異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第七話 未確認生物『妖精』

 

 

 

 

 中央歴1637年 12月01日 トラック諸島

 

 

 マイハークを発って二日後、視察団を乗せた艦隊はトラック諸島へと到着する。

 

 

 

「ようこそ、我がトラック諸島へ」

 

 視察団の前に立つ『大和』は複数の面々と共に彼らを出迎える。主に『大和』と『紀伊』、『大和』の補佐に『加賀』、二人の護衛にKAN-SEN『高雄』と『土佐』である。

 

 本来なら『大和』の補佐に『天城』が同伴する予定だったが、今日の彼女は体調が良くなかったので、大事を取って休養してもらい、代わりに『加賀』が彼を補佐する事になった。

 ちなみに『大和』の補佐なのだが、他のKAN-SENが彼の補佐に立候補したが、『大和』はその全てを断って『加賀』にさせた。

 

 理由? 彼曰く『後が怖いから』とのことである……

 

「改めまして。自分がトラック諸島を拠点とする艦隊の総旗艦、『大和』と申します」

 

「自分は艦隊の指揮艦をしている『紀伊』と申します」

 

 『大和』と『紀伊』はそれぞれ視察団に自己紹介をする。『加賀』と『高雄』、『土佐』も続いて頭を下げる。

 

「改めまして。視察団の一員として外務局より派遣されました、ヤゴウです」

 

 視察団の代表としてヤゴウは改めて自己紹介をして、『紀伊』を見る。

 

(キイ殿は……まさか噂に聞く竜人か?)

 

 『紀伊』の頭に生えている竜の角と尻尾を見て、ヤゴウは噂程度に聞く竜人を思い出す。

 

 しかし噂程度なので、竜の特徴を持っているというだけで、どのような姿をしているのかまでは知らない。

 

(気になるが、それは後で聞こう……)

 

 内心呟きながら『大和』に傍に控える『加賀』を見る。

 

(この女性も獣人のようだが、尻尾が九本もある獣人なんて聞いた事が無いぞ)

 

 頭に耳、尻辺りから尻尾生えているので獣人であるのは確かだが、その尻尾が九本もあって、内心驚いていた。

 

 しかし色々と気にはなるものも、頭を切り替えて後ろに控える『高雄』と『土佐』の二人に目をやる。

 

(剣を持っているという事は、二人の護衛か)

 

 ヤゴウは『高雄』と『土佐』が帯刀している日本刀―――重桜刀と呼ぶべきか―――を見る。

 

(見た目は可憐な女子にしか見えないが、この二人もKAN-SENなのか?)

 

 『高雄』と『土佐』の二人もKAN-SENなのかヤゴウは疑問に思う。艤装を展開していないKAN-SENは普通の人間と比べても見分けるのは難しい。

 まぁ重桜のKAN-SENは殆ど動物の耳や尻尾を持っている者が多いので、人間と比べるという点では見分けやすいが。

 

(この二人、相当な剣の使い手だ)

 

 しかしヤゴウと違い、軍務局より派遣された職員は剣の使い手とあって、『高雄』と『土佐』の二人から発せられる気配から相当な剣の使い手であると察した。

 

「それで、総旗艦に、指揮艦とは?」

 

 ヤゴウは色々と疑問があったが、その多くを棚上げにして、一つだけ疑問を問い掛ける。

 

「総旗艦とは、簡単に言えばこのトラック諸島に配属されている艦隊全ての旗艦権限を有しています。つまり軍で言う最高司令官です」

 

「指揮艦は軍で言う前線で指揮をする司令官と思ってもらえれば。総旗艦に次ぐ権限を有しています」

 

 二人の説明に視察団は納得したように頷く。

 

 KAN-SENは人の姿をした艦船であるので、呼称もそれに準じたものなのか、と彼らは納得したようである。

 

 尤もこの呼称を使っているのは彼らだけである。というより彼ら以外で使うことはまず無い。

 

「これから我々の技術の一端をお見せします。ご質問等がありましたら、機密に触れない程度でお答えします」

 

