異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
中央歴1639年 11月19日 ロデニウス連邦共和国
「パーパルディア皇国によるアルタラス王国への侵攻を阻止。王国の防衛は成功しましたか」
会議室にて、先の戦争の結果を聞き、カナタは安堵の息を吐く。
「しかし、かの国がこれで諦めるとは思えませんので、第二次攻撃も警戒しておく必要があります」
「確かに、あの国の性格を考えれば、これで終わりとは思えんな」
「それに加えて、フェン王国の件もある以上、皇国が止まる事は無いだろう」
軍の者や政府関係者がこれからの事を話し合う。
パーパルディア皇国の性格を考えれば、これで終わるはずがない。恐らく戦力を整えれば、再びアルタラス王国に向けて侵攻を開始する可能性が高い。その為にも、アルタラス島への侵攻を警戒し続ける必要がある。
そうでなくても、先のフェン王国の一件もあるので、近い内にフェン王国へ軍を差し向ける可能性が高い。こちらに関しては、武器を提供するという体裁で援軍を送ったアルタラス王国と違い、純粋にKAN-SENを援軍として派遣する予定である。
これは言うなれば皇国に対して宣戦布告に近い行為だ。
カナタは右手を小さく上げると、会議の出席者達は話し合いをやめて静かになる。
「とにかく、アルタラス王国の防衛についてはしばらく現状維持ということで、お願いします『紀伊』殿」
「分かりました」
カナタの言葉を聞き、『紀伊』は頷く。
「今後の事を考えて、アルタラス王国を防衛する戦力を増強しておく必要があると思います。艦隊の戦力はしばらくそのままとして、一定の期間が過ぎれば戦力を交代させるべきかと。それと航空隊をムーと共同で運用している飛行場へ送りましょう」
「許可します」
軍関係者より提示された提案に、カナタは頷いて許可を出す。
「アルタラス島の防衛についてはそれで良いでしょう。しかし、問題は……」
カナタは苦虫を噛んだような表情を浮かべ、手元にある紙を見る。
それは、パーパルディア皇国よりトーパ王国を通じてロデニウス連邦共和国へと送られた、パーパルディア皇国への出頭
「要請ならともかく、命令とはねぇ……」
不愉快そうな雰囲気を醸し出す『大和』は、忌々しそうに呟く。
「恐らくフェン王国での一件についてでしょう。そこで我々に選択を迫らせ、謝罪と賠償を求めてくるものかと」
『……』
カナタの言葉に、誰もが悲痛な面持ちになる。
こうなってしまったら、もはや皇国と和解するのは、不可能になるからだ。
そして皇国に逆らえば、皇国は間違いなくロデニウス本土に対して何かしらの懲罰的攻撃を行うか、最悪宣戦布告を行うだろう。
「無視できれば楽なんだが……その場合どうなると思います?」
「恐らく向こうから来ることになるでしょうね。大軍を引き連れてですが」
「そりゃそうだろうな」
海軍省の人間の言葉に、『紀伊』はため息をつく。
脳筋的思考で考えれば、むしろその方が四の五の言わずに武力で威嚇すれば楽で良いのだが、世の中そううまくは行かないものだ。
「正直行っても結果は変わらないと思いますが、一応出向く必要ははあると思います」
「私もそう思います。しかし相手はあのパーパルディア皇国。何をしてくるか分かりません」
「あの国は些細な事で揉め事に発展させているという噂もありますからな」
各々が意見を出す中、海軍省の人間が発言する。
「皇国には行き違いを起こさない為にも、ここは砲艦外交を行うべきです。いくらパーパルディア皇国とは言えど、我が国の軍艦、それも戦艦を目の当たりにすれば、さすがに考えを改めるはずです」
「そうですな。特に我が海軍の『シキシマ』や『サガミ』、更に言えば『紀伊』殿や『尾張』殿を見せつければ、皇国とて強気には出られないはず」
海軍省の人間は、パーパルディア皇国に対して砲艦外交を行うべきだと主張する。
実際、この世界では砲艦外交は他国に対して抑止力として一般的に行われている。砲艦外交は言うなれば自国の技術力を大きく示す行為でもあるので、抑止力としては効果的だ。
ロデニウス連邦共和国であれば、『シキシマ』や『サガミ』、更には紀伊型戦艦であれば、砲艦外交を行うのに最適だ。実際に紀伊型戦艦を見たら、戦う気なんて起こらないだろう。そうでなくても、『紀伊』と『尾張』以外の戦艦のKAN-SENであっても効果的だ。
「だが、連中が我が国の軍艦を見たとしても、自分達にとって都合の良いように解釈する可能性もある。そうなってしまえば、砲艦外交は意味を成さない」
「それに、いらぬ誤解を招いてそのまま戦争へ突入する可能性も考えうる」
しかし砲艦外交を行うべきという海軍省の人間の言葉に、各々が反応するも、『紀伊』は向こうが自分達を中心に考えている以上、砲艦外交は意味を成さないと考えている。
