異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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ザイン様より評価5を頂きました。
評価していただきありがとうございます!

今回ある意味人気のあるあのキャラが登場。


第七十一話 進む悪意と不安

 

 

 

 中央歴1639年 12月28日 パーパルディア皇国 第1外務局

 

 

「……」

 

 第3外務局局長のカイオスは、居心地の悪さと憂鬱な気持ちで第1外務局に呼び出されて、廊下を歩いている。

 

 外務局間で人事交流はあるとは言えど、公的機関同士で、しかも局長を呼び出すなど、本来ならありえないことだ。

 

 しかし今回の場合、「皇帝の命令書」を携えた第1外務局の人事課長がカイオスの元にやって来た為、彼は是非もなく出頭した。

 

 指定された局長室の前に立つカイオスは、装飾品で飾られた重厚な扉を眺めて、顔をしかめる。

 

(何度見ても嫌になる)

 

 本来なら自分が使うはずだった部屋の扉。気持ちを切り替えても、いつも心の中にくすぶり続ける。

 

 第1外務局の案内役の職員が扉を開けて、カイオスを中に案内する。

 

 部屋の中には、第1外務局局長のエルト、同次長のハンス、下位列強担当部長シランの姿がある。

 

 相変わらず同じぐらいの歳なのに妙に若々しい見た目のエルトを見て、彼女が変わりない事を確認すると、彼女の隣に見たことの無い20代後半の女性が座っていた。

 

 カイオスはその面々に一礼し、話を切り出す。

 

「皇帝陛下の命令付きで第1外務局から呼び出しとは……どういったご用件ですかな?」

「分からんのか? 身に覚えが無いわけでは無かろう」

 

 と、カイオスの知らない美しい女性が棘のある言葉を発する。

 

「失礼ですが、どちら様でしょうか」

「外務局監査室のレミールだ」

 

 女性ことレミールがそう言うと、カイオスは息を呑む。

 

 

 外務局監査室。それは外務局の不正が判明した時や相手国への対応に不手際が発生した場合を考慮し、設置された組織である。彼の組織が外務局を外部から監視し、場合によっては担当者を処分する権限を持つ。問題となった外交案件については、監査室の人員が相談役として参加することもあり、必要と認められれば外交担当者と交替し、案件を処理する場合がある。

 

 なお、エリート集団である外務局を監査する為に、監査室の人員は全て皇族で構成されている。つまり、このレミールと名乗った女性は、皇族であるということになる。

 

 

「も、申し訳ありません。皇族の方と知らず、無礼を働いてしまい」

 

 カイオスはレミールに頭を下げて、非礼を詫びる。

 

「構わん。お前のような第3外務局の人間では、皇族の人間と会うことも無かろう。知らなくて当然だ」

 

 レミールは彼の非礼を咎めることはしなかったが、聞き方によってはカイオスを皇族を知る機会が少ない低能な人間だと言っているようなものである。当然カイオスはその意図がある言い方だと察して、憤りを覚える。

 しかし何とか気持ちを抑え込んで顔に出さないようにする。

 

「……して、一体何のことでしょうか?」

「ロデニウスの件だ。会談の議事録を見たぞ。何だ? あの腑抜けた対応の仕方は。それに怒鳴り散らした部下を追い出して会談を続けたそうではないか」

「はっ。お言葉ではございますが、私にも考えがございまして……」

「口答えをするな」

 

 レミールの鋭い言葉に、カイオスは口を閉じざるを得ない。

 

「確かに文明圏外国の担当は第3外務局、局長であるお前の管轄だ。どうしようともお前の判断次第だ。しかし、皇帝陛下はお前に『ロデニウスにきっちりと教育しろ』と仰せになった。ロデニウスのたかが公使にあろうことか局長以下重役が雁首揃えて対応し、しかもその内容が弱腰外交……いや、平伏外交ではないか。列強たる皇国の担当がこんな……陛下の御意思も汲めぬとは情けない限りだ、カイオスよ」

 

 カイオスは額に汗を浮かべて、息を呑む。皇族とあって、その言葉には有無を言わさぬ重みがある。

 

「今後、ロデニウスとの外交は第3外務局ではなく、第1外務局が担当する。外務局監査室からは私が出向して対応する」

「っ!」

 

 レミールの言葉に、カイオスは息を呑む。つまり今後ロデニウスとの外交は皇族が行うというのだ。それが良い意味なのか悪い意味なのかは……明らかに後者の方だ。

 

「カイオスよ。言われたこともロクに出来ない愚か者は皇国にはいらぬ。今回処分されなかっただけでもありがたく思うのだな。せいぜい、今後は気を付けるのだな」

「はっ……承知いたしました」

 

