバーンが飛んで来てもおかしくないはずだ」
「我々に怯えて逃げたのでは?」
参謀がそう言うものも、シウスは睨みつける。
「国の存亡が掛かっている以上、蛮族であってもそんな恥晒しなことはしない。楽観視はするな」
「は、ハッ。申し訳ありません」
シウスの叱責に、参謀は頭を下げる。その参謀の様子に他の参謀たちが嘲笑う。
「しかし、ここまで敵が来ないのは不自然ですな」
「うむ。向こうには何か策があるやかもしれん。魔振感知器はもちろん、目視による警戒を厳にせよ! 些細な事でも構わん! 見つけたらすぐに報告しろ!」
シウスの指示はすぐに各艦に伝わり、手空きの水兵達が目視で周囲を確認している。
「後方の竜母艦隊はどうか?」
「ハッ。既にワイバーンロードの発艦準備を整えています。命令があればすぐに出れます」
「では各艦から2騎ほど出して上空警戒に当たらせろ」
「ハッ!」
シウスは参謀より報告を聞き、すぐに指示を出す。
指示はすぐに艦隊後方に位置している竜母艦隊に伝わり、飛行甲板にて待機しているワイバーンロードが各竜母より2騎ずつ飛び立とうと翼を広げ、甲板を走り出す。
その直後、竜母の一隻から突然大きな水柱が上がる。飛び立とうとしたワイバーンロードは轟音に驚いて飛び損ね、飛行甲板に頭を叩き付けた上に勢いのまま首の骨を折り、竜騎士は前に投げ飛ばされて竜母から落下して海面に叩き付けられる。
轟音と共に水柱が上がり、竜母は船体を真っ二つに切断され大半が吹き飛ばされて轟沈する。
「なっ!?」
他の竜母からその様子を見ていた竜騎士は目を見開いて驚愕する。
何の前触れもなく、突然巨大な水柱が上がると共に竜母が真っ二つになって沈んだ。そんなありえない光景に誰もが呆然として見つめている、
だが、その光景が一つだけでは終わらない。
続けざまに他の竜母も轟音と共に水柱が上がり、船体が粉々に吹き飛んで轟沈していく。
「な、なんだ……」
竜母の艦長はその光景に、呆然と立ち尽くし、声を漏らす。
「一体何が……何が起きている!?」
やがて大きな声を上げると、直後に彼が乗っている竜母も攻撃を受け、轟音と共に巨大な水柱が上がり、轟沈した竜母は船内にいるワイバーンロードと竜騎士を巻き込み、誰も状況を理解できないまま海へと沈む。
―――――――――――――――――――――――――――――
「これで2隻目っと」
その頃、海中から竜母が沈んでいく様子を見ている者がいた。
巨大な船体を持つ潜水空母『伊13型潜水艦』『伊13』の艦内で潜望鏡を覗き込む少女が戦果を確認して声を漏らす。角を生やし、水色の髪をした少女の名前は『伊13』 潜水空母のKAN-SENである。
『こちらイロハ。こっちも2隻目撃沈よ!』
と、潜水艦『伊168』より敵艦撃沈の通信が入る。
『こちら、「ノーチラス」 こちらも2隻撃沈です』
次に潜水艦『ノーチラス』より報告が入り、これで竜母を6隻撃沈している。
竜母艦隊に攻撃を仕掛けているのは、ロデニウス連邦共和国より派遣された艦隊に同行した潜水艦4隻であり、『伊13』『伊168』『ノーチラス』、更にもう一隻が海中に潜み、竜母艦隊に対して雷撃を敢行した。
しかも雷撃に使用した魚雷は、高威力且つ長射程を誇り、航跡を残さない酸素魚雷であり、航跡を出さずに遠距離から放たれた魚雷は静かに竜母に接近し、皇軍側に気づかれること無く竜母に命中させたのだ。
ちなみに重桜の『伊13』と『伊168』ともう一隻は、九三式魚雷を用いているが、『ノーチラス』は妖精達によって開発されたユニオン規格の酸素魚雷を用いている。
ただ、この酸素魚雷は一発の価格が高価格であり、そんな無駄遣い出来る代物ではない。ましても相手は鉄製の軍艦では無い、比較的脆い構造の竜母であり、柔らかい目標に使うには、些か勿体ない気がする。しかしケチって敵を仕留め損ねれば、後々面倒なことになりかねないので、確実に仕留める為に酸素魚雷をふんだんに使っている。
まぁトラック泊地所属の潜水艦のKAN-SENの技量は非常に高い。遠距離から魚雷を目標に当てるのもそう難しいことではないので、無駄弾を出すことはあまりない。
そして一隻に関しては、恐らく外すことは無いだろうとのこと。
すると『伊13』が潜望鏡を覗いていると、3隻の竜母に水柱が上がり、船体がバラバラになって轟沈する。
『こちら「伊507」』
と、どこか機械的な、感情の無い声が『伊13』の通信機より発せられる。
『敵艦3隻撃沈。引き続き竜母の排除に掛かります』
まるでそういう風にプログラムされたような喋り方で、『伊507』と名乗った潜水艦が雷撃を行おうとしている。
『伊507』……最近妖精達が精製した疑似メンタルキューブで建造されたKAN-SEN達の内、潜水艦のKAN-SENとして建造されたのが、彼女だ。
だが、『伊507』は建造当初から謎めいたKAN-SENであり、艦体の形状は珍しい砲撃潜水艦こと『シュルークフ』と非常に似通っており、砲撃潜水艦であることに変わりない。だが、それ以外に関しては未だに解明できていない部分が多いとのことで、今回の戦闘に投入されたのも、データ収集が目的だからだ。
実際、先ほど他の潜水艦が放った魚雷と同じ魚雷を放ったにもかかわらず、まるで目標の場所と動きを正確に把握しているかのように魚雷を放ち、竜母を3隻撃沈したのだ。
(あの507って子……妙に近寄り難い雰囲気があるのよね)
『伊13』は建造直後に顔合わせした時の『伊507』のことを思い出す。
自分達と同じ潜水艦のKAN-SENが新しく来たとあって、潜水艦組は当時は喜んだものも、いざ『伊507』と対面すると、彼女たちの間に戸惑いが生まれた。
死んだ魚の目のような、ハイライトの無い目。感情の起伏の無いしゃべり方。まるで人形みたいな雰囲気だったという。
命令の受け答えこそするが、それ以外は自ら喋ることは無い。正に人形のようなKAN-SENだった。
尤も、人形みたいな雰囲気の状態は艤装を展開している時だけで、艤装を解除すれば若干避けているような感じではあるが、いたって普通の少女だ。
(まぁ、今気にすることじゃないよね)
『伊507』について色々と気になるものも、『伊13』は気持ちを切り替えて潜望鏡を覗き込み、残りの魚雷の発射準備を妖精達にさせつつ、生き残りの竜母の様子を伺う。
「将軍! 竜母艦隊が!」
「っ!?」
後方から轟音がして誰もが後ろを見ると、竜母艦隊が攻撃を受けていた。
既に半分以上が沈められ、黒煙を上げており、残りの竜母も次々と攻撃を受けて沈められている。
「竜母が! 一体何が起きている!」
「攻撃です! 竜母が攻撃を受けています!」
「そんなバカな! 敵の接近を許したのか! 監視員は何をしていたのだ!!」
参謀が感知器を見ていた水兵に怒鳴る。
「いえ、感知器に反応は一切ありませんでした!」
「ではなぜ竜母が攻撃を受けているんだ!」
水兵は感知器に反応は無かったと報告するも、参謀は現に竜母が攻撃を受けている事実を水兵に突き付けて責め立てる。
「通信参謀! 竜母艦隊と連絡は取れるか!!」
「はっ! 先ほど竜母より通信が入っています!」
シウスは通信参謀に指示を出して、竜母と魔力通信を繋げる。
「こちら旗艦『シトラス』 状況を報告しろ! 何が起きている!」
『こちら竜母「エルート」! 他の竜母が攻撃を受けている! 既に9隻がやられた!』
「ワイバーンによる攻撃か!?」
『いや、ワイバーンじゃない! 上空に敵騎の姿は無い!!』
「じゃぁ一体なんだ!?」
『分からない! 周りに敵騎は見当たらないどころか、敵の姿も見えないんだ!』
魔力通信より漏れた報告は、参謀たちをざわつかせる。ちなみに先ほど責められた水兵は「ほら見ろ!」と言わんばかりに参謀を見ながら魔力感知器がある方を指さしている。
敵の姿が見えない。にもかかわらず、攻撃を受けている。そんな理解しがたい状況に、誰もが戸惑いを見せている。
まぁ魚雷という兵器以前に、水中から攻撃されているなんて、誰も思わないだろう。
「そんなはずがないだろ! 敵がいないでどうやって攻撃を受けているというんだ!」
『そんなこと言われても分かるわけないだろ! 現にこちらは――――』
その瞬間、竜母6隻に巨大な水柱が上がり、竜母6隻は轟沈してその船体を海に沈めていく。
『伊507』より放たれた酸素魚雷が一寸の狂い無く3隻の竜母へと直撃したのだ。続けて『伊13』と『伊168』『ノーチラス』より放たれた酸素魚雷が残りの3隻に直撃し、竜母を轟沈させた。
「……竜母艦隊……全滅しました」
『……』
水兵の報告を聞き、誰もが唖然となる。
竜母が全滅した。空の王者と謳われたワイバーンロードが、空を飛ぶことなく100騎以上が竜母諸共海の底に沈められてしまった。
つまり、皇軍側の制空権消失を意味している。
アルタラス王国がワイバーンロードの格下である原種のワイバーンを繰り出したとしても、空からの攻撃の威力は変わらない。上空援護が無いと、さすがの皇国でも大きな損害は免れない。
「一体、我々は何と戦っているのだ?」
将軍シウスは、他と比べれば比較的に落ち着いた様子で、声を漏らす。しかしその言葉に答えられる者はいない。
敵の姿は見えないままで、15隻の竜母と100騎以上のワイバーンロード、そして多くの竜騎士が共に失われたのだ。
正体不明の相手に、誰もが恐怖を抱く。
「将軍。竜母は失われましたが、我が艦隊には100門もの魔導砲を備え、対魔弾鉄鋼式装甲を持つ最新鋭の戦列艦があります。揚陸部隊も無傷で揃っている以上、まだ勝機は失われておりません!」
参謀の一人が迷いを見せるシウスに、まだまだ艦隊に余力があるのを伝える。揚陸部隊が無傷で残っているのなら、銃を持つ兵士が残っている。銃であれば弓矢やクロスボウと違い、多少ワイバーンへ攻撃が当たる可能性が高いからだ。
そしてシウスが乗艦している『シトラス』を含む多くの戦列艦は、パーパルディア皇国で最新鋭の戦列艦であり、搭載している対魔弾鉄鋼式装甲は魔導砲の直撃にも耐えうる強度を有している。その為、アルタラス王国の軍船の攻撃に耐えられると、自信を持って言えた。
空からの攻撃には苦戦するだろうが、まだ皇国側には数がある以上、多少の損害は覚悟の上であれば、勝機はあると踏んだのだ。
しかし、それはあくまでも自分達よりも格下が相手であるという前提の話であり、当然格上が相手では、話が違ってくる。
ましても、自分達の常識を上回る攻撃なんて、想像すら出来ないだろう。
シウスが前進を続行しようと指示を出そうとした瞬間、艦隊のあちこちで突然先ほどの水柱とは比べ物にならない巨大な水柱が上がる。
『っ!?』
誰もが理解が追い付かず驚愕の表情を浮かべ何人かが衝撃のあまり尻餅を着き、戸惑っていると、巨大な水柱が収まる。
「な、な……」
そして目の前に広がる光景に、誰もが呆然と立ち尽くす。
さっきまで航行していた戦列艦の多くが、残骸となって海に落ちて海に浮かんでいる。中には人間だった肉片や骨片も混じっている。そして水柱によって上空に舞い上げられた戦列艦だった残骸が海に落ちていく。
更に何隻かの戦列艦が巨大な水柱が起こした波に呷られて、横転して転覆しており、周囲には運よく海に投げ出され、状況を理解できず混乱している乗員の姿がある。
あまりにも……あまりにも非常識な光景に、誰も声を上げられないでいた。
だが、状況は彼らに理解させる為の時間を与えてはくれない。
その直後、更に艦隊のあちこちで先ほどと同じ巨大な水柱が轟音と共に上がり、戦列艦と揚陸艦を襲う。
―――――――――――――――――――――――――――――
パーパルディア皇国の艦隊から離れた海域。
そこでは皇国の艦隊に向けて二隻の戦艦が低速で進みつつ主砲から轟音と共に砲撃を行っている。『まほろば』と『筑後』の2隻である。
観測機を飛ばしてアルタラス島を離れた2隻は、砲撃準備を整えつつ低速で航行していると、観測機がパーパルディア皇国の艦隊を発見し、2隻はすぐさま観測機より送られた諸元に従い主砲を向け、砲撃を開始した。
『まほろば』の5基15門ある51cm砲を交互射撃にて砲撃を行い、一度に5発の砲弾が皇国の艦隊に襲い掛かる。それが短い間隔で三回来るのだ。
それに加え、『筑後』の3基12門ある51cm砲も2門ずつの交互射撃を行い、一度に6発の砲弾が皇国の艦隊に襲い掛かる。その上『まほろば』と比べ50口径という長砲身から放たれているとあって、『まほろば』よりも初速が掛かった砲弾が飛翔している。
2隻は電探と連動し、観測機からの敵艦隊の位置と状況情報、光学照準の連携による精密な砲撃は、狙いが狂うことなく皇国の艦隊へと砲弾を落としている。
ただでさえ51cmという艦砲としては規格外の大きさの砲から放たれた砲弾が次々と飛んで来ているという状況に狂いそうになるが、その砲弾が大きく狙いが逸れることなく、ほぼ正確に飛んで来ているのだ。
向こうは恐らく現実を直視出来ないでいるだろうし、何より理解することも出来ないだろう。
「……」
そんな中、艦体の艦橋にて、『筑後』は観測機を介してパーパルディア皇国の艦隊を見て、悲しげな表情を浮かべている。
51cmという巨大な砲弾が連続して落ちてきて、巨大な水柱が上がる度に多くの戦列艦が粉々に粉砕されるか、波に呷られて転覆している。そして多くの命が一瞬で奪われている。
その上、向こうは一度も攻撃らしいことも出来ず、アウトレンジからただただ一方的にやられている。
あまりにも一方的な光景に、彼女は胸を締め付けられるような感覚を覚え、胸元に右手を当てる。
『大丈夫か?』
そんな様子を遠くから察したのか、前方を航行している『まほろば』から通信が入る。
「『まほろば』さん……」
彼女は少し弱々しい声で、彼の名前を漏らす。
「……えぇ。私は、大丈夫です」
『無理はするなよ。もし君の身に何かあったら、「大和」さんに申し訳が無い』
「それは、あなたも同じことが言えますよ。少し声が震えています」
『それは……』
図星だったのか、『まほろば』は言葉を詰まらせる。まぁお互い今回が初の実戦なのだ。これまで演習は行ってきたが、やはり実戦の空気は実戦でなければ体感できない。
そして命が消える瞬間を目の当たりにするのも、実戦でなければ見ることは無い。
「大丈夫です。実戦に出た以上、最後までやります」
『……』
「それに、私たちがやらないと、アルタラス王国の皆様に、被害が出ます。そして、罪のない市民達が犠牲になってしまいます」
『「筑後」……』
『筑後』は深呼吸をして気持ちを整えると、気を引き締める。
「私は、戦います。アルタラス王国の民を守る為に」
『…‥あぁ。そうだな』
彼女の決意の籠った言葉に、『まほろば』も肯定する。
「主砲、全門斉射用意!!」
そして彼女は凛として、透き通った声を上げて指示を出し、仕上げに入る。
―――――――――――――――――――――――――――――
そして続けざまに砲撃を受けた艦隊は、壊滅的な打撃を受けていた。
「……」
『シトラス』の艦上にて、シウスは周囲で起きている惨状に、呆然と立ち尽くしている。
「くそっ!! 何なんだよ一体! 相手はただの蛮族じゃないのかよ!!」
「本当に敵の姿は見えんのか!?」
「全く見えません!」
「死にたくねぇ……死にたくねぇよ……」
「これは夢だ。そうだ、夢に決まっている。こんな事が現実なわけがない……」
「なんで俺達がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!!」
「卑怯者!! さっさと出て来いよ! 蛮族共が!!」
周りでは参謀や水兵達の怒号や悲鳴が飛び交い、右往左往している。
『シトラス』の周囲は多くの戦列艦だった残骸や、人間であった肉片の一部が浮かんでいる。
壮大な光景を誇っていた艦隊は、もはやその面影は残っておらず、生き残った戦列艦はバラバラに散らばり、揚陸艦もたった数回の砲撃ですでに半分近くが沈められている。
その上先ほどの
未だに敵の姿は見えない。なのに攻撃は次々と来ており、こちらは一切の攻撃を行うことが出来ず、被害が拡大する一方だ。
(我々は……本当に一体何と戦っているんだ?)
とても現実とは思えないことばかりが起きて、彼の心は完全に折れて戦意を喪失している。
圧倒的な戦力を以ってして、アルタラス王国に攻撃を行うはずだった。
誰がどう考えても確実に勝てる戦力だったはずだった。
皇国側に負ける要素など、無いに等しかったはずだ。
しかし……実際はどうだ?
未だに姿を捉えられない敵に、現実とは思えない攻撃を一方的にされ、どんどん被害が拡大する一方だ。
それなのに、こちらは一度も攻撃を行っていない。敵に一矢報いる事すら出来ていない。
(アルタラス以外の国が関わっているのか? いや、それでも、こんな……)
やがてシウスは一つの推測を立てる。ここまで来れば、もはやアルタラス王国以外の第三国が攻撃に関わっている可能性だ。アルタラス王国の戦力を考えれば、どう考えても皇国側に負ける要素は無いのだから。
であれば、アルタラス王国以上の力を持つ第三国が関わっている可能性を考えるのは、自明の理ともいえる。
だが、そうなると、どこの国が該当するのか。彼には皆目見当がつかなかった。皇国以上の力を持つ国なんて、もはや第三文明圏に存在しないからだ。
それならば第二文明圏、ありえないが第一文明圏の国が関わっているんじゃないかと、彼は考えた。だが、それらの文明圏の国々が蛮族の国を支援する理由なんて無いはずだと、彼は考えてしまう。
「将軍! どうしますか!?」
と、参謀の一人が慌てた様子でシウスに声を掛ける。それと同時に他の参謀や水兵達がシウスを見る。
当然このまま進めば破滅が待っているのは明白だ。常識的に考えるのならここで反転して退却するべきなのだろう。実際艦隊は壊滅判定がなされてもおかしくない損害を受けている。
しかし、彼らはその選択を選ぼうとはしない。その理由は単純に、格下相手に尻尾巻いて逃げるわけにはいかないという、心底くだらないプライドがあったからだ。
だが、少なくともまだ常識的であるシウスは、一考した後撤退する為に、指示を出す。
が、それと同時に彼らが乗り込んでいる戦列艦『シトラス』に、運悪く砲弾が落下し、直撃と共に衝撃によって戦列艦は一瞬でバラバラになり、シウスを含め、参謀と水兵達は何が起きたのか理解する間もなく、直後に起きた爆発によって肉片を残さずに、消滅するのだった。
それが、この艦隊の命運を決定づけてしまう。
旗艦を失ったことで、指揮系統は崩壊し、生き残った戦列艦の動きは各々の判断に任されることになる。
その行動は様々で、そのまま直進する船があれば、反転して撤退しようとする船、中には船を捨てて逃げようとする者と、様々だ。
まぁ海のど真ん中で船を捨てて逃げる者の末路は、確実に明るくないのは確かだろう。
その後『まほろば』と『筑後』の2隻による砲撃は続き、二時間足らずで、アルタラス王国を占領するべく向かっていたパーパルディア皇国の艦隊は、敵の姿を視認することなく、一方的に攻撃され続け、敗北を喫したのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「『まほろば』より入電。敵艦隊の被害甚大。現在残存戦力を確認中、とのこと」
「そうか」
艦体の戦闘情報管制室にて、妖精より報告を聞いた『尾張』は頷く。
(とりあえずは……勝ったか)
彼は内心呟き、安堵の息を吐く。
「それで、どうするんだ『尾張』? この様子だと生存者は居るだろうが……」
『ソビエツカヤ・ロシア』はモニターを見つめて呟く。
モニターには『尾張』より飛び立った瑞雲より送られた映像が表示されており、海には多くの残骸が浮かび、中には転覆した戦列艦の姿がある。
少なくとも、パーパルディア皇国側の生存者は多少なりとも居るだろう。実際モニターには小さくながら動いているものがある。
「俺達はあくまでもアルタラス王国へ提供された武器としてここにいる。どうするかはアルタラス王国次第だ」
「そうか」
『尾張』の言葉に、『ソビエツカヤ・ロシア』は短く返す。
あくまでも彼らKAN-SENはアルタラス王国へ提供された武器という名目でここに居る。故に指揮権はアルタラス王国にあるので、判断は王国次第だ。
(まぁ、恐らくアルタラス側は皇国の人間を助ける気なんて無いんだろうがな)
と、『尾張』は内心呟き、短く息を吐く。
ロデニウスとしては、人道的に皇国の生存者の救助を行いたい所だが、恐らくアルタラス王国は皇国の生存者が居ても、助ける気は毛頭無いはずだ。
そもそも横暴な要求を突き付けて戦争を仕掛け、その上王族の女性を奴隷として差し出せと要求をしてくるような国の人間を、助けたいと思う者が果たしているだろうか。
否。居るわけが無い。居たら余程のお人好しか、ただの売国奴ぐらいだ。
その後観測機や潜水艦によって海上に多くの皇国の生存者が確認されたものの、アルタラス王国は『防衛に専念されたし。生存者を救助する余裕無し』と指示を出したことで、『尾張』達は指示に従い、その場で待機することになった。
ロデニウス側としては心苦しいものだが、パーパルディア皇国側の生存者は完全に見捨てられることになってしまう。
見捨てられた生存者たちは、潮の流れによって今の海域から流され、鮫にしろ海魔に襲われるか、冷たい海によって体力を奪われるかで、一夜と持つことは無いだろう。例え持ったとしても、助かる見込みは無い。
とまぁ、皇国によるアルタラス王国の侵略は、実質ロデニウス連邦共和国によって阻止され、パーパルディア皇国は多くの損失を強いることになった。
感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。
竜の伝説編はやっておくべき?
-
やっておいた方が良い
-
別にやらなくても良いんじゃね?
-
オリジナル要素を加えてやるべき