今まで頂点に君臨してきたのに、格下しかいない文明圏外から自分達よりも格上の存在が現れ、自分達が築き上げた技術の結晶である戦列艦を上回る軍艦を目の当たりにしても、プライドの高い皇国はその事実を認めたくなく、勝手気ままに自分達の良い様に解釈をしてロデニウスを半ば無理やり格下に見る可能性がある。
そうなってしまえば、砲艦外交の意味が無い。もちろんパーパルディア皇国の人間が余程のバカで無い限りそうはならないが……
「かといって、皇国とレベルを合わせて帆船で行けば、確実に向こうから格下に見られて、交渉自体うまくいかなくなると思います。恐らく恫喝して無理難題を突きつけてくるかと」
「最悪、そのまま戦争に突入する可能性も捨てきれません」
外務省の人間の言葉に、誰もが静かに唸る。
あぁやればこう。こうやればあぁ。あぁ言えばこう、こう言えばあぁ……
どうやっても、パーパルディア皇国との交渉は、面倒極まりないことに変わりないのだ。
「軍艦で行けば、向こうに要らぬ警戒を抱かせますので、ここは海上警備隊の仮装帆船で行きましょう。あれならば多少なりとも警戒心は薄れるでしょうし、ある程度道中何があっても対処できます」
「万が一を考えて、護衛にKAN-SENを同行させましょう」
「それしか無いでしょうね」
最終的に『大和』の発案で、パーパルディア皇国との会談に向かうことになった。
多大な不安を残しながら……
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所変わり、ムー
「パーパルディア皇国によるアルタラス王国への侵略。結果は分かりきっていたが、ロデニウスによる支援を受けたアルタラス側の圧勝か」
「予想通りの結果でしたな」
首相の言葉に、閣僚の一人が声を漏らす。
先のパーパルディア皇国によるアルタラス王国へ侵攻しようとして、ロデニウス連邦共和国によって阻止された件について、会議が行われている。ちなみにムーがなぜロデニウスが参戦していたかを知っているかというと、密かにロデニウス側より情報が齎されていた。
というのも、飛行場を使う都合上、多少事情を説明しなければならないからだ。ムー側は事情を理解し、ロデニウス側に飛行場の使用を許可した。カナタがムーの飛行場使用を許可したのも、これらがあってのことである。
「しかし、これでパーパルディア皇国がロデニウス連邦共和国へ戦争を仕掛けるのは確実となりましたな」
「うむ。あの国の性格を考えれば、相手の事をロクに調べずに、ロデニウスに戦争を仕掛けるだろう」
首相はそう言うと、閣僚を見渡す。
「聞くだけ野暮かもしれないが、ロデニウス連邦共和国とパーパルディア皇国が戦えば、どちらが勝つと思う?」
「確実にパーパルディア皇国が負けるでしょう。ロデニウス連邦共和国と比べて、技術力が違い過ぎます」
「皇国が勝っているのは物量だけですが、技術の差が開き過ぎているので、物量が意味を成しません」
閣僚から出た言葉は、皇国が確実に敗北するというものだった。まぁ連邦共和国と皇国との技術力の差が開き過ぎているので、そう考えるのも無理はない。
「戦争となれば、観戦武官をロデニウスに送ろうと考えているが、どうするか」
「現在留学中の技術者や武官がよろしいかと。特に最初の使節団のメンバーは連邦共和国の技術をより理解しているので、観戦武官としてこれ以上の適任者はいないでしょう」
「うむ。それでいこう。ロデニウスより技術支援を受けているとは言えど、その技術をものに出来なければ、宝の持ち腐れだ。グラ・バルカス帝国の脅威が日に日に増している以上、悠長なことはしていられない」
ムーとしては、連邦共和国と皇国が戦争になった場合、ロデニウスに観戦武官を送ろうと考えている。ムーはロデニウスより密かに技術支援を受けているが、その技術を身に付けられているかというと、そうとも言えなかった。基礎的な技術がある部分は技術力の向上が出来ているが、新規に習得中の技術に関しては、結果は芳しくない。
特に、戦術面は色々と習得が難しい面が多かった。
ただでさえグラ・バルカス帝国の脅威が日に日に増している中とあって、ムー側はかなり焦っているおり、戦力強化の為に、ロデニウス側から得た技術の習得に躍起になっている。
その為、ムーの軍事予算は来年度の予算がゼロになりかねない勢いで使っているが、その来年があるかどうかも分からない状況とあって、ムーの焦りが窺える。
ムー側としては、最初の使節団として派遣された技術士官のマイラスと戦術士官のラッサン、技術士官のアイリスの三人は観戦武官として確定で、他に数人ほどを送る予定のようだ。
その後首相と閣僚は仮に戦争が起きた場合、どのような対応をするかどうかを話し合い、その日の会議は終了した。
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時系列は下り、中央歴1639年 11月20日