 カイオスは頭を下げる。

 

 エルトは目を閉じて涼しい表情を浮かべているが、僅かに笑みを浮かべているようにも見える。恐らくレミールへの件の情報の提供は彼女によるもののようだ。相変わらず揚げ足取りの時だけは高い情報収集能力を発揮する。

 

「もう用は済んだ。無能者は自分の身の丈に合った仕事でもしていろ」

「……では、失礼します」

 

 棘のある言い方で侮辱されるカイオスは、再度一礼して局長室を後にする。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……」

 

 第1外務局を後にしたカイオスは、馬車に乗って第3外務局に向かっていた。

 

(ふん。何も知らない小娘が……偉そうに)

 

 彼は先のレミールの姿や態度を思い出し、内心罵倒する。

 

 実質晒し者にされたとあって、カイオスは憤りを覚えていたが、それよりも彼はなぜかどこか優越そうな雰囲気だった。

 

(だが、まんまとノコノコとやって来たものだな。だから皇族の女は御しやすい)

 

 笑みを浮かべたい衝動を抑え、彼は馬車の窓から第1外務局を見る。

 

(あのレミールはこの国の傲慢さを体現した過激な外交をすることで有名だ。文明圏外の国との対応で不満があれば、必ずしゃしゃり出ると思っていたが、まさか思った通りに出てくるとは)

 

 カイオスは本人の前では知らない風にしていたが、実際は良く知っていた。彼女が皇族の中でも過激な外交を行うのは外務局では有名だ。

 

(あの女はいつものように文明圏外の国という前提で教育するだろう。そして脅迫と恫喝をして、無理やり国を従わせる)

 

 彼はこれまで調べてきたレミールの行いを思い出し、やがて口角を上げる。

 

(そして今回も、ロデニウスに対しても同じことをするだろう……それが引き金になるとも知らずに)

 

 もうおかしくて仕方が無い。そう言わんばかりの雰囲気だ。

 

(ロデニウスは平和を望む国家だ。自ら争いを行う事はしない。だが、もし自国の人間が理不尽に命を奪われたのなら……怒りを抱くはずだ)

 

 カイオスは深呼吸をして気持ちを整え、前を見る。

 

(そして皇国と連邦共和国は戦争に突入する。それも殲滅戦だ。ロデニウスはその圧倒的な力を以てして、国民を守るために皇国と戦うだろう。そうなれば皇国は甚大な被害を被ることになる)

 

 第3外務局に到着し、馬車から下りたカイオスは平然を保って行き交う職員に挨拶をしながら局長室へと向かう。

 

(そこで私がクーデターを起こして国の中枢を乗っ取り、ロデニウスと早期講和を達成させる)

 

 局長室に入り、彼は自分のデスクの席に座り、両肘を机に付けて両手を組み、組んだ手の上に顎を乗せる。

 

(もちろん講和で条件を出されるだろうが、問題は無い)

 

 そして彼は……邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

(全ての皇族の首と領土を引き換えにして、この戦争を早期に終わらせ、国を存続させられるのなら、安いものだ)

 

 カイオスは、戦争の行きつく先を想像し、口角をより鋭く上げる。

 

 彼は何の躊躇いもなく、皇族の首をロデニウスに差し出すつもりでいた。

 

 もちろん戦争が起これば、皇族以外の多くの兵士たちの命が失われることになる。それも数百や数千で済まない命がである。

 

 だが、カイオスは戦争が起これば、皇国はロデニウスに対して殲滅戦も言い渡すだろうと予想している。これまでも皇国は気に入らない国、従わない生意気な国に対して宣戦布告し、場合によっては殲滅戦を言い渡す場合があった。

 

 当然殲滅戦が言い渡されれば、皇族どころか国民全員が殺されるまで戦争は続くことになり、どれだけの命が失われるか分からない。

 

 もちろん、命の一つ一つが安いはずがない。カイオスの考えはあまりにも人道を離れている。しかし、強引な考えだが、結果論的に、損得勘定で考えるなら、数千の命と皇族の命と引き換えにして戦争が終わらせるのなら、安いとも言えるのかもしれない。

 

 だが、カイオスの計画はあまりにも他力本願であり、尚且つ自分の都合の良いような考えである。とてもうまくいくとは思えない。その上一つでもうまくいかなければ、全てが瓦解するような計画だ。

 

 しかし、カイオスには計画通りに進められる自信があった。

 

(小娘が。せいぜいロデニウスを怒らせるために、過激な事をしてくれよ。そして自分の行いに後悔するがいい)

 