 と、『大和』と『紀伊』は後ろに控えているトラックに視察団を案内して二輌目に乗らせて先頭車輌に『加賀』と『高雄』 『土佐』と共に乗り込むと、運転席に居る二頭身の生物に声を掛けて、出発させた。

 

 その後トラックでしばらく移動して、次に物資輸送の為に作られた島と島を繋ぐ地下トンネルを走る鉄道に乗り込み、見た目だけが『EF13形電気関車』に酷似した電気機関車が牽引する列車で隣の秋島まで移動する。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 トラック諸島 秋島

 

 

『……』

 

 視察団は目の前で繰り広げられている光景に、口を開けて呆然と立ち尽くしていた。

 

 彼らの目の前では、巨大な物体が轟音と共に砲撃を行い、狙いを定めていた砂山に命中する。

 

「あれは『戦車』と呼ばれる兵器でして、このトラック諸島の陸上防衛を担っている陸戦隊の主力装備です」

 

 大和はトラック諸島の陸上防衛を担う陸戦隊の主力戦車『74式戦車』と『61式戦車』を視察団に見せつつ説明する。

 

 74式戦車は油圧式サスペンションを使って地形に合わせて車体を浮かせて砲撃を行い、61式戦車は砲塔を旋回しつつ走り、急停車した後に砲撃を行う。

 

「な、何という大きさだ!」

 

「それにあの速さ! あれだけの大きさで馬より早いのか!?」

 

「それにあの大きな音と出す武器は一体何なのだ!?」

 

 視察団の面々は各々の感想を声に上げる。

 

 剣や槍、弓矢で戦う者達からすれば、戦車は驚愕な代物であった。

 

「こ、ここではあれらの戦車とやらを作っているのか?」

 

「えぇ。陸戦隊の装備は全てこのトラック諸島にある工場で生産され、運用されています」

 

 紀伊がハンキの質問に答えると、誰もが真っ青になる。 

 

 

 しばらくして演習を終えた74式戦車と61式戦車は最初の位置に戻って停車し、代わりに陸戦隊の歩兵が整列する。その歩兵から離れた場所に木板が数枚立てられている。

 

 しかしこの歩兵があまりにも異彩を放っている。

 

 陸戦隊の歩兵は迷彩服に迷彩柄のカバーを付けたヘルメットを身に纏っているが、身に纏っているのはあの二頭身の生物であり、視察団の面々が見下ろす程の背丈しかなく、キリッとした面構えでも可愛らしさは健在である。よく見ると戦車から同じ二頭身の生物と、巨大なヒヨコが出てきている。

 

 ツッコミどころしかない、あまりにも兵士に見えない見た目に、視察団の面々は唖然としている。

 

「では、これより歩兵の個人装備について説明します」

 

 『大和』が目配りすると、見た目は凛とした雰囲気を出しているスタイル抜群な女性ことKAN-SEN『アークロイヤル』が手にしている小銃を視察団に見せるように前に出す。

 

「こちらは陸戦隊の主力小銃として採用されている『64式小銃』と呼ばれる自動小銃です。まぁあなた方の武器で例えるなら弓矢に該当する物です」

 

 『アークロイヤル』の説明を聞いても、64式小銃を見せ付けられた視察団は思わず首を傾げる。まぁ彼らは銃の事を知らないので、現物を見せ付けられても分からないのは当然である。弓矢と例えられても、形自体が全く違うので、ピンと来ないのか首を傾げたままだ。

 

 

 この64式小銃は陸戦隊で採用されているアサルトライフルで、7.62×51mmの弾を使用する。かつて過去の重桜で採用され実際に使われていた代物らしく、セイレーンとの戦いで武器兵器技術が衰退した事で過去の物となっていたが、ある者達がどこからか実物を仕入れてきてこの実物を分解、解析をして大幅に設計を手直して作られたのが、この64式小銃となる。

 