所変わって、件の国であるパーパルディア皇国。
「……」
「……」
玉座の間では、重苦しい雰囲気が漂っている。その渦中にいるパーパルディア皇国皇軍最高司令官のアルデは、片膝を床に付けて頭を垂れたまま、冷や汗を掻いている。その表情は恐らく極度に緊張した面持ちになっているだろう。
その先にある玉座では、極めて不機嫌そうな雰囲気を醸し出している皇帝ルディアスが肘掛けに右肘を着けて頬杖を付いている。その傍には、皇帝の雰囲気に居心地が悪そうに立つ相談役のルパーサの姿がある。
「面を上げよ、アルデよ」
「は、はい」
アルデは顔を上げて、ルディアスを見る。
「此度について、貴様は言ったはずだな。数日の内にアルタラスを皇国の物にすると」
「は、はい。確かに……申しました」
「では、この状況について、貴様はどう説明する?」
ルディアスは淡々とした様子で、アルデに説明を求める。
それは当然先のアルタラス王国に正規軍を送った件についてだ。
エストシラントより出陣した艦隊は、一定の時間ごとに定期連絡を送っていた。そして『アルタラス王国の領海へと侵入。航海に問題無し』と連絡が入っている。
しかしその定時連絡を最後に、ここ数日連絡が途切れている。
無論司令部より何度も通信を送っているが、未だに艦隊からの返答は無い。予定通りなら今頃部隊はアルタラス島に上陸して、攻略は目前のはずなのだから。もちろん、その事については定時連絡で来るはずだ。
ちなみに運良く生き残った戦列艦は、今頃本土を目指して居ると思われるが、乗員達の精神は半ば崩壊状態にあるので、無事に辿り着けられるかは不明である。実際、多くの戦列艦は本土とは違う方角に向かって進んでいたりする。
その為、エストシラントに戻ってきた船は一隻もいない。
「じょ、情報が少なく、判断材料が無い以上、何とも言えませんが、恐らく突発的な気象異常に巻き込まれて……」
「全滅した、か?」
「て、定期連絡が途絶えた状況を見るに、恐らくは……」
ルディアスの問いに、アルデは恐る恐る答える。あまりにも荒唐無稽な内容だが、状況証拠も無い以上、明確な予想など出来はしない。
「他に原因は無いのか?」
「……」
「どうした? 余が聞いているというのに、答えられんのか?」
「そ、それは……」
アルデは答えたくても、相手が相手とあって答えられなかった。原因は他にも考えられたが、それはあり得ない事だからだ。答えれば皇帝の不興を買い、自分の立場を脅かしかねないとあって、すぐに答えられなかった。
「アルデ殿。陛下がお聞きになっているのです。答えてください」
「は、はっ……」
ルディアスの代わりに、ルパーサより催促され、アルデは意を決して答える。
「か、可能性は低いですが……艦隊が攻撃を受けて全滅した可能性もあります」
「攻撃……アルタラス如きに、皇軍が敗北したと?」
「あ、あくまでも、僅かに可能性がある場合でして。恐らく第三者が関わっている可能性もあるかもしれませんが、皇軍が敗北するなど、ありえません」
「……」
アルデはルディアスに必死に弁明し、皇軍が敗北した可能性を否定する。栄えある皇軍が格下に負けた。そんな事実を受け入れられるわけが無いし、考えたくもない。
「……結局、原因は分からぬ、ということか」
「は、はい。現在総力を挙げて原因を突き止めています。もし艦隊に何かあれば、生き残りが戻って来るはずです。それで、原因は突き止められるかと」
「ふむ……」
「……」
ルディアスは顎に手を当てて、一考する。その間、アルデは生きた心地がしなく、全身に汗を掻いて震えている。
「……この事は、他に漏れておらぬな?」
「は、ハッ! まだ軍でもごく一部の者にしか知られていません。無論、民は知りません」
「……ならば、必ず原因を突き止めろ。その間、この事は内密にせよ。例え聞かれたとしても、艦隊はアルタラスを攻略中だと、答えよ」
「は、ハッ!」
「もうよい。下がれ」
アルデは立ち上がって姿勢を正し、敬礼をしてから、玉座の間を後にする。
このようなやり取りが普通に行われている以上、『紀伊』の言う通り砲艦外交を行っても、意味を成さなかっただろう。
「……」
「へ、陛下……」
ルディアスはしばらく沈黙し、ただならぬ様子の皇帝に傍に控えているルパーサは恐る恐る声を掛ける。
やがてルディアスは、玉座の傍にある小さなテーブルに置かれている杯を勢いよく払い飛ばす。当然飛ばされた杯は中身をぶちまけて、床に音を立てて落ちる。
「おのれ……」
「……」
彼は忌々しく声を漏らす。それが思い通りにならなかった現実に対しての怒りなのか。それとも軍への怒りなのか……
ルパーサは何も言えず、その姿を見つめる事しかできなかった。
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