 カイオスは邪悪な考えを抱きながら、自分の仕事に取り掛かるのだった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 中央歴1639年 1月3日 ロデニウス連邦共和国

 

 

 本来なら正月休みになっているであろう時期であるが、パーパルディア皇国との間で緊張感が高まっているとあって、半ば休みを返上して政府と軍は仕事に取り組んでいる。

 

 

「……」

 

 大統領の執務室で、カナタは深刻な面持ちで、両肘をテーブルに付けている。

 

「やはり不安になりますか?」

 

 その執務机の傍にある秘書用の執務机にて、パソコンで書類を作成していた秘書が声を掛ける。 

 

「あの国相手に不安になるなというのも無理があると思うがね」

「まぁ、それはそうですね」

 

 苦笑いを浮かべるカナタに、秘書も苦笑いを浮かべる。

 

「前回は意外な結果に終わりましたが、今回の会談で期待している返答が帰って来るとは思えない」

「……」

「もしかしたら、今回の会談で、皇国は何かをしてきそうな気がするのだよ」

 

 カナタは一抹の不安を口にし、秘書は何も言えなかった。

 

 相手はあのパーパルディア皇国だ。むしろ何もしない方が怪しいぐらいの連中である。

 

「一応『紀伊』殿の助言通り、今回は海上警備隊より『第150号警備艦』を派遣しましたが、皇国には効果は見込めないかと」

「それでも、帆船よりかは効果はある、と思いたいが」

 

 カナタは椅子を回して後ろを向き、窓から外の景色を見つめる。

 

 先ほどパーパルディア皇国との会談を行う外交官と、外交官と船の護衛を乗せた警備艦がマイハークを出航したとの報告が入った。

 

 今回派遣された船は、以前の第50号仮装帆船から変更し、『第150号警備艦』と呼ばれる船舶になった。

 

 この船はウネビ級軽巡洋艦の設計を元に、武装を簡素化し、航続距離を伸ばすために燃料タンクを増設した、海上警備隊に配備されている警備艦である。主な武装はボフォース40mm機関砲やブローニングM2重機関銃といった軽武装となっているが、元が巡洋艦とあって、搭載数は他の仮装帆船や警備艦よりも多いので、海上警備隊が保有する船舶の中では、最も火力が高い。

 

 これ以外にも『第100号警備艦』と呼ばれるマツ級駆逐艦の設計を元にした警備艦が配備されつつある。

 

 ちなみに派遣する船舶を第50号仮装帆船から技術力が上がり、明らかに機械動力船だと分かる第150号警備艦に変えたのは、少しずつ連邦共和国の技術力を見せて皇国に警告していくからで、もしも仮に会談が何度も続く場合、次は海上警備隊の警備艦から海軍の重巡洋艦を4隻、その次は戦艦6隻、最終的には紀伊型戦艦2隻を投入する予定である。

 

 しかし今回の派遣だけでも、大分技術力を示すことになるのだが、相手が相手なので、理解してくれるかは別である。

 

(それにしても……嫌な予感がする)

 

 カナタは内心呟き、外の景色を眺めつつ目を細める。 

 

 前回の会談……というより皇国の出頭命令で赴いた際に、意外なほどに話が進み、今回第二回の会談が行われることになった。これまでの皇国の性格を考えれば、考えられない話だ。

 

 僅かながら希望を見出したものも、上げてから落とすということもありえる。

 

(いくら考えても、もう既に動き出している。後は結果を待つだけだ)

 

 彼は多くの不安を抱えながらも、既に自体は動き出している。後は結果を待つだけだ。カナタは頭を切り替えて、別の話題を出す。

 

「そういえば、海賊の件ですが……経過はどうですか?」

「海上警備隊の『ジャン・バール』殿の報告では、捕らえた海賊から情報を得て、海賊たちの根城の場所を掴んだそうです」

「おぉ、それは吉報ですね」

 

 カナタは思わぬ吉報に気を良くする。

 

 海賊による被害は海上警備隊の活躍によって減少傾向にあるが、それでもどこかで海賊による被害が出ているのが現状である。海賊とて馬鹿ではなく、隙あらば犯行に及んでいるようだ。

 

 いつまでもイタチごっこをしているわけにもいかないので、ここいらで根本を叩こうという考えが海上警備隊で挙がったのだ。

 

「現在特戦隊による作戦を立案しています。後は大統領の許可があれば、詳細を煮詰めて行動に移すのみとのことです」

「……」

 

 秘書よりそう聞き、カナタは静かに唸りながら腕を組む。

 

 当初は海上警備隊によって海賊を摘発しようと考えていたが、地の利がある海賊相手では海上警備隊でも苦戦は免れないし、何より多くの海賊を取り逃がしかねないと判断し、特戦隊による急襲を提案した。