 元となった小銃と比べると大分手を加えられており、一部使用している金属の変更を行い、ある程度の箇所の設計を行って扱い易くし、部品点数を少なくし尚且つユニット化して整備し易くし、更にオリジナルより射撃精度を向上させた小銃に生まれ変わっている。ただ、銃身が長く重い上に、構造上銃床に折り畳み機構を付けられないのが欠点である。

 

 ちなみに『大和』と『紀伊』がそのある者達にこれをどこで手に入れたのかと聞くと「山に埋まっていたのを掘り出してきた」と言っていた。これを聞いた二人は「マ○ンテンサ○クルから掘り出したのかよ」と突っ込んだそうな。

 似たような経緯として61式戦車もその者達によって見つけられた物だが、彼らが言うには『重桜にある池の底の泥の中に埋まっていたのを見つけた』であるという。これを聞いた二人は色々と混乱して頭を抱えたそうな。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

「今から64式小銃射撃を見せてみます。射撃用意!!」

 

 『紀伊』の指示と二頭身の歩兵達が64式小銃にマガジンを差し込み、槓桿を引いて手放し、薬室に初弾を装填する。

 

「構え! 撃てっ!!」

 

 64式小銃を構えた歩兵は『紀伊』の号令と共に、射撃を開始する。

 

 大きな銃声に視察団は誰もが驚くが、その間にも数回単射による射撃が行われ、的にしていた木板を貫く。

 

 目に見えない速さで飛び、精確無比に的を撃ち抜く銃の威力に、誰もが驚きを隠せなかった。

 

(相変わらずあの体格でよく普通に撃てるよな)

 

 『大和』は短い手足に胴長な体格の二頭身な生物を見ながら内心呟く。

 

「あ、あの、『大和』殿」

 

「何でしょうか?」

 

 銃声が鳴り響く中、ヤゴウは『大和』の耳の傍で声を掛ける。

 

「あの兵士達は一体何なのですか?」

 

 ヤゴウは尤もらしい事を質問してきた。

 

「彼らは『妖精』と呼ばれる者達です」

 

「妖精?」

 

 ヤゴウは64式小銃を構えて射撃する二頭身の兵士達を見て、怪訝な表情を浮かべる。

 

 彼の中にある妖精のイメージから、可愛らしい事を除けば、あまりにもかけ離れた姿であったからだ。

 

「マイハークで『鞍馬』に内火艇で乗せてもらった際や『武蔵』の艦内でも、二頭身の生き物がいましたよね」

 

「え? あ、はい。確かに居ましたが、それが?」

 

「それも妖精です。見た目はあんなこじんまりとしていますが、あぁ見えても身体能力はKAN-SEN並みで、頭も良いですからね」

 

「は、はぁ……」

 

 『大和』の説明を聞いても、ヤゴウは信じられなかった。どう見てもそうには見えない。

 

(いや、KAN-SENの件があるから、本当なんだろうな)

 

 しかし非常識な光景を目の当たりにしていたとあって、妖精の件を簡単に受け入れるのだった。

 

 

 ちなみにこの妖精なのだが、元々『大和』と『紀伊』の艦内に居たもので、その後なぜか数を増やしていって、現在ではトラック諸島のどこでもその姿を見るようになるぐらいに、大量発生している。そして今でも無尽蔵に増えているそうな。

 そのお陰でトラック諸島の軍事基地化の為に維持整備出来て、尚且つ陸の防衛を担う陸戦隊を編成できたのだが……

 

 そして妖精は共通して身体能力が非常に高く、更に技術力が恐ろしく高い。彼女達の助け無しに今の様にトラック諸島を軍事基地化し、それ以前にKAN-SENのみで艦隊を運用し、維持するのは不可能だっただろう。

 

 妖精達の多くは喋る事が出来ず身振り手振りで自分の意思を伝える者が多いが、中には喋る事が出来る個体も存在しており、その個体は通信員として活躍している。

 

 当初は『大和』と『紀伊』の艤装のみに妖精が宿っていたが、現在では他のKAN-SENの艤装にも妖精達が宿り、そのお陰でKAN-SEN達は以前よりも艤装の操作の伝達速度の円滑性が向上しており、いざ損傷しても妖精達がその場で応急修理を行うことが出来る。