 そして慌てて出てきた海賊を外で待ち構えている海上警備隊が摘発するという流れだ。

 

「……」

 

 カナタは一考して口を開く。

 

「では、『紀伊』殿を通して、特戦隊に許可を出すと伝えてください」

「分かりました」

 

 カナタより許可が下りて、秘書は頷いてパソコンで『紀伊』へとメールを送る準備を行う。

 

(海賊の一件はこれで大きく変わるでしょう。しかし……)

 

 彼は内心呟くも、まだ皇国への不安は渦巻いたままだ。

 

 この先、一体何が起きるのか……

 

 ただただ、彼はそう思うのだった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、クワ・トイネ州のギム

 

 

 

 先の戦争で大きな被害を被ったギムだったが、今ではすっかり戦争の傷跡はその大半が直っており、むしろ更なる発展を遂げている。

 

 以前の古い町並みは多少残しつつ、近代的な発展を遂げており、街では人々が行き交っている。

 

 ギムより少し離れた所に、陸軍の駐屯地が設営されており、そこでは日々軍の者達が訓練を積んでいる。

 

 

 

「そうか。明日にはシオス王国に着くんだな。なら、着いたらまた連絡してくれ」

 

 駐屯地にある休憩所で、西方騎士団改め歩兵大隊の指揮官へと昇進したモイジがスマホで連絡を取っている。相手は彼の奥さんだ。

 

「分かった。なら、楽しんで来てくれ。お土産を楽しみにしているよ」

 

 モイジは妻にそう言うと、スマホの電話を切る。

 

「相手は奥さんですか?」

 

 と、モイジの部下の男性が声を掛ける。

 

「あぁ。そろそろシオス王国に着くそうだ。その連絡だ」

 

 モイジはそう言うと、胸ポケットより煙草の箱を取り出し、一本の煙草を取り出して口に咥える。

 

「そういえば、モイジ隊長の奥さんと娘さんは、旅行に行っていましたな」

「本当なら俺も一緒に行く予定だったんだが、この通りだ」

 

 モイジは煙草を加えながら肩を竦めて、深くため息をつく。

 

 本当なら彼は休暇で家族と共にシオス王国で旅行を楽しむはずだったのだ。しかし軍からの招集があった為、モイジは休暇を返上して赴かざるを得なかった。その為、旅行は妻と娘の二人だけになったのだ。

 

「残念ですね。せっかくの休暇だったのに」

「あぁ。結構前から準備していたんだがな。皇国め……」

 

 部下の男性の言葉に、モイジは頭の後ろを掻いて、ライターを取り出して蓋を開け、火を出して煙草に火を付ける。

 

「しかし、パーパルディア皇国と不穏な空気になりつつあって、万が一に備えての待機命令ですからね」

「……」

「あの国、どうしますかね?」

「無駄にプライドの高い国だ。何もしないとは思えん」

「ですよね」

 

 と、二人揃ってため息をつく。

 

 軍の招集はパーパルディア皇国との間で、不穏な空気が漂い始めて来たとあって、軍は非常事態に備えて各部隊に待機命令を出していた。もちろん陸軍のみならず、海軍でも軍艦の出港準備が着々と進んでおり、KAN-SEN達もトラック泊地で待機している。

 

「もし、皇国と戦争になったら、自分達はどう動くのでしょうか?」

「俺達の部隊は基本ギムの防衛だ。だが、皇国と全面戦争になれば、俺達の部隊も前線に駆り出されるはずだ」

「そうですか」

 

 部下の質問にモイジは、火のついた煙草を指に挟んで口から離して答える。

 

 基本的にモイジが率いる部隊はこのギムの防衛を目的にして配備されている。しかしいざとなれば一戦力として前線へと送り込まれる部隊でもある。

 部隊不在の間は、臨時編成された部隊がギムの防衛を担うことになる。

 

「……相手は列強。我が国は勝てるでしょうか?」

「そこは戦ってみないと分からん。が、戦力的に負けるとは思わんな」

「まぁそうでしょうね。しかし、出来れば戦争にならないことを祈るばかりです」

「全くだ」

 

 モイジはそう答えて、煙草を吸う。

 

 

 

 しかし、そんな彼らの思いとは裏腹に、戦争は着実にその歩みを進めていた……

 

 

 

 

 

 

 




アンケートは次回で締め切ろうと思いますので、多くの一票をお願いします。

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竜の伝説編はやっておくべき?

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  • 別にやらなくても良いんじゃね?
  • オリジナル要素を加えてやるべき
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