 軍艦形態であれば妖精達が艦体の各部に配置され、KAN-SENの指示で操作を行う。その伝達速度は自分の感覚でやるぐらいに速い。このお陰でKAN-SENは軍艦形態では周囲の警戒と指示に集中出来るようになったのだ。

 その上、もしKAN-SENの本体が意識を失って艦体の操作が出来なくなっても、妖精達の手で最低限の動きは出来るとのこと。

 

 

 それから十発ほど射撃を行い、妖精達はマガジンを抜いて薬室に実包が残っていないかを確認してから、その場を離れる。

 

 次にほぼ原型の無い『62式機関銃』と傑作機関銃『ブローニングM2重機関銃』等の機関銃による射撃を行い、視察団の度肝を抜いた。

 

 その他にも迫撃砲に自走砲等、様々な物を視察団に見せ付けた。

 

 

「以上を持って、陸戦隊の装備の紹介を終えます」

 

 基本的に運用されている武器兵器の紹介を終えて 『大和』は頭を下げる。

 

 全てでは無かったが、その多くの武器兵器を見せられて、視察団の誰もが口をあんぐりと開けて呆然と立ち尽くしていた。

 中には顔を真っ青にしている者も居た。

 

(た、たかが諸島と思っていたが、これほどとは……!?)

 

 ハンキは戦慄していた。諸島ゆえに造船技術以外は大した事無いのだろうと思っていただけに、この衝撃は大きかった。

 

 

 鉄で覆われて強力な兵器を積み、地上を馬よりも速く走る戦車。

 

 目に見えない速度で弾を放ち、連射も可能な銃。

 

 遠くの敵を攻撃することが可能な榴弾砲。

 

 それに加えて鉄で出来た巨大な軍船とワイバーンを上回る飛行機械の存在。

 

 どれも見た事が無い、強力な武器や兵器を使用している。

 

 そして何よりKAN-SENの存在。

 

 もしこれらを用いられて、戦争を仕掛けられていたら……そう考えただけで身体の震えが止まらなかった。

 

 そして心の底から彼らが穏健な性格であったのに感謝した。

 

 

 ちなみになぜ彼らの陸戦隊の装備がこれだけ豊かなのか。まぁ規模的には陸軍ともいえるが、環境下も相まってその性質的には海兵隊に近い。

 

 セイレーンとの戦いの中で、海と空の戦力を有していながら陸上戦力を持っていないとは思えない。そう考えた『大和』と『紀伊』は必要性が薄くても、陸上戦力の強化を進めていた。

 

 それなりに基礎技術があった上、妖精の技術力もあったので、そこからの発展の速さは目を見張るものがあった。それに、セイレーンとの戦争で失われた『過去の遺物』と呼ばれる代物を妖精達がどこからか見つけては、それを解析して技術を抽出し、その発展の手助けをしている。

 

 現在陸戦隊が運用している武器兵器は別世界の地球で言う1980年代ぐらいの日本の陸上自衛隊で使われている物が多い。

 が、先述した64式小銃を含め、その多くが妖精達の手によってかなり手が加えられているので、設計は元より少なくとも性能や扱いやすさは良くなっている、らしい。

 

 

(これは、ちょっと刺激が強すぎたか?)

 

 顔を真っ青にしている使節団の面々を見て、『大和』は小さく呟き苦笑いを浮かべる。

 

(まぁ、剣や槍で戦うようなぐらいの技術力しかない国に、銃や大砲を撃ち合うような技術力を見せたらこうなるだろ、閣下)

 

(そりゃそうか)

 

 呆れた様子の『アークロイヤル』は小さく『大和』にツッコミ、彼は苦笑いを浮かべて肩を竦める。

 

 『大和』は咳払いをして、視察団を見る。

 

「それでは、次を案内しますので、付いて来てください」

 

 『大和』は視察団の様子を見て少し気まずそうにしながら、彼らを連れて次の場所へと向かう。

 

 

 




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竜の伝説編はやっておくべき